2017年12月28日木曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 13巻

●56
木々は白雪が泣いているのに気がつきます。
木々はゼンを呼んだほうがいいと考え、ゼンに白雪のところへ行ってもらいます。
ゼンは白雪の感じる寂しい気持ちを知り、みんな同じく感じていると言い、その気持を隠す必要はないと言います。


●57
ゼンと白雪とミツヒデと木々とオビはクラリネス王国王城ウィスタルに戻ります。
ゼンはまっ先にイザナ陛下に会いに行きます。
ゼンはイザナ陛下に白雪の辞令の件を聞かされていないことに抗議します。
イザナ陛下はゼンが城に戻ってきたら、機嫌の悪そうな顔で自分の元に来ると思っていたので、どこかうれしそうです。
イザナ陛下はゼンの怒りをさらりとかわします。

白雪とリュウはイザナ陛下に呼ばれます。緊張した面持ちで行くと、イザナ陛下は今回の辞令の目的について二人に話します。
イザナ陛下は、リュウにはいずれウィラント城の薬室に行ってもらおうと考えていること、クラリネス一知識の集まるリリアスを拠点に腕を磨き人と関わり、君達が担う役割を得る事を期待する、と言います。

白雪はゼンとミツヒデと木々とオビとは少なくとも二年は離れ離れです。
白雪とリュウはリリアスに出発です。


●58
オビはゼンに呼び出され、二人だけで話をします。
ゼンはオビが自分から白雪とリュウのいるリリアスに行くと言ってくると思っていたと言い、リリアスに行く意思はあるかと聞きます。
オビはリリアスに行っても学問は出来ないと言います。
ゼンはリリアスに行くのなら直属の騎士として行くことになる言います。
オビは、
「主のご命令とあらば」
と言いたいところですけど、ちょっと保留で頼みますと言います。
ゼンはオビが即答すると思っていたのに保留と答えたので、オビの表情からその理由を探ろうとします。しかし、しゃべる気はなさそうなので、これから視察に出るので戻るまでに決めるよう言います。

視察中、オビの様子がいつもと違うことはミツヒデと木々も感じています。


●59
オビはリリアスに行く決心はついていたようです。だたリリアスに最低でも二年は行くことに考えることがあるようです。そして、望んで同じ場所に身を置く事を決めるのは結構覚悟がいることをゼンに打ち明けます。
ゼンはオビに、
「おまえがここに身を置くと決めたなら、この先 おまえに白雪の側を任せたい」
と言います。
ゼンとオビの関係がこれまであいまいだったけど、主従として改めて関係を結びます。

オビはゼンとミツヒデと木々に別れの挨拶をせず、リリアスに向かいます。


●60
白雪とリュウはクラリネス王国の北の関所リリアスの学問街で鈴を待ちます。
白雪とリュウは手続きを済ませ、鈴に宿舎に案内してもらいます。
鈴は白雪とリュウに、
「飯は天幕街行ったほうがいいぜ… 君ら二人だけで薬学の館に行かないように…」
と忠告します。
「な 何故ですか」
と白雪が聞くと、
「まー 近いうちにわかるよ それじゃー」
と鈴は理由を教えてくれません。

翌日、白雪とリュウは薬学の館に行って、鈴が言っていた理由が分かります。
原因不明の病でリリアスが封鎖された際、原因であるオリンマリスを特定し、治療薬を作った白雪とリュウが有名人になってしまっているからです。
薬学の館は白雪とリュウをひと目見たい学者を研究員であふれています。
カザハという薬学者が話しかけてきます。
鈴はカザハを無視します。
カザハは気にする様子もなく、白雪に話しかけます。初対面なのに腕相撲勝負を挑んできます。
カザハのおかしな口上に乗って、白雪は勝負を受けます。
腕相撲は一瞬で勝負がつきます。
カザハはどうして勝負を挑んできたのだろう? 腕に自信があるからなのかと思っていたのに、瞬殺でやっつけられてしまいます。カザハは何事もなかったかのように、白雪とリュウと鈴に同行します。
鈴は白雪とリュウをシダンの所に連れていきます。

シダンの部屋にはイヅルという助手がいて、カザハと同じ薬学者です。
イヅルが白雪とリュウに自己紹介しているところに、カザハは自分の論文を持ってきて、リュウに読んでほしいと差し出します。
カザハは自由な人です。

シダンに挨拶を終え、鈴は白雪とリュウの仕事場である、調剤室と薬棚を案内します。
明日からリリアスでの生活が本格的に始まります。

翌朝、白雪はリュウの叫び声で目を覚まします。
白雪が急いで隣のリュウの部屋に行くとリュウは、
「なんでもない ねぼけてた」
と言います。

白雪とリュウは薬学の館に向かう途中、お面をかぶって座っているオビを見つけます。
オビは二人が来るのを待っています。
オビがリリアスに来て、白雪とリュウは驚いています。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 13巻
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2017年12月26日火曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 12巻

新王の戴冠式の準備が着々と行われます。
白雪がゼンに言った感想と同じで、戴冠式が美しかったです。

イザナが王に即位し、新体制になり、ゼンも忙しくなります。
イザナは白雪に試練を与えます。
白雪はどう応えていくのでしょう。楽しみです。



●50
タンバルン王国の第一王子ラジ・ジェナザードは戴冠式に招かれています。

山の獅子の鹿月とイトヤと白雪の父親武風はクラリネス王国で新国王が即位や白雪が戴冠式に出られるのかななど遠くから戴冠式の話が聞こえてきたことで話題にしています。

クラリネス王国のセレグでは騎士団副団長びヒサメ・ルーギスが王城ウィスタルに出発する準備をしています。

王城ウィスタルでは陛下が帰城し、兵にねぎらいの言葉をかけます。
クラリネス王国の国王はハルト・ウィスタリアという人物でイザナとゼンの母親です。クラリネスは父親のカインが亡くなりハルトが国王の座に就き国を治めています。
ハルトはイザナに、
「おまえを王にする」
と言います。そして、
「おまえは何に懸けてこのクラリネスの王になる」
と問いかけます。イザナは、
「陛下とゼンに」
と返答します。
イザナの言葉にゼンの表情は引き締まります。
ハルトはゼンに王冠を新王にかぶせる役を任せます。

白雪とオビはゼンに第二王子として呼び出されます。
戴冠式に合わせタンバルンからラジ王子が来るので、白雪にタンバルン王国のラジ・ジェナザード王子の案内役に、オビにその付き人に任命します。

戴冠式当日です。
ラジ王子はクラリネス王国からの迎えの者が白雪であることに驚いています。再会がうれしすぎて涙ぐんでいます。
ラジ王子は登場の度に変化しています。成長しているということかな。


●51
継承式を執り行い、戴冠式の前にイザナとゼンが話しをします。イザナはハルトの前で、陛下とゼンに懸けて、と言ったことに触れ、ゼンに、
「お前は 今 お前の手にあるものに懸けてそこに立て」
と、ゼンが歩んでいる方向に誤りはないこと、信じていることに自信を持っていい、と力強い言葉をかけます。
ゼンはイザナにより力になれる存在になるべく、気持ちを新たにします。
ハルトがイザナに問いかけ、返答した言葉にゼンが反応したのはこういうことがあるからなんだと分かります。

白雪とラジ王子が一緒に歩いているところを貴族や政務官たちが目撃し、騒いでいます。中でも、白雪をからかったユウハは驚いています。
ユウハは白雪がゼン殿下の名において王宮に部屋を与えられたのは色恋であること決めてかかっていたので、大部屋で白雪を見かけた時にからかったことを悔やんでいるように見えます。
白雪がタンバルン王国の第一王子ラジと個人的なつながりを持ち、タンバルンから称号を与えられるほどの人物で実際に戴冠式の場でタンバルンの王子の横を歩く姿を目の当たりにして、ユウハは全身汗でびっしょりだと思います。
白雪はラジ王子に、
「ラジ王子が… 私と共に出席すると言って下さったのですか?」
とたずねます。
白雪は戴冠式に出席できるとは思っていなかったようで、ラジ王子の案内役として出席できることに感謝しているようです。なぜなら白雪が戴冠式に出席できることになって一番嬉しく思っているのはゼンだということをミツヒデと木々から聞かされていたからです。

美しい戴冠式が執り行われます。


●52
イザナ、ハルト、ゼン、ハキはクラリネスの民に挨拶します。
ハキは王妃になります。ハキはリリアスで原因不明の病が発症した時、兄のマキリから塔に隠れて身を守れてと命じられたのは、妃になる身だったからなのかとこの場面でようやく分かります。
城下は即位とご婚約でめでたいことが重なり、大盛りあがりです。

武風は鹿月とイトヤを連れてウィスタルの酒場でお祝いにまざっています。

城から見る城下はどこも灯りでいっぱいです。
城下を眺めている白雪にオビが話しかけます。
ゼンが白雪を見つけ、少しだけ話しをします。

夜会が始まります。
ラジ王子がなぜ白雪の近くにいないのかと思っていたら、タンバルンの王子とつながりを持ちたいと思う貴族や役人につかまっていて自由にできなかったようです。
白雪も同じです。
タンバルン王国から称号を贈られた人物と懇意にしたいクラリネスの人からたくさん話しかけられています。
ラジ王子が白雪に称号を贈った際に添えられた手紙、軽すぎる、という言葉がどういうことなのかわからなかったので、ここの場面が描かれてよかったです。

夜会を終え、白雪はラジ王子と別れてから、この機会に伝えるつもりでいたことを思い出します。
ラジ王子はタンバルンで別れ際白雪に、
「白雪どのの… 髪が伸びたら見せに来てくれ」
と言い、白雪は、
「ラジ王子が友人として訪ねてきて下さるなら 喜んで」
と言っていた約束が、今回どういうかたちで果たされるのか楽しみにクラリネスにやって来たようです。
ラジ王子は夜会を終え、白雪からは何も言ってこないので、拗ねているようです。サカキから白雪が来ていると言われ、会うと、白雪から約束を言われます。
白雪は髪留めをほどき、すこし伸びた赤い髪をラジ王子に見せます。
「覚えていますか タンバルンでの約束」
「隣国と言っても遠いので、多くは会えませんし 私は称号を贈ったりは出来ませんが 私も友人としての証を果たさせて下さい」
と言います。
ラジ王子は感動しています。望んだ約束が果たされたことはあまりなかったのかな。白雪が覚えていてくれたからかな。どちらかはわかりません。


●53
ゼン、白雪、ミツヒデ、木々、オビ、いつもの顔だけで祝宴をあげます。
白雪はゼンが嬉しそうだといいます。
ゼンはイザナが即位される時、イザナを支えられる者になっていたいという思いがあり、戴冠式の直前にゼンがイザナに言われた思いと自分の思いが重なったような気がして、嬉しいんだと思います。
信頼し、信頼される関係、ゼンがつくりたかったかたちができて、イザナの前に立てたことがどうしようもなく嬉しいんだと思います。

新王に即位したイザナは国をめまぐるしく動かしていきます。
白雪にも新たなる道が開かれます。

薬室は通常の業務に戻ります。
リュウの様子が変です。白雪をじっと見つめています。何か話したいことがあるようです。
翌日、リュウは王宮の白雪のところに向かう途中で、ミツヒデと木々とオビに出くわします。
リュウは薬室では言いにくいらしく、白雪の部屋で言おうと思ったところ、ミツヒデたちに会います。
リュウは、王城の外に移る事になり、白雪に伝えるように薬室長に任されたけど、まだ言ってないから言いにきたと言います。
それを聞いてオビは、リュウと白雪はいい感じに組んでいたのに、とコンビでなくなることを残念がっています。
リュウは、自分だけじゃなくて、白雪も一緒に行くと言います。
ミツヒデと木々とオビはリュウの言葉に驚きます。


●54
リュウは白雪に薬室で辞令の内容を話します。
リュウと白雪は王城を離れ、リリアスに薬剤師兼任研究員として移るというものです。
ひと月後に出発です。

ゼンは次から次にやってくる仕事に大忙しです。
白雪はゼンに会って辞令の件を話したくて、王宮と薬室を行き来します。
しかし、誰とも会うことができません。

オビはミツヒデと木々に白雪のことをゼンに知らせなくていいのかと聞きます。

白雪は王宮に戻ってもまだ誰にも会えません。ようやくミツヒデに会うことができ、辞令の件を話そうとすると、ミツヒデは、
「リリアス行きの事、俺と木々とオビは先にリュウから聞いている ゼンにはまだ伏せてる」
と言います。
ミツヒデは明日から城にいないと言うと、白雪も一度リリアスに行くと言います。
ミツヒデは白雪に明日出発前に連絡するから待っててくれと言います。

オビが薬室を訪れ、ミツヒデが調整してゼンと白雪がゆっくりと話せる時間をとるようにするから、と北で会う約束をします。

ゼンはクラリネス王国北の城ウィラント城でハルトに会います。
盗賊団を壊滅させる命を受け、果たします。
ゼンたちは白雪との待ち合わせ場所に急ぎます。

●55
白雪はゼンに会うと、王城を離れることになったことを話します。
ゼンは白雪の思いもかけない話にぼう然とします。
ゼンと白雪が会った場所からウィスタル城までは数日かかる距離で、ふたりにはゆっくり話せる時間があります。
ゼンは白雪が王城を離れることを考えるとうまく心の整理がつきません。
木々がゼンのところにやって来ます。
「白雪が呼んでるから行ってきてくれる」
木々はゼンに一人で白雪のところに行ってと言います。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 12巻
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2017年12月12日火曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 11巻

●45
朝、ゼンは偶然白雪に会ったので、話したくなって薬草園に立ち寄ります。薬草園に入ると、白雪は鼻歌を歌っていてどこか楽しそうな様子です。
白雪はゼンが入口に立っているのに気がつくと、恥ずかしそうにします。
楽しそうなのはこれからリリアスから客人が来るからなのだと言います。
リリアスから鈴とユズリとキリトがやって来ます。

ゼンは執務室でオビに白雪の話をします。
オビはゼンに白雪のことをあまり話さないようです。
ミツヒデは息を切らしてやって来て、木々はまだか? と木々の姿を探しています。執務室に向かう時に、木々の話を耳にしたので早く木々の姿を確認したいようです。
木々は普段と変わらない様子で現れます。
しかし、ゼンとミツヒデとオビは木々の姿に驚きの声を上げます。
木々は三人の反応を気にすることなくいつものように話を始めます。
ゼンが木々の言葉を遮ります。
木々は長い髪を切り、五年前にゼンとミツヒデに出会った頃のような姿になっています。
オビは木々に髪が長い時ほとんど髪を束ねていたから、おろしている姿をもう一回見ておきたかったと言います。
ゼンはオビに薬室の方顔出していいぞ、と言います。
オビは部屋を出ていこうとすると、ミツヒデに呼び止められます。
二人きりになり、ミツヒデはオビに、
「……木々に恋仲なり意中の相手なりがいるの知ってるか」
とたずねます。
オビは一瞬考え、
「俺です」
と答えます。
オビはゼンは白雪のことは自分の口から聞くより、白雪の口から聞くほうがいいし、ミツヒデは木々のことに対しては自分で気づいてほしいと思っているようです。
ミツヒデは気づくことができるのかな。

鈴とユズリとキリトは王城の何もかもが珍しいようです。
鈴はガラクにいつでも訪ねて来なさいって言ってくれたから観光気分でウィスタルに来ています。
白雪は薬室長が今ちょっと… と言葉を濁します。
キリトはリュウに会うのを楽しみにしています。リュウを見かけ、声をかけます。リュウの反応はありません。
キリトは久しぶりの再会に驚いてくれるか、喜んでくれるか、なにかしらの反応があると思っていたのに、リュウは、
「キリト?」
とキリトが急に目の前に立っていることが不思議だというような表情です。
ガラク・ガゼルト薬室長は様子がおかしいです。仕事が次々に入ってきて終わりがなく、ピリピリしています。
キリトはシダンからガラクの様子がおかしいときの対処法を手紙で預かっています。
おいしいお茶を飲むと穏やかになるというので、体にいい成分で配合したオリジナルのお茶を作ろうということになります。リュウが最後の味付けをして満足のいくお茶が完成します。

薬室に来客を知らせるベルがなります。
白雪が行くと、イザナ王子が立っています。
鈴とユズリは、
「ルーエンさん」
とイザナ王子を呼びます。リリアスではイザナ王子をルーエンと呼んでいたのでそう呼びます。
イザナ王子は薬室長からリリアスの薬剤師が城に来ると聞いたので、挨拶に来たと言います。
鈴はリリアスでもイザナ王子のことを、色男風情とか言っていたのに、ここでも、
「ルーエンさん リリアスだと雪をも従える北の騎士みたいな感じだったけど 王城歩いてるのも様になりそうだね―― お茶 ご一緒にどーですか」
と気軽に話しかけます。
イザナ王子は白雪に、
「――そうだな 白雪 後で執務室に運ばせてくれ」
と言い、
「リリアスでは名乗る間も無く失礼したがルーエンは借りた名だ 俺はイザナ・ウィスタリアという 今後とも宜しく頼む」
と言い薬室を去ります。
鈴とユズリはキョトンとし、間を置いて、ウィスタリア? とつぶやき、ようやくクラリネス第一王子イザナ・ウィスタリア殿下の名と一致し驚きます。
ユズリは白雪にリリアスのときから本物の殿下だったの? と興奮気味に聞きます。
キリトはリュウに信じられないというような表情で、今言ったの本当? と確認します。
問題は鈴です。
鈴はリリアスでのこと、今話したこと、記憶を思い返します。まさか王族が自分達と同じ空間にいるだなんて思いもしないだろうし、イザナ殿下だとわかっていれば絶対に言わなかったのにと後悔しているようです。
鈴はオビに、
「……オビ君 俺 投獄かな?」
と問いかけ、オビは、
「残念ながらね」
と答えます。
鈴はどうして白雪とリュウが王族と話せるところにいるのかという疑問には行き着かないようです。
お茶を飲みながら話がはずみます。
白雪とリュウは鈴がシダンの研究を手伝うことを知ります。
ユズリは白雪とリュウにたまに様子を見に来てと言います。
ガラク薬室長が執務室から出てきます。
ガラクはお茶に気がつき飲みます。シダンの手紙に書いてあるとおり本当に穏やかになります。

あっという間に一日が過ぎます。
白雪はオビにゼン達ともお茶を飲んでと一式渡そうとします。
オビはゼン達を呼んでみんなで飲もうと言います。
白雪は用意しながら、ゼンから木々が髪を切ったと知ります。
白雪は、
「そっか… じゃあもう一回髪下ろしてるの見たかったなあ… でも短くてもまたステキな…」
とオビ同様の反応します。
ゼンは白雪の耳飾りに気がつきます。気がついたのに何も言えません。
オビがゼンを察して白雪に似合っていると言い、その後ゼンが発する言葉を待ちます。
ゼンは白雪に何も言ってあげられません。
ゼンとオビの心の声を想像すると、
「主 今言うときですよ」
「なんと言えばいい」
「なんでもいいんですよ 思ったことを言えばいいんですよ」
「…………」
という具合でしょうか。
ゼンはやっぱり白雪に気の利いた事が言えません。


●46
イザナ王子の元にゼンとの見合いの場の催促がうんざりするほど来ています。
ハルカ侯はゼンに見合いのリストを持参します。
ゼンは断ります。
しかし、ハルカ侯はリストの中のどなたか一人だけでも会って、ゼンが婚姻を放棄していない事を示して頂かねばなりません、と譲りません。
ゼンは見合いを了承します。
ゼンは木々と見合いをします。
リストの中に木々の名前が記されていて、ハルカ侯がどなたか一人というので、ゼンは木々に一芝居付き合ってほしいと頼みます。
木々は断れば夜会が開かれて出なくてはならなくなるので、渋々引き受けます。
ゼンは木々に誰にも邪魔されず話せるいい機会になったので、気になっていた先日の父上に言ったという話について聞きます。
ゼンと木々から少し離れたところでミツヒデとオビが二人を見ています。
オビがミツヒデをからかいます。
ミツヒデはオビの手に乗るかと思っているのに、想像してみると冗談に思えなくなってきて表情が険悪になっていきます。
見合いを終え、ゼンはミツヒデと木々とオビに、前から思っていたこと、白雪の立ち位置を明白にしたいという考えを打ち明けます。
ゼンはオビを連れてイザナ王子のもとへ向かいます。
ゼンはイザナ王子に、白雪に自分の名で王宮内に部屋を与えたいと願い出ます。
白雪はゼンからこの話を聞き驚きます。
ゼンはこのことの意味するところを説明し、白雪は、わかった、と返事をします。

夜になり、ゼンたちのところにイザナ王子がやって来ます。
「ゼン お前に王宮の東の一角をやる そこに王城付薬剤師白雪の部屋を置く事を許そう」
イザナ王子はゼンに鍵を手渡します。


●47
城内はゼン殿下が白雪どのを王宮に迎えるという話題で盛り上がります。
ミツヒデは白雪に説明します。
白雪は緊張しています。
周囲の者は白雪に興味津々です。
その視線は白雪をより緊張させます。
王宮での生活が始まります。

朝、白雪はオビと会話していると、ハルカ侯爵が現れます。
ハルカ侯爵はオビにゼン殿下にお渡ししろと書類を手渡します。そして、白雪を見て、小さくため息をつきます。
「………… 殿下の側に名を置くならば、自分の場所だけで殿下に会うな 知らぬ者に何も映らん」
とハルカ侯爵は不本意ながら、イザナ王子の決定ならば、より良い方法で進めていくべきと、白雪に助言します。

オビが行くゼンのいる大部屋に白雪もついて行くことにします。
オビは大部屋には政務官方や貴族が沢山いる場所だから、白雪が行ったらまず間違いなく蜂の巣だね、と注意します。

白雪が大部屋に一歩足を踏み入れると、中にいる全ての人の視線が白雪に注がれます。
全員作業を止め白雪をじっと観察しています。
その中の一人が、
「薬室からはるばる どなたかに御用ですか? 赤髪の方 寝台に腰かけて待っていた方がお早いのでは?」
と白雪に視線を合わせず言います。
大部屋は騒然とします。
オビの目は殺気を帯びます。
白雪はオビにここで待つように言い、男の方に歩いていきます。
「…白雪と申します お名前は」
男は白雪に挑戦的なことを言ったため引かず、
「……… ユウハと申します」
と何を言われるのか身構えています。
白雪はユウハの言葉に対して何も言わず、ゼン王子はどちらに? とだけたずねます。
白雪は堂々としています。
白雪に構えていたユウハは自分が恥ずかしくなります。
大部屋の奥ではザクラが白雪とユウハのやりとりを聞いて笑っています。
ザクラはゼンに今の様子に怒っていないのかとたずねます。
ゼンは白雪の受け流した対応に感心しています。
ユウハはゼンが近くにいるのにどうして白雪になにか一言言ってやろうと思ったのでしょうか。
まずいことになるとは考えなかったのでしょうか。
愚かな人物です。


●48
ゼンは白雪を途中まで送ると大部屋を出て行きます。
ゼンはユウハに声をかけます。
あえて、ユウハどの、というゼンに、ユウハだけでなく周囲の者も表情を青ざめます。
白雪は今後、貴族や政務官に会うたびこういう目に遭いそうです。

白雪が薬室に着くとヒガタが話しかけてきて、白雪への対応を変えるべきか聞いてきます。
薬室長とリュウは平常通りのようです。

白雪は王宮に部屋を与えられたことでずっと気を張っていたようです。
何をしても話題になってしまう白雪はこれから大変です。


●49
夜ご飯を白雪とオビが作ることになります。
白雪は酒場料理を、オビは辛い料理を作ります。
ゼンが食事中、明日兄上に呼ばれていると言います。

翌朝、ゼンがイザナ王子から陛下が王位を渡しに戻られると言われます。
イザナ王子が王位を継承します。
四ヶ月後、戴冠式が執り行われます。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 11巻
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2017年12月8日金曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 10巻

リリアスでは、イザナ王子は白雪と同行して観察しようとしていたのかもしれません。
急な事態が起こり、対応する姿によって、イザナ王子の白雪の評価は上がったと思います。
混乱が迫ろうとする中、時間との戦いで原因を突き止めていく展開が面白かったです。


●40
ゼン、ミツヒデ、木々はリリアスに到着します。
学問街・薬学の館のオリンマリスによって発症した兵士、研究員はリュウが作った薬で回復します。
白雪とオビも回復します。
ガラク・ガゼルトが白雪とオビの今回の行動に対して叱ります。
ゼンとミツヒデと木々を白雪とオビが迎えます。
ゼンは白雪とオビの顔を見てようやく安心します。
ゼンは白雪が鈴と話しているのを遠目で見て、知らない男に気持ちがざわつきます。
それを見ていたイザナ王子はゼンを茶化します。そして、ゼンに優しい眼差しを向けます。

夜、宴が催されます。
鈴とユズリは白雪に、
「オビさんとルーエンさんとどっちが恋仲?」
とたずねます。
その声にゼンが一番に反応します。
ミツヒデは、ルーエンさんと言われ、なぜ自分が? という表情をし、オビは吹き出して笑っています。
ミツヒデはゼンと木々の冷たい視線にあわてて鈴とユズリに事情を聞こうとします。
白雪がミツヒデに事情を説明します。
鈴はゼンやミツヒデ、木々といった王城の人達が、白雪とリュウがリリアスに来たことによって次々に集まることに疑問を持っています。今まで会うこともなかった王城の人たちだから仕方ないといえば仕方ないですね。
ハキが宴の場にお礼にやって来ます。やわらかい空気をまとった愉快な人物です。
木々がハキに気づき、ゼンに知らせます。
ハキもゼンに気がつき、言葉は交わさず互いに会釈だけします。


別れの日、白雪とリュウはリリアスの人たちとあいさつをします。
ユズリはまたなにかできることがあったら力になるといいます。
鈴はリュウに、
「リュウ君 おチビとか言ってごめんね」
と薬学の館で初対面のときに言ったことを気にしていたようであやまります。
白雪、リュウ、薬室長はウィスタルに戻ります。


●41
ゼンと白雪が二人で城下に出かけます。
二人だけで過ごしたのはこれが初めてです。
ゼンは白雪の笑顔を見ることが出来て、白雪はゼンと一緒に過ごすことが出来て、二人にとって充実した一日になります。


●42
木々はゼンに会うなり、ミツヒデを怒らせたと言います。そして、ミツヒデはゼンにも怒ってると言います。
ゼンは木々が約束の話をしたと言ったので、理解します。
木々はあと一年で城を出ていくという約束を父親との間で交わしています。
ミツヒデは今のゼンと木々という三人のかたちになって五年が過ぎるのに二人が黙っていたことに怒っています。

五年前、木々が王城にやって来て、ゼンとミツヒデと共に行動するようになった経緯が描かれます。


●43●44
木々はミツヒデにどうしてあと一年で城を出ることを黙っていたか話します。
ミツヒデは木々に剣の勝負をして、勝ったら聞いてほしいことがあると言います。
木々は勝負を受けます。

勝負は決着がつかず、ミツヒデは膝をついて木々に城にいてほしいと頼みます。

翌朝、木々は早くにゼンの寝室を訪れます。
木々はゼンの思いを確認し、ミツヒデとともに父親に会いに行きます。
木々は父親に約束をとりやめてもらい、城に残ります。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 10巻
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2017年12月6日水曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 9巻

イザナ王子とオビが大活躍です。

リリアスの物語は描かれていないイザナの動きを想像するのが楽しいです。




●35話

ゼン、ミツヒデ、木々、オビはウィラント城を目指し移動中です。

オビは途中リリアスに立ち寄るつもりのないゼンに不満をもらします。

ゼンもリリアスにいる白雪の顔が見たいのを我慢しているとオビには本音を言います。

リリアスでは、白雪がころんだ少年を医務室に運ぼうとします。

イザナ王子は白雪に守衛を呼んだほうがいいと言います。

白雪はころんだ少年の様子を気にしています。

医務室に運ばれた少年は、体温が下がり、震えが止まりません。

リュウに助けてくれよと言った少年は、すでに友達5人が倒れて同じような症状になっていると言います。

白雪とリュウは少年の言葉に驚き、イザナ王子は黙って聞いています。

守衛から急病人が運ばれたと聞き、シダンが急いで医務室に入ってきます。

シダンは少年を見るなり、

「あー!!!! やっぱりおまえかキリト!!」

少年はキリトと言い、シダンの甥です。

薬学の館でキリトが白雪とリュウに会ったのは、症状の記録と使っている薬を手に入れるためだったようです。

シダンはころんだ少年の腕をみます。

渦のようなあざがうかんでいます。

シダンは同様の症状の患者がこれで六人目であること、原因がまだわかっていないことを白雪とリュウに説明します。

黙ってシダンの説明を聞いているリュウに、イザナ王子が話しかけます。

リュウが声が聞こえる状態でよかったです。

集中していてイザナ王子の声が聞こえていなかったから、イザナ王子はどういう反応をしていたんだろう。

イザナ王子は軽口を言いそうにないから反応が気になります。

守衛がシダンに患者を診療所に運ぶ準備ができたと言いに来ます。

イザナ王子は、

「原因もわからないというのは厄介だな」

と言います。

キリトはリュウになにかわかったか、と聞きます。しかし、リュウにはキリトの声は届きません。

白雪とキリトが話していると、鈴とユズリがやって来ます。

鈴はイザナ王子を見て白雪に、

「そちらの雪も溶けそうな色男風情の御人も王城の方?」

と言います。

白雪は固まったまま何も発することができません。心拍数が上がって緊張しただろうなと思います。

イザナ王子は笑顔で、

「薬室長助手のルーエンだ」

と白雪の代わりにこたえます。

そして、白雪に、

「すまないが用が出来た 白雪 俺はしばらく外す」

と言います。

白雪はイザナ王子の手を引き、人のいないところまで連れていき、

「病の原因がわからない以上できるだけ動かないでいて下さい お一人になるようでしたらついて行きます」

と言います。

イザナ王子は意外だという表情をし、

「関所の方にいる また顔を出す」

と言い、薬学の館から出ていきます。

リュウが白雪に、

「思い出した白雪さん おれ やっぱり あの症状聞いた事がある」

と薬室長から本で読んだと聞いたと言います。

鈴がリュウの記憶からその本があるとするなら、とズラッと並んだ本棚の一角を示します。

白雪、リュウ、鈴、ユズリ、キリトで本を探します。

北へ向かうゼンたちにリリアスからイザナ王子より使者がやって来ます。

夜、片っ端から本をあさり、探していた文献をリュウが見つけます。

文献には事態が悪化した場合、混乱がどこまで広がるか予測できないことを考えさせる記録が記されています。

白雪と鈴とユズリは夜出入り禁止になっている薬学街の門の門番に、関所に行くためここを通してほしいと頼みます。

門番は夜は門は通せない、朝になって出直せと取り合ってくれません。

白雪はウィスタル城の身分証を見せ、

「わかりました 通してもらえないなら …イザナ王子をここに呼んで下さい!」

とつめよります。

イザナ王子の名に門番はひるみます。

鈴は、今なぜイザナ王子の名前を出すの? というような表情をしています。

その時、イザナ王子が門に現れます。

白雪はリュウが見つけた文献に記されている内容をイザナ王子に伝え、

「リリアスの人の出入りを止めて下さい!!」

と言います。

門番は緊張しています。

鈴とユズリは白雪が助手と称しているイザナ王子に話していることに疑問がわいています。

イザナ王子は白雪の要請にを聞き入れ、リリアスの外壁全ての門を封鎖せよと命令します。



●36話

イザナ王子の伝令はリリアスの外壁にある全ての門に通達されます。

イザナ王子は白雪にリリアスの管理者に事情を話すから一緒に来るように言います。

そして、鈴とユズリには薬学の館に戻り、作業を続けるように言い、門番には門は閉じたままにし、必要なものだけ通すよう指示します。

鈴とユズリは助手のルーエンがどうしてこれだけのことができるのか不思議がっています。

彼らは周りの緊張感を感じ取れないようです。

イザナ王子と白雪は馬でリリアスの管理者がいる塔に向かいます。

塔に向かうまでの二人の会話と表情が好きです。

リリアスの管理者マキリはイザナ王子に自分がいない場で外壁の門の封鎖を決断し、通達してしまったことに不服なようです。

イザナ王子は淡々と管理者がマキリだから判断した、異論があれば聞くと言います。

マキリは言葉が出ません。どういう関係なんだろう?

マキリの横にはハキがいます。館の食堂でシダンと立ち話をしていた女性です。ハキはマキリの妹です。

ハキはイザナ王子が昨日命令された調査の報告をします。

白雪は昨日イザナ王子が席を外すと言った理由が分かり、イザナ王子の行動の速さに驚いています。

白雪と門で会うまでにあらゆる指示を下していたのです。

ゼンに使者を送ったもこのときなのかな。

衛兵から、

「兵が一名倒れ… 左足に波紋状のあざが見られると…」

と報告が入ります。

イザナ王子は指示を出し、白雪をリュウのところに送ります。

マキリはハキに連絡の手配をし、塔から出るなと言います。

ハキは、承知しましたとマキリに従います。

イザナ王子のハキを見る表情が気になります。

イザナ王子は馬の蹄の音に気がつきます。門にゼンとオビが来ます。

イザナ王子はゼンにこれまでの経緯を話します。

ゼンはイザナ王子が送った使者の報告から考えられる事態を想定し手を打っていることを報告します。

イザナ王子はゼンを頼もしく思ったようで、ゼンに西は任せると言います。

ゼンはイザナ王子から任せると言われたのはこれが初めてなのではないでしょうか。

すこし間を置いてから返事するゼンを見てクラリネスのため、イザナ王子のため自分に何ができるかをより考えるようになったと思わせます。

ゼンはオビにリリアスに残り白雪と行動するよう言います。

リュウのいる薬学の館ではまた一人発症します。

リリアス外壁の門が全て閉門します。



●37話

イザナ王子はあらゆる事態に備えています。

夜が明け、人が動き出し、マキリが事態を説明します。

白雪たちは少し休息を取ります。

オビが事態の解決のため白雪とリュウに合流します。

オビが問題の糸口をみつけ、病の原因が判明します。

キリトはそれを知っていると言います。



●38話

キリトは、「鈍く光る水」を学問街の奥の林にある洞穴で見たと言います。

鈍く光るのは植物の種が作り出したもので、その種が今回の症状の原因で、治療薬もその種から作り出せることが文献から分かります。

白雪とオビとキリトで洞穴に向かいます。

オビの活躍がかっこいいです。

キリトは途中で発症してしまいます。

白雪とオビは種を発見します。

洞穴の中に発生した霧を吸い込んだため、白雪とオビも動ける時間が少なくなってしまいます。

白雪は館に戻り、リュウに採取した種を渡します。

白雪とオビは種のもとの植物を発見できなかったので、もう一度戻って探します。

オビの能力で別の洞穴にたどり着き、植物を発見します。

そこにシダンがいます。



●39話

シダンは植物を「オリンマリス」と呼ぶと白雪に教えます。

白雪は洞穴の中にシダンがいることに驚いています。

シダンはこの洞穴の中でオリンマリスを偶然見つけて、一年前から生態研究をしているが、この植物が毒素を作ることは知らなかったと言います。

そして、白雪にこの場所のこと、オリンマリスのことを報告しないでくれと頼みます。

オリンマリスが放つ光で、白銀の道々を灯らせたいといいます。

実現できれば、素晴らしい景色になるはずです。

しかし、白雪は、私達は一度でも偽れば、誰の力にもなれなくなるからと報告はするといいます。

白雪とオビとシダンは館に戻ります。館の前ではガラク・ガゼルト薬室長が白雪とオビの戻ってくるのを待っています。

イザナ王子は薬室長にも連絡しリリアスに呼び寄せています。

白雪は薬室長に報告します。

リュウは治療薬が明日にも完成すると言います。

白雪とオビはあとのことを薬室長とリュウに任せて、体を休めるため医務室に向かいます。

途中で、白雪は歩けなくなってしまいます。オビもすでに発症していて立っているのも辛い状態です。

オビが人を呼んで来ようとしたら、イザナ王子がやって来て、白雪を抱え自ら医務室に連れていきます。

ガラク・ガゼルトがいざな王子に報告し、オリンマリスはシダンが研究対象として管理できるようになります。

リリアスの外壁全ての門の封鎖が解除されます。

続きます。



あきづき空太 赤髪の白雪姫 9巻
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2017年12月4日月曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 8巻

●30
白雪がタンバルン王国に行く前に舞踏の稽古に使っていた部屋に行き、ゼンは白雪に想いを伝えます。
兄のイザナ王子にはゼンの白雪への想いをもう言ってあること、白雪の、
「ゼンが好きで… ゼン王子の隣に立ちたいって いつか そこにいたいって…」
という言葉に対してゼンはわかったという意思として、
「ああ」
と答えます。そして、
「いずれ ちゃんとしたこと言葉で必ず俺から告げる」
と約束します。
ゼンと白雪はあとどうなれば実現するのでしょうか。

ゼンと白雪が気持ちを伝え合った後それぞれの日常に戻ります。
ゼンはこれまであまり行きたがらなかったイザナ王子のところに、
「タンバルンの使者の見送りに十四時に出ます」
と報告するためだけに行きます。
白雪はゼンを大きく変えるようです。
何かを決意した表情のゼンを見て、イザナ王子も察知しているようです。

白雪はサカキに会います。サカキは白雪にまだ用があるようです。
サカキは個人的に考えている、白雪をラジ王子の妃にしたいことを白雪に伝え、ラジ王子から託された手紙を渡します。
手紙には白雪に贈った称号について書かれています。
白雪が今後、王族とつながりを持つためには、自分を守るためにも、誰の目にもわかりやすい何かが必要だと書いてます。
ラジ王子は白雪にタンバルン王国と密接につながりがあることを示すとんでもない価値のある素晴らしい贈りものをしたことになります。
これから白雪は、地位の高い人物からタンバルン王国の王族から称号が贈られた人物として、丁重に扱われる存在になります。
何も持たない白雪に心強い後ろ盾になりそうです。

サカキと巳早はタンバルン王国に戻ります。
ゼン、ミツヒデ、木々は途中まで見送ります。
白雪も薬室から用を頼まれて外に出るというので一緒に城を出ます。
白雪はサカキにラジ王子に宛てた手紙を渡します。
別れ際、サカキは白雪にいずれまた口説きますと言い残し去ります。

ゼン一行は城に戻るつもりが雨がきつくなり、どこかで泊まるしかなくなります。


●31
全員びしょ濡れで宿に着きます。
風呂で温まり、食事を摂ります。
ミツヒデが女性とぶつかり、それがきっかけで女性がゼンたちにからんできます。
女性はミツヒデにからみ、ゼンにからみ、オビにからみます。
女性は三人に相手にされず去っていきます。

夜、みんなが寝静まると、オビがひとり出かける準備をします。
ミツヒデが気づき、オビに声をかけると、夜のうちに戻ります、と言い、オビは出かけていきます。

食事の時からんできた女性がオビを待っています。
女性はオビと知った仲だったのです。
女性はオビに用があって、ゼンたちのいるテーブルにやって来たようです。


●32
女性はオビに仕事を手伝ってほしいと言います。

仕事を終えると、夜が明けていて、ゼンたちがオビを探しに来ています。
ゼンはオビに怒っています。
白雪は女性とオビのケガを手当をします。
オビはゼンたちがいる場所が自分の帰る場所であると決めたみたいです。


●33
白雪は用を済ませ城に戻ります。
リュウのところに行くと、研究室が資料と薬品でゴチャゴチャしています。
リュウは出かけることになるから、出かけるまでやれるだけやっておこうとしていると言います。
薬室長は、白雪とリュウに北にあるリリアスという地の調査のため出張を命じます。

ゼンは書庫で王国北部の文献を調べています。
夜、イザナ王子がゼンの執務室を訪れます。
イザナ王子はゼンに城を空けるから仕事をいろいろまわしておいたと言い、ゼンが王国の北部の文献を調べていることについて聞きます。
ゼンはこっそりイザナ王子がこれから行うであろうことの下調べをしておくつもりだったのに、イザナ王子に指摘されてしまいあせります。
イザナ王子はゼンと白雪の状況を聞き、近いうちに自分は妃を迎えると打ち明けます。
自分の婚姻が決まれば、王族と関係を築くために次はゼンに対象が変わるといいます。ゼンの今後に期待のすべてをかけるようになると言います。
ゼンは白雪を置いていく気はないと言います。
イザナ王子はゼンに、
「俺をお前と白雪の辿る道の味方につけてみろ」
と言い、ゼンのとるべき道を示します。

それからゼンはイザナ王子と酒を飲んで、飲みすぎたようで翌朝、起きることができません。
薬室からゼンの寝室に白雪が派遣されます。
白雪はゼンにリリアスへ行くことを伝えます。
ゼンは白雪にイザナ王子をどう思うかたずねます。
白雪は、
「いつか この国に来て良かったなって言って頂きたいかな」
とこたえます。

イザナ王子は雪が降っている場所にいます。リリアスにいるのでしょうか。
白雪とリュウはリリアスに向かいます。


●34
しばらくしてゼンはイザナ王子が王国の北の城ウィラント城に行ったと知ります。偶然にもゼンが北部の資料を調べている時だったのに、イザナ王子がゼンに何も話すことなく北の城に行ったと知り、兄に遊ばれていると、ゼンは怒りをミツヒデにぶつけています。

白雪とリュウはクラリネス王国北部リリアス天幕・学問街に到着します。ここは多分野の知識が集まることから、クラリネス王国の北の書庫と呼ばれています。
白雪とリュウをユズリという植物採集家が迎えます。
薬学の館で宮廷薬剤師が来たと、白雪とリュウは学者たちに注目されます。
薬学の館にいる学者たちは赤い髪の娘と少年が立っているので、ガラク・ガゼルトではなかったことにがっかりしてます。
ガラク・ガゼルトとは薬室長のことです。
学者の中のひとりがリュウを見て、
「そっちのおチビは王国最年少薬剤師の有名人じゃないか」
と言います。
学者たちはそれを聞き、リュウをガラクの弟子だとか、研究の助言を書面でもらったことがあるとか、論文がたくさんあるとかで騒いでいます。
リュウは人に囲まれるのが苦手で、うんざりしてその場から逃げ出します。
白雪がリュウを追いかけると、リュウは体力がないのでそう遠くないところで力尽きています。リュウのもとに駆け寄ろうとする白雪に少年がぶつかり、白雪は倒れてしまいます。
少年は、ごめん、と言い走っていきます。そして、しゃがみ込むリュウに、
「おい おまえっ どうした? 寒いのか!?」
と声をかけます。
リュウは、え、と言います。
白雪は、今のは何? 、という表情です。
少年はリュウのおでこに手をやり、体温を気にします。
守衛がやって来ます。少年に、子供は立入禁止だ、と注意します。
守衛はリュウにも注意します。
白雪は守衛にリュウがウィスタル城より派遣された宮廷薬剤師だと言い、入館証を見せます。
少年は自分と同じくらいの年齢のリュウが王城の薬剤師だと言うのを聞いてびっくりします。そして、納得すると、
「…… …よっしゃ」
とボソッと言います。
少年は守衛に連れ出されてしまいます。
少年の行動が不思議で白雪とリュウは顔を見合わせ、なんだったの? 、と目で話しています。

白雪とリュウはおなかが空いたので、ユズリの案内で館内の食堂に行きます。
食事をしていると、さっき、リュウを見て最年少薬剤師と言った男性が声をかけてきます。
ユズリが彼を紹介します。彼の名は鈴でリリアスの薬剤師だと言います
ユズリは少し離れた場所で立ち話をしている、シダンという常駐でリリアスの人々を診ている薬剤師も紹介します。
シダンと話している女性がが白雪たちに手を振っています。ユズリは彼女はハキといい、時々リリアスあたりに視察に来ていると、白雪に教えます。
白雪はリリアスの薬事の報告が王城にあがってこないので、状況を調べに来たとユズリと鈴に話します。
鈴は、
「この辺の研究って北方独特のものが多いから 研究者があんまり情報開示したがらないんだよねー まー調べたきゃガラク・ガゼルトの名前をふりかざしちゃえば早いんじゃない」
と言います。
白雪は薬室でのガラク・ガゼルト薬室長しか知りません。どれほどすごい人物なのかこの地で知ることができそうです。
白雪とリュウはいろんな人にあたって自分達でまとめてみようということにします。

夜、リュウはもっとしっかりしなくちゃと思うと白雪に言います。頼りないと思われたくないようで、リュウも心に変化が生じてきています。

翌朝、白雪とリュウが調査を始めていると、守衛から呼び出しが入っていると言われ、指示された部屋に行きます。
ノックをすると、入りなさいと声がきこえ、扉を開けるとイザナ王子が立っています。
イザナ王子は、
「やあ」
と白雪とリュウに言います。
ふたりとも目を見開いて驚いています。
イザナ王子は、
「俺も驚いたよ 立ち寄ったら宮廷薬剤師が来ていると聞いてな。 ちょうどリリアスを見ていこうと思っていたところだ 身分を伏せるからあなた達に同行している事にしてくれ」
と言います。
白雪とリュウはさらに驚きます。
イザナ王子はさらに、
「何がいいだろうな リュウ きみの助手という事にしようか」
と話をすすめます。
リュウは畏れ多くて顔から血の気が引いています。首を横に振るのが精一杯です。
「嫌か ではガラクの助手と名乗ろう 名前は…… ミツヒデの名でも借りるか 今からはルーエンと呼ぶように」
白雪とリュウは拒否できそうにありません。

イザナ王子を見つめる白雪は、会うのはタンバルンのサカキがやって来て以来だと思い、その時イザナ王子に言われたことを思い出します。
イザナ王子は白雪の様子を感じとり、白雪に、
「何か用か? 宮廷薬剤師助手のルーエンに」
と話しかけます。
白雪は言葉につまり、イザナ王子の意図を読み取ろうとします。ここでいうべきことではないと思い、
「クラリネスのイザナ王子に いずれ」
とだけ答えます。
そして、白雪はリュウに、
「…リュウ 私もです。 もっとちゃんとしないと」
と気持ちを引き締めます。
窓越しに雪玉が投げつけられます。
窓の外を見ると昨日の少年です。
でてこい、と書いた画用紙を掲げて、白雪たちが出てくるのを待っています。
言われるまま外に出ると、少年は、
「見てほしいものがあるんだ」
と少年が言い終える前に、一緒に連れてきたもう一人の少年が何もないのにころんでしまいます。
ころんだ少年は、
「たてない」
と言います。
白雪はころんだ少年に話しかけます。
ころんだ少年を見た少年は、
「……っ まただ…」
と言います。
少年の言葉にリュウが反応します。
少年はリュウに、
「なあ 助けてくれよ」
と言います。

ウィスタル城ではゼンは執務に忙しくしています。
ミツヒデはイザナ王子から任された仕事の中に手紙を見つけます。
(ここまでの仕事が片付き次第 すぐ発つように… 北のウィラントで待つ)
ゼンたちも北へ向かいます。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 8巻
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2017年12月2日土曜日

ななじ眺 ふつうの恋子ちゃん 5巻

夏目恋子はみんなの前で、勢いで二宮剣に告白します。
しかし、剣には恋子の告白は伝わりません。付き合ってください、に対して、どこに? と言ってしまいます。
恋子は気弱になります。剣と両想いじゃないかもしれないとさえ思い始めます。


恋子は部屋に戻ると、辻ちゃんに話しかけられます。
辻ちゃんが恋子に話したことは恋子に自分を見つめ直すきっかけをくれます。
恋子は、何かのために、誰かのために、必死になることなんてなかったかもしれない、もう少し、いや、もっと頑張ってみようと思い直します。


翌日、恋子は朝食で剣を見て、「ふつう」をやめて目一杯頑張る決意をします。
決意したものの、剣と話ができず、修学旅行最終日になります。


関門海峡の海底トンネルで、県境をまたぐところでいろんな人が、九州! とはしゃいでいます。
恋子は自分も剣と県境に立って、九州! ってやりたいと思うけど、声をかけることができません。
班のみんあで海底トンネルを出て、関門橋をバックに写真を撮ろうということになります。
恋子の隣には剣が立っています。恋子は剣が隣でラッキー、とほんとうにささやかなことでうれしそうです。
恋子はフッと肩に何かを感じます。剣が恋子の肩に触れるか触れないかくらいで手を添えています。
恋子は写真を撮るのに剣が隣でラッキーと思っていたのは、そうではなくて、自然を装って隣に立ってくれたんだと思い直します。
写真を撮り終えて、恋子は剣を呼び止めます。そして、
「九州~! ってしたかった… ふたりで」
とありったけの勇気を出して言います。
剣は班のみんなに、
「あのさ あ えと あ! 落とし物したみたいで 先に行ってて…」
と恋子に気づかって言おうとすると、恋子は、
「もういいよ 気 使ってくれなくていい 隠さなくていい ふつうじゃなくていい」
と涙ぐみながら言います。
剣は恋子の表情を見て笑顔で班のみんなに、
「みんな 悪い ふたりになりたい」
と言い直します。


恋子と剣は、海底トンネルに戻り、二人で県境に立ち、
「せーの 九州!」
と言います。剣がご希望にそえましたか?と言うと、恋子は恥ずかしさにクラクラしています。
恋子と剣は互いの思いを同時に口にします。二人は思いも伝えるタイミングも同じです。
そして、剣は、
「オレと付き合ってください」
と言います。恋子は、
「よろしく お願いします」
と言います。ついに思いが通じ合います。


班に戻ると、みんな二人を祝福してくれます。


恋子は剣に、剣は恋子にお土産を買い合います。おそろいのケータイストラップをつけます。
剣は、
「記念に」
と言い、恋子は、
「覚悟の証です」
と言います。
恋子は人目につく物をおそろいにして、平和じゃない世界に飛び込む覚悟をしたようです。
剣のファンの中には、泣きじゃくる子、恋子に敵意むきだしの子が現れます。


恋子は帰宅すると、姉の愛子に事実確認されます。
母親は恋子の手をとり、
「でかしたぁー!!」
と娘をほめます。


翌日。
「ふつう」じゃない恋子が始まります。
スキンケアは念入りに、髪も根元から濡らしてブロー、自分内ベストを目指します。
玄関を出ると、剣が立っています。剣は恋子が出てくるのを待っています。
母親も愛子も出てきていて、剣は報告と挨拶をします。
学校までの道、とくに会話はなく、へへっ、ははっ、と声を出す程度のやりとりです。互いの照れくささが伝わってきます。


学校に着くと、たくさんの視線が恋子と剣に注がれます。
恋子はこの視線の何割くらいが悪意の視線かなと考え、始まったばかりなのにもうめげそうになります。
恋子に聞こえるように悪く言う子もいます。
「ふつう」を捨ててでも叶えたかった剣との恋。そう簡単に負ける訳にはいきません。
恋子は剣の彼女であるためにもっと頑張らなくては、辻ちゃんに相談します。
辻ちゃんは恋子の相談の内容が理解できません。
恋子が説明しても、辻ちゃんは、つるちゃんは今の夏目さんを好きになったんだから変わる必要はないと言います。
恋子と辻ちゃんの会話を盗み聞きしていた剣も入ってきて、
「そのままでいて」
と言われます。
恋子は頑張ろうとしているのに、そのままでいてと言われ、やる気にさらに火がつきます。
恋子は見た目の強化にさらに力を入れます。


翌朝、迎えに来た剣が恋子を見てほめます。
ほめられているのに、恋子はひねくれて受け取ります。


学校で佐藤くんに声をかけられます。
恋子はあまりにも何も思わないことにびっくりします。


恋子の頑張る熱はすこしの間続きます。
そして、元の見た目の恋子に戻っていきます。
頑張るというのは恋子の中でちょっとしたブームだったようです。


剣だから揺れまくる恋子がかわいいです。
続きます。


ななじ眺 ふつうの恋子ちゃん 5巻
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2017年11月30日木曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 7巻

白雪はこの先クラリネス王国でゼンとどうありたいのか。
白雪の心は決まります。



●26話
海の鉤爪を壊滅させ、頭を捕らえ一件落着します。
ようやく白雪が自由になります。
鹿月に背中を押され、山の獅子の頭がゼンに、
「村で休んでいかねえか」
という声に白雪が視線を向けます。
山の獅子の頭を見て白雪が、
「……!!! とっ… 父さん…!?」
と、驚きの声をあげます。
山の獅子の本拠地に到着し、山の獅子の大将武風(ムカゼ)は白雪の父親だということが明らかになります。
まさかの展開です。
たしかに髪の色が白雪と同じっぽいです。

木々がミツヒデに、
「心配 どうもね」
と言います。短い言葉にたくさんの思いがこもっていることがわかります。
ミツヒデと木々の少ないやり取りが好きです。

鹿月が白雪をさらった理由が明らかになります。
鹿月は、
「ここで一緒に暮らすわけにはいかないかな」
白雪は、
「ごめんなさい」
「私は……クラリネスにいたいんだ」
即答で、自分の意志を明確にします。
武風との再会を終えると、白雪はオビを探します・
ゼンと再会し、海の鉤爪を捕えて、一安心した時点からずっと白雪はオビを探していて、みつけられないでいます。
白雪はようやくオビに会えます。
オビの表情はいつになくまじめです。そして、
「ごめん」
2度白雪に言います。
白雪は言葉を遮ろうとしても、オビはそれさえも受け入れることなく、自分の責任だと断固として譲りません。
白雪は何を言ってもだめだというオビに、これからのことを話します。

オビは白雪の、
また次もオビがいい
という言葉に意表を突かれます。
白雪はオビに責任はないよというための最善の方法で、オビの肩から重いものを取り去ったのです。

宴が盛大に行われます。
ゼンと武風が面白い会話をしているのを白雪が聞いてしまいます。
白雪の顔は真っ赤です。

タンバルンの城に着くと、到着を聞きつけたラジ王子は待ちかねていたようで、息を切らして、出迎え、白雪を見てようやく安心した表情になります。

城ではもう一度夜会を開く準備ができて、当初の目的も果たされます。

ラジはもう一度会いたいと素直に言えなくて、白雪に、
「白雪どのの… 髪が伸びたら 見せに来てくれ 今度は切らずに」
と言います。
白雪は、
「ラジ王子が友人として訪ねてきて下さるなら 喜んで」
と返します。
ラジ王子は次に会うまでになんとしても頑張って成長しなくてはと心に誓ったと思います。


●27話
ゼンは城に戻り、イザナ王子に帰還の報告をします。
白雪は薬室長に挨拶し、すぐに通常の業務に戻ります。
リュウは白雪が戻っているのに気づいても、特に反応もなく普段通りです。

数年に一度、市民に王城の一画を開放する行事、王城開放日がやってきます。
ゼンは兵舎を訪れ衛兵たちに声をかけます。衛兵たちはゼン王子が直々に兵舎にやって来て言葉をかけていることに驚きます。
初めて見る王城開放日のにぎやかさに白雪は、城がいつもいる場所ではないように思えています。
白雪がゆっくり歩いていると、衛兵がゼン王子の話をしています。知らない人がゼンの話をしているのも初めて耳にすることです。
白雪は自由にゼンに会いに行ったりすることはできないみたいです。
ゼンは衛兵の格好をして、普段は見られない城内の仕事ぶりや市民の様子を見てまわっています。こうして歩いていると、もしかしたら白雪に会えるのではないかとも考えていて、本当に白雪を見つけ話ができてうれしそうです。
白雪はゼンの言葉に、タンバルンでのことを思い出し顔を赤くします。
白雪はゼンと別れると、オビがやって来て、
「主の出番もうすぐだから」
と白雪を呼びに来たと言います。
オビの案内で連れられて来た場所から、バルコニーに立つゼンがよく見えます。
白雪は民衆の声に応じて、手を振る王族としてのゼンを初めて見ます。
オビは王族のゼンと普段接しているゼンは別人なんじゃないかと言います。
白雪は触れられるところにいるゼンと、本当の自分との距離を感じます。

ゼンは役目が終わると城内を歩くつもりらしく再び護衛服姿に戻ります。
オビはゼンにバルコニーで立っているところを白雪と一緒に見ていたと伝えます。
リュウがやって来ます。白雪を探していると言い、オビが白雪を連れてきます。
リュウは白雪に外から来ている劇団の中で怪我人が出ていて、一緒に来てほしいといいます。ゼンとオビもついていきます。

劇団員の控室に入ると役者二人が足首あたりを痛めたと訴えます。このあとまだ出番があるから痛み止めがほしいと言います。
役者の二人は王城で演じることで広がる可能性を口にします。
リュウは患部を診察すると、舞台に立つのは無理だと判断します。
白雪は処置しようと、かぶっていたフードをとり髪を束ねます。
劇団の人たちは白雪の赤い髪に目がとまります。
役者を手当てしている白雪に劇団の座長が代役として舞台に立ってほしいと頼みます。
白雪は拒みます。
劇団員はあきらめず、矢継ぎ早に白雪にお願いします。
劇団員と白雪のやりとりを見ているオビはゼンに白雪がまだ目立つ場所に出たくないようだと話します。
白雪は髪を隠すことを条件に舞台に立つことを了承します。

演劇をミツヒデと木々が見ています。姫役の芝居を見てぎこちない感じがする、とよく観察してみると役者が白雪であることに気がつきます。
劇団の座長は白雪の赤い髪は、観衆に大きな反響を得られると感じていて、白雪の相手役の演者にヴェールを奪うように指示します。
ゼンは座長の様子に気づき、オビに指示を出します。
ゼンは舞台に立ち、ヴェールをとろうとする役者から白雪を守ります。

舞台を終え、白雪とゼンは二人で話します。
ゼンは白雪が二人でいる時の様子がおかしいことに気づいてます。
白雪はゼンと二人になると、
「惚れてるよ」
と白雪の父武風に言っていた時のことを意識せずにいられない、なんてとても言えません。
白雪はゼンに、タンバルンで助けられたこと、そして、今日また助けてもらったこと、それらに対して何か返したいと思っています。
ゼンはただ白雪が笑顔でいられるようにしていることだ、と言います。
白雪はゼンに感謝の気持ちを伝えたくて、ゼンの左手の甲にくちづけします。
「来てくれて ありがとう」
笑顔でゼンに言います。
ゼンは白雪のぎこちなく伝える気持ちに顔を真っ赤にします。こんなこと誰にもされたことがないので動揺しています。


●28話
ある朝、白雪とオビは歩いていると、ミツヒデに声をかけられます。
ミツヒデはゼンが王城開放日からぼーっとしていることがよくあって気にかかるので、白雪に何か知らないかと尋ねます。
白雪は心当たりがありません。
話していると、メイドが慌ててミツヒデと白雪のところに来て、
「わっ… 私達の不注意でゼン殿下がお怪我を…っ」
と一緒に来てほしいと言います。
白雪はびっくりし、ミツヒデは顔が青ざめています。

ゼンのぼーっとしている原因は白雪です。
白雪がゼンの手の甲にくちづけしたことを何度も思い返しています。
ゼンの頭の中は白雪のことでいっぱいです。何も手につかなくなっています。注意力も落ちていて、メイドが上から落とした布にも気づかず、頭から布をかぶり、首を痛めてしまいます。
ミツヒデは大丈夫たというゼンを疑っています。
ミツヒデは薬室長を呼びに行きます。薬室には誰もいなくて、探していると薬瓶が身体に触れ、割れてしまいます。割れて瓶を片付けていると入っていた液体が発するにおいを吸い込んでしまいます。

ゼンの元に戻ってきたミツヒデの様子が変です。
薬室長はミツヒデが催眠作用のある薬をかいでしまったと言います。
その薬のにおいをかぐと、普段深く持っている一面が助長されて前面に出ている状態になると言います。
ミツヒデはゼンへの忠誠心が特に強くあらわれた状態になっています。
ゼンはその状態のミツヒデが言った言葉に引っかかります。
木々もミツヒデの言葉に反応します。
白雪はゼンにぬり薬をぬって処置します。

夜、白雪はミツヒデがかいだ薬をつきとめるため本を調べます。治療薬をつくる気でいるようです。

翌日、ミツヒデの様子に変化はありません。
ゼンは執務をこなす傍らに控えるミツヒデの様子が気に入らないようです。
夜、ゼンは白雪のところを訪れます。
ゼンは白雪に自分の考えを話します。
白雪はゼンに、ミツヒデは欠くことができない必要なひとなんでしょう、と言います。
ゼンは白雪にミツヒデを直してほしいと頼みます。

ミツヒデは白雪から手渡された薬を飲む前、白雪に自分の思いを話します。
白雪は進むべき方向を決めなくてはいけないと思い始めます。


●29話
タンバルンから使者がやって来ます。
白雪は見習い課程を修了し、正式な宮廷薬剤師となります。
タンバルンからの使者として来たのは巳早と第一王子側近のサカキです。
サカキは白雪に用があって来ています。
白雪は城に行くとゼンが待っています。自分に何の用事があるのかわかりません。
イザナ王子も来ています。
サカキはラジ王子の名代で来たと言い、クラリネス王国白雪どのにタンバルン王国より”王家の友人”の称号を与える、というラジ王子の言葉を伝えます。
なんのことかわからない白雪は、称号という言葉で思い当たることを探します。
白雪が海の鉤爪に捕えられ、船の上でラジ王子が、
「貴様らが手を出した赤髪の娘はこのタンバルンで唯一人 ”王家の友人”の称号を与えられた者だ!!」
と警告を発したことを思い出します。
サカキはラジ王子が白雪をタンバルンの国賓として扱いたい言い、国王が認めたと言います。
サカキが退いた後、イザナ王子は、
「”王家の友人”とはね……」
とつぶやき、声を出して笑います。
イザナ王子はゼンが連れてきた白雪の見せる変化に興味を持ち始めています。
イザナ王子は以前白雪に言ったことを改め、タンバルンが白雪に与えた称号によって、ゼンと友人であると言っても問題はないという姿勢に変わります。そして、白雪にゼンとどうありたいか聞いてみたいと言います。

白雪はミツヒデに言われ、イザナ王子に言われ、この先のことをゼンに告白します。白雪の心は決まります。
ゼンも白雪に自分の思いを伝えようとします。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 7巻
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2017年11月28日火曜日

ななじ眺 ふつうの恋子ちゃん 4巻

夏目恋子はいよいよ気持ちに余裕がなくなってきています。
姉愛子を二宮剣が女の子扱いし、愛子がかすかに反応しているのを恋子は見逃しません。
恋子はとっさに、
「こいつ あげないよ」
と愛子に牽制します。でも自分の口からでた言葉にびっくりもします。
剣は恋子の言葉を頭の中で繰り返して喜んでいます。


恋子はバイトを終え、帰ろうとする恋子を引き止めて、さっき言ったこと忘れて、と言います。
剣は、
「…いいよ 夏目さんので」
と照れながら言います。
もう相手を気持ちはつながっているのも同然なのに、ふたりは核心には触れず、話題を変えます。あと一歩が歩み出せません。


翌日、学校の下足室で二人は会います。
剣はまわりを見渡し、誰もいないのを確認して、恋子に小声で、
「おはよ」
と言います。
恋子はそんなふうにする剣を見るだけでドキドキしています。
「同じクラスなんだから 挨拶ぐらいはもうアリなんじゃないの」
と恋子は剣にまたかわいくない言い方をします。
剣はそれすら楽しそうに、
「あ そか! おはよ」
と言います。
恋子の体温は上がり、朝から大変そうです。
恋子は剣に対して「ふつう」でいられないことを認めてしまいます。


もうすぐ修学旅行です。
先生は自由行動の班決めを行うと言います。
班は好きな者同士で組むのではなく、出席番号順に強制的に決められてしまいます。
幸運にも恋子と剣は同じ班になります。
恋子と剣は心の中で、神様ありがとう、と叫んでいます。
同じ班になった女の子は剣と仲がいいようで、恋子は心がザラザラします。


学校で剣と話さない恋子は、もの足りなさを感じます。もう見てるだけじゃ足りないようで、なにかメッセージを送ろうと考え、桜の写真を送ります。
すぐに剣から、どこ? とメッセージが返ってきます。剣が会いに来てくれます。
恋子はうれしいやら、申し訳ないやらで、ゴニョゴニョ言っていると、剣は、
「なんか 夏目さんが足りなくて」
と言います。
恋子は剣と気持ちが同じだと思い、少し素直に自分の気持を明かします。
他愛ない会話が続きます。どうでもいいことを話しているのがとても楽しそうです。
話していると、剣は呼び方について恋子に言います。
剣は夏目さんじゃなく恋子ちゃんと呼んでみます。
恋子はあんたじゃなく、二宮くんでもなく、剣くんと呼んでみます。
二人は恥ずかしそうに何度も互いの名前を呼び合います。
足りなかったものが満たされただろうなと思います。


恋子は剣のことを学校で何の照れもなく剣くんと呼べるよう練習します。
恋子は眼の前にいると意識しすぎて剣のことを剣くんとは呼べません。
剣も恋子のことを恋子ちゃんとは呼べません。
下の名前で呼べないまま、時間が過ぎていきます。


修学旅行前日、親睦会をしようということで、班になったみんなでお菓子を買いに行きます。
みんなでスーパーに行くと、剣の母親とバッタリ出くわします。
恋子は剣の母親に対して誰よりも緊張しています。
恋子は剣の母親と話せず店を出ます。
帰り道、剣は恋子に、
「…そのうちさ うちにおいで その頃には『彼女の恋子ちゃん』って紹介できたらいいなぁ」
と言います。剣はみんながいなければ、母親に恋子を紹介したかったんだろうな思います。
恋子が剣の母親に紹介される日は来るのかな?


修学旅行です。
新幹線で移動中、恋子と剣は、ほとんど同じような気持ちになっているというのに、なんで私たちは付き合ってないんだ? と思っています。
行く先々でも考えていることは同じです。


お風呂からでると、剣は恋子を先輩に教えてもらった二人きりになれる場所に連れていきます。
恋子と剣はいい雰囲気になるのに、先生に見つかり叱られてしまいます。
剣のファンは剣に恋子との関係を聞きます。
剣は恋子のことを考えて、友達だと弁解します。
恋子は剣の言ったことを否定したくて、みんながいる前で、
「剣くん 付き合ってください」
と勇気を出して言います。
剣はどうするのでしょうか?
続きます。





ななじ眺 ふつうの恋子ちゃん 4巻
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2017年11月24日金曜日

羽海野チカ 3月のライオン 13巻

●chapter. 127 遠い花火
林田先生はあかりに一目惚れしています。去年、将科部の夏の自由研究で行った流しそうめんに川本三姉妹を招待してからです。
夏まつりであかりが倒れそうになったのを支えてからは、もう頭の中はあかりのことでいっぱいになっています。
あかりが倒れそうになったのを支えたのは林田先生だけではなくもう一人います。島田です。
島田はあかりが倒れそうになるとき、二の腕をギュッと握って支えたのを林田先生は見ています。
林田先生は島田とあかりを取り合いになれば勝ち目はないと思っています。
林田先生にとって島田はずっとヒーローだったのです。
将棋で島田が勝てば誇らしく思い、負ければ気持ちを切り替える言葉を探したりと、勝手に親近感を覚えています。
島田があかりを狙っているかもしれないし、そうでないかもしれない、どっちかはわかりません。だた、はっきりしているのは、林田先生は何もしなければ、いつか誰かに奪われてしまうということです。
林田先生は勇気を出して、あかりが手伝う、美咲おばさんの銀座の店に行ってみることにします。

林田先生は入口まで来てはみたものの、なかなかドアを開けられません。
「入らないんですか?」
林田先生は声にびっくりします。島田が隣に立っています。
同じ日の、同じ時に、偶然島田と再会したことについて、良かったのか、悪かったのか、林田先生は自分がいないときに、あかりと島田が会って、知らない物語が始まってしまうことを考えたら、勇気を出して銀座に来てよかったと思い直し、店の扉を開けます。


●chapter. 128 銀座
店には美咲と会長がいます。
会長は島田がようやく来たと言い、美咲は林田先生に、
「ホントに来てくださったのね」
と言い、
「あかり~ ご指名よ~」
と言います。
林田先生は、銀座の店でご指名なんて、と気が動転します。
美咲は、
「なぁんてねっ うそうそっ☆ うち そーゆーの無いから 大丈夫 大丈夫」
と林田先生をからかうために言ったのです。美咲おばさんにとって林田先生はからかい甲斐がありそうです。
奥からあかりが出てきます。
「まあっ 先生っ そして 島田さんもっ 来て下さったんですか? 嬉しい この間は本当にありがとうございました」
銀座で見るあかりは普段の姿とは当然違っていて、林田先生はとても自分があかりに似合う男になれそうもない、と傷心したかのような気持ちになってしまいます。
林田先生の記憶はそのあたりから途切れてしまいます。
意識が戻ったのは翌日の昼、島田の家の居間です。
桐山が島田の家に来ていて、林田先生に、
「先生… ぼく 今 猛烈にアキれてますよ?」
と言います。
林田先生は桐山にも銀座に行って酔いつぶれてしまったことを知られてしまいます。とても恥ずかしそうです。


●chapter. 129 風の2万空里 1
8月。新聞社の棋戦、東陽トーナメントが行われます。
持ち時間は1人1時間、使い切った後は1分の秒読みという短い持ち時間が特徴です。
桐山はAブロック、二階堂はBブロックです。二人が当たるのは決勝になります。
二階堂は、
「桐山!! お前 途中で絶対負けんなよ!? 俺たち決勝で絶対会うんだかんな!!」
とやる気に満ちています。
二階堂は櫻井七段との対局に勝つと、次は宗谷名人と当たります。公式戦で宗谷と対局できる可能性がありうれしくてたまらないようです。

林田先生は野口先輩に愚痴を聞いてもらっています。
島田の家で目覚めた林田先生は銀座の店で勘定を支払っていないことに気がついて、島田に幾らでしたか? と聞くと、
「ま、次は先生のおごりって事で」
とかっこよくこたえたことを、野口先輩に言います。
野口先輩は林田先生にとっていちばん大切なこと、あかりさんが酔っ払ってしまった林田先生を見てどう思ったんでしょう、とずばり聞きます。
林田先生は、生徒の野口先輩に、どうしたらいい? と聞いてしまいます。覚えていないだけに、あかりに会いに行きづらいだろうなと思います。


●chapter. 130 真夏の底
あかりは前日美咲の店で片付け終わって、帰宅したのが1時過ぎで、お風呂に入って寝たのが2時半くらいで、朝7時に朝食の用意をして、三日月堂でドラ焼きを包んでいます。
あかりは寝ていません。
おじいちゃんはあかりの体を気づかい、モモのお迎えまで横になるよう言います。
あかりは笑顔で作業しているけれど、睡眠不足のため小さな失敗をたくさんしていたでの、睡眠がとれてホッとしています。
あかりは横になると、夏まつりのことを思い出します。
あかりの記憶がよみがえります。あかりが男性に対してどういう感情を抱いているのか少しわかります。あかりの男性に対する感情は両親が強く影響しています。男性を好きになることは恐怖でしかありません。でも、林田先生と島田に支えられて触れた体温は温かくて、その温かさに支えてもらいたいという気持ちもどこかで抱いています。


●chapter. 131 風の2万空里 2
二階堂は宗谷名人と対局するためには、目の前の相手である櫻井七段に勝たなくてはいけません。
宗谷と対戦する夢を見た二階堂は気力があふれています。ずっと憧れ追いかけてきた人と戦う機会がやって来て、なんとしても、宗谷と対局し、二人だけの時間を体験してみたくてたまらないようです。


●chapter. 132 風の2万空里 3
二階堂は宗谷との対局を実現するため、櫻井七段との対局は作戦を持って挑んでいます。
二階堂の作戦はバッチリはまったようです。

宗谷と対局しているのは田中です。
田中はスミスに心の声で話しかけます。最高の笑顔で、
「全くもって歯が立たん!」
と負けが確定しているようです。

二階堂は形勢が変わることなく、そのまま突き進み、103手で櫻井七段に勝ちます。
いつになく、二階堂は興奮しています。思い通りの将棋ができて興奮しすぎています。
島田は勝ち、桐山は負けてしまいます。
二階堂はいよいよ宗谷と対局です。


●chapter. 133 風の2万空里 4
宗谷は二階堂の一番得意な戦法に誘います。
二階堂は宗谷が自分の得意な戦法をちゃんと調べて来てくれたことに感動し、誘われた通り、得意な戦法で挑みます。
スミスは田中と心の声で会話ができるようになっています。
宗谷も久しぶりに駒音がきこえてきて、二階堂との対局を楽しんでいます。


●chapter. 134 風の2万空里 5
滑川は宗谷の追っかけだということがわかります。
滑川は二階堂と対局する宗谷の表情に顔がほころんでいます。
滑川だけではありません。
桐山もスミスも重田も、対局する宗谷の表情を見て、それを引き出すことができた二階堂に嫉妬しています。
勝ち負けと同じくらい大切なことがある将棋の世界がおもしろいです。

二階堂はこれまでで今一番いいと自身で手ごたえを感じられるほど調子がいいです。
この一番いい場面で宗谷と対局できた喜びをかみしめながら、一手一手最善の手を指していきます。


●chapter. 135 風の2万空里 6
二階堂は格下なのに手加減なく全力で向かってきてくれる宗谷に興奮しています。
二階堂が優勢で、宗谷がなんとかしのいでいるという展開です。
宗谷が指し、二階堂の次の一手で勝ちになりそうだというところで二階堂の動きが止まります。秒読みは30秒、10秒、5秒、4秒とすすみます。二階堂は動きません。
隣で対局する島田が二階堂の異変に気がつきます。
桐山は、
「何やってんだ 指せ 二階堂 お前 今 勝ってんだぞ」
と叫びます。
時間切れになろうかというとき、宗谷は二階堂の肩をたたきます。左肩を、バシッとたたかれた二階堂は右に傾いていきます。
二階堂は気を失っています。椅子から、そのまま倒れていくのを島田と後藤が手を差し出し、背負って病院へ向かいます。
二階堂は途中棄権となり、宗谷の不戦勝となります。
東陽オープントーナメントは宗谷の優勝で幕を閉じます。

二階堂は病院で意識が戻ります。
花岡、島田、桐山はホッとします。
夜に会長が病院にやってきて、二階堂に棋譜を手渡します。
棋譜には二階堂が気を失ったところからの続きが記されています。
棋譜は、この対局は宗谷の勝ち、とく結果が記されていて、島田も桐山も重田も、不利な局面からの見事な逆転劇に驚き、宗谷の知られざる気性を知ります。
二階堂は宗谷からもらった棋譜を見てうれしそうに、書かれていない宗谷からのメッセージを受け取っています。


●chapter. 136 雨の匂い
桐山は自分の世代でいちばん宗谷とつながっているのは自分だと思っていたのに、違っていることに気がつきます。
棋士はみな、誰よりも自分がいちばん宗谷とつながっていると思いたい気持ちがあるということを知ります。
つながるにはどうしたらいいか?
答えは単純です。
とにかく強くなって宗谷の視界に入り続ける、です。
桐山は弱いトコを探して一個ずつ修正していくという、誰にでもできそうで一握りの人にしか継続できない作業をコツコツ繰り返す、将棋が強くなる唯一の方法をやるしかないことを確認します。
そんなことを考えながら桐山は、フラッと川本家に寄り、晩ご飯を食べます。
桐山はひなたを見て、棋士として誰かと比較してしまう自分と、川本家にいて誰と比較しようと思わない自分がいることに驚きます。
零に一人で暮らす部屋と学校と対局だけでは得られないおだやかな気持にさせてくれる場所があってよかったと思います。


●chapter. 137 雨の匂い 河の匂い 1
滑川は二階堂と宗谷の対局後、実家の仕事の手伝いに行きます。
滑川の実家は葬儀屋です。


●chapter. 138 雨の匂い 河の匂い 2
滑川は美しいものが好きです。自分の将棋に、他の人の将棋ほど強い光のようなもの、美しさを感じられずにいます。
家業から、死ぬ時、ああ、生き切った、と思えることが出来るのかをよく考えています。
情熱がないわけではなく、他の人の熱量と自分のを比べて落ち込んでいるようです。
滑川の愚痴を聞くのは弟の要で、滑川はもう一度初心に戻ってみようとしています。


●chapter. 139 目の前に横たわるもの
零の義姉の京子は後藤との終わりが見え始めています。
京子は過去に零にしたことをふり返り後悔します。
京子も自分の場所を見つけられたらいいなと思います。
後藤は京子が支えてくれて本当に感謝していると思います。


続きます。


羽海野チカ 3月のライオン 13巻
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2017年11月20日月曜日

羽海野チカ 3月のライオン 12巻

あかりさんに必要なのは そこに共に入って 彼女を支えてくれる 人生の伴侶だ!!!!
――見えた…… 僕が今やるべき事…!!
桐山零は解った、と身近なところから分析を始めます。


●chapter. 115 およばれ
あかりにふさわしい人物はいるのか。桐山は身近な男性を紙に書き出し分析を始めます。
あかりさんの意思を聞きてみない、というのが零らしいのかもしれません。
桐山は父親のことで解決に尽くしてくれた林田先生と野田先輩を川本家のご飯に招待したときのことを思い出します。
林田先生が思ってもみないところから矢が飛んできて評価を下げてしまった話を思い出し、林田先生があかりにふさわしいか考えてみます。桐山は少し不安が残るなと結論づけます。
しかし、ご飯に招待された帰り道、林田先生があまり空気を読める人ではなく、変な方向にポジティブな人物であることが分かり、少しの不安は大きくなって、桐山の評価は下がってしまいます。
頑張れ、林田先生。まずはあかりの視界に入ることが先決です。


●chapter. 116 忠実なる愛犬エリザベス物語
二階堂家の愛犬エリザベスは主人の春信に忠実な犬です。
エリザベスの頑張りは春信には伝わらなくても、巡り巡って心の安らぎを与えています。


●chapter. 117 薩摩編 1
鹿児島で棋竜戦第三局が行われます。
藤本雷堂棋竜対土橋九段の対局です。藤本棋竜は二敗していて、この対局に負けると、唯一のタイトル「棋竜」を失ってしまいます。
藤本棋竜は絶対に落とせない対局です。
藤本棋竜のタイトルを落とせない理由が笑ってしまいます。女と才能のある人間に弱いところが見た目から想像しにくいです。

指宿には藤本棋竜の招待で桐山、川本三姉妹が来ています。
スミス、松本一砂、横溝も来ています。彼らはあかりのおばさん美咲の銀座の店の常連です。あかりが指宿に来るのを桐山に聞いて来たのか、プールにあかりがいるのを見かけたからか、全員プールサイドであかりに話しかける機会を狙っています。
藤本棋竜はプールにやって来ると、さっそくあかりを見つけます。
あかりを女神だと形容し、誰の女神だと観察していると、桐山が親しそうに接しているのを見ます。藤本棋竜は桐山が言っていた婚約者はこの人なのか、と桐山に嫉妬を覚えます。
桐山が藤本棋竜に気づき、今回の招待に感謝し、あかり、ひなたとモモを紹介します。
あかりとモモが親子だと勘違いしていた藤本棋竜は、二人は姉妹であり、ひなたが桐山の脳内婚約者だと理解します。
理解すると藤本棋竜の動きは速いです。冷静さを取り戻し、あかりに紳士的に話しかけます。藤本棋竜の心の動きが面白いです。
あかりはどこへ出ても注目される女性です。最後のコマの土橋九段も部屋の窓からあかりを見つけ、すごい美しい女性がいる、TVか何かの撮影かな、思うくらいです。あかり自身はどう思っているんだろう。三日月堂の三姉妹のおじいちゃんも言っていたように、あかりの幸せを願います。


●chapter. 118 薩摩編 2
藤本棋竜はあかりとお近づきになりたいようです。話しかけ、会話が続くかに見えた時、左から新地のお姉ちゃん、右から妻と娘に挟まれるという危機に見舞われてしまいます。
藤本棋竜はあかりとの会話を切り上げ、絶体絶命の危機を回避するため、プールに飛び込み姿を消すことを選びます。水の中で、対局に勝たねば、今を維持できないことを確認します。
棋竜戦第三局対局開始です。


●chapter. 119 薩摩編 3
対局中、一体何を考えながら指しているのか。藤本棋竜と土橋九段双方の対局中の思考が描かれていて面白いです。
大盤解説で先輩が前日の酒で立ち上がれず、桐山が代わりに壇上に立ち解説を始めます。
あかり、ひなた、モモは零が棋士として仕事をしているところを初めて見てびっくりします。
一矢報いることができず、藤本棋竜は145手で投了します。
棋竜は土橋九段に渡ってしまいます。


●chapter. 120 薩摩編 4
あかり、ひなた、モモ、零で砂蒸し風呂に来ています。
モモは砂風呂に入る三人を写真に撮っています。砂風呂から出た姿にひなたが放つ悪意のない一言が零の体中の力を失わせます。
ドンマイ、桐山くん。まだまだ長い道のりになりそうです。
いろんな家族のかたちがあります。砂風呂から出て、ラムネを飲みながら、棋竜を失った藤本に家族が言った言葉を思い出して、川本三姉妹は、これでよかったと思えるエンディングを目指して、これからも過ごしていこう心に決めます。


●chapter. 121 ぼんぼりの灯る道 1
今年の夏まつりの三日月堂の売り物を何にするか、おじいちゃんとあかり、ひなたで話しています。
桐山は翌日対局なので家で勉強しています。
順位戦で対局相手は滑川七段です。


●chapter. 122 ぼんぼりの灯る道 2
7月下旬。B級2組順位戦第二局。
スミスは千駄ヶ谷にある将棋会館に着くまでに汗でびっしょりです。
スミスは横溝を見かけ、
「今日2人とも万が一近い時間に終わったら上野のビアホールとか行かね?」
とか、
「そして 桐山を誘って あかりさんの近況とか あかりさんのこの夏の予定とか聞きたいね」
とか、
「あっ そうだ 桐山 今ここにあかりさん誘わね?」
とか言って、まだ対局が始まってもいないのに、対局後の話ばかりして盛り上がります。
気分を上げようとしているのに、目の前に滑川が現れ、どんよりとした空気と雨雲を連れてきます。
汗びっしょりだったスミスは、雨にも降られてしまいます。
桐山零は滑川七段と対局です。先手は滑川です。
滑川は珍しい手を指してきます。桐山はずっと小さい頃にこの手をみたことがあります。研究してきた作戦は見事にハズレてしまい、さて、どうしたものかと席を立ちます。
桐山の隣で対局するスミスは、桐山がどうするのか、自分の対局より関心を持っています。

スミスは以前、横溝が言っていたことを思い出します。
横溝は滑川との対局に苦手意識が植えつけられています。
B級1組順位戦最終局、横溝は滑川と対局し、「勝てば残留」「負ければ降級」というがけっぷりで負けてしまいます。
スミスは横溝のこの負けはあとを引くぞ、来季ボロボロだろうなと思ったことを思い出します。
横溝はスミスの言う通り、滑川が立っている姿を見るだけで負けた最終局面を思い出すと言います。負けてからずっと調子悪いままだと言います。
スミスには横溝の気持ちがわかります。
スミス自身4年前、B1に手が届きそうになった最終局で滑川と対局しています。滑川にとっては消化試合なのに、ものすごい粘着力で巻きつかれて阻止されてしまいます。
スミスはそこから4年、停滞しています。

そんなことを思いながらスミスは桐山を見ています。スミスは桐山がもし忘れられない負け方をしたら、自分や横溝のように、桐山の記憶にも傷がつくのか? と桐山がどうするのか見つめています。

桐山は間を置いて席に戻ります。
隣で対局しているスミスも田中も、桐山が次の一手をどう指すのか、手を止めて見ています。
桐山は滑川と同じ手を指します。まったく研究していないところへ進む気です。
桐山は慌てず、動揺も見せず、そういう手で来るならこうしてみる、と当然のように恐さを感じることなく飛び込んでいきます。
平然と指している桐山を見て、スミスは心の強さに感心します。
(桐山なんか負けちゃえ 負けて苦手意識とか植えつけられちゃえ!!
で そこから激しく試行錯誤して 見事立ち上がった暁には そのノウハウを 俺と横溝に懇切丁寧に伝授してよ)
と心の中で叫びます。
桐山には将棋に対して恐さがないようです。


●chapter. 123 ぼんぼりの灯る道 3
桐山と滑川が対局している時の川本家の様子が描かれています。
モモが熱を出して寝ています。
あかりとひなたは夏まつりの準備で話をしています。
ひなたは、忙しくなることは予想できるので、去年のように零に手伝って欲しいけど言うか迷っています。指宿で仕事をしている零を初めて見て、簡単に呼んで手伝ってもらってはいけないのではないかと思いが生まれます。でも、あかりやひなたが零に遠慮して、言いたいことを言わずにいることを零が気づいたとき、何よりも零が淋しい思いをすることもわかっていて、やっぱり今度の夏まつりも零に手伝ってくれるか聞いてみようということに決めます。

桐山は研究していない戦法で始まった対局について考えています。どうして滑川はこの戦法で挑んできたのか。実践で指されていない手をあえて引っぱり出して来たのは、活路を見出したのか、研究されていない場所で戦うと経験値で勝る滑川に分があると踏んだのか、どちらなのか考えています。
将棋に対してはムキになる傾向になりがちな零は、滑川の戦法に挑みます。しかし、ちょっと冷静になり盤面を見つめると、なんだか奇妙なかたちになっていることに気がつきます。


●chapter. 124 ぼんぼりの灯る道 4
川本家のお昼はそうめんです。モモは熱が出ているのに、三人で一袋茹でます。川本家はいつも食べ過ぎです。

桐山は滑川の指す手の意図がわからず苦戦中です。
滑川は桐山が迷っているのに、最善手を指すことに、この対局を心から楽しんでいます。
未踏の地を歩く桐山と滑川の対局の隣で、スミスと田中の将棋は定跡で進みます。

●chapter. 125 ぼんぼりの灯る道 5
桐山は滑川の意図が見えて来ます。振り回された挙句、千日手に持ち込もうとしているのを制するように勝負に出る1手を指します。
桐山は滑川の仕掛けるトラップにも気づき、丁寧に落ち着いて指し171手で勝利します。
スミス、田中、横溝はビアホールに向かおうと将棋会館を出ると、朝のスミスと横溝の会話を聞いていた滑川がタクシーを呼んで待っています。滑川は恐ろしい雰囲気を演出するのがとても上手いです。


●chapter. 126 夏まつりの夜
夏まつりです。
桐山は去年同様の役割を果たします。
ひなたの友達つぐみちゃん、林田先生、野口先輩も手伝いに来ています。
モモは元気がありません。盆踊りにいきたいのに、忙しくて誰も連れて行ってくれる人がいないので、ひとりでしょんぼりしています。
理由がわかった零は、二階堂に連絡します。二階堂が来てモモは大喜びです。
二階堂は夏まつりに、島田をメールで誘っています。
島田はお祭りに来てみたものの、二階堂がつかまらず、探して三日月堂までやって来ます。
あかりが店先に売り子で立ち、島田に、
「おひとついかがですか?」
とすすめます。島田はレモンゼリーを注文し、食べていると、桐山に声をかけられます。
林田先生は島田の大ファンで、目の前に島田がいることに驚いています。
島田はレモンゼリーを食べて久しぶりに胃痛が消えます。ゼリーなのか、あかりの笑顔なのか、島田が緊張をゆるめることができます。
急に雷が鳴り、強い雨が降ってきます。
雨を避けようと急いで走る人が三日月堂の店先に並べたテーブルに体をぶつけ、脚が折れてテーブルが傾き、のせていた白玉の鍋がこぼれそうになります。
あかりは白玉の鍋を守ろうとします。守ろうとして鍋を必死に持とうとして自分の体勢が崩れてしまいます。
鍋を抱えたあかりが倒れそうになるのを、右から林田先生があかりの体に手を回し、左から島田さんがあかりの二の腕をぐっと握り、支えます。
あかりはなんとか倒れずにすみ、白玉の入った鍋もこぼさずにすみます。
みんなであかりが作ったカレーを食べ、夏まつりがそれぞれの記憶の中に素晴らしい一日として残ります。


続きます。


羽海野チカ 3月のライオン 12巻
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2017年11月16日木曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 6巻

●第22話
巳早はゼンに捕まり、美少年との会話の一部始終を説明します。
ゼンは白雪が危ないと至急手紙を送ります。
そして、ゼンはタンバルン王国に向かいます。

タンバルンではラジ王子が国政の勉強すると言い、城中の者たちがとにかく驚いています。
白雪に会って、ラジ王子は何かが変わってきているようです。
白雪とラジ王子は書庫で過ごしています。
ラジ王子は、
「私はこのタンバルンの王子は私で良かったときみに言わせてやりたいのだ」
と白雪に言います。ラジ王子は生まれて今日まで誰かにこんなふうに思われてみたいと考えてことなどなかったはずです。
ラジ王子はクラリネスの王城で白雪と会い、言われた言葉をどう受け取ったのか、どうして白雪に、「ラジ王子でよかった」と思いつめるほどに言ってもらいたいのか、ラジ王子の心の中はわかりません。
ただ、ラジ王子にそう思わせたのは白雪ただ一人です。
ラジ王子はまだ足りないものがあることは知っていて、どうにかして手に入れようとしています。
白雪は、
「ではこの次―― この次この国に来た時に城下の人達がラジ王子のことを誇らしそうに話しているのを楽しみにしています」
とイザナが言う喝を入れてほしいという言葉を白雪なりのやり方で、本当にそれを楽しみにいているとごく自然な微笑みでラジ王子に言います。

ラジ王子にとって、白雪の笑顔は質の違う笑顔なのかもしれません。王族に対して向けられる笑顔、これまで見てきたどの笑顔とも違う心の底から親しみを感じさせる表情にラジ王子は応えたくて仕方がないように見えます。

夜会当日。
白雪は緊張しつつも何かをものにするため気合をいれて夜会に向かおうとしています。
そこに、クラリネス王国ゼン王子の書状が届きます。
オビが白雪に巳早と美少年の会話を伝えます。
オビは白雪に夜会に出るのはやめたほうがいいと言っているところに美少年が現れます。


●第23話
白雪が美少年にさらわれてしまいます。
オビは美少年の仲間に気絶させられ、意識が戻ると白雪がいなくなったと城中大騒ぎです。ラジ王子は懸命に白雪を探しています。
オビはゼンに自ら
「タンバルンへのお嬢さんの付き人 俺にしてください」
といい、
「あんたが守れない時は俺があんたの代わりに守る」
といったのに、白雪をさらわれてしまったことへの責任を感じています。

ゼンたちがタンバルンに到着します。
ゼンがオビの部屋に行くと誰もいません。オビは白雪を追跡しています。

白雪は睡眠薬で眠らされています。
美少年はあと少しで仲間たちと合流できると喜んでいます。

ゼンはラジ王子と会い、側近のサカキから白雪をさらった者が海の鉤爪という海賊ではないかと当たりをつけ、動く準備に入ります。ゼンはラジ王子と協力し白雪を救い出そうとします。

オビが蹄の跡を追い、美少年と行動していた気絶させられた仲間を見つけ、白雪の居場所を問いつめます。白雪と美少年の姿はありません。美少年の仲間は別の誰かにさらわれてしまったかもしれないから、大将に合流し知らせないといけないと言います。
オビは自分も大将のところへ連れて行くよう迫ります。

白雪が目を覚ました場所は見知らぬ部屋です。ベッドで寝かされていました。背後に人の気配を感じ、勇気を出して振り向くと、美少年が顔を腫らして眠っています。気を失っているのかもしれません。
美少年は気が付くと、
「嘘だろ… なんで…」
と覚束ない様子です。
そこに一人の女が現れます。
白雪は美少年と女の会話を聞いています。しかし、状況が飲み込めません。

白雪は美少年にどういうことなのか説明を求めます。
美少年は白雪をさらい大将に合流するはずが、女とその仲間に襲われ、ここに連れてきたと言います。
白雪はようやく状況が飲み込めました。二重にさらわれてしまったのです。
美少年の名は鹿月。鹿月は白雪に早く逃げないと大変なことになると言います。


●第24話
白雪は鹿月とともに脱出しようとします。閉じ込めらた部屋は船の中の一室で、揺れている様子もなくどこかの船着き場に停泊中だと知ると、船を出ようとします。
船から飛び降りると、鹿月は、
「…だめだ…… 白雪 ここは…」
逃げられないと観念してしまいます。

タンバルンの王城では木々がゼンにオビからの伝言を手渡します。
ゼンはミツヒデと木々と巳早、それに二人タンバルンに連れて来ています。

オビは鹿月と一緒だった仲間イトヤと行動し、大将に合流します。大将は鹿月を救うため人を集め動く準備をします。
ゼンがオビと合流します。
ゼンは白雪に、危険が迫っているので警戒せよと書いた手紙を送った時、キハル・トグリルからの贈り物で胡桃石で作ったアクセサリーを同封していました。
オビは白雪がさらわれた後、白雪宛の小包を開封し、胡桃石のアクセサリーをゼンが送った理由を知り、持って行動していました。
鳥使いが操る鳥は胡桃石で作った笛や鈴の音を聞き分け、音のする方に飛んで行くことができます。
オビが持っていた胡桃石のアクセサリが発する音に向かって、キハル・トグリルの鳥ポポが飛んで行き、オビの居場所が分かりました。
キハルとポポは早速大活躍です。

ゼンはオビに現状の報告を受け、大将と話をし、白雪と鹿月を救出する目的で協力します。
ゼンがしびれるほどかっこいいです。

山の獅子の大将はまず酒場町に行き情報を集めようとします。
どうやら大将の見立ては当たり、海の鉤爪が白雪と鹿月をさらった犯人だと確信します。
ゼンと大将が今後の作戦を練ります。

海の鉤爪に捕まった白雪と鹿月。不安でいっぱいの様子です。
閉じ込められた部屋に新たに捕らえられた人が入ってきます。
白雪は声をかけ、顔をのぞくと木々だったのです。


●第25話
ゼンは、巳早、ラジ王子、山の獅子と連携して、白雪と鹿月を救出する作戦を練ります。
木々が海の鉤爪に潜入し、白雪たちと会うことができます。
白雪は木々の顔を見たとたん涙がこぼれます。
ラジは港で船に協力を求めます。船団を組織し、海の鉤爪を追い込もうとします。
ラジの心に変化があらわれます。
ラジは今回のことでゼンのように機敏に判断や決断ができず、情けないという感情が生まれ、海の鉤爪に対して腹が立ってきたと、側近のサカキに言います。
サカキはラジの意外な変化に好ましいよい兆候だと感じています。

船団の先頭に立つラジは海の鉤爪に警告します。
海の鉤爪たちは動揺します。鹿月が探している赤髪の娘が王族と関係のある人物で国が全力で行方を追っていることを知り、白雪に手を出したことを悔やみます。
海の鉤爪は姿をくらますため、秘密のアジトに逃げます。

今度は、洞窟に連れてこられた白雪、木々、鹿月。
木々が何かを察知し、白雪に奥に走るよう指示します。
白雪は鹿月とともに木々の合図で奥に走ります。
二人を追いかけようとする海賊の前にマントがたちはだかります。
白雪の目の前にゼンが立っています。
ゼンに向かってくる海賊をオビが仕留めます。
海の鉤爪のアジトに山の獅子とゼンたちが先回りしていたのです。

巳早の持っていた情報が白雪の救出に大いに役に立ちます。

山の獅子もゼンたちと海の鉤爪の隠れ家に来ていて、ようやく追い詰めることができやる気満々です。

白雪はゼンの姿を見て、張り詰めていた緊張がほぐれます。声を聞かせてほしいというゼンに白雪は震える声で名前を呼びます。

ゼンの表情に怒りがにじんでいます。
海の鉤爪の終わりが始まります。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 6巻
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2017年11月14日火曜日

ななじ眺 ふつうの恋子ちゃん 3巻

相手は自分のことをどう思っているんだろう? という手探りの状態がともて面白いです。




夏目恋子と二宮剣はコタツでうたた寝しています。

恋子の母親はそんな二人を微笑ましく見ています。姉の愛子が帰宅し、うたた寝している恋子と剣を見て、「不愉快な光景」と表現します。

母と姉の両極端の性格では同じものを見ても、こうも感じかたが違ってしまいます。

剣が動いて手を動かすと、恋の膝辺りに、とんっ、と触れてしまいます。一瞬で剣は何に触れたのか察知し、恋子は誰に触れられたのかわかります。

剣はすぐにあやまり、恋子は動揺なんてしていない反応をします。

恋子は本当に寝ていたのかな?嘘寝じゃないのかな、なんて思います。



恋子は剣から贈られた髪留めのゴムを見せたかったみたいです。剣が気づいてくれるって分かっているのに、髪留めを見つけてくれると、素直じゃない可愛げのない態度をとります。

恋子は自分らしさはこれだと思っているみたいです。



恋子に何度も剣と自分は両想いなのではと思う出来事が起こります。でも、確信には至りません。両想いだったらいいのにという気持ちが強くなるにつれ、剣への想いがより大きくなっていきます。

剣のほうはどうなんだろう。おかみさんから恋子の気持ちは聞いて知っているのに、なぜか気持ちを伝えようとしません。どうしてだろう?



恋子はバレンタインデー、ホワイトデーと気持ちを伝えるイベントはあったのに、他の子より特別感を感じられるというところまでしか進展していなくて、ついに、恋の達人の母親に、

「どうしたらいいっすかね」

とアドバイスを求めてしまいます。

母親は、

「男に言わせるように持っていく」

と恋子にはとてもできそうにないことを言います。

恋子は告白なんてしたことがありません。したがって、告白は無理です。剣に告白してもらうしかありません。なのに、バイトに来た剣がお客さんとの会話の中で、

「…オレ 言えないかも」

と言うのを、恋子は聞いてしまいます。



勇気を出して、自分から告白する。

恋子も剣もそう思っています。

互いが頑張って伝えようとしている様子がとてもいいです。



新年度に入ります。

恋子と剣は2年になり、同じクラスになります。

始業式が体育館で行われ、新任の教員の紹介が行われます。

姉の愛子が赴任し、恋子と剣は驚きます。

二人だけの会話が、メッセージのやりとりだけだけど、増えてきてる気がします。

恋子と剣は友達としゃべっていても、スマホをずっと手にしていそうです。

続きます。



ななじ眺 ふつうの恋子ちゃん 3巻
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2017年11月12日日曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 5巻

白雪の赤い髪が再び狙われてしまいます。
話の展開が思わぬ方向に向かい、規模が大きくなっていくところや、登場する人物の感情や思惑が交錯して面白いです。



●第18話
クラリネスの近海、船の上で交わされている会話から始まります。
第2話で白雪をさらった男巳早(みはや)は赤い髪の娘を探している美少年がいると、ゼンの元にやって来ます。

巳早は白雪も交えて、赤い髪の娘を探しているという美少年の話をし、少年が白雪を探している理由は、
「その赤髪のお姫様には城なんかよりふさわしい場所があるんだよね」
と言ったというのです。
白雪は自分が誰かに狙われる理由が見つかりません。
オビは巳早を警戒しつつ、冷静に聞いています。
ミツヒデはゼンの様子を気にかけています。
木々は今後備えておくべきことの優先順位を整理しているようです。
ゼンは動揺しています。

問題の起こっている一方で、イザナ殿下の元にタンバルンから書状が届きます。白雪への招待状です。


●第19話
ゼンと白雪は、
「今晩イザナ様の所へ行くようにと伝令があった」
ミツヒデから言われます。
ゼンと白雪はイザナの元に行くと、イザナにタンバルン王国から白雪に招待状が送られてきたと聞かされます。
白雪をタンバルンで行われる夜会に招待したいというのです。
ゼンと白雪は驚きます。
出発は14日後、タンバルン王国での滞在は7日間。イザナは白雪にそれまでに踊れるよう稽古するよう命令します。

白雪を狙う何者かがいて、白雪はイザナの命令でタンバルンへ行く。
なんともやっかいな問題が山積です。

オビは白雪がタンバルンに出発するまでに、白雪を狙う美少年を捕まえようとします。
しかし、何の手掛かりもありません。
白雪がタンバルンへ出発する前日、オビはゼンに白雪の護衛役を任せて欲しいと申し出ます。
ここでのゼンとオビのやりとり、ゼンと白雪の会話はうまく掴みきれませんでした。


●第20話
白雪とオビはタンバルン王国の王城シェナザードに到着し、ラジ王子の側近サカキに出迎えられ、ラジ王子と再会します。
ラジ王子と白雪は滞在中、一緒に過ごしてみようということになります。

美少年はクラリネスの王城の警備が厳重で進入することができず、あきらめてタンバルンに戻ることにします。
白雪と美少年との距離がかなり縮まります。


●第21話
白雪はラジに、一緒にいてみましょう、と言ったものの、いざ一緒にいてみると、会話はぎこちないし、空気はピリピリしているし、緊張感から言葉が自然と出てこなくて、だいぶ苦戦しています。
おまけにいつもどこかから城中の人たちが白雪に興味があって監視? 盗み見しています。
ラジ王子は白雪を気づかい、人の目の届かないところがあると地下通路に連れて行きます。
地下通路があることは知っていても、熟知していないので迷ってしまいます。

ラジ王子は白雪と同様に、二人でいることでなにかを得られるかもしれないと思っています。
あまりに手応えを得ることができなくて、二人でいることで何も得られることなどないかもしれないと思い始めているところで、白雪と話をします。
白雪はラジ王子との関係を変えたいと思うから一緒にいようと言ったといいます。
ラジ王子はどうすべき考え始めます。

巳早は城から抜け出し、美少年と接触します。巳早は美少年に白雪を狙う理由を聞きます。美少年は巳早のように白雪を利用するためにさらおうとしているようではないようです。

美少年が白雪にこだわる理由はなんだろう?
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 5巻
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2017年11月10日金曜日

森本梢子 アシガール 9巻

阿湖姫が明日松丸の城に帰ると唯に挨拶に来ます。

阿湖姫は唯のために帰ることになるのに、恨み言ひとつ言わず、危ないところを助けてくれたこと、共に過ごしたことは楽しい思い出だと言い、唯に若君様とのご婚儀まことにお目出度うござりますると言います。

唯はつらそうです。




阿湖姫は屋敷戻る途中、成之と会います。

成之は阿湖姫が明日黒羽城を発つと聞いて、思うところがあって言葉をかけます。

阿湖姫は成之にそんなわかりきったことを言うために参られたかと泣きながら訴えます。

成之は悪気があったわけでなく、言葉が足りなかったと阿湖姫が去ってから悔やみます。



夜、唯は阿湖姫にとって黒羽城での最後の夜になるから、何か楽しいことができればと、阿湖姫の屋敷を訪れます。

唯は阿湖姫を見つけます。阿湖姫は泣いています。阿湖姫が悲しんでいるのは自分に原因があると思い、とにかく謝ります。

阿湖姫は唯が原因で泣いているのではなく、成之様がと言います。

唯は阿湖姫に成之に何か言われたの? と聞きます。

阿湖姫は何でもないと言います。

何かあったのは確かで、唯は、私が仕返ししてやる、と阿湖姫の代わりに成之をこらしめてやろうとします。

阿湖姫は、もうよい、仕返しなどやめてくれと言います。

阿湖姫にそう言われると唯はどうすることもできないと、阿湖姫を見つめています。

外から、

「…阿湖殿 そこにおられますか」

と、声がします。成之です。

いいところに来たと、唯は外に出ていこうとします。阿湖姫が袖をおさえて止めます。

成之は阿湖姫から返事がないので、

「口をきいてはくださらぬか よい このままわしの話をお聞きくだされ」

と、部屋の人の気配を阿湖姫だと思い話します。

言葉の足りなかった部分を補って、阿湖姫に先程どうしてあんなことを言ったのかと説明し、そして、妻として成之のもとへ来てほしいと言います。

阿湖姫と一緒に聞いていた唯は考えもしなかった成之の言葉に阿湖姫のまっ赤になった顔を見てびっくりしています。

阿湖姫は突然の求婚に、

「…………成之様 そ…それは 阿湖を憐れんでのお申し出にござりましょう?」

と尋ねます。

成之は、

「まさか 己を憐れんで生きて参ったわしじゃ 姫を憐れむなど思いもよらぬことじゃ では」

と言い、去ります。

足音が消えると、唯は止めていた息を吐き、阿湖姫に、

「どーするの?」

聞きます。



翌日、阿湖姫は黒羽城を出て松丸家に戻りませんでした。



成之は誰も信じられぬと唯に言っていたくらいだから、今まで他人に本音を語ったことなどなかったんだと思います。

なぜ羽木家に生まれたのか、疎んじられるくらいならこの世に生まれる必要などなかった、と自分の出生を僻んだこともあったと思います。生まれてきた理由を何度も何度も繰り返し自問自答したんだと思います。

若君と唯の無事を祈る阿湖姫を見て、唯を救うため単身で高山家に乗り込むのを見て、若君が高山に降るのを何としても止めようと、命がけで大手山から走ってきた唯を見て、自分も誰かに思われたいという気持ちが芽生えたのではないでしょうか。

成之を変えたのは誰だろう?

阿湖姫なのかな。唯を好む若君かな。大きな影響を与えたのは唯です。唯に影響を受けた人たちを通じて成之は変わったのだと思います。

この三人を見て、自分以外の誰かのために何か力添えをしたい、支えたい、支えられたいと思う気持ちになったのかもしれません。

そして、その人はできることなら、阿湖姫であればいいなと思うようになったのではないでしょうか。

唯が戦国時代にきて、一番変化があったのは成之だと思います。

成之にとって一番悔やまれることは、自分の本心を阿湖姫だけでなく唯に聞かれてしまったことです。この夜唯が一緒にいたことを知ったら、成之はどんな顔をするんだろう? 意外に恥ずかしそうに身を小さくしたら面白いです。



翌日、唯は若君に昨晩の出来事を報告に行きます。

唯は移動する時、ほっかむりをするようになったのは何故だろう?

歴史が変わっていることに、唯は大丈夫ですと言い、若君はすこし間を置いて、そうじゃの、と返します。



婚儀まであと五日です。

唯が気合を入れていると、天野のじいが通りかかります。

天野のじいは唯を見るなり、深く長いため息をつきます。若君の奥方として唯は想像していた女性とかけ離れているからです。

じいはおふくろ様に耳打ちします。

おふくろ様は唯を別室に連れていき、大事な話があると言います。

おふくろ様は唯に実の母御より閨房の心得について聞かされたことはあるかと聞きます。

唯は聞いたことはありませんと答えます。

ないのであれば、唯に心得を教えるのは自分の役目だと、おふくろ様は話をしようとします。

話をしようとするところに若君がやって来ます。

若君がおふくろ様と唯二人きりだったので、取り込み中であったかと聞くと、

「今から おふくろ様から ケイボーのこころえを聞くところなんです」

と唯は若君に元気よくこたえます。

若君は、うっ、間の悪いときにやって来てしまったという顔をします。

おふくろ様はうつむき、目を伏せ、

「どうしてこの子は…」

という表情をしています。

若君は唯に用があり外出することを言いに来たといいます。

どこへ? 何かあったんですか、と聞く唯に、若君は内容ははぐらかし、日暮れまでに戻ると言います。

「それより 唯はおふくろ殿の申されることをしかと聞いておけよ」

と言い、出かけます。


半日くらいすぎます。

おふくろ様の話に唯は赤面するばかりです。

話が終わり、フラフラ歩きながら、若君の屋敷に着きます。

門番に、毎日ご苦労じゃな、と言われ、唯は、若君の屋敷に来るのが日課になっていることに気がつきます。別れたとたんに会いたくなるととても幸せそうです。

バッタリと成之に会います。成之も若君に会いに来ていたようで不在らしく出てきたところを唯に会ったみたいです。

唯は成之から若君が出かけた理由を知ります。

若君は北山にいる野上衆と和平の盟約を結ぼうとしています。

唯は野上衆は危険な相手ではないのか? と成之に聞きます。

そうこうしている内に若君が戻ってきます。

若君はフラフラです。部屋に着くなりバタリと倒れます。

唯が心配して声をかけると、若君は酒を飲んで酔うたと言います。野上衆は酒好きで注がれた酒を飲み干さねば話が進まないのじゃと

言います。どうでしたか? と尋ねる成之に、

「首尾は上々」

とこたえ、野上衆との和睦も相成った、めでたいといいます。

若君は打てる手はすべて打ったはずじゃ、と満足した表情です。



先日、唯が歴史が変わっている、大丈夫と言ったことに、若君はすこし間を置いて、そうじゃの、と返したのは、もうひとつ成し遂げておかなくてはならない問題があるからなんだとここで分かりました。すこし間を置いたことが気になっていたからそういうことなんだと安心しました。



若君が唯によって現代にタイムスリップしたときに、現代の歴史書で知った戦国時代でこれから起こる出来事は羽木家が滅亡するという歴史だけです。このままだと羽木家は滅亡してしまう。そのことが若君の頭にはあったんだと思います。

歴史では羽木家は高山家とは対立したままでした。松丸家との縁組は叶いませんでした。野上衆とも対立したままでした。

羽木家がしなかったことを次々と実現させ、滅亡の歴史とは違う歩みをして、異なる勢力図、ことなる構図を作れば、滅亡を回避できるかもしれないと若君は考えたのだと思います。

「打つ手はずべて打ったはずじゃ」

若君の言葉には明るい未来への思いが込められています。



夜中、若君の元に火急の用にてお目通りを願いたいと、高山宗熊より使者がやって来ます。

使者は若君に宗熊の書状を読んで下さいといいます。

若君は書状に目を通します。

内容は、清洲より相賀一成という織田の武将が宗熊の父宗鶴の元にやってきて、高山家が羽木家を攻めるなら、織田の兵三万、鉄砲三千丁をもって加勢すると申し出てきて、宗鶴は申し出を受け入れ、高山家と羽木家との約定を破ることになります、というものです。

若君は成之を呼び、宗熊からの書状を読ませます。そして、自分はこれから小垣へ行く、成之にはお願いしたいことがあるとこれからのことを話し合います。



唯は何かの前触れを感じてなのか目を覚まします。

部屋を出ると、おふくろ様が唯の元にやって来ます。

おふくろ様は若君が急に来て、これから小垣へ行くことを伝えに来たと言います。

唯は異変を感じとり、寝間着のままで若君を追いかけます。

唯はサンダルでも草履でも足が速いです。吹雪に乗った若君に追いつきます。

唯は若君にどうして急に小垣に行くのかとたずねます。

若君は普段と変わらない表情で、たいしたことではないと言います。

唯は若君の表情が分かるようになってきたらしく、

「ごまかせると思ったら大間違いですから!」

「まーた 自分ひとりで何とかしようと思ってるんでしょ!」

と何か大変なことが起こっていることを察知しています。

若君はすべてを話します。自分の考えを唯に伝えます。そして、唯に黒羽城に残り、手助けをしてほしいと言います。

ぎゅっと唯を抱きしめた若君の表情は最後の別れのようにも見えます。

唯は若君の言う通り、黒羽城に戻ります。



唯はおふくろ様に事情を話します。朝食をとっていると、小平太がやって来ます。

小平太は若君の不在を知り、唯にどこに行ったのかを聞きます。

唯は知らないといいます。

小平太は若君が小垣に向かったことは知っていて、すぐ追いかけると言います。

おふくろ様が機転を利かせます。すると、小平太はしょっぱい顔で唯を見ます。

唯は小平太を簡単にごまかせたと思っています。

おふくろ様は唯が後で気がついたらどうなるやらと思っているようです。



唯は庭を歩いていると頭に枯れ葉が落ちてきて、見上げると、孫四郎が木に登って降りられなくなってベソをかいているの見つけます。すぐに降ろしてあげようと、自ら木に登ろうとすると、

「姉上 やめぬか!!」

と止められます。見てみると三之助です。立派な姿になっています。

唯はおふくろ様から、小平太の口利きで、手習いや剣術のためご城内に通うておると教えてもらいます。

「いつまでも 男子のように木登りなどする故 若君様に疎まれるのじゃ!!」

と三之助は唯に言います。

お城で、若君の不在の原因は、婚礼が嫌で逃げ出されたと人が話していると三之助は言います。

唯は小平太のしょっぱい顔を思い出し、あれは自分を憐れんでいたのかと、誤解されていることに気がつきます。

おふくろ様は唯に高山のことが伏せられているので、今は噂を否定しないほうがいいと助言します。

おふくろ様の言う通り、放っておいたら、あらゆるところからの噂が唯の耳に届いてきます。

唯はちょっと憂鬱になっていると、視線を感じます。見てみると、天野のおやじ様です。小平太以上に憐れみのまなざしで唯を見ています。



若君は小垣に向かっていると、小垣城から黒羽城に向かって走っている味方に出くわします。

小垣の使者は若君に、高山寝返り、川の浅瀬に土俵を敷き詰めて一気に攻め入ろうとしていると伝えます。

兵の数二、三万と聞き、若君は、高山が準備しているという川の浅瀬が見渡せる場所に移動します。

若君が見たのは絶望的な光景です。



唯は庭でじっと黙ってたき火をしています。

阿湖姫がやって来ます。

唯は阿湖姫の表情から噂を聞いて慰めに来たんでしょ、と言います。

阿湖姫はそんな話は聞いていない、疎まれているのは自分のほうだと、すこし前に起こったことを唯に話します。

成之が阿湖姫の元を訪れて、

「まことに勝手ながら 先夜わしが申したことは全てお忘れくだされ」

と、明日にでも松丸家のお父上の元に戻るよう言い、去っていったと言います。

阿湖姫は唯に成之が妻になってほしいといった夜からの心の変化を唯に話します。

阿湖姫の胸の内を聞いた唯は、そうではない、と阿湖姫のために一働きします。

唯は成之をつかまえ、本心を聞き出します。

阿湖姫は隠れて聞いています。

唯の言う通りだったと阿湖姫が嬉しそうにするかと思っていたのに、唯が阿湖姫の隠れている部屋に入ったら、阿湖姫は驚きと恥ずかしさで気絶しそうになっています。

唯は時代に合わないやり方で失敗してしまったと反省しています。

阿湖姫は成之の気持ちが分かり、どうするのでしょう。



夜、唯はおふくろ様に新しい情報が入ったと起こされます。

「旦那様と小平太殿がご登城された」

「高山軍が領内に攻め入った」

「敵はすでに小垣を抜けてここへ向かっておる」

ということを唯に知らせます。

唯は小垣城はどうなったの? とおふくろ様に聞きます。

おふくろ様はわかりませぬと言います。

唯は小垣に行こうとします。

天野のおやじ様が城から戻ります。おふくろ様に出陣となり、戦の準備を頼むと言います。

天野のおやじ様の話を聞いて唯は、小垣に行くに行けなくなります。

唯は若君が心配したとおりになってきたと思い、小垣城に向かうのをあきらめ、黒羽城に急ぎます。



城では成之が殿を必死にとめようとしています。

殿は成之の進言を聞き入れようとしません。敵を蹴散らし、小垣を取り戻すと譲りません。

殿は成之に城の留守居をまかせます。

唯が入ってやって来ます。殿の前に立ち、

「出陣はなりません!!」

と体を張ってとめようとします。

殿の後ろに控えている家臣に、唯は簡単に投げ飛ばされてしまいます。



黒羽城では出陣の準備が整います。

「殿!! しばらく!! なにとぞしばらくお待ち下さい!!」

若君と共に小垣に向かった久六が戻ってきて殿に若君の言葉をそのまま伝えます。最後に、

「若君は『自分の存念は許嫁の唯に申し置いてござれば 唯が申すことお聞き下され』と父上に申し上げよ」

と申されたと言います。

殿は唯を呼べと言います。

唯はすぐ近くに控えています。非常に怒っています。

殿の横に座り、殿と家臣に若君の言葉を伝えます。

殿はいくらか冷静さを取り戻し、出陣は取りやめ、まず敵の情勢を探らせ、城の守りを固め、城下に触れを出し、民、百姓に難を逃れるよう申しわせ、次々に命令を下します。

唯はなんとか出陣をやめることができた、最悪の事態は避けられたと安堵します。



唯は久六から声をかけられます。若君からもう一つ大事な命令を受けてきたと言います。届けてほしいものがあって、何があっても必ず命がけで渡すのじゃとことづかって来たと言います。

久六が懐から取り出したのは懐剣です。唯が池に投げたタイムスリップの起動スイッチの懐剣です。

若君はずっと懐剣を持っていたのです。

「許せ 頼む」

そう申せば唯には伝わろうと若君が言ったと久六は言います。

唯は久六に次の満月はいつかと聞きます。

久六はあと七日か八日で満月だと思うと言います。



唯は満月までの七日間に、戦を止めて、みんなの命を守って、若君に会う、これだけはやりぬかなくてはならないと決意します。

高山の使者が書状を持って来ます。

内容は、城を開け、領内より退却、あるいは、高山の軍門に降る、嫡子忠清を高山家に預け入れるというものです。

若君を人質として高山家に差し出せという文言は唯を戦うしかないと怒らせます。

しかし、その夜、城から見えるのは、四日前若君が見たものと同じ絶望的な光景です。

戦意が喪失していきます。

唯は尊が作ってくれた、まぼ兵くん、金のけむり玉、でんでん丸、起動スイッチ、この四つの道具でなんとかならないかと考えます。

唯は何かいいことを思いついたようです。羽木家の窮地を救えるのでしょうか?

続きます。



森本梢子 アシガール 9巻
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2017年11月8日水曜日

森本梢子 アシガール 8巻

唯が戦国時代に来ていなければ、阿湖姫は刺客に暗殺されたか、捕えられて高山宗熊と縁組が成立して、高山家松丸家連合軍対羽木家で戦になり、羽木家は滅亡していたかもしれません。

唯が阿湖姫の代わりに捕えられて、羽木家と高山家で小競り合いは起こらなかった事実となります。



唯が来たことによって起こる事実は、唯が危険を冒して動いていなければ、若君は高山に降り首を取られていたかもしれないし、この小競り合いの末羽木家は滅亡していたかもしれません。



それ以前に、羽木家は永禄二年を越すことはできなかったので、いずれにしても唯が来たことによって羽木家は滅亡を回避していることになります。



いるはずのない人間がいることによって起こる出来事は歴史にどう影響するのか、歴史の大きな流れには些細な出来事として変わることはないのか、これからどのように描いていくのか楽しみです。




若君たちは麓までおりてきています。川に架かる万代橋を渡ると羽木領に入ることができます。

若君の場所からは、万代橋の橋の上を狙う高山勢の伏兵が見えます。

若君たちは橋を渡ることができずに困っていて、強引にでも渡るべきかどうか決断を迫られています。

奇念が羽木方に動きがあり、万代橋を渡ろうとしていると言います。

若君は万代橋に目を向けると、橋を渡ろうとしている一隊の先頭を進むのは兄の成之だと分かります。

成之の部隊が橋の上を狙う高山勢の伏兵に気づいていないと考える若君は、吹雪に乗り、高山勢の伏兵に向かって駆けていきます。万代橋を渡る味方が気づくよう大声で叫び、派手に駆け降りてきます。

万代橋の上の味方は若君を発見し、高山勢の伏兵を蹴散らします。



若君は成之の無事を確認します。

成之は若君を救出するための作戦であったと言います。

若君は成之の言葉に唯が無事に川を渡ったのだと知ります。

成之は若君をからかいます。唯はあっぱれでございましたと、口にします。

若君の顔色が変わります。

若君の顔色を確認してから、成之は唯が小垣で手当てを受けていると言います。若君で遊んでいます。



若君が本陣に入り指揮をとります。万が一を考え指図すると、その命令はすでに成之から申しつけられてすでに動いていますと言われます。成之が少し変わったと実感します。



木村政秀の妻女は唯が何者かと訝しがっている女官に若君の格別にご寵愛の姫だと言います。

女官は唯を見て、これが? と驚く者、悲しみに沈んでいる者がいます。




唯は黒羽城の奥御殿で目を覚まします。

おふくろ様が唯についていて、眠っている間に起こったことを説明します。

唯はおふくろ様の説明を現代語に翻訳して有頂天になります。

浮かれている唯のところにお殿様のご正室、若君のお母上がやって来ます。

唯は姑との初対面は好印象の手応えを感じます。若君も一緒に黒羽城に戻っていると思っていたのに、まだ小垣で高山勢と戦っていると知ります。急いで小垣の若君のもとに駆けつけなければと立ち上がります。

お方様は唯に行ってはならぬと止めます。



藤尾という奥御殿を取り仕切る者が、唯の身の回りの世話をすることになります。

藤尾は唯が若君の寵愛の姫だと信じたくないようです。もし本当だとしても認めたくないようです。

奥御殿の女中たちも唯を認めたくない者が多くいます。唯に地味な嫌がらせが始まります。唯を見て品定めして、聞こえるように嫌味を言う者、水に塩を混ぜる者、様々です。

唯は居心地の悪い奥御殿を出て、若君のいる小垣に行こうかと考えていると、阿湖姫が唯を訪ねてきます。

阿湖姫は唯に知っている小垣の状況を教えます。



小垣では和議を結ぶことになります。



唯への嫌がらせは激しくなっていきます。

唯は自分のことだけなら我慢しているつもりだったけど、おふくろ様への悪口が聞こえてきたから、腹が立ち、ちょっと驚かしてやろうと思いつきます。

唯は目測を見誤り、襖を派手に壊してしまい、ちょっとやり過ぎてしまったと、仏間の仏様に向かって反省します。

唯の行動は藤尾を驚かせます。

藤尾は唯を若君に近づけさせてはならないと遠くに追いやろうとします。

唯は藤尾の企てを察知し、城を出た後こっそり小垣に走っていこうと考えます。



翌日、唯は目を覚ますと、藤尾が目の前にいてびっくりします。

尼寺へ行けと言いに来たんだと思い、用意しようとします。

藤尾は若君が城に戻ったと唯に言います。

唯は急いで若君がいる部屋に向かいます。

若君は眠っています。唯が若君を見つめていると気配を感じ若君は目を覚まします。唯が来るのを待っていたようです。ようやく再会です。

唯は若君が無事で安心します。

若君と唯の間に誰も入ることができない空気を感じ、藤尾は唯を認めざるを得なくなります。

藤尾は一度さがりますが、襖一枚隔てたところで座っています。そして、咳払いをして、若君に伝言を伝えます。

若君は藤尾にお方様が呼んでいると言われ、仕方な母上の部屋に向かいます。



現代にタイムスリップしても動じることのなかった若君がお母上には簡単に動揺させられています。若君にもこんな面があるのかと思う面白いやりとりです。



藤尾は唯が若君の寵愛の姫であることを信じるしかなくなり、唯を本格的に教育しなくてはとこれまでの姿勢を改めます。まず唯は、お殿様の御前にあがる折の作法を教えてもらいます。




殿は若君の嫁が唯之助だと言われ大笑いしています。唯之助が女子であることがわかると、唯を呼びます。

唯は早速、藤尾の教育の成果を見せる時が来ます。

お方様が、

「近う 参りなされ」

と唯に声をかけます。

唯は藤尾の教育の成果を何も出すことなく、自分の思うように殿に近づいていきます。

唯の様子に、若君は微笑み、お方様は口元を押さえています。

殿だけは、

「断じてならぬ」

と怒り心頭です。



お殿様に認めないと言われて、唯は泣いています。

女官たちはちょっと笑いながら唯を慰めます。

そこに若君がやって来て、唯に心配するな、父上は必ず認めるから大丈夫だといいます。

若君と唯が話していると、お殿様がお呼びです、と難なく唯は認められることになります。

婚儀は来月に決まります。

唯は若君にそれまで天野家に帰り、おふくろ様と過ごすよう言われます。

唯は目標を達成して浮かれています。

しかし、ふと冷静になって考えてみると大事なことを忘れているのに気がつきます。

唯は若君に大事なことを確認しに行きます。

若君はそうならないように、いろいろ策を練り手を打っておるところだと言います。

唯は一応納得し、若君と別れます。天野家に戻る途中、奇念から声をかけられます。

奇念は修行の旅に出ると言います。

唯は僧侶としてあるべき姿を語る奇念に感動しています。

続きます。



森本梢子 アシガール 8巻
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2017年11月6日月曜日

森本梢子 アシガール 7巻

唯が初めて若君と一緒に過ごす時間が持てて、ようやくここまで来たかと展開が楽しいです。

宗熊が面白いです。唯をひと目見てからの宗熊の描かれていない部分を想像して面白がっています。

若君とは正反対すぎて、羽木家は殿の代を耐えられれば、滅亡せずに済むんだろうなと思います。




若君は唯を単身で助けに高山の居城長沢城に行くつもりです。

おふくろ様はそんな若君の胸中を見抜いているようで、悪丸に、

「決して若君の側を離れてはならぬ」

「吹雪には十分に草を食ませ手入れをせよ」

と若君の供をするよう言います。

若君は悪丸を供にして唯救出に向かいます。



唯は高山に捕えられて10日間、外からの情報は一切遮断されています。高山の殿から明日阿湖姫の兄が来るとだけ伝えられています。阿湖姫の兄松丸義次という人物がやって来て唯と対面すれば、阿湖姫でないことがバレて、命がなくなるかもしれないと危惧します。羽木家ではどうなっているのか気になっていて、若君は自分が高山の城長沢城に捕えられていることは知っているのか、明日の運命を心配しています。



若君は長沢城に到着します。

高山の殿は家臣から松丸義次が到着したとの知らせを受け、阿湖姫(唯)に用意が整い次第、会見の間に来るよう言います。

唯は覚悟を決め会見の間に向かいます。怖さしかなく、ずっとうつむいています。顔を見られると阿湖姫ではないことがバレてしまうので、顔をあげることができません。

高山の殿は唯に顔を上げるよう促します。

顔を上げられない唯は、

「久しぶりじゃの 妹よ」

と阿湖姫の兄から声をかけられます。

唯にとって覚えのある声です。

唯は顔を上げて松丸義次を見ると、阿湖姫の兄として座っているのは若君です。若君の顔を見て一気に張りつめていた気持ちが緩みます。

若君と声に出そうになる唯に、若君が、

「元気そうじゃの 阿湖」

と唯に高山方に正体がバレてはいけないから阿湖を演じるのだと合図します。

唯は助けに来てくれた若君の行動に感激します。

高山の殿は若君に今宵、阿湖姫と嫡男宗熊の婚儀を執り行うと言います。

若君は、婚儀の前に妹と二人だけで話をさせてほしいと言います。

高山の殿は婚儀を終え、めでたく二人が夫婦になった後、兄妹二人でゆっくり話せばいいだろうと若君の要求を拒みます。唯を支度のため退出させようとします。

唯は若君に助けを求めると、

「では 後ほど」

と何かあるような表情で若君は唯を見送ります。



羽木家の黒羽城では、仏間で阿湖姫が若君と唯の無事を祈っています。一晩中祈って体力の限界に達し、倒れてしまいます。

成之がたまたま通りかかり、仏間で物音がしたので見てみると阿湖姫が倒れているのを発見します。声をかけ、阿湖姫に何をしているのかと尋ねます。

成之は若君が単身で唯を救うため高山の城に向かったということを知ります。

阿湖姫は成之に若君を救ってほしいと頼みこみます。

成之はそろいもそろって阿呆ばかりじゃと、若君、唯、阿湖姫の行動を理解できないようです。



若君が城にいないことが殿の耳にも入ります。

小平太は殿に若君は唯之助を救うため高山の城に行ったのではないかと言います。

殿は小平太の推測を一蹴します。

小平太は自分の考えに自信があり、すぐにでも高山を攻め若君を救うべきだと譲りません。

成之が現れます。殿に小平太の読みは当たっていると言います。ただし、高山に攻めるのは忠清殿を危地に追い込むことになるから、もっとじっくり考えろと言います。阿湖姫から聞いたことを殿に伝え、小垣城から高山の様子を探らせるのがよいと進言します。

殿は成之、小平太二人を小垣へ向かうよう命じます。



高山家の長沢城では、婚儀の準備がすすんでいます。

唯は女官が着替えさせようとするのと必死で拒んでいます。

唯と女官が争っていると、白い煙が部屋を覆いまったく見えなくなります。

女官は白い煙が充満して混乱しています。

唯はこの煙は尊のつくった金のけむり玉だと分かり、若君が使ったんだと察知します。若君がもうすぐ助けに来てくれるとニヤけています。

しかし、唯の危機は続きます。遠くから不吉な音を立ててジワリジワリと近づいてくる者がいます。宗熊です。

宗熊は部屋に入ってきて、畳を擦りながら唯を探しています。

唯は宗熊が徐々に近づいてきているのが、畳を擦る音で分かります。怯えながらも宗熊が側に来たら、手当たり次第パンチを繰り出すつもりでいます。

唯の肩に手が触れます。

唯は拳を握りしめ、多分いるはずの方向にパンチしようとすると、グッと手を掴まれてしまいます。

「唯 わしじゃ」

唯の耳元で若君がそっとささやきます。

若君の背中におぶさって唯は長沢城を脱出します。

外では、悪丸が吹雪と待機していて、三人とも城門の外まで出ることができ、見事に脱出に成功します。

すぐに門番が今の三人が怪しいことに気づき、後を追いかけてきます。

唯は吹雪の手綱と悪丸の手を引き駆け出します。

道を進めば高山の砦があり、右へ行くと川と、山越えをして小垣を目指ししか逃げ道がありません。



高山の長沢城では殿が、松丸義次と阿湖姫が城から逃げ、牛背山に入ったと知らせを受けます。そして、また別の家臣から報告を受けます。羽木家に送りこんでいた間者によって、捕らえた姫は阿湖姫ではないこと、松丸義次と名乗って長沢城にやって来た者は羽木家嫡男忠清であることを知ります。

高山の殿は衝撃を受けます。宿敵羽木忠高の倅が目の前にいたのにみすみす逃してしまったと悔やみます。忠清を何としても羽木領に帰すな、山狩りをせよと命令を下します。



若君は唯を救出した後、どのようにして羽木領に戻るのか計画しておらず、山中で唯と悪丸に苦労をかけてしまっていることを悔いています。

唯はと言うと、若君とこんなに一緒に居たことはなかったので、状況を楽しんでいます。



山中二日目。

当てにしていた道が滝によって閉ざされ、なかなか勧めません。水しか口にしていません。

唯はそんな時の若君の様子を見て少しだけ若君を振る舞いの土台を知ります。

悪丸が寺を見つけます。

寺を訪れ、和尚から芋粥でもてなされ、湯と一晩の寝床を用意してもらいます。

若君は寺に迷惑がかかるといけないと思い、素性を明らかにします。

事情を知った和尚はそれでも一晩休んでいくようすすめます。



和尚の弟子の一人白念が姿を消します。

白念は高山に召し抱えてもらう目論見で高山軍に密告に走ったようです。

もう一人奇念という弟子がいます。

唯が和尚に奇念ではなく白念ですかを念を押して訊くのが面白いです。

若君、唯、悪丸、和尚と奇念は寺を出て、羽木領を目指します。

歩きながら唯は人は見かけで判断してはいけないと反省します。



和尚が道案内をして進みます。今いる大手山を越えれば小垣が見えると言います。

唯は大手山と聞き、バスハイクで来た山だと気がつき、もし現代で若君に出会っていたらと妄想します。



平地を見下ろせる開けた場所にたどり着くと、奇念が声を上げます。

川を挟んで羽木軍と高山軍がにらみ合っています。

高山軍は伏兵を潜ませています。羽木軍がそのまま進むと全滅してしまう可能性のある布陣です。

若君は両軍を見て、高山に降ると言います。

唯は若君を止めます。

若君はこのままだと羽木軍が全滅してしまう。それを阻止する手立ては他にないと言います。

唯はあることをひらめきます。奇念に今立っている場所からむこうの羽木軍までまっすぐ行けばどのくらいの距離? と聞きます。

奇念は、五、六里だと言います。

唯が計算していると、

「ならぬ」

と若君が言います。

若君は唯の考えた作戦は許さぬと言います。

若君は高山に降るしか手立てはないと和尚に話しています。

再び、唯は若君にすごくいいこと思いついたと言います。

唯は若君が自分に注意を向けている間に、悪丸にでんでん丸を使わせて若君を気絶させてしまいます。

唯は始めに思いついたとおり、羽木軍まで直線で駆けていくことにします。



羽木軍では成之と小平太が言い争っています。

若君が長沢城から脱出したというところまでは情報としてつかんでいます。

大手山のどこかにいるはずだという情報を知り、高山方の兵は若君を高山領から出さないためだと判断し、小平太は一気に攻め若君を救おうとしています。



唯は山を下り、伏兵が待機している麓までたどり着きます。甲冑を奪い、川に向かおうとすると、見覚えのある顔を見かけます。成之のところにいた坊主と密談をしていた高山の使者です。坂口殿と呼ばれ、会話の中で一気に羽木家を攻め滅ぼすと言っているの聞きます。



和尚一行は悪丸が若君をおぶって小垣を目指しています。

若君の意識が戻ります。

若君は唯が悪丸に若君を守るようにと尊の道具を置いていったことを知ります。



唯は羽木軍がすぐ目の前にいる川を挟んだ高山軍の先頭にいます。戦が始まれば止めるのは無理だと思い、イチかバチかで羽木軍に向かって走り出します。

成之が一人高山軍から飛び出して走ってくる兵を見て、足が速く、唯之助ではないかと言います。

一発の弾が唯の肩をかすめます。その衝撃と痛みで唯は倒れてしまいます。

羽木軍はなんとか唯を回収します。



銃声は若君の耳に届きます。不安が頭をよぎります。



羽木軍の本陣では助けられた唯が高山軍の状況を説明します。

成之は作戦を考えます。

唯は成之について行くと言いますが、肩を撃たれて傷口が腫れ、熱が出て倒れてしまいます。

唯之助を手当せよと木村政秀命じると、成之は妻女に言うて奥で唯之助を手当してやれと言います。

木村と小平太は成之がなぜそう言うのかわかりません。

成之は唯之助は女子だと明かします。

木村は成之は思い違いをしている、確かめればわかると唯に近づこうとすると、

「止めたがよい」

と成之は唯之助が若君にとってどんな存在か説明します。

小平太は成之の説明に思い当たることがあると言い、木村は納得し唯之助を奥に連れていき妻女に手当させます。

木村は妻女から唯之助が本当に女子であることを確認し、妻女に唯之助が若君の特別のご寵愛の姫だと言います。

妻女は驚きます。

続きます。



森本梢子 アシガール 7巻
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2017年11月4日土曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 4巻

●第13話
白雪は見張り台の一番高いところから湖に向かって飛び降ります。
ちょうどそのときオビが見張り台に到着し、兵たちに白雪の居場所を聞くと、白雪は見張り台の一番上にいるというので、見張り台を見上げると、白雪が窓から飛び降りようとする瞬間を目撃します。
オビと兵は湖に向かって落下する白雪を驚きの表情で見ています。
水面に上がってきた白雪はオビに鈴を湖に落としてしまったことを伝えます。オビは状況を把握し、白雪と鈴を探します。

残り時間はあと2分。
木々がボソッと独り言をつぶやき、ミツヒデはありえなくなくもない思い、白雪から遅れて見張り台に向かったオビに託します。
ポポは約束通り、署名入りの文書と鈴を持ってキハル・トグリルの元に戻ってきます。
全ての条件を満たし、キハルの鳥は国の通信手段として導入され、それとともに領内の鳥の保護も約束されます。
鳥のポポは全員の署名と報告書も持って帰ってきました。

報告の内容を読んだゼンは直ちにココクの見張り台に向かいます。
ゼンは怒りが爆発しそうな表情です。

考試に立会ったをザクラはイザナ殿下に報告します。
イザナはこの考試はゼンだけによる判断で行われたものではなく白雪の何かしらの行動が加わって行われたものだと考えているようです。
もうしかしたら、領民と領主の仲裁はイザナがゼンに仕向け、ゼンがどう裁定するのか見てみたかったのかもしれないと思いました。
イザナは今後ゼンをどうしていくのか楽しみです。

ゼンは白雪の言葉がうれしかったようです。
「ゼン殿下が本心で動けない時があるなら自分は殿下をそんな目には遭わせない」
白雪は城の中にいるといっても、そうそうゼンに会える機会はないはずで、ここまでゼンの気持ちがわかっているのは、白雪とゼンは出会わなければならなかったとしか言いようがありません。


●第14話
キハル・トグリルとゼン、ミツヒデ、木々はキハルの領地に向かいます。鳥を国の通信の手段として採用したことを領民と報告し、今後のことを交渉するためです。
交渉時のミツヒデと木々の役割分担が好きです。空気で互いが何を求めているか分かりあえていることが伝わってきます。

夜、ゼンはミツヒデに白雪への思いを打ち明けます。

ゼンとミツヒデと木々は城に戻り、ゼンは白雪と会い、互いの思いを確かめ合います。


●第15話
回想です。
ミツヒデがゼンに初めて会ったときのことが描かれています。


●第16話
回想です。
ゼンが人に対して気持ちを打ち明けることを躊躇する出来事が描かれています。
ゼンとミツヒデの主従が特別なものになったいきさつもわかります。


●第17話
ゼンとミツヒデと木々とオビと白雪でユリカナという街に遊びにいきます。


ゼンと共に歩いていくかたちができました。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 4巻
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2017年11月2日木曜日

ななじ眺 ふつうの恋子ちゃん 2巻

夏目恋子は二宮剣のことが少し気になって見ていた人から、次第に目で追うようになり、相手も想ってくれていればいいのになと思う存在になっていきます。

恋子にとって剣は「ふつう」という自分で決めた姿勢を捨ててもいいと思える存在のようです。



恋子は剣におでこにキスされて、もう「ふつう」の状態ではいられません。「ふつう」が剣によって乱されてしまいます。意識せずにいようとすればするほど意識してしまいます。

「ふつう」を取り戻したい恋子はこれまでよりも特に注意して「ふつう」に過ごそうとします。だけど、恋子の「ふつう」は剣のなんでもないことで一瞬で崩れてしまいます。



恋子は「ふつう」と取り戻したくて、意識していないということを言葉にするため剣におでこにキスしたことを忘れてと言います。剣は忘れるのは無理だと言います。

「オレ あんなことしたの初めてだもん」

と言われ、恋子は自分も忘れることなんてできなくてさらに「ふつう」から遠ざかってしまいます。



剣の出来事すべてが恋子の心に引っかかりを残します。剣のことを何も知らないのに交わした言葉、表情が何度も何度もよみがえってきます。

恋子は忘れようとすればするほど、しっかり心に残り記憶されます。

佐藤くんには感じることのなかった気持ち、今まで感じたことのない気持ちが、剣とのなんでもないことを含め、グッと感情が動くことに、それが恋なのか? と思い、もしそうなら、「ふつう」でいられなくなると動揺してしまいます。



恋子は恋をして、体温が上がるという恋子の考える「ふつう」ではない状態に落ちつていられません。

剣は恋子にクリスマス予定はある? と誘います。恋子は即答で誘いを断ります。

恋子のクリスマスの予定はないので、なんとか埋めようとします。心当たりのすべてがうまくいかず、空白になります。

恋子はクリスマスに剣と過ごしたい気持ちはあるものの、何かがその気持ちを動かそうとしません。それは「ふつう」でありたいからなのか、剣を意識する気持ちが何なのか気づけていないからなのか、まだわかりません。



恋子は剣へクリスマスのプレゼント買ってしまいます。いつ渡す気なんだろう?

恋子は目で剣を追いかけるようになります。気がついたら存在を探したり、追いかけたりするのはもう「ふつう」ではありません。

ふたりは学校では会話はせず、時々剣から恋子へ携帯にメッセージが送られてきます。恋子はかわいく返信したい気持ちと、「ふつう」が一番だからかわいく演出する自分は「ふつう」ではなくなってしまうという気持ちとで揺れ、結局「ふつう」にとどまることにして、ふつうの短い文を送り返してしまいます。



クリスマスの日。

恋子は結局予定を埋めることはできず、家にいます。

剣はこの日、バイトを入れていて、恋子とバッタリ出会います。友達と予定があるって言ってたのに、どうして家にいるの? と恋子は言われてしまいます。

恋子は言い訳にならない言い訳をし、剣のほうこそクリスマスになんでバイト入れてるの? 聞き返します。

剣は、

「誘った子からは断られてし」

と恋子を見て言います。

恋子と剣の会話を聞いていた母親は、素直じゃない娘のために少し助けてあげます。



二人でクリスマスの夜に歩くことに、剣は、

「ラッキー」

と素直に嬉しさを言葉にします。

一方、恋子は「ふつう」ではないこの状況をうだうだと考えています。恋子は素直じゃないです。それでいて、剣が他の人に取られてしまうかもしれないと感じると、剣との距離が離れるのは嫌だとはっきり主張します。やっかいな子です。



剣は今度は初日の出を見に行こうと誘います。恋子はようやくこれは恋だと認めたらしく、即答で返事します。

これは恋だと認めた恋子は剣に対する想いが同じように、剣も想ってくれてほしいと思い始めます。



恋子は「ふつう」を一旦封印することにしたみたいです。

恋子は「ふつう」でなくなってもいいと思うほど、人を好きになるなんて自分の人生に起こるなんて考えても見なかったと思います。

「ふつう」ではなくなった恋子がこれからどうしていくのか楽しみです。あと、剣は恋子の母親から恋子の気持ちは伝わったので、剣はどうしていくのかというのも楽しみです。

続きます。



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2017年10月30日月曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 3巻

「よほど何かゼンに必要とされるものがあなたにはあるのだろうね」
「…人の目にも明らかなものがあるかどうか 私には答えられません」



●第9話
イザナ殿下に問われ、白雪はどうあるべきか考えます。
ゼンに必要とされるもの。
誰が白雪を見ても納得のできるものは持っていません。
ゼンの友人。
宮廷薬剤師見習い。
ウィスタル城において、白雪が明らかにできる身分はこの2つです。
白雪は今後どうすべきか悩みます。

ゼンの元に厄介な知らせがやってきます。
ウィスタル城にタンバルン王国のラジ王子がやって来るというのです。
第1話で白雪を愛妾にしようとしたラジ王子です。
イザナ殿下がこのタイミングでラジ王子を国に招待するというのです。
ゼンは兄イザナが何の理由もなくこのタイミングでタンバルンの王子を招待したとは思えません。ゼンはイザナの真意を探ろうとします。

白雪はゼンの手紙でラジ王子がウィスタル城にやって来ること知ります。ラジ王子の到着は20日後。白雪の動揺はさらに大きくなります。

イザナとゼンでラジ王子を出迎え、ゼンはラジに挨拶します。ラジにとってゼンは弱みを握られているので二度と会いたくない人物です。言葉がしどろもどろです。
白雪は城内でラジと対面する機会はなく、その点では安心です。しかし、イザナとゼンとラジの間で何が話されるのか、白雪は気になって仕方ない様子です。

白雪の様子を見て、オビが中の様子をのぞいてみようと、白雪の手を取り、兵の警備をすり抜けて、茶会が催されている会話が聞き取れるところまで連れて行きます。

イザナはゼンの前で(おそらく白雪が近くにいることを確認した上で)、ラジに白雪のことを尋ねます。
ラジはゼンとの約束を守ろうとするあまり、周囲をざわつかせる爆弾発言をしてしまいます。
それを聞いたゼンは焦ります。ラジを連れ出し、二人で話をします。
ラジは状況が飲み込めていません。ただ、自分の立場が悪くなるのだけは避けたいらしく、白雪を自分が迎えてもいいとゼンに言います。
ゼンはラジの申し出を断ります。
白雪がここにいたいという思いをゼンが叶えているだけだといいます。
この先のことはわからない。
今できることをする。
そのために人は動く。
と、ゼンは言います。

白雪がクラリネス王国に来たのは、ゼンの近くにいたいため。
ウィスタル城にいられるのは白雪がゼンから必要とされているからではなく、ゼンの名によっていられるという事実。
この先、白雪はゼンに何を与えることができるか。
白雪はイザナに何も答えられませんでした。そして何度も自分に問いかけます。


●第10話
白雪はゼンと会い、話し、次第に方向性が見えたような気になります。
怯まなければいい。
今できることは怯まなければいいと思うこと。後で答えはついてくるはず。白雪はそう思うようになります。

ゼンは昔の記憶を振り返ります。イザナの手腕に恐れ入り、気持ちを新たにした出来事です。
イザナの言葉にゼンの身体には熱い衝撃が走ります。
兄がいずれクラリネス王国の王になる。
その時、弟であるゼンはどうありたいか。
ゼンの決意はあの時のまま、今も実現させるため日々鍛錬に励んでいます。

ラジ王子の投げた爆弾発言はウィスタル城内のあらゆる場所で話題になっています。
白雪にとって居心地の悪い状況になりつつあります。

イザナはゼンが白雪を側に置くことは特に不快に思っている訳ではないようです。
ゼンが白雪を大事にしすぎていることに懸念しているようです。
イザナは王族を取り巻く諸侯がゼンの評価を落としかねない要素は事前に排除したいと考えているようです。
しかし、ゼンはイザナに反発します。そんなゼンに対してイザナはどこかうれしそうです。ゼンの成長を喜んでいるようです。

ラジ王子は、ゼン、イザナとの会談に精神がすり減り胃が痛くなり、治療室に向かう途中で白雪に出くわしてしまいます。
白雪と交わした会話はラジにとって変化する大きなきっかけを与えることになります。

白雪とラジの会話を聞いていたイザナは白雪にもう一度、
「あなたはラジどのといるのが向いてると思うなあ 俺のような男がいる国は嫌だろう」
とつきつけます。
今度の白雪はイザナに怯むことなく、
「私はタンバルンに帰るつもりはありません」
「ゼンと会えた国です」
と答えます。
イザナの表情がやわらかくなります。

イザナはどうして白雪がゼンの側にいることについて、しばらく様子を見ようと思ったのかは直接描かれていません。何がそうさせたのだろう? ラジと白雪の会話に何か思うことがあるのかもしれません。


●第11話
ゼンと白雪の仲を探ろうとする勢力がひっきりなしに白雪を監視しています。
白雪を通じて、ゼンとつながりを持とうとする者たちがいくつも現れはじめました。
そこでゼンはオビに白雪の護衛を指示します。
オビは第3話でハルカ侯爵の指図で白雪を脅した前科があります。
白雪はゼンが言ってきたことなので、やや警戒心を持ちつつ、薬室の仕事を手伝ってもらうようになります。

オビは白雪を見て、言葉を交わして、ゼンが側に置こうとする理由がなんとなくわかってきます。オビは前の雇い主であるハルカ侯爵が近くにいるのに、どうしてゼンに仕える気になったのだろうかと不思議でした。
オビはゼンや白雪やミツヒデや木々を見ていると面白そうだという理由で居座っただけだという独り言で、オビもゼンや白雪と同じものに惹かれて、そんな二人を見ていたくなって、自分ができる役割で力になろうとしているんだなと思いました。

ゼンはオビに城内における肩書、身分を与えます。
クラリネス第二王子付伝令役。
オビがゼンの意向により白雪の護衛についていることを、白雪に関心を持つ家に知らしめるという効果は絶大で、白雪の監視はなくなりました。


●第12話
新展開です。
仲裁の申し出があり、ゼンは訴え内容から当事者同士の話し合いが妥当という判断を言い渡しました。
訴えは領民が領主に対し、鳥を保護してほしいというものです。

白雪とリュウが薬室の外で仕事しているとろこにオビが現れすこし話していると、どこからともなく青と緑の鳥が飛んできてリュウの側で羽を休めます。リュウは集中すると周囲の音が一切遮断されるので、鳥の羽音など聞こえるはずはなく、視界に急に鳥が現れびっくりしてしまいます。
鳥はキハルが王城に一緒に連れてきたキハルの友人ポポです。
ポポが存分に羽を広げられるようこの広い場所に連れて来たようです。
先ほどのゼン殿下の仲裁の判断が望ましい結果を生まなかったので、部屋に閉じこもっているより外で沈んだ気持ちをなんとか変えたいという思いもありそうです。くやしさを必死にこらえています。

キハルは白雪を見つけ、赤い髪に驚き、白雪の隣の先ほどの仲裁の場にいたオビに気がつきます。
キハルは仲裁の判断が気に入らず、
「位の高い人間は位のない人間を相手になんかしないのよ」
とゼンやブレッカ子爵に直接は言えない腹立たしい気持ちを吐き出します。
白雪は何があって、キハルがそんなことを言うのかはわかりません。
だけど、
「それは ゼン殿下の人柄を指す言葉ではないよ」
白雪は知っていることに対して違うことはきちんと否定します。
白雪の言葉にオビは不意を突かれたようで、彼女はいつでもどこでだってゼンのことを自分が知っているくらい知ってほしいと思っている事に気づきます。

キハルは誰かに聞いて欲しくて、白雪とオビに王都にやって来た理由を話し始めます。

ゼンは感情としてはキハル、領民たちに協力したい思いです。領民の肩を持つことは干渉になるので口出しできません。できないことが腹立たしそうです。

キハルから事情を聞いた白雪は、ゼンと同じ思いで鳥を守る手立てはないか探ります。白雪に笛を使って鳥を操る技術でどうにか救うことはできないかと持ちかけられ、オビはゼンに白雪が言ったことは伏せて、笛を使い鳥を操る技術を話します。

オビの話からゼンは、一晩考え、仮に意のままに鳥を操ることができるなら、遠く離れた場所との連絡手段に使えはしないかと、鳥を保護できる可能性を探ります。

翌日、ゼンはブレッカ子爵とキハルを再び呼び、昨夜考えたことをキハルに伝え、可能であることを聞くと、その日のうちに長距離間で鳥を飛ばす考試を行いたいと提案します。

キハルは鳥の保護につながるかもしれないゼンの提案に希望を託します。ただ、城の中にキハルが信頼でき、協力してくれそうな人がいません。キハルは白雪を指名します。

考試内容は、

城より西に直線で役10キロの地点――馬で往復40分を要するココクの見張り台に文書を持たせた鳥を飛ばし見張り台にいる者がその文書を受取署名をした後鈴をつけ城へ帰す
これらを確実に25分以内に行う事
条件を全て満たせば認定とし 満たせぬ場合は白紙とする


ザクラも考試の証人として立ち会っています。ザクラはこの考試より、白雪が参加していることに興味を持ちます。
白雪が考試に参加することを知ったブレッカ子爵はキハル・トグリルに、
「殿下のご友人を味方につけるとは考えたなあ トグリル」
「まったく小賢しいことだ」
と吐き捨て、あきらめの悪いヤツだと言わんばかりに態度です。
しかし、ゼンはブレッカ子爵の態度に穏やかに対応します。
ブレッカ子爵は、
「……では殿下 私もココクの見張り台に同行させて頂きたい」
「疑うわけではありませんが… 娘らに不正があっては殿下の面目が立ちますまい」
ゼンへの不快感を隠そうともしません。

一連のブレッカ子爵の言動に反応したのはザクラです。ザクラが言うまでもなくゼンの側近のミツヒデと木々はブレッカ子爵への怒りを必死にこらえています。
オビは、
「やれやれ…… 動きづらいのね国の人間ってーのは」
そんなミツヒデと木々の様子をみて、感想をもらします。

ブレッカ子爵が白雪を共にココクの見張り台に来たのは、白雪に取引を持ちかけるためでした。
ブレッカ子爵の取引を白雪は当然拒絶します。
自分の価値観が世の常識と信じているブレッカ子爵は白雪が取引に乗ってこないことに逆上し、白雪の首から提げている鈴、キハル・トグリルの飛ばした鳥ポポが飛んできて、帰すときにつける鈴をひきちぎり、湖に投げ捨ててしまいます。
ブレッカ子爵はなんとしてもこの考試を失敗させる気です。
ブレッカ子爵は時間まで白雪が何もできないように見張り台の部屋に閉じ込めてしまいます。

白雪はキハル・トグリルの鳥を守りたい思いと、ゼンのために動きます。
白雪が閉じ込められた部屋は見張り台の最上階で、湖に向かって窓があります。窓は簡単に開けることができます。白雪は窓を開け身を乗り出し、湖に向かって飛び降ります。


白雪の台詞がかっこいいです。白雪のゼンに対する思いはブレがありません。
続きます。


あきづき空太 赤髪の白雪姫 3巻
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2017年10月28日土曜日

森本梢子 アシガール 6巻

唯は毎日、尊に燃料はできたか、学校の歴史の木村先生に羽木家についてその後何かわかったか、と聞き続けています。

尊は早く完成させるから、邪魔しないでと言います。

木村先生は唯に怯えています。唯の姿を見かけると、さっと存在を消し去ろうとします。それでも唯は木村先生を見つけると、人間離れした速さで木村先生に近づき羽木家について聞こうとします。

木村先生は歴史的な発見ではなく、小垣市の古戦場を発掘調査している知り合いが持ってきたという面白いものを唯に見せてくれます。

古い写真です。

木村先生は写真に写る人物が唯に似ているからと見せてくれたのです。

唯には見せられた古い写真が何であるかわかっています。自分の部屋の写真立てに入れていた写真です。

写真は若君が戦国時代に持っていったのです。


自宅で家族に木村先生からもらった古い写真を見せます。

父親はこの写真がどこでみつかっのか唯に聞きます。

唯は小垣城のあった所の近く、戦場のあとで見つかったと言います。

尊と両親はそれぞれの考えを話します。

尊は若君がうっかり落としたんだと言います。

父親は若君がいらなくなったから捨てたんだと言います。

母親は若君がおじーちゃんになるまで肌身はなさず持っててくれたと言います。

家族は涙ぐんでいる唯がさらに悲しまないように言います。



夜、唯は夢を見ます。

若君の素敵な笑顔が出てきます。

若君の素敵な笑顔は唯に向けられたものではなく、べつの女子に向けられています。唯は女子の後ろ姿で松丸阿湖だと確信し、嫉妬の炎に燃えます。

ふと屋根に目を向けると、刺客が若君を銃で狙っています。銃が放たれた音で唯は目を覚まします。



唯は本当に爆発したような気がし目が覚めます。

外から、

「尊!!」

と声が聞こえます。

唯は尊に何かあったと、庭の実験室に急いで行きます。

実験室が派手に爆発を起こして無残な姿です。

両親は残がいをかき分け尊を探します。唯は尊がもしかしたら…とただ見守っています。

厚い扉をこじ開けて防護服を着た尊が出てきます。無事です。

父親は尊を叱ります。

尊は、どうしてももう一度唯を若君に会わせてあげたくて燃料を作るのに無茶をして実験室を爆発させてしまったといいます。

母親が無茶をして燃料づくりに失敗して全部壊してしまったのねと言うと、尊は機械は壊れたけど燃料はできたと言います。

2回分。行って帰ってくる分の燃料ができたと言います。

唯はもう一度戦国時代に行けると分かり歓喜します。

両親は唯が戦国時代に行くのは大反対です。

尊は唯があきらめそうにないし、何年かかっても行く気だし、その時までずっとあのTシャツを着る気だし、と言います。


尊の台詞に、読み返してみると唯は現代に戻ってきてからずっと若君が着ていた変なプリントのTシャツを着ていました。気がつきませんでした。


両親が止めるのを振り切って、唯は戦国時代へ行く準備をします。

尊は唯のために新たな道具を発明します。金のけむり玉という煙幕の強力版で、百メートル四方を一時間真っ白にすると言うものです。

出発する準備万全の唯を見て両親はあきらめます。

ただし、母親は必ず帰ってくると約束してと言います。

唯は素直にわかったと言います。懐剣を抜きます。

抜いてから唯は、

「あっ でも お母さん もし 帰って来なくても心配しないでね だって ほら その時は 首尾よく 若君と結婚したってことじゃん?」

と言い、さっきの、わかったという言葉はどこに行った? という台詞を言い終わらないうちに姿が消えます。

両親はあきれ、尊は、お姉ちゃんはあーでなきゃと、目を閉じて姉らしさを噛みしめています。



唯は戦国時代に戻ってきます。5か月ぶりの戦国時代のなつかしいにおいに、本当に戻ってこられたことに感動しています。

すぐにでも若君に会わなくてはと黒羽城に向かいます。

走っていると、

「ぎゃあああ」

と悲鳴が聞こえてきます。

唯は恐る恐る声のした方へ行くと、黒装束の男たちに襲われている集団を見つけます。必死に抵抗しています。

唯は尊が作ってくれた金のけむり玉を早速使い、駕籠の集団を安全な場所まで連れていき救います。

唯は助かったとお礼を言われます。

駕籠の中から声がして、

「私からも礼を申します 履物を」

と、駕籠の中から出てきたのはかわいい姫です。

唯は話をしていくと姫が、松丸阿湖だと知ります。

唯は想像していた松丸阿湖と違うので、もしかしたら若君が阿湖姫に会うと好きになるかもしれないと不安になります。若君に会わなくてはと黒羽城の城門にやって来ます。

門番は婚礼が終わるまで誰も入れてはならぬと唯を通してくれません。


唯は天野の邸に行き、おふくろ様に会いに行き5か月間の状況を説明してもらいます。

唯はおふくろ様に若君の婚礼を阻止しに来たと言うと、おふくろ様に若君がご承知なされたことだから邪魔をしてはなりませんと言われます。戦国時代の人たちといろんな関係性ができた今、唯は自分の意思だけを押し通すことはできないと涙します。

どうすることもできない唯は、あと1か月は現代に帰ることができないし、天野の家で若君を祝うのはつらすぎるので、梅谷村に行くと言います。

一人で大丈夫かというおふくろ様に唯は、子供のいないお人好しの六助夫婦に泣きついて、ご飯毎日食べさせてもらうと言います。

おふくろ様の眉毛はつり上がっています。


唯はトボトボと梅谷村までの道を歩きます。休んだり、ぼーっと考え事をしたりしながら歩いていると、馬が走る音が聞こえてきます。

何だ? と音がするほうを見ると、若君です。

大声で、

「若君ィィィ!!!」

と叫びます。

若君は馬をとめます。自分を呼ぶ声が唯に似ていたからです。

もう一度、唯は若君と叫ぼうとしたら、

「若君様!」

と若君が来た方から女子の声が聞こえます。

唯は声の方を見ます。若君も見ます。

阿湖姫が馬に乗って若君の後を追って来たのです。

唯は小さくなって隠れます。

若君と阿湖姫は少し話し、城の外は危ないから城に戻ろうといいます。

唯は若君と阿湖姫の後ろ姿を見送ります。唯にはとてもお似合いのふたりに映ります。

若君は阿湖姫との城までの帰り道に、昨夜高山の刺客に襲われたことをたずねます。阿湖姫は危うく皆殺されるところを唯之助と申す者に救われたと言います。

若君は唯之助という名を聞いて静止します。どのような年格好だったかと聞きます。阿湖姫の話す唯之助は若君にとって心当たりがありすぎる人物です。

先ほどの、「若君ィィィ!!!」という声も気になり、もう二度と会うことはできないとあきらめていたのに、少しの可能性が生じだと思います。

阿湖姫の従者がやって来て、若君は阿湖姫を従者に任せ、また来た道を戻ります。


若君と阿湖姫を見送った所で唯はひとり泣いています。阿湖姫はかわいいし、若君を祝えないし、とどうにもならない愚痴をブツブツつぶやいて、ようやく梅谷村に向かおうという気になります。

草むらから出ていこうとすると、若君がじっと唯を見ています。

阿湖姫と二人で城に向かったはずの若君が唯の目の前にいます。

唯は若君にびっくりします。

若君はいるはずのない人がいるのだから唯と比べものにならないほどびっくりしていると思います。

唯には自分をじっと見る若君の表情が怒っているように見えています。

ところが、若君は唯を抱きしめます。

若君は唯に再び往き来できるようになったのかと聞きます。

唯は尊は二回って言ったからあと一回です、と言います。若君に触れることができて幸せそうです。

若君は、

「では帰れるのじゃな」

と言います。唯はハッと我に返り、嘘をつかれて現代に帰ってしまった前回のタイムスリップを思い出し、

「若君!! 今また どうやって私を帰そうかなって思ったでしょ!!」

と言い、立ち上がります。池へ向かって走っていき、池に懐剣を投げ捨てます。

若君は唯の行動に驚き、池に入って懐剣を探そうとします。

唯は若君を引き止めます。

「私 決めたんです!! 今度若君に会えたら もう あっちには帰らないって! ずっと若君の側にいるって! 会えなくなるのはもう二度と嫌だからっ」

と、婚礼の邪魔をしに来たと若君に言います。

「されど」

と若君は唯の家族のことを思い、言葉を続けようとするけど、

「わかってます!」

と唯が若君の言葉を遮り、

「お家のために松丸家との縁談断れないんでしょ? いいんです! 婚礼の邪魔をしに来たけど それはもうあきらめました!」

唯が戦国時代に来た理由が分かり若君の口元はゆるみます。

若君は唯に松丸家との婚礼は行われないと言います。そして、唯のほほに手をそえて、

「お前がこれほどの覚悟で戻ったからには 他の者を娶ろうとは思わぬ」

と言い、顔を近づけてきます。

唯は目をつぶる場面だと目を閉じて待っています。


間の悪いことにこの場面に小平太が登場します。

小平太は若君に城に戻るように言います。松丸家より婚礼を見合わせたいと言ってきていると伝えます。

若君は予想通りの事態に平常心です。

小平太の邪魔によって唯がずぶ濡れになってしまい、若君は自分の射籠手を唯に着せてあげます。

若君の様子に小平太がなぜ? という顔をします。


唯は天野のおふくろ様のところに戻ります。黒羽城までの道で急な展開をおさらいします。冷静にあった事ひとつひとつ考えてみるとプロポーズされたことに気づきます。

おふくろ様は唯が梅谷村に行くと言ったのに、戻ってきた上に若君にも会ったと知り、唯を叱ります。



阿湖姫は松丸家の世話役石倉から明日の婚礼を取り止めると言われます。黒羽城内で大変な噂を耳にしたからだと言います。

忠清(若君)様は羽木家の家督を継ぐ気はなく、兄の成之様に譲りたいと申しているという噂です。

阿湖姫はそれでも構わぬと言います。

かめと石倉は忠清様が跡目ではないとなると婚礼は取り止めとなり帰ることになると言います。そして、松丸家と羽木家との盟約も破棄になると言います。

阿湖姫は落胆します。



唯は厩にやって来ます。仲間は久しぶりの再会もそこそこにいつもの仕事にかかるよう言います。

阿湖姫が厩に若君を追いかけるため馬を借りたお礼にやって来ます。

唯は阿湖姫と名前が聞こえ、コソコソとその場から逃げ出そうとします。

阿湖姫は後ろ姿で唯之助であると気づき、声をかけます。唯が羽木家の者だと知ります。もう一度会って礼をしたかったと、馬番の組頭に唯を連れて行ってもいいかと許可を取ります。


唯は困った表情です。阿湖姫は話してみるととてもいい子です。

唯はつらくて、阿湖姫に特に若君の話の相談をされるとどう答えていいものか困ります。

唯は阿湖姫に帰り際には明日も来てほしいと言われ、断りきれなくて曖昧な返事で去ります。



翌日、唯は阿湖姫に今日は用事があって城下に行きますと言います。阿湖姫は唯に一緒に連れて行ってほしいと言います。

唯は連れて行くことにします。


城下にはたくさんの高山の間者が潜入していて、隙あらば阿湖姫をさらおうと狙っています。

もうすぐで目的地に到着というところで、高山のスパイに阿湖姫がさらわれてしまいます。

唯はなんとか阿湖姫を奪い返します。逃げるにも阿湖姫の足が遅くて逃げ切れそうにありません。注意深くまわりを観察すると、阿湖姫を狙っている者がそこらじゅうにいます。

唯と阿湖姫はなんとか隠れます。唯は着ているものを交換しようと言います。唯は自分が姫のふりをして阿湖姫を狙っている者を引きつけるから、阿湖姫は安全になったら城に戻ってくださいと言います。

唯は着ているものを脱ぐと、阿湖姫が、

「こ…こなた 女子…か?」

と言い、女子だと阿湖姫にバレてしまいます。

唯は阿湖姫の格好をして逃げます。高山のスパイは姫を見つけたとじわりじわり追い込むつもりです。

唯は絶妙の距離をつくり、逃げ続けています。高山のスパイは唯に追いつけない理由がわからないようです。

唯は捕まることはないと油断してしまいます。挟み撃ちされて高山に捕えられてしまいます。



夜になって黒羽城では阿湖姫がいないと大騒ぎになります。

若君は城下を探すよう指示します。

阿湖姫が男のなりで戻ってきます。阿湖姫は若君にことの次第を報告します。

阿湖姫からもたらされた話に唯之助が絡んでいることで、若君は冷静さを失います。自ら馬に乗り唯を探そうとします。

家臣は若君に唯が高山の手に落ち捕えられれば、男であるとすぐに分かり、その場で切り捨てられているだろうから、無闇に探しても無駄だと言います。

若君はそう言われて冷静さを取り戻し城に戻ります。


若君は阿湖姫を呼び、2、3質問をします。そして、高山は唯を阿湖姫だと思い、城に連れて行ったと確信します。



二日が過ぎます。

松丸家より阿湖姫の兄義次が黒羽城にやって来ます。

羽木の殿と若君が義次に会います。

義次は二日前に高山宗鶴より書状が届いたといいます。

高山の嫡男宗熊と阿湖姫の縁組を承知していただきたいという内容です。

義次は阿湖姫はここ黒羽城にいないのかと聞きます。阿湖姫が黒羽城にいることを知り、父に急ぎ使いを出し、高山の申し出を断るようにすると言うと、若君が少し待ってほしいと言います。


若君は唯を救うため、一計を案じます。


若君は義次が滞在している部屋を訪れます。

義次は阿湖姫から真相を聞き出していて、助ける手立てがあるなら協力すると申し出ます。

若君は義次にそのことについて頼もうと思っていたので、協力してもらうことにします。

若君は義次に、高山に、

「縁組を承知する」

という内容の返書を急ぎ送るように言います。つづいて、その書状に

「ただし」

「その前に 姫の無事を確かめたいゆえに 二男義次を遣わしたい」

と付け加えてほしいと言います。


若君は義次として単身で高山の城に向かうつもりです。

唯奪還作戦がどう展開してくのか楽しみです。

続きます。



森本梢子 アシガール 6巻
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●関連リンク
集英社 アシガール

2017年10月26日木曜日

やまもり三香 椿町ロンリープラネット 1巻

売れっ子作家と作家の自宅に住み込みで家政婦として働く高校生の話です。

大野ふみは高校生です。父親と二人暮らしで日々節約に努め家計を引き受けています。

ふみは夕食の準備を終え、父親の帰宅を待っています。
帰ってきた父親は浮かない表情で玄関に立っています。
父親は友人の連帯保証人になっていて、借金を肩代わりしなくてはならなくなり、返済のためにすぐにでもお金が必要でまぐろの遠洋漁業船に乗ることになった。そして、いま住んでいる部屋も引き払わなくてはならなくなった、というのです。

ふみは住む家を失います。
父親はツテを頼り、紹介されたのが作家の家の住み込みの家政婦でした。

ふみは紙に書かれた住所に行きます。出てきたのは無愛想な男性で、ふみはその男性が作家の木曳野暁(きびきのあかつき)だと知り驚きます。
木曳野暁は無愛想で、不規則なリズムで生活しています。
ふみが夕食を作っても、
「いらない」
といい、積極的に話しかけても相手にされず、一緒に暮らしていけるか自信がなくなりかけてしまいます。
ふみは住んでいた元のアパートの前で佇んでいます。

木曳野暁はふみを紹介してくれた出版社の担当編集であり、幼馴染である金石悟郎(かねいしごろう)からふみの身の上を聞かされます。

木曳野暁はふみを雑に扱いすぎたと思い、ふみを迎えに行きます。
木曳野暁と大野ふみのふたりの生活が始まります。


ふみにとって、木曳野暁は捉え所のない、気難しい人です。
木曳野暁は朝食を不機嫌な表情で食べ、ふみが話しかけても黙々と食べ続けます。食べていたかと思うと急に立ち上がり、
「籠る」
とだけ言い、仕事場に入っていきます。
ふみはこの家で自分は邪魔な存在なのではないかと思ってしまいます。

ふみは掃除をしていると、木曳野暁の本を見つけます。先生の本を読んだことがなく、ペラペラページをめくっていくと、いつの間にか物語に没頭してしまいます。
ふみは木曳野暁があまりに面白い物語を書くのですこし見直します。

担当編集の金石悟郎がやって来て、ふみは木曳野暁が打ち合わせしている所に居合わせます。
金石は〆切に間に合わせるために、今回は妥協して、次にいい引きを持ってきてはどうかと提案します。
木曳野は妥協はしたくない、自分の中で納得のいかないモノを通したくない、〆切は守るからもう少し考えさせてほしいと、譲れないところをはっきりと主張します。
金石も木曳野のそういう姿勢を知っているので余計なことを言ったかもしれないと木曳野の思うようにやらせようとします。
ふみは二人のやり取りの中で、木曳野の言ったことが格好良いと思います。作家としてそういう思いがあるんだと感心していると、木曳野に呼ばれ、物語で行き詰まっているところを打開するヒントのようなものを求められます。
木曳野から出された問に、ふみはなんとか返答します。
木曳野の表情が険しくなります。朝食のときと同じ表情です。そして、ブツブツとひとりごとを言い、何かがつながったようで、ふみの両肩に手を添え、
「でかしたぞ 娘!!」
と爽やかな笑顔で言います。
ふみは問われてた答えに対して怒られると思っていたのに、自分の言ったことが何らかの手助けになったようだと思い、ホッとします。
金石はふみに、
「変わった奴で 時々 理解し難い時もあるけど 根は単純でただの仕事バカだから まあ よろしくね」
と言います。
木曳野の朝の険しい表情やブツブツ言うひとりごとは、ただ物語を面白く、納得いくものにするため、真剣に考えている時の証拠だったのです。
ふみは自分のことが邪魔だとかいうことではなくてよかったと思います。

木曳野は仕事を終え、居間に来ると、遅い時間なのにふみが起きています。ふみが自分の作品を読んできます。
ふみが物語の感想を言うと、木曳野は少し照れます。
ふみは木曳野がそんな反応をすると思わなかったので、また違った一面をのぞけたことで、この生活が楽しいものになりそうだと予感します。


ふみは洗濯物を取り込もうと庭に行くと、見知らぬ男が立っているのを見つけます。男はふみの下着を盗ろうとしています。下着ドロボーです。
なんとかしようと、角材を手にドロボーを追っ払おうとします。
ところが、ドロボーは恐れることなく、か弱そうなふみに近づき、腕をつかみます。
ふみは怖くて声も出せなくなります。助けてと心の中で叫んだその時に木曳野がふみとドロボーの間に割って入り引き離します。
ドロボーは男が出てきたので、分が悪いと逃げ出します。
木曳野は新聞の勧誘だと勘違いしています。
ふみがドロボーだというと、木曳野は追いかけていき、こてんぱんにやっつけてしまいます。
木曳野はふみに言います。
「オレが守ってやる 頼れ」
ふみはこれまで感じたことがないくらい安心感を感じます。

生まれてはじめて男の人に守られたという経験でふみは木曳野に対して恥ずかしそうです。
ふみの恥ずかしいという気持ちが木曳野との関係をギクシャクさせ、その気持は次第にドキドキするものに変わっていきます。


ふみは初めはこれから一緒にやっていける気がしなかったのに、ぶっきらぼうな木曳野暁のふとしたときに見せる優しさに表現し難い気持ちになり、それが何なのかわからず戸惑ってしまいます。

フキダシの心の声と絵から受け取れる感情の変化を想像するのが楽しい作品です。


やまもり三香 椿町ロンリープラネット 1巻
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