2017年10月30日月曜日

あきづき空太 赤髪の白雪姫 3巻

「よほど何かゼンに必要とされるものがあなたにはあるのだろうね」
「…人の目にも明らかなものがあるかどうか 私には答えられません」



●第9話
イザナ殿下に問われ、白雪はどうあるべきか考えます。
ゼンに必要とされるもの。
誰が白雪を見ても納得のできるものは持っていません。
ゼンの友人。
宮廷薬剤師見習い。
ウィスタル城において、白雪が明らかにできる身分はこの2つです。
白雪は今後どうすべきか悩みます。

ゼンの元に厄介な知らせがやってきます。
ウィスタル城にタンバルン王国のラジ王子がやって来るというのです。
第1話で白雪を愛妾にしようとしたラジ王子です。
イザナ殿下がこのタイミングでラジ王子を国に招待するというのです。
ゼンは兄イザナが何の理由もなくこのタイミングでタンバルンの王子を招待したとは思えません。ゼンはイザナの真意を探ろうとします。

白雪はゼンの手紙でラジ王子がウィスタル城にやって来ること知ります。ラジ王子の到着は20日後。白雪の動揺はさらに大きくなります。

イザナとゼンでラジ王子を出迎え、ゼンはラジに挨拶します。ラジにとってゼンは弱みを握られているので二度と会いたくない人物です。言葉がしどろもどろです。
白雪は城内でラジと対面する機会はなく、その点では安心です。しかし、イザナとゼンとラジの間で何が話されるのか、白雪は気になって仕方ない様子です。

白雪の様子を見て、オビが中の様子をのぞいてみようと、白雪の手を取り、兵の警備をすり抜けて、茶会が催されている会話が聞き取れるところまで連れて行きます。

イザナはゼンの前で(おそらく白雪が近くにいることを確認した上で)、ラジに白雪のことを尋ねます。
ラジはゼンとの約束を守ろうとするあまり、周囲をざわつかせる爆弾発言をしてしまいます。
それを聞いたゼンは焦ります。ラジを連れ出し、二人で話をします。
ラジは状況が飲み込めていません。ただ、自分の立場が悪くなるのだけは避けたいらしく、白雪を自分が迎えてもいいとゼンに言います。
ゼンはラジの申し出を断ります。
白雪がここにいたいという思いをゼンが叶えているだけだといいます。
この先のことはわからない。
今できることをする。
そのために人は動く。
と、ゼンは言います。

白雪がクラリネス王国に来たのは、ゼンの近くにいたいため。
ウィスタル城にいられるのは白雪がゼンから必要とされているからではなく、ゼンの名によっていられるという事実。
この先、白雪はゼンに何を与えることができるか。
白雪はイザナに何も答えられませんでした。そして何度も自分に問いかけます。


●第10話
白雪はゼンと会い、話し、次第に方向性が見えたような気になります。
怯まなければいい。
今できることは怯まなければいいと思うこと。後で答えはついてくるはず。白雪はそう思うようになります。

ゼンは昔の記憶を振り返ります。イザナの手腕に恐れ入り、気持ちを新たにした出来事です。
イザナの言葉にゼンの身体には熱い衝撃が走ります。
兄がいずれクラリネス王国の王になる。
その時、弟であるゼンはどうありたいか。
ゼンの決意はあの時のまま、今も実現させるため日々鍛錬に励んでいます。

ラジ王子の投げた爆弾発言はウィスタル城内のあらゆる場所で話題になっています。
白雪にとって居心地の悪い状況になりつつあります。

イザナはゼンが白雪を側に置くことは特に不快に思っている訳ではないようです。
ゼンが白雪を大事にしすぎていることに懸念しているようです。
イザナは王族を取り巻く諸侯がゼンの評価を落としかねない要素は事前に排除したいと考えているようです。
しかし、ゼンはイザナに反発します。そんなゼンに対してイザナはどこかうれしそうです。ゼンの成長を喜んでいるようです。

ラジ王子は、ゼン、イザナとの会談に精神がすり減り胃が痛くなり、治療室に向かう途中で白雪に出くわしてしまいます。
白雪と交わした会話はラジにとって変化する大きなきっかけを与えることになります。

白雪とラジの会話を聞いていたイザナは白雪にもう一度、
「あなたはラジどのといるのが向いてると思うなあ 俺のような男がいる国は嫌だろう」
とつきつけます。
今度の白雪はイザナに怯むことなく、
「私はタンバルンに帰るつもりはありません」
「ゼンと会えた国です」
と答えます。
イザナの表情がやわらかくなります。

イザナはどうして白雪がゼンの側にいることについて、しばらく様子を見ようと思ったのかは直接描かれていません。何がそうさせたのだろう? ラジと白雪の会話に何か思うことがあるのかもしれません。


●第11話
ゼンと白雪の仲を探ろうとする勢力がひっきりなしに白雪を監視しています。
白雪を通じて、ゼンとつながりを持とうとする者たちがいくつも現れはじめました。
そこでゼンはオビに白雪の護衛を指示します。
オビは第3話でハルカ侯爵の指図で白雪を脅した前科があります。
白雪はゼンが言ってきたことなので、やや警戒心を持ちつつ、薬室の仕事を手伝ってもらうようになります。

オビは白雪を見て、言葉を交わして、ゼンが側に置こうとする理由がなんとなくわかってきます。オビは前の雇い主であるハルカ侯爵が近くにいるのに、どうしてゼンに仕える気になったのだろうかと不思議でした。
オビはゼンや白雪やミツヒデや木々を見ていると面白そうだという理由で居座っただけだという独り言で、オビもゼンや白雪と同じものに惹かれて、そんな二人を見ていたくなって、自分ができる役割で力になろうとしているんだなと思いました。

ゼンはオビに城内における肩書、身分を与えます。
クラリネス第二王子付伝令役。
オビがゼンの意向により白雪の護衛についていることを、白雪に関心を持つ家に知らしめるという効果は絶大で、白雪の監視はなくなりました。


●第12話
新展開です。
仲裁の申し出があり、ゼンは訴え内容から当事者同士の話し合いが妥当という判断を言い渡しました。
訴えは領民が領主に対し、鳥を保護してほしいというものです。

白雪とリュウが薬室の外で仕事しているとろこにオビが現れすこし話していると、どこからともなく青と緑の鳥が飛んできてリュウの側で羽を休めます。リュウは集中すると周囲の音が一切遮断されるので、鳥の羽音など聞こえるはずはなく、視界に急に鳥が現れびっくりしてしまいます。
鳥はキハルが王城に一緒に連れてきたキハルの友人ポポです。
ポポが存分に羽を広げられるようこの広い場所に連れて来たようです。
先ほどのゼン殿下の仲裁の判断が望ましい結果を生まなかったので、部屋に閉じこもっているより外で沈んだ気持ちをなんとか変えたいという思いもありそうです。くやしさを必死にこらえています。

キハルは白雪を見つけ、赤い髪に驚き、白雪の隣の先ほどの仲裁の場にいたオビに気がつきます。
キハルは仲裁の判断が気に入らず、
「位の高い人間は位のない人間を相手になんかしないのよ」
とゼンやブレッカ子爵に直接は言えない腹立たしい気持ちを吐き出します。
白雪は何があって、キハルがそんなことを言うのかはわかりません。
だけど、
「それは ゼン殿下の人柄を指す言葉ではないよ」
白雪は知っていることに対して違うことはきちんと否定します。
白雪の言葉にオビは不意を突かれたようで、彼女はいつでもどこでだってゼンのことを自分が知っているくらい知ってほしいと思っている事に気づきます。

キハルは誰かに聞いて欲しくて、白雪とオビに王都にやって来た理由を話し始めます。

ゼンは感情としてはキハル、領民たちに協力したい思いです。領民の肩を持つことは干渉になるので口出しできません。できないことが腹立たしそうです。

キハルから事情を聞いた白雪は、ゼンと同じ思いで鳥を守る手立てはないか探ります。白雪に笛を使って鳥を操る技術でどうにか救うことはできないかと持ちかけられ、オビはゼンに白雪が言ったことは伏せて、笛を使い鳥を操る技術を話します。

オビの話からゼンは、一晩考え、仮に意のままに鳥を操ることができるなら、遠く離れた場所との連絡手段に使えはしないかと、鳥を保護できる可能性を探ります。

翌日、ゼンはブレッカ子爵とキハルを再び呼び、昨夜考えたことをキハルに伝え、可能であることを聞くと、その日のうちに長距離間で鳥を飛ばす考試を行いたいと提案します。

キハルは鳥の保護につながるかもしれないゼンの提案に希望を託します。ただ、城の中にキハルが信頼でき、協力してくれそうな人がいません。キハルは白雪を指名します。

考試内容は、

城より西に直線で役10キロの地点――馬で往復40分を要するココクの見張り台に文書を持たせた鳥を飛ばし見張り台にいる者がその文書を受取署名をした後鈴をつけ城へ帰す
これらを確実に25分以内に行う事
条件を全て満たせば認定とし 満たせぬ場合は白紙とする


ザクラも考試の証人として立ち会っています。ザクラはこの考試より、白雪が参加していることに興味を持ちます。
白雪が考試に参加することを知ったブレッカ子爵はキハル・トグリルに、
「殿下のご友人を味方につけるとは考えたなあ トグリル」
「まったく小賢しいことだ」
と吐き捨て、あきらめの悪いヤツだと言わんばかりに態度です。
しかし、ゼンはブレッカ子爵の態度に穏やかに対応します。
ブレッカ子爵は、
「……では殿下 私もココクの見張り台に同行させて頂きたい」
「疑うわけではありませんが… 娘らに不正があっては殿下の面目が立ちますまい」
ゼンへの不快感を隠そうともしません。

一連のブレッカ子爵の言動に反応したのはザクラです。ザクラが言うまでもなくゼンの側近のミツヒデと木々はブレッカ子爵への怒りを必死にこらえています。
オビは、
「やれやれ…… 動きづらいのね国の人間ってーのは」
そんなミツヒデと木々の様子をみて、感想をもらします。

ブレッカ子爵が白雪を共にココクの見張り台に来たのは、白雪に取引を持ちかけるためでした。
ブレッカ子爵の取引を白雪は当然拒絶します。
自分の価値観が世の常識と信じているブレッカ子爵は白雪が取引に乗ってこないことに逆上し、白雪の首から提げている鈴、キハル・トグリルの飛ばした鳥ポポが飛んできて、帰すときにつける鈴をひきちぎり、湖に投げ捨ててしまいます。
ブレッカ子爵はなんとしてもこの考試を失敗させる気です。
ブレッカ子爵は時間まで白雪が何もできないように見張り台の部屋に閉じ込めてしまいます。

白雪はキハル・トグリルの鳥を守りたい思いと、ゼンのために動きます。
白雪が閉じ込められた部屋は見張り台の最上階で、湖に向かって窓があります。窓は簡単に開けることができます。白雪は窓を開け身を乗り出し、湖に向かって飛び降ります。


白雪の台詞がかっこいいです。白雪のゼンに対する思いはブレがありません。
続きます。


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