2017年11月6日月曜日

森本梢子 アシガール 7巻

唯が初めて若君と一緒に過ごす時間が持てて、ようやくここまで来たかと展開が楽しいです。

宗熊が面白いです。唯をひと目見てからの宗熊の描かれていない部分を想像して面白がっています。

若君とは正反対すぎて、羽木家は殿の代を耐えられれば、滅亡せずに済むんだろうなと思います。




若君は唯を単身で助けに高山の居城長沢城に行くつもりです。

おふくろ様はそんな若君の胸中を見抜いているようで、悪丸に、

「決して若君の側を離れてはならぬ」

「吹雪には十分に草を食ませ手入れをせよ」

と若君の供をするよう言います。

若君は悪丸を供にして唯救出に向かいます。



唯は高山に捕えられて10日間、外からの情報は一切遮断されています。高山の殿から明日阿湖姫の兄が来るとだけ伝えられています。阿湖姫の兄松丸義次という人物がやって来て唯と対面すれば、阿湖姫でないことがバレて、命がなくなるかもしれないと危惧します。羽木家ではどうなっているのか気になっていて、若君は自分が高山の城長沢城に捕えられていることは知っているのか、明日の運命を心配しています。



若君は長沢城に到着します。

高山の殿は家臣から松丸義次が到着したとの知らせを受け、阿湖姫(唯)に用意が整い次第、会見の間に来るよう言います。

唯は覚悟を決め会見の間に向かいます。怖さしかなく、ずっとうつむいています。顔を見られると阿湖姫ではないことがバレてしまうので、顔をあげることができません。

高山の殿は唯に顔を上げるよう促します。

顔を上げられない唯は、

「久しぶりじゃの 妹よ」

と阿湖姫の兄から声をかけられます。

唯にとって覚えのある声です。

唯は顔を上げて松丸義次を見ると、阿湖姫の兄として座っているのは若君です。若君の顔を見て一気に張りつめていた気持ちが緩みます。

若君と声に出そうになる唯に、若君が、

「元気そうじゃの 阿湖」

と唯に高山方に正体がバレてはいけないから阿湖を演じるのだと合図します。

唯は助けに来てくれた若君の行動に感激します。

高山の殿は若君に今宵、阿湖姫と嫡男宗熊の婚儀を執り行うと言います。

若君は、婚儀の前に妹と二人だけで話をさせてほしいと言います。

高山の殿は婚儀を終え、めでたく二人が夫婦になった後、兄妹二人でゆっくり話せばいいだろうと若君の要求を拒みます。唯を支度のため退出させようとします。

唯は若君に助けを求めると、

「では 後ほど」

と何かあるような表情で若君は唯を見送ります。



羽木家の黒羽城では、仏間で阿湖姫が若君と唯の無事を祈っています。一晩中祈って体力の限界に達し、倒れてしまいます。

成之がたまたま通りかかり、仏間で物音がしたので見てみると阿湖姫が倒れているのを発見します。声をかけ、阿湖姫に何をしているのかと尋ねます。

成之は若君が単身で唯を救うため高山の城に向かったということを知ります。

阿湖姫は成之に若君を救ってほしいと頼みこみます。

成之はそろいもそろって阿呆ばかりじゃと、若君、唯、阿湖姫の行動を理解できないようです。



若君が城にいないことが殿の耳にも入ります。

小平太は殿に若君は唯之助を救うため高山の城に行ったのではないかと言います。

殿は小平太の推測を一蹴します。

小平太は自分の考えに自信があり、すぐにでも高山を攻め若君を救うべきだと譲りません。

成之が現れます。殿に小平太の読みは当たっていると言います。ただし、高山に攻めるのは忠清殿を危地に追い込むことになるから、もっとじっくり考えろと言います。阿湖姫から聞いたことを殿に伝え、小垣城から高山の様子を探らせるのがよいと進言します。

殿は成之、小平太二人を小垣へ向かうよう命じます。



高山家の長沢城では、婚儀の準備がすすんでいます。

唯は女官が着替えさせようとするのと必死で拒んでいます。

唯と女官が争っていると、白い煙が部屋を覆いまったく見えなくなります。

女官は白い煙が充満して混乱しています。

唯はこの煙は尊のつくった金のけむり玉だと分かり、若君が使ったんだと察知します。若君がもうすぐ助けに来てくれるとニヤけています。

しかし、唯の危機は続きます。遠くから不吉な音を立ててジワリジワリと近づいてくる者がいます。宗熊です。

宗熊は部屋に入ってきて、畳を擦りながら唯を探しています。

唯は宗熊が徐々に近づいてきているのが、畳を擦る音で分かります。怯えながらも宗熊が側に来たら、手当たり次第パンチを繰り出すつもりでいます。

唯の肩に手が触れます。

唯は拳を握りしめ、多分いるはずの方向にパンチしようとすると、グッと手を掴まれてしまいます。

「唯 わしじゃ」

唯の耳元で若君がそっとささやきます。

若君の背中におぶさって唯は長沢城を脱出します。

外では、悪丸が吹雪と待機していて、三人とも城門の外まで出ることができ、見事に脱出に成功します。

すぐに門番が今の三人が怪しいことに気づき、後を追いかけてきます。

唯は吹雪の手綱と悪丸の手を引き駆け出します。

道を進めば高山の砦があり、右へ行くと川と、山越えをして小垣を目指ししか逃げ道がありません。



高山の長沢城では殿が、松丸義次と阿湖姫が城から逃げ、牛背山に入ったと知らせを受けます。そして、また別の家臣から報告を受けます。羽木家に送りこんでいた間者によって、捕らえた姫は阿湖姫ではないこと、松丸義次と名乗って長沢城にやって来た者は羽木家嫡男忠清であることを知ります。

高山の殿は衝撃を受けます。宿敵羽木忠高の倅が目の前にいたのにみすみす逃してしまったと悔やみます。忠清を何としても羽木領に帰すな、山狩りをせよと命令を下します。



若君は唯を救出した後、どのようにして羽木領に戻るのか計画しておらず、山中で唯と悪丸に苦労をかけてしまっていることを悔いています。

唯はと言うと、若君とこんなに一緒に居たことはなかったので、状況を楽しんでいます。



山中二日目。

当てにしていた道が滝によって閉ざされ、なかなか勧めません。水しか口にしていません。

唯はそんな時の若君の様子を見て少しだけ若君を振る舞いの土台を知ります。

悪丸が寺を見つけます。

寺を訪れ、和尚から芋粥でもてなされ、湯と一晩の寝床を用意してもらいます。

若君は寺に迷惑がかかるといけないと思い、素性を明らかにします。

事情を知った和尚はそれでも一晩休んでいくようすすめます。



和尚の弟子の一人白念が姿を消します。

白念は高山に召し抱えてもらう目論見で高山軍に密告に走ったようです。

もう一人奇念という弟子がいます。

唯が和尚に奇念ではなく白念ですかを念を押して訊くのが面白いです。

若君、唯、悪丸、和尚と奇念は寺を出て、羽木領を目指します。

歩きながら唯は人は見かけで判断してはいけないと反省します。



和尚が道案内をして進みます。今いる大手山を越えれば小垣が見えると言います。

唯は大手山と聞き、バスハイクで来た山だと気がつき、もし現代で若君に出会っていたらと妄想します。



平地を見下ろせる開けた場所にたどり着くと、奇念が声を上げます。

川を挟んで羽木軍と高山軍がにらみ合っています。

高山軍は伏兵を潜ませています。羽木軍がそのまま進むと全滅してしまう可能性のある布陣です。

若君は両軍を見て、高山に降ると言います。

唯は若君を止めます。

若君はこのままだと羽木軍が全滅してしまう。それを阻止する手立ては他にないと言います。

唯はあることをひらめきます。奇念に今立っている場所からむこうの羽木軍までまっすぐ行けばどのくらいの距離? と聞きます。

奇念は、五、六里だと言います。

唯が計算していると、

「ならぬ」

と若君が言います。

若君は唯の考えた作戦は許さぬと言います。

若君は高山に降るしか手立てはないと和尚に話しています。

再び、唯は若君にすごくいいこと思いついたと言います。

唯は若君が自分に注意を向けている間に、悪丸にでんでん丸を使わせて若君を気絶させてしまいます。

唯は始めに思いついたとおり、羽木軍まで直線で駆けていくことにします。



羽木軍では成之と小平太が言い争っています。

若君が長沢城から脱出したというところまでは情報としてつかんでいます。

大手山のどこかにいるはずだという情報を知り、高山方の兵は若君を高山領から出さないためだと判断し、小平太は一気に攻め若君を救おうとしています。



唯は山を下り、伏兵が待機している麓までたどり着きます。甲冑を奪い、川に向かおうとすると、見覚えのある顔を見かけます。成之のところにいた坊主と密談をしていた高山の使者です。坂口殿と呼ばれ、会話の中で一気に羽木家を攻め滅ぼすと言っているの聞きます。



和尚一行は悪丸が若君をおぶって小垣を目指しています。

若君の意識が戻ります。

若君は唯が悪丸に若君を守るようにと尊の道具を置いていったことを知ります。



唯は羽木軍がすぐ目の前にいる川を挟んだ高山軍の先頭にいます。戦が始まれば止めるのは無理だと思い、イチかバチかで羽木軍に向かって走り出します。

成之が一人高山軍から飛び出して走ってくる兵を見て、足が速く、唯之助ではないかと言います。

一発の弾が唯の肩をかすめます。その衝撃と痛みで唯は倒れてしまいます。

羽木軍はなんとか唯を回収します。



銃声は若君の耳に届きます。不安が頭をよぎります。



羽木軍の本陣では助けられた唯が高山軍の状況を説明します。

成之は作戦を考えます。

唯は成之について行くと言いますが、肩を撃たれて傷口が腫れ、熱が出て倒れてしまいます。

唯之助を手当せよと木村政秀命じると、成之は妻女に言うて奥で唯之助を手当してやれと言います。

木村と小平太は成之がなぜそう言うのかわかりません。

成之は唯之助は女子だと明かします。

木村は成之は思い違いをしている、確かめればわかると唯に近づこうとすると、

「止めたがよい」

と成之は唯之助が若君にとってどんな存在か説明します。

小平太は成之の説明に思い当たることがあると言い、木村は納得し唯之助を奥に連れていき妻女に手当させます。

木村は妻女から唯之助が本当に女子であることを確認し、妻女に唯之助が若君の特別のご寵愛の姫だと言います。

妻女は驚きます。

続きます。



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