2017年11月24日金曜日

羽海野チカ 3月のライオン 13巻

●chapter. 127 遠い花火
林田先生はあかりに一目惚れしています。去年、将科部の夏の自由研究で行った流しそうめんに川本三姉妹を招待してからです。
夏まつりであかりが倒れそうになったのを支えてからは、もう頭の中はあかりのことでいっぱいになっています。
あかりが倒れそうになったのを支えたのは林田先生だけではなくもう一人います。島田です。
島田はあかりが倒れそうになるとき、二の腕をギュッと握って支えたのを林田先生は見ています。
林田先生は島田とあかりを取り合いになれば勝ち目はないと思っています。
林田先生にとって島田はずっとヒーローだったのです。
将棋で島田が勝てば誇らしく思い、負ければ気持ちを切り替える言葉を探したりと、勝手に親近感を覚えています。
島田があかりを狙っているかもしれないし、そうでないかもしれない、どっちかはわかりません。だた、はっきりしているのは、林田先生は何もしなければ、いつか誰かに奪われてしまうということです。
林田先生は勇気を出して、あかりが手伝う、美咲おばさんの銀座の店に行ってみることにします。

林田先生は入口まで来てはみたものの、なかなかドアを開けられません。
「入らないんですか?」
林田先生は声にびっくりします。島田が隣に立っています。
同じ日の、同じ時に、偶然島田と再会したことについて、良かったのか、悪かったのか、林田先生は自分がいないときに、あかりと島田が会って、知らない物語が始まってしまうことを考えたら、勇気を出して銀座に来てよかったと思い直し、店の扉を開けます。


●chapter. 128 銀座
店には美咲と会長がいます。
会長は島田がようやく来たと言い、美咲は林田先生に、
「ホントに来てくださったのね」
と言い、
「あかり~ ご指名よ~」
と言います。
林田先生は、銀座の店でご指名なんて、と気が動転します。
美咲は、
「なぁんてねっ うそうそっ☆ うち そーゆーの無いから 大丈夫 大丈夫」
と林田先生をからかうために言ったのです。美咲おばさんにとって林田先生はからかい甲斐がありそうです。
奥からあかりが出てきます。
「まあっ 先生っ そして 島田さんもっ 来て下さったんですか? 嬉しい この間は本当にありがとうございました」
銀座で見るあかりは普段の姿とは当然違っていて、林田先生はとても自分があかりに似合う男になれそうもない、と傷心したかのような気持ちになってしまいます。
林田先生の記憶はそのあたりから途切れてしまいます。
意識が戻ったのは翌日の昼、島田の家の居間です。
桐山が島田の家に来ていて、林田先生に、
「先生… ぼく 今 猛烈にアキれてますよ?」
と言います。
林田先生は桐山にも銀座に行って酔いつぶれてしまったことを知られてしまいます。とても恥ずかしそうです。


●chapter. 129 風の2万空里 1
8月。新聞社の棋戦、東陽トーナメントが行われます。
持ち時間は1人1時間、使い切った後は1分の秒読みという短い持ち時間が特徴です。
桐山はAブロック、二階堂はBブロックです。二人が当たるのは決勝になります。
二階堂は、
「桐山!! お前 途中で絶対負けんなよ!? 俺たち決勝で絶対会うんだかんな!!」
とやる気に満ちています。
二階堂は櫻井七段との対局に勝つと、次は宗谷名人と当たります。公式戦で宗谷と対局できる可能性がありうれしくてたまらないようです。

林田先生は野口先輩に愚痴を聞いてもらっています。
島田の家で目覚めた林田先生は銀座の店で勘定を支払っていないことに気がついて、島田に幾らでしたか? と聞くと、
「ま、次は先生のおごりって事で」
とかっこよくこたえたことを、野口先輩に言います。
野口先輩は林田先生にとっていちばん大切なこと、あかりさんが酔っ払ってしまった林田先生を見てどう思ったんでしょう、とずばり聞きます。
林田先生は、生徒の野口先輩に、どうしたらいい? と聞いてしまいます。覚えていないだけに、あかりに会いに行きづらいだろうなと思います。


●chapter. 130 真夏の底
あかりは前日美咲の店で片付け終わって、帰宅したのが1時過ぎで、お風呂に入って寝たのが2時半くらいで、朝7時に朝食の用意をして、三日月堂でドラ焼きを包んでいます。
あかりは寝ていません。
おじいちゃんはあかりの体を気づかい、モモのお迎えまで横になるよう言います。
あかりは笑顔で作業しているけれど、睡眠不足のため小さな失敗をたくさんしていたでの、睡眠がとれてホッとしています。
あかりは横になると、夏まつりのことを思い出します。
あかりの記憶がよみがえります。あかりが男性に対してどういう感情を抱いているのか少しわかります。あかりの男性に対する感情は両親が強く影響しています。男性を好きになることは恐怖でしかありません。でも、林田先生と島田に支えられて触れた体温は温かくて、その温かさに支えてもらいたいという気持ちもどこかで抱いています。


●chapter. 131 風の2万空里 2
二階堂は宗谷名人と対局するためには、目の前の相手である櫻井七段に勝たなくてはいけません。
宗谷と対戦する夢を見た二階堂は気力があふれています。ずっと憧れ追いかけてきた人と戦う機会がやって来て、なんとしても、宗谷と対局し、二人だけの時間を体験してみたくてたまらないようです。


●chapter. 132 風の2万空里 3
二階堂は宗谷との対局を実現するため、櫻井七段との対局は作戦を持って挑んでいます。
二階堂の作戦はバッチリはまったようです。

宗谷と対局しているのは田中です。
田中はスミスに心の声で話しかけます。最高の笑顔で、
「全くもって歯が立たん!」
と負けが確定しているようです。

二階堂は形勢が変わることなく、そのまま突き進み、103手で櫻井七段に勝ちます。
いつになく、二階堂は興奮しています。思い通りの将棋ができて興奮しすぎています。
島田は勝ち、桐山は負けてしまいます。
二階堂はいよいよ宗谷と対局です。


●chapter. 133 風の2万空里 4
宗谷は二階堂の一番得意な戦法に誘います。
二階堂は宗谷が自分の得意な戦法をちゃんと調べて来てくれたことに感動し、誘われた通り、得意な戦法で挑みます。
スミスは田中と心の声で会話ができるようになっています。
宗谷も久しぶりに駒音がきこえてきて、二階堂との対局を楽しんでいます。


●chapter. 134 風の2万空里 5
滑川は宗谷の追っかけだということがわかります。
滑川は二階堂と対局する宗谷の表情に顔がほころんでいます。
滑川だけではありません。
桐山もスミスも重田も、対局する宗谷の表情を見て、それを引き出すことができた二階堂に嫉妬しています。
勝ち負けと同じくらい大切なことがある将棋の世界がおもしろいです。

二階堂はこれまでで今一番いいと自身で手ごたえを感じられるほど調子がいいです。
この一番いい場面で宗谷と対局できた喜びをかみしめながら、一手一手最善の手を指していきます。


●chapter. 135 風の2万空里 6
二階堂は格下なのに手加減なく全力で向かってきてくれる宗谷に興奮しています。
二階堂が優勢で、宗谷がなんとかしのいでいるという展開です。
宗谷が指し、二階堂の次の一手で勝ちになりそうだというところで二階堂の動きが止まります。秒読みは30秒、10秒、5秒、4秒とすすみます。二階堂は動きません。
隣で対局する島田が二階堂の異変に気がつきます。
桐山は、
「何やってんだ 指せ 二階堂 お前 今 勝ってんだぞ」
と叫びます。
時間切れになろうかというとき、宗谷は二階堂の肩をたたきます。左肩を、バシッとたたかれた二階堂は右に傾いていきます。
二階堂は気を失っています。椅子から、そのまま倒れていくのを島田と後藤が手を差し出し、背負って病院へ向かいます。
二階堂は途中棄権となり、宗谷の不戦勝となります。
東陽オープントーナメントは宗谷の優勝で幕を閉じます。

二階堂は病院で意識が戻ります。
花岡、島田、桐山はホッとします。
夜に会長が病院にやってきて、二階堂に棋譜を手渡します。
棋譜には二階堂が気を失ったところからの続きが記されています。
棋譜は、この対局は宗谷の勝ち、とく結果が記されていて、島田も桐山も重田も、不利な局面からの見事な逆転劇に驚き、宗谷の知られざる気性を知ります。
二階堂は宗谷からもらった棋譜を見てうれしそうに、書かれていない宗谷からのメッセージを受け取っています。


●chapter. 136 雨の匂い
桐山は自分の世代でいちばん宗谷とつながっているのは自分だと思っていたのに、違っていることに気がつきます。
棋士はみな、誰よりも自分がいちばん宗谷とつながっていると思いたい気持ちがあるということを知ります。
つながるにはどうしたらいいか?
答えは単純です。
とにかく強くなって宗谷の視界に入り続ける、です。
桐山は弱いトコを探して一個ずつ修正していくという、誰にでもできそうで一握りの人にしか継続できない作業をコツコツ繰り返す、将棋が強くなる唯一の方法をやるしかないことを確認します。
そんなことを考えながら桐山は、フラッと川本家に寄り、晩ご飯を食べます。
桐山はひなたを見て、棋士として誰かと比較してしまう自分と、川本家にいて誰と比較しようと思わない自分がいることに驚きます。
零に一人で暮らす部屋と学校と対局だけでは得られないおだやかな気持にさせてくれる場所があってよかったと思います。


●chapter. 137 雨の匂い 河の匂い 1
滑川は二階堂と宗谷の対局後、実家の仕事の手伝いに行きます。
滑川の実家は葬儀屋です。


●chapter. 138 雨の匂い 河の匂い 2
滑川は美しいものが好きです。自分の将棋に、他の人の将棋ほど強い光のようなもの、美しさを感じられずにいます。
家業から、死ぬ時、ああ、生き切った、と思えることが出来るのかをよく考えています。
情熱がないわけではなく、他の人の熱量と自分のを比べて落ち込んでいるようです。
滑川の愚痴を聞くのは弟の要で、滑川はもう一度初心に戻ってみようとしています。


●chapter. 139 目の前に横たわるもの
零の義姉の京子は後藤との終わりが見え始めています。
京子は過去に零にしたことをふり返り後悔します。
京子も自分の場所を見つけられたらいいなと思います。
後藤は京子が支えてくれて本当に感謝していると思います。


続きます。


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