2022年7月28日木曜日

草凪みずほ 暁のヨナ 38巻

四龍がいなければ、高華国は南戒との戦は敗北していた可能性が高いのではと思います。




ヨナの目が赤かったのに気づいて、ジェハはスウォンに、

「君の前では泣くのかなとおもってさ… 僕らの前では無理した笑顔だったのに …嫉妬する」

と言います。

スウォンは自分で選んだんだ、いらない箱は全て捨てろ、父上はそうしてきた、自分に言い聞かせます。



全部族が集まります。ヨナと四龍の姿を見た兵士は士気が上がります。

金州へ進軍します。



ハクは生きていました。意識が戻り辺りを見回しても何もなく、空が見えるだけです。ここがどこか探ろうとしていると声が聞こえます。

「うわ 酷ぇな…」

「早く埋めろ」

戦闘で亡くなった者、水に流されて溺れた者が掘られた穴の中に積み上げられて、埋められようとしています。

ハクは状況が分かり、逃げ出そうとします。しかし身体が思うように動かず倒れてしまいます。

南戒の兵士は、生きている者などいないと思っていたのに、動き出したので慌てて捕えようとします。

「お待ち下さい」

と女の声がします。

「その人は私の夫です 水攻めに巻き込まれたんです 見つかってよかった 連れて帰ります 放して下さい」

と女は言います。兵士は、

「………ほら」

とハクを女に渡します。ハクの意識は遠くなります。



ハクは家の中で目が覚めます。傷の手当てがされていました。ハクを連れ帰った女が世話したようです。

女はソノンと名乗り、

「無事…とはとても言えませんが 命があってよろしゅうございました あそこは戦死者を埋める墓地 あなた水攻めで流されて来たんですよ」

と言います。

ハクは水、と言われて起きた出来事を思い出し、水攻めから何日経ったと聞きます。

ソノンは、

「一週間程… 生存者はわかりませんが 高華国との睨み合いが続いています」

と答えます。

ハクはここが南戒だと知ります。帯に括り付けていた千樹草の入った白い袋を探します。探さなくてはと

立ち上がろうとしますが身体が思うように動きません。

家の外では南戒軍が金州に向かっています。



金州(キンシュウ)はジュド将軍が率いる空の部族の精鋭部隊がなんとか守り抜いています。

グンテ将軍は意識が戻り、痛みをこらえながらも冗談を飛ばせる状態に回復しています。

地の部族兵の士気が下がらないように無理しているようにも見えます。

グンテはジュドをからかいながらも、ヨナやハクに地の部族の兵と民を守ってくれたことに対する礼をしなくてはと真面目な表情で話します。



南戒が大軍勢で金州にやって来ます。

ジュドは敵の軍勢を見て持ちこたえなくてはと思いつつも、奮い立つことができません。

ジュドは南戒の大将クラウ将軍のところに行き、一騎打ちを申し出ます。

クラウ、兵士はジュドの口上に馬鹿にした笑いで応えます。

ジュドは挑発する言葉で返すと、クラウは馬鹿にはするけど、馬鹿にされるのは我慢ならないようで、相手が怯む一撃を食らわせます。

投石器で岩を高華国の兵士に向かって投げつけます。大きな岩が高華国側に飛んできます。兵士は恐怖で叫び声を上げています。

しかし、岩は空中で制止します。ジェハが飛んできた岩を受け止めています。制止させた岩を南戒の兵士のところへ蹴り返します。

残酷な笑みを浮かべていたクラウの頭上を岩が通り過ぎ、南戒の兵士の中に落下します。

クラウは岩を蹴り返した人物が四龍のであると知ります。


高華国の軍が到着します。

シンアがハクを探しています。

高華国軍の角笛が鳴り戦闘開始です。



ハクの耳に高華国の角笛が聞こえます。

スウォンが来ていると知り、早く千樹草を届けなくてはと白い袋を探します。

ハクはソノンとその息子ランランで白い袋を探すために外に出ます。

手あたり次第探しても見つかるわけがありません。

ランランの悲鳴が聞こえます。

ランランは南戒の将軍カジに抱えられています。カジ将軍の手に白い袋があります。

ハクがカジ将軍の持つ白い袋について尋ねると、探していたものでした。

カジ将軍はハクになぜこの村にいるのか尋ねます。

ソノンが負傷して休養していると答えます。

カジ将軍はハクに斬りかかります。ハクは軽々とかわします。

カジ将軍はそれだけ動ければ十分だ、軍に復帰しなさいとハクに命令します。



ヨナは母カシの能力を受け継いでいるようです。

ヨナの変化を感じ取り、シンアが

「どうかしたの?」

と聞くとヨナは、

「…ちょっと嫌な感じがして… キジャとジェハに何か…」

とつぶやきます。スウォンはヨナの様子を見ています。

シンアとゼノは馬に乗って、キジャとジェハのところへ向かいます。


南戒は投石器を使って攻撃しています。

投げていた物を岩から人間に変更します。地の部族兵の捕虜を投石器にのせて投げ始めました。

キジャやジェハは岩が飛んできた時は投げ返し、蹴り返ししてたけれど、味方が地面の叩きつけられないように必死に受け止めます。


キジャとジェハ直接投石器を破壊するため敵陣の突入します。

キジャがジェハを庇い、ジェハが投石器を一つ破壊します。

クラウとジェハが対面します。

クラウはジェハをボコボコにして投石器で投げてやると言います。

怪力自慢の兵がジェハを捕まえ、クラウが自らジェハを傷めつけようとします。

そこにシンアの目の能力が南戒の兵士を襲います。クラウを囲む兵士はバタバタと倒れます。

シンアは能力を全開で使ったので麻痺が起こり倒れてしまいます。

ゼノがシンアを肩に抱え起こそうとします。

クラウはゼノを槍で貫きます。



高華国の本陣では報告が入って来ます。

ヨナは捕虜とキジャ達が助けた人達の安否を尋ねます。まだ、戦場に取り残されたままだと騎兵に潰されてしまうので救護班を送りたいと言います。

しかし、スウォンはこのまま進みます、変更はないとヨナに告げます。

すると、

「ヨナ姫」

と声がします。グンテ将軍です。

グンテは取り残された捕虜と負傷した兵は自らが阿波の海賊たちと行って救うと言います。そして、スウォンに、将軍を退くと言います。

一連のやり取りを黙って見ていたケイシュク参謀はヨナの存在がますます大きくなっているのを実感します。


スウォンにとって戒帝国を制圧することは悲願であるようです。

しかし、ここに来て迷いが生じます。

ヨナとハクを捨てられない。

感情を排除し冷静に戦況を判断し、勝利するための戦略はほころび始めます。


四龍がいる場所に高華国の矢が飛んできます。

キジャはシンアを抱え、ジェハに捕虜を助け、矢を回避します。

ケイシュクは周囲の兵の言葉に焦っています。

頭痛が始めりスウォンは意識を失いそうになります。

ケイシュクが動こうとする前に、ヨナがそっとスウォンの横に立ち支えます。

ヨナは四龍に矢を放ったことに対する兵の動揺を鎮めます。



風の部族は有利に展開しています。

テウ将軍は突撃を命じ、進もうとすると南戒の援軍が現れます。

現れた南戒の援軍はカジ将軍の部隊です。

ヨナが判断し、風と火の部族に後退の合図を出します。

風と火の部族は合図で交代を始めます。

後退するために弓隊援護します。

南戒の軍は弓隊に投石器を食らわせます。

弓隊はまともに投石を食らい半数が壊滅してしまいます。

南戒は投石器での攻撃を続けようとします。

投石器の引き金を引き準備をしていると、引き金の縄が切れてしまいます。

カジ将軍は投石器の綱を見て誰かが刃物で傷つけた跡を見つけます。誰かが切り目を入れたと考えます。


ジュド将軍、テウ将軍、キョウガ将軍は、敵の大将クラウを探します。

風の部族は前に集中し過ぎて背後から敵の援軍が攻撃してきているのに気づくのが遅れます。

ヘンデがテウ将軍に後方の敵は任せろと、少人数で突撃します。

ヘンデが全力で暴れます。しかし、南戒の兵士の勢いを止めることは難しい戦況です。

ヘンデに騎兵が襲いかかります。

ヘンデは覚悟を決めます。

しかし、ヘンデに襲いかかる騎兵は味方の振り回した槍に当たり、落馬してしまいます。

ヘンデは何が起こったというような表情で見ています。

続いて別の騎兵がヘンデを襲おうとします。槍を振り回した騎兵は、軍旗を振り回し兵を振り落とします。

騎兵がブンブン軍旗を振り回し、南戒の兵士は騎兵を制止しようとします。

カジ将軍がやって来ます。槍や軍旗を振り回していた騎兵の兜を取ると兵士はハクでした。

ヘンデは驚きます。

カジ将軍は、

「…ねえ投石器の縄… 切った…?」

と尋ねます。ハクは、

「何のことだかわかりません」

と答えます。




グンテ将軍がかっこいいです。

スウォンの状態が悪くて、これからの高華国がどうなってしまうんだろうと思ってしまいます。

続きます。



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2022年7月24日日曜日

草凪みずほ 暁のヨナ 37巻

ハクの大切な物を全て救い上げようとするところがよくわかる場面がたくさんありあます。

ハクの生き様がいろんな人に影響を与えるんだろうなと思います。




ヨナはケイシュクの申し入れを受けます。



地の部族領金州(キンシュウ)では、グンテ将軍の意識が戻りません。

地の部族の兵士の間で動揺が広がります。その様子をハクが見ています。

ユンがハクに、グンテについては明日地心城から医務官が来るから、夜が明けたら阿波(アワ)へ出発しようと言います。


朝、出発しようとした時、南戒から敵が攻めてきます。

ハクは息を吐き、

「…ユン君 独りで阿波 行ける?」

と言います。

ユンはハクの気持ちが分かるから別々に行動することに決めます。



ユンは阿波に到着します。

ギガン船長にはすぐに会えて、千樹草を手に入れます。

ユンはギガンにハクの文を渡します。

ギガンはすぐ準備にかかります。



ハクは傷だらけです。

南戒は攻めては退きを繰り返し、敵に休む暇を与えない作戦のようで、地の部族の兵士は心が折れる寸前です。

ハクは誰よりも戦います。

南戒の兵士たちも大刀使いの武人に注目します。

南戒の将軍は高華国の武人を見るなり、美しい戦士と評します。

南戒は仕込んでいた作戦を実行します。



緋龍城の執務室ではヨナとスウォンが互いの情報を持ち寄り、いち早く金州に援軍を送るため知恵を絞ります。



南戒側から一騎でやって来ます。ハクが応じます。

「お初にお目にかかります 私 南戒帝国八大将軍の一人ラーンと申します 貴方の大刀捌き 高華国の名高き武将とお見受けしました どうか私と一騎打ちをお願いしたく存じます」

と言うラーンの申し出に、ハクは狙いを探ろうとします。

ラーンの狙いはハクを足止めすることです。作戦を実行するためにハクが一番やっかいな人物だと考えています。


一騎打ちが始まります。

ハクは戦いながら、何か嫌な予感を感じつつ、それが何であるかまではわかりません。

南戒の兵士は高台にいて、一騎打ちの様子を見ず、別の方向を見ています。ハクはその方向に何があるか考えます。

ギガン船長が派遣してくれた海賊仲間は、いつもより川の勢いがないと言っていたのを思い出し、水攻めをやろうとしているのではないかという結論を導き出します。

ハクは見張り台に立つ兵士に逃げろと叫びます。しかし、声は兵士に届きません。



援軍にやってきた海賊仲間は滝が止まっているので上流を見に行くと、南戒の兵士が堤を作り川をせき止めているのを見つけます。

南戒の兵士が堤を壊せと号令をかけます。

海賊は皆に知らせるために慌てて戻ろうとします。しかし、兵士に見つかってしまいます。やぶれかぶれで兵士に突進しようとすると、キジャとジェハが現れ、兵士をやっつけます。



キジャとジェハはスウォンの作戦に従って金州にやって来たのでした。金州が持ち堪えているのは誰かが地の兵士を統率しているからだとスウォンが言っていて、二人はその誰かがハクだと知ります。ユンもこの地にいることを知り、役目を終えたらすぐに緋龍城に戻るつもりでいたのに、負傷兵や民を避難させるため動きます。


ユンを助けます。

ジェハはハクを確認しますが水の流れが速く、救出できませんでした。目の前で水にのまれてしまいます。



水攻めから五日が過ぎます。

ジュド将軍はキジャとジェハに一旦緋龍城に戻り、スウォン陛下とヨナ姫に状況を報告するように言います。



キジャとジェハとユンは緋龍城に戻ります。

ケイシュクがスウォンに報告します。金州は悲惨な状態であること、兵を統率していたのはハクであること、ハクが水攻めの犠牲になり行方不明であると説明します。

ヨナはキジャとジェハとユンから話を聞きます。キジャはジェハと捜索に戻ると言います。ヨナは休んでと笑顔でと言います。ユンはグンテの意識が戻り、グンテが、

「地の部族が世話になった 絶対に探し出して礼が言いたい」

と言っていたと伝えます。ヨナは皆に心配をかけないように気丈に振る舞っています。



風の部族が緋龍城にやって来ます。

ケイシュク参謀が対応すると、テウ将軍がハクに会いたいと言います。

ケイシュクはどう言うべきか迷います。

ヨナが出て来て、

「ハクは今 緋龍城にはいないわ ハクは別の任務で外に出ているの 帰ったらテウ達のこと伝えておくから」

とだけ言い、その場を去ります。



ユンはメイニャンに薬を持って帰れなかったと謝ります。



執務室にはヨナとスウォンがいます。

ヨナは書物を読んでいます。スウォンは

「そこで何を…?」

と聞くと、

「戒帝国の事や戦略を覚えておきたいの 金州の次は地の部族領全域… これ以上奪われるわけにはいかない」

と言います。

ヨナが震えながら話していることに気がつき、スウォンは羽織をかけてあげます。

ヨナはそのスウォンの行動が幼馴染みに戻ったように感じ、感情が抑えきれなくなります。

ヨナはスウォンに心情を吐きだします。こらえていた涙がこぼれます。




ヨナは政に関わる覚悟を決めたことで四龍にも自分の感情を出さないようにしたのかなと思います。

夢で見た出来事が本当に起こらないように四龍を守ろうとしているのかもしれません。

続きます。



草凪みずほ 暁のヨナ 37巻
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2022年7月20日水曜日

草凪みずほ 暁のヨナ 36巻

高華国に次々と困難が起こります。重苦しいです。

高華国が南戒と衝突して勝利するには奇跡が必要な気がしてきました。




メイニャンは牢を破り、見張りの兵を殺害し、脱出しようとしたところ、別の牢に捕らえられているハクを見つけます。

メイニャンはハクに外に出してやると持ちかけます。ハクはすぐに断ります。

メイニャンはこの城の庭園の場所を知っているかと尋ねます。ハクが何度か入ったことがあると言うと、牢の鍵を外し、出ろと言います。

ハクは牢を出ません。

メイニャンは一人で牢を出ます。

メイニャンが庭園に行きたいのは、スウォンと交渉した場で決裂して逃げ出そうとした時、一緒に連れていた小動物とはぐれてしまったからなのでした。

どうしても小動物を見つけたいようです。小動物だけが心の拠り所みたいです。

城を彷徨っていると、頭痛が起こり、気を失ってしまいます。


メイニャンの小動物はヨナが保護していました。


ユンは気を失って倒れているメイニャンを見つけ、自分の住まいまで運び治療します。



南戒の使節団は帰国します。

酉京(ユウキョウ)に戻り、南戒最高権力者チャゴル殿下に会談の成果を報告します。

チャゴル殿下はランタンを殺したヨナ姫を連れてこなかったこと、スウォンの謝罪を得られなかったこと、メイニャンが戻らなかったことを責めます。



ケイシュクはハクの牢にやってきて脱獄したメイニャン捜索の協力を頼みます。

ハクは昨夜会った女が南戒の人間で高華国の重要な秘密を握っている人物だと知ります。ハクは協力します。


ハクはユンのところを訪れます。

ハクの後ろにはジュド将軍がいて、ジュドはユンの住まいに強引に入ります。

メイニャンが襲いかかります。

ハクはユンを守りながらメイニャンの攻撃をかわします。

メイニャンはハクが牢にいた男だと気がつき、自分を捕えに来たと知ると、ユンに、

「…やっぱ お前も敵だったか… そりゃ そうだよな…」

と言い、メイニャンはハクに斬りかかります。

ユンがハクとメイニャンの間に入り、

「待って 雷獣…!!」

とハクに言います。

メイニャンはハクが雷獣だと知ります。

ユンはメイニャンは自分の患者で、人を治したくて緋龍城に来たと言い、殺さないでと頼みます。

沈黙が続きます。

メイニャンが頭を抱え、うずくまります。

ユンが傷が開いたのかと聞くと、メイニャンは、

「この痛みは怪我じゃない… 緋の病だ…」

と言います。

「お前がどうこう出来る病じゃない… どうせ私は死ぬんだ… 近いうちにな スウォンもきっと長くはない… 私を消したところで その事実は消えねえよ」

ユンはメイニャンの言葉一つ一つに引っ掛かります。

ハクはユンにしゃべるなと合図します。

外に気配を感じます。

ジュドが引き戸を開けると、ミンスが立っていました。

ミンスはメイニャンにスウォンに処方している薬を飲ませます。

ミンスは秘密を知ってしまったユンを助手にし守ろうとします。

ユンもメイニャンを診ていいならという条件で引き受けます。

ミンスはスウォンにユンを助手にする許可をもらい、試してみたい薬草がありそれを取りに行くのにユンの護衛にハクを同行させる許可を求めます。

ケイシュクもハクの動向を許可します。何としてもスウォンを病から回復させるために手段を選んではいられないようです。



ヨナはハクとユンが庭にいるのを見つけます。

ユンはシンアの肩にアオではない小動物を見つけ、きっとメイニャンが探しているホーちゃんだと喜びます。



ヨナはメイニャンのところを訪れ、ホーちゃんをメイニャンに届けます。

兵士がやって来て、

「黄龍ゼノ 陛下がお呼びだ」

とゼノを連れて行きます。



ゼノは執務室に入り、スウォンを見ると、表情が最後の緋龍王のものと重なって見えて驚きます。

スウォンは、

「ゼノさん 玉座に興味はあります?」

と切り出します。

ゼノはないと答えます。スウォンは駄目元で聞いてみましたと言います。

ゼノは次の王の候補にヨナはどうかと尋ねます。

「…考えたこともありません」

とスウォンは答えます。

ゼノはスウォンの感情を読み取れません。

スウォンは気になっていた事を尋ねます。

「緋龍王の子孫の中に 緋の病から回復した者は…?」

ゼノは、

「……… いない」

と答えます。



南戒酉京(ユウキョウ)鳳凰宮、チャゴル殿下はヴァル将軍を呼び、メイニャンを奪い返して来るよう命じます。そのため配下の暗殺集団ドロモスを与えます。

ヴァルは命じられたような任務は苦手で、戦で最前線で戦う方が楽なようで、気が重そうです。

ヴァルはメイニャンとは仲が良くいろんなことがあったようで、連れ戻すべきか迷います。



地の部族領金州には警備兵とともにグンテ将軍の姿があります。この地を荒らしに来る南戒の兵士から守っています。

その日も、百人くらいの兵士がやって来ます。グンテが先頭に立ちあっという間に蹴散らします。

金州には以前ヨナが出会ったカルガンという少年がいます。

カルガンはグンテに話しかけます。

グンテは背後に敵を感じます。カルガンを庇い背中に矢を受けてしまい倒れてしまいます。

伏兵がいました。

伏兵はグンテに傷を負わせたことで士気が上がり、攻撃を続けます。

再び矢がグンテに飛んできます。飛んできた矢をハクが払い落とします。

ハクはユンにグンテを任せ、南戒の伏兵を蹴散らします。

敵兵が退却すると、ハクはグンテの様子を見に行きます。

ユンはかなりの重傷だと言います。回復してももう闘えないと言います。


グンテの妻ユウノは知らせを聞き、顔を青ざめさせます。

緋龍城にも知らせが届きます。スウォンは黙ったまま天井を見上げます。



ヨナは夢を見ます。

いくつもの棺があり、ゼノが一つ一つ開けます。キジャ、シンア、ジェハが中にいます。

ゼノは寿命がきたんだとヨナに説明します。

スウォン、メイニャンも棺の中にいます。そして緋龍城が燃えています。

ヨナが振り返るとゼノがいません。そこで目が覚めます。


ゼノは、

「娘さん 怖い夢でも見た?」

と言います。

ヨナはゼノに夢の内容を話そうとしたら、シンアが、

「ケイシュク参謀が来た 会う?」

と言います。

ケイシュクは陛下のお身体の具合は悪くなる一方であると説明し、

「陛下に万が一があった場合は あなたに高華国全軍を率いて頂きます」

と言います。




スウォンは母ヨンヒからイルに宛てた文を読んでいたのですね。燃やさなかったのはなぜだろう。

母と同じ症状のこの病を緋の病というのだと母の文で知ったのでしょうか。

一族と面識はあるのでしょうか。

スウォンは父ユホンの夢を成し遂げたいと考えているのでしょうか。

ゼノの願いとは何だろう。

ヨナが見た夢は何の暗示なのでしょうか。

母カシと同じで未来が見えるなんてことはあってほしくないです。

続きます。




草凪みずほ 暁のヨナ 36巻
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2022年7月16日土曜日

草凪みずほ 暁のヨナ 35巻

高華国と南戒の戦は避けられそうにありません。

軍事力は拮抗しているのでしょうか。どちらかが相手の武力を見誤っているのでしょうか。




高華国と南戒の使節団との会談が始まります。

高華国の地の部族領と南戒の国境で起こった争いについて話します。

スウォンの代理であるヨナは高華国が金州(きんしゅう)に侵攻した件について、戒高公法に則って審議すれば、どちらに非があるか明らかであると主張します。

使者は、

「戒高公法…」

覚えのない言葉のようで記憶を探っているようです。ヨナは、

「戒帝国と高華国との間に定められた規範ですよ お忘れですか?」

と詰めます。

使者は規範のことなど知らないとは言えず、この議題を進めれば分が悪いと考え話題を変えてきます。

使者は四龍について尋ねます。

ヨナは伝説の話です、と笑顔で交わします。

ケイシュク参謀はこの会談におけるヨナの対応に内心驚きます。

ヨナが四人いる南戒の使者の一人の顔色が悪いことに気がつき、声をかけます。

会談を続けられないと判断し、続きは後日にと言い、この日は終わります。



体調が悪い使者はランタンと言います。

ヨナはランタンに部屋を用意し、見舞います。

ランタンはヨナが見せた人柄に警戒を解いて、自らの心情を打ち明けます。

ヨナは南戒の腐敗、民への圧政といった情勢を少し知ることができます。



翌日、南戒の使節団がランタンに会いに来ます。

ランタンは口から泡を吹いて絶命していました。

南戒の使者はヨナ姫がランタンを毒殺した。これは南戒への宣戦布告であると非難します。


南戒の使者が殺された。その犯人はヨナ姫だという話が城内に一気に広がります。

ヨナに知らせが入ります。そして、ユンが知り、ハクが知り、ジェハが知ります。

ハクはユンに話を聞きたくてやってくると、そこにジェハがいたので皆で情報を交換します。


ヨナにスウォンが目を覚ましたと知らせが入ります。

ケイシュクはスウォンが眠っている間に起こったことを説明します。

南戒は初めから会談で何かを解決するつもりなどなく、相手を挑発し戦を仕掛ける機会を得るためのものでした

南戒の罠はいくつも張られており、役者の一人が毒で死ぬことで高華国を攻める口実を作ることに成功します。

スウォンはケイシュクに南戒の使節団に会うと告げます。


スウォンは南戒の使節団にランタンの葬儀を盛大に行うといいます。

ハクはヨナの様子を知りたくて直に見られるところまでやって来ています。

スウォンは謁見を終えヨナとともに戻ります。

階段を下りる途中でスウォンがふらつき肩がヨナとぶつかります。ヨナは姿勢を崩し階段を踏み外して転びそうになります。

ヨナを兵士が身体を支えます。ヨナは、

「ありがとう」

と言うと、兵士は、

「大丈夫ですか」

と声を出します。ヨナは声で兵士がハクだとわかります。

ヨナはハクを振り切り、スウォンが倒れないように、側で支えるようにして歩きます。



ハクはスウォンの体調の異変に気がつきます。ヨナが専属護衛はいらないと言ったこと、四龍がヨナに会えていないことはスウォンが原因で起こっていることだと考えます。

兵舎に戻ろうとしていると、不意に殺気を感じます。相手は剣を振り上げています。ハクも剣を抜き応戦します。

相手の顔を見ると見覚えがあります。ヒューリというスウォンの剣の師匠です。

ハクが話しかけても、ヒューリは何も答えません。ハクはスウォンの話題を振ります。するとヒューリは本気でハクを倒しにかかります。ハクは気を失います。


ハクは目を覚ますと牢に入れられていました。

ケイシュクがヒューリとともにやって来ます。

ハクは状況をケイシュクから聞きだそうとします。

ケイシュクは何も言わずヒューリに後の処理を命じます。

ケイシュクが扉を開けるとヨナが立っています。

ヨナは、ハクを殺せば、自分と四龍が黙っていないといいます。南戒との戦に集中したいのなら、スウォンを守りたいなら、賢明な判断を、とケイシュクに迫ります。

ケイシュクはヨナの要求を飲み、ミンスにハクの治療を命じます。



ようやくヨナとハクが二人きりで話す時間が持てました。

ハクはジュド将軍から聞いたことをヨナに尋ねます。ヨナはその通りだと言い。ハクにどこまで話すべきか考えます。

ハクはヨナがどういう思いでいるかを察し、

「そんなに俺を守ろうとしなくていいよ」

と言います。


ヨナが部屋を出るとヒューリが待っていました。

ヨナはヒューリに母カシに直接手を下したのはあなたでしょうと言います。

ハクの命は奪わないで欲しい、もう憎みたくないと言います。

ヒューリは無言でヨナを見つめます。



ランタンの葬儀が行われます。

泣いている人物がいます。南戒の使節団に同行している女性です。

ヨナは南戒にランタンの死を悲しむ数少ない人がいると思い声をかけます。

その女性はメイニャンと言い、涙していたと思ったら、ヨナの頭を掴み、土下座するよう強要します。

ヨナはメイニャンに、

「………あなたは何者?」

と言い、ランタンへの情が感じられないと言います。

メイニャンは苛立ったようで手を振り上げます。そこに、

「駄目だよ」

とメイニャンの振り上げた手をつかみ、

「その手を振り下ろす事は許されない」

とジェハが登場します。

続いてヨナを守るようにキジャが、

「我が主に手を出すならば 八つ裂きにされる覚悟は出来ているな?」

と言います。シンアとゼノがヨナを囲みます。

高華国の兵士がヨナを囲む四人を、四龍、と呼び、南戒の使節団が四龍の存在を確認します。

メイニャンは黙ってその光景を見つめて、

「主… 四龍はヨナ姫のものなのかしら」

とつぶやきます。

キジャが、

「当然だ」

と答えます。

メイニャンは、

「雷獣というのはどの方?」

と尋ねると、ジェハが雷獣は四龍じゃないよと答えます。

「雷獣は誰のもの?」

と問うと、四龍が全員ヨナを示します。

「四龍も雷獣もヨナ姫のもの…… 王でもないのに与えられすぎではないかしら ずるいわね」

とメイニャンはヨナに言います。

キジャが、

「この御方は我々にとっての王だ そなたに とやかく言われる覚えはない」

と言います。メイニャンは納得がいかないようです。

スウォンがやって来ます。

メイニャンはスウォンに近づきます。スウォンはメイニャンが何者か分かっているようです。

メイニャンがスウォンの耳もとで何か囁きます。スウォンは動揺します。



葬儀を終え、メイニャンたちは部屋に戻ります。

ケイシュクがメイニャンの部屋を訪れ、

「スウォン陛下がお呼びです」

と言い、メイニャンを案内します。



ヨナも四龍とともに部屋に戻ります。外を見ていると、ケイシュクがメイニャンをどこかに連れて行くのが見えます。

ヨナはメイニャンがスウォンに何か言い、スウォンの表情に少し動揺が感じられたので気になっていました。

ジェハがヨナに見に行く? と言うと、二人でスウォンのところへ向かいます。

スウォンはメイニャンに、

「何故 貴方が… 緋の病をご存じなんですか?」

と言います。

メイニャンはスウォンに、緋の病に侵されているな、と囁いていたのでした。

メイニャンは、

「何故って 私も侵されてるからだよ」

と答えます。

メイニャンはスウォンと同じで、緋龍王の血筋の末裔なのでした。王でもないヨナが四龍を従えて、緋龍王の末裔は病によって早死にしてしまう現状に納得出来ないようです。

メイニャンはスウォンに二人で全てを手に入れようぜと提案します。

スウォンはなんの温度も感じることなく、

「あ そういうのはいいです」

と拒みます。

メイニャンは拒まれるとは思っていなかったようです。

スウォンは、

「貴方が理不尽と感じている事と 私がおかしいと思っている事は全く違う」

と言います。

メイニャンは交渉が決裂したので命の危険を感じます。背後にケイシュクとヒューリがいます。

逃げ出してみるものの、すぐにヒューリに捕えられます。

ヒューリがとどめを刺そうした剣をジェハが止めます。

ヨナが駆け寄り、ケイシュクにスウォンにやめるよう言います。

ヨナとスウォンが話している隙に、メイニャンが再度逃走します。

しかし、ヒューリに捕まり、牢に入れられてしまいます。



ヨナとジェハは部屋に戻ります。

ジェハはキジャとシンアから治療され、ヨナはゼノと話します。

ヨナはなぜ今緋龍王が生まれ変わって来たのだろう、ということを考え始めます。



メイニャンは脱獄します。外に出るため兵士を数人殺害します。

出口を探しているとハクを見つけます。




ハクとヒューリが戦うと、勝つのはハクだと思います。

ハクは防戦一方で攻撃しなかったのは、とどめは刺さないだろうと踏んでいたのでしょうか。

今緋龍王が生まれ変わって来た理由。どのように描くのか楽しみです。

続きます。




草凪みずほ 暁のヨナ 35巻
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2022年7月12日火曜日

草凪みずほ 暁のヨナ 34巻

ユホンはヨンヒと出会わなければ高華国の次の王になるはずだった人物でした。

ユホンとイルの父ジェナム王は最後まで次の王の指名をしなかったのはユホンを見極めるつもりでいたのか、どう状況が変わろうとイルを指名するつもりでいたのか。

ジェナムはイルを王に据えると五部族のどこかが内乱を起こす可能性は考えなかったのでしょうか。

スウォンが行動を起こしたのは内乱寸前だったからのかもしれません。

ジェナムは緋龍王を信仰したイルを次の王に指名し、、緋龍王の末裔であるヨンヒを正妻に迎えたユホンは外されました。何でも力でねじ伏せるユホンは問題があります。しかし、ジェナムの選択は国を治める上で正しいのか疑問が残ります。




ユホンはヨンヒに、

「ヨンヒ、神官共は全て処刑した」

と言います。ユホンがヨンヒとヨンヒの一族を必ず守ると言ったことはこういう結果を生んでしまいます。

ヨンヒはユホンに守られていると理解します。

ヨンヒは一族の皆に会いに行きます。ヨンヒは叔父に母に会いたいと言います。

叔父はヨンヒの母ヨシノは自害したと言います。

大神官がヨンヒの存在を知り、あらゆる手段を使って一族に会いに来ました。

ヨンヒは母ヨシノの死は大神官が何かしたのかと思います。

叔父は大神官は最大限の礼を尽くしてくださったと言います。

ヨンヒは思い違いをしていました。

大神官は緋龍王の末裔が今もどこかで生きていると信じていて、ようやく会えたことに涙していました。一族の存在が大神官の希望であったと言います。

ところが、ユホンは一族に会いに行った大神官をむごい方法で処刑し、神殿を焼き、その他の神官も全て処刑してしまいます。

叔父はヨンヒに、我々の存在を見ただけで緋龍王の血筋であると見抜くのは、大神官が本物である証拠だと言います。そんな本物の大神官を処刑するユホンに全てを打ち明けてしまった母ヨシノは自分の責任だと自害したと言います。


ヨンヒは一目見ただけで緋龍王の末裔だと見抜いた大神官の能力が、神官の力で何をされるか恐くて、ユホンに処刑されたのは自分とは関係がないと思い込もうとしていました。しかし、母ヨシノが自害した経緯を聞き、間違っていたのは自分の方だったと涙します。

ユホンがやって来ます。ヨンヒを見て、なぜ泣いているのか尋ねます。

ヨンヒは母ヨシノが亡くなったと言います。

ユホンは一族に会いに行こうとします。しかし、ヨンヒが引きとめます。

「待って…! それは貴方が…」

言葉が続きません。ユホンが守ると約束したことから始まったことで、全てが自分に返ってくることがわかっているからです。

それでもヨンヒはユホンの側を離れるという選択ができず愛おしく感じています。



時が流れ、ヨンヒとユホンの間にスウォンが生まれます。

ヨンヒはユホンからイルが妻を娶ったことを聞きます。

ある日、イルの奥方と会います。話しているとその人物はカシであることがわかります。

ヨンヒがカシに話そうとした時イルが険しい表情でやって来て、カシの前に立ち守ろうとします。

ヨンヒはイルにカシの存在を誰にも言わないと言うと、イルは、

「…もう いいよ 私は幸せだから」

とだけ言い、カシを連れてその場を去ります。



さらに時が流れます。

ユホンはヨンヒにイルに娘が出来たと話します。名をヨナといい赤い髪の赤子だと説明します。

ある日、ヨンヒは庭園でカシと火の部族長の妻イグニを見かけます。邪魔にならないように、会わない方がいいと思いスウォンを呼びそっと戻ろうとします。スウォンは木の上にいて、ハクと遊んでいたいと言います。スウォンと同じ年頃の少年ハクは風の部族のムンドク将軍のところの子だと知ると、一人で戻ろうとします。

イグニがヨンヒに気がつき声をかけます。

ヨンヒも声をかけられたので対応します。

カシもヨンヒに気がつきます。

カシがヨンヒに近づき挨拶をします。

ヨンヒは心配するような事態にならず安心します。カシの横に立つ小さな少女ヨナを見て何かを感じます。

何かはわかりません。ヨナを見た時その場に座り込んでしまいそうになります。そしてなぜか緋龍王の存在を思い出せます。

スウォンがヨナに挨拶します。そしてヨナにハクを紹介します。

ハクはヨナに猫いるから見に行くか? と誘います。ハクはヨナの手を取って猫のいる所へ行こうとします。

咄嗟にカシがハクの肩を掴みます。ハクが振り返りカシを見ます。

カシは目を見開き、少しの間無言でハクを見つめます。そして、

「……ヨナを… 守ってね…」

とハクに言います。

ハクは急に何を言うのかという表情で、ヨナの手を引き、スウォンとともに猫を見に行きます。


ヨンヒは子供たちだけで行かせて大丈夫かと心配します。するとカシが、

「大丈夫ですよ ここから見えますし 今日は悪いことは起きません」

とどこかひっかかるような言い方をします。そうしたらイグニが、

「カシ様は本当に不思議な方 まるで占い師のような事を仰るの ほら ヨナ様がお生まれになったばかりの頃も 『この子には しろとあおとみどりときいろの守護がついている』って」

と言います。イグニがスジン将軍に呼ばれ庭を去ります。

ヨンヒはカシが言った言葉を反芻すると頭に痛みが走ります。


ヨナ、ハク、スウォンはすぐ打ち解けます。カシは、

「可愛いですね」

と言います。ヨンヒは、あなたは幸せ? と尋ねると、

「…イル様幸せだと仰ったのは 赤い髪の子供を授かったからだと思います」

とカシは答えます。

また不思議なことを言います。ヨンヒは、

「でも あれは ヨナが生まれる前よ …赤い髪の子供が生まれると… わかっていたの…? カシ… あなたは… 何が見えているの…?」

と尋ねます。カシは、

「自分以外の人間の未来が…」

と信じられないようなことを言います。

ヨンヒはカシの話を聞いていて、さっきの言っていたしろとあおとみどりときいろの守護という話を合わせるとどうしても緋龍王という存在が浮かんできます。再び頭に痛みが走ります。

なぜ緋龍王がイルとカシの娘とつながるのかとヨンヒは混乱します。

カシは、

「あの子が再び四龍を集結させる」

と言います。

ヨンヒはヨナは王でも緋龍王の血筋でもないのに、ヨナが緋龍王ならスウォンは何者なのか、そもそも自分の一族は一体何を守って来たのかとカシに問います。

カシは未来が視えても今の私に出来るのは、イルを支え、ヨナの母親として務めを果たすことだと言います。

ヨンヒはカシと同じことを考えているのに、緋龍王の血筋を持つのに何者でもないという事実を突きつけられます。また頭に痛みが走り、一族の運命である緋の病を発病してしまったことを知ります。



2年が過ぎます。

ヨンヒの頭の痛みは時々現れるものの、症状は比較的穏やかなものでした。

そんな時、ユホンとイルの父ジェナム王が倒れます。

ジェナム王は二人を呼び、次の国王の指名をします。

次期国王はイルとなります。

指名されなかったユホンは悩み苦しみます。

ヨンヒは自分の役割について考えます。ユホンが次期王となり息子のスウォンがその次の王となる。スウォンを育ることは自分の役割なのだと思っていたのに、弟のイルが次期王に指名され、イルの子ヨナは緋龍王だと言われてしまう。ヨンヒは生きている理由さえわからなくなってしまいます。

カシは、

「あなたが生きているだけで 幸福になる人がいると… お信じにはなれませんか?」

と言います。

そこでヨンヒは意識が途切れてしまいます。


目が覚めるとユホンが側にいました。

「…ヨンヒ 必ず守ると言っただろう 俺に隠し事をするな」

と言われ、ヨンヒは一族の病緋の病が発病したことをユホンに告げます。


ヨンヒは緋龍城の外で静養することにします。

あと少しでで城を出るというある夜、眠っているヨンヒのもとにイルが見舞いにやってきます。

イルは初めて会った時のように穏やかで優しさに満ちた語り口で元気になってと言います。

ユホンはイルとヨンヒの会話を隠れて聞いています。


イルの戴冠式が行われます。

ユホンはヨンヒにその様子を伝えます。会話の中でカシの名が出て来ます。ヨンヒは体調がすぐれない様子なのでユホンが休むようすすめます。

ヨンヒの世話係がユホンにカシ王妃について話をします。ヨンヒはゆめうつつに会話の断片を聞いています。


ヨンヒが静養する邸にカシを招くことになります。

スウォンはヨナに会えることを楽しみにしています。

しかし、カシは道中で賊に襲われてしまい、屋敷に訪れることはありませんでした。

そして、その2か月後、ユホンが亡くなります。


ヨンヒは憔悴しています。スウォンが側で元気づけてくれるのでなんとか心を保ちます。

夜、目を覚ますとスウォンがいません。

ヨンヒはスウォンを探します。スウォンは庭にいました。スウォンの周りにはケイシュク、ユホンの護衛兵がいて会話をしています。

ヨンヒは話している内容に驚きます。

ユホンは滑落したと聞いていたのに、イルが剣で刺したことによって亡くなったと言うのです。

それだけではなく、カシは族に襲われたのではなく、ユホンが手を下したと言うのです。

スウォンは血が上っている護衛兵たちをなだめ、冷静に対処します。そして時間を下さいと言い、皆を解散させ部屋に戻ります。

部屋に戻ったスウォンを追うようにヨンヒは戻ります。

スウォンは静かに怒りに燃えています。

ヨンヒはそんなスウォンを初めて見ます。

話しかけると、信じられないことを話し始めます。ヨンヒはスウォンに恐れを抱きます。



手記を読み、ヨナは事のあらましを大体把握します。

ヨンヒが書いた手記はイルの手元にありました。

ヨナはイルもこのヨンヒの手記を読んだのだと知ります。

イルがスウォンは駄目だと言った理由、母カシが賊に襲われた理由、イルが武器を持つことを嫌う理由、スウォンは計画的にしっかり物事を見極め実行していること、イルはいずれスウォンに殺されることをカシから聞かされていたこと。

ヨナは父イルがどういう思いでいたのだろうと考えます。手記に挟んであった栞に細工があるのを見つけます。ほどくと中から文が出てきました。

内容を読むと、イルがヨンヒに宛てたものでした。ヨンヒの手元には届かない文をイルは書いていました。

ヨナは文を読み、父イルの心情を理解します。ハクをヨナの側に置いたことも書かれています。

ヨナはヨンヒ手記とイルの文を読んでどう進むつもりなのでしょうか。



ミンスが書庫でユンを見つけ千樹草について尋ねます。

ミンスはスウォンの治療に千樹草を試したいようです。

ユンは自分が行って分けてもらうことならできそうだと言います。しかし、ヨナの仲間だから城の外に出る許可が下りないと言います。

ミンスはユンが千樹草を手に入れるため外出許可をもらうためスウォンのもとに走ります。


ミンスはケイシュク参謀に許可をもらうため庭を通ると、スウォンがうずくまっているのを発見します。スウォンを囲むように四龍が立っています。

キジャがミンスに、

「軍事演習中に具合が悪くなったようだ」

と言います。ミンスは、

「ご心配なく 陛下は寝不足で…」

と誤魔化そうとします。どこかに運ぶなら手伝うよ、とゼノが言うと、

「問題ありません」

とスウォンは立ち上がり、自分の足で歩いて部屋に戻ります。


スウォンの体調を知った四龍はヨナが四龍やハクに会わないと言った理由はこれなのかと納得します。

シンアは知ったからヨナに会えない理由はないと、ヨナに会おうと言います。



ヨナは手記を読み終え、ミンスが来ないので執務室を出ようとすると見張りが立っています。見張りは、

「ミンスから伝言です 急な仕事が入ったので今日はお部屋にお戻りになられるようにと」

とヨナに伝えます。

ヨナは、

「私はスウォンが戻るまでここで待つわ ミンスに伝えて」

と言い執務室に籠ります。


ミンスが執務室に現れたのは3日後です。執務室にヨナが居ることを聞いて慌てて来たようです。

ヨナがスウォンは? と聞くと、ミンスは、

「今日は南戒からの使者がいらっしゃいます 大切な会談なので今日もここにはお戻りにならないかと」

と答えます。

ジュドがやって来てミンスを呼びます。ミンスは少し席を外しますとヨナに言うと、ヨナは私も行くと言います。


スウォンの体調はかなり悪そうです。

ケイシュクは薬をすすめます。スウォンは薬を飲むと眠ってしまうと拒みます。振り絞って南戒の使者に会うため立ち上がります。

スウォンの目の前にヨナが立っています。

ヨナはスウォンに薬を飲むよう言います。南戒の使者には自分が会うと言います。



会談が行われる部屋では南戒の使者がスウォンが姿を現さないことに不満を漏らしています。

使者は人の気配がして、ようやく来たと思ったら、スウォンではなく女が現れたので怪訝な表情です。

ケイシュクがヨナを使者に紹介します。

「お待たせ致しました この御方はスウォン陛下の従妹君 ヨナ姫様です」

使者は、王はどうしたと尋ねます。

ケイシュクは王は会談には出席されません、と答えます。

使者は無礼だと声を荒げます。すると、ヨナは、

「私はスウォンの従妹である前に先王イルの子です この度は私が望んでこの場に立っています」

と言います。

使者は、地の部族の金州における振る舞いについて、謝罪を要求すると、ヨナを軽く見て発言します。

ヨナは、地の部族領で見てきたことを使者に説明します。使者にとっては触れられたくないことだったようで、さっきまでの勢いが失せてしまいます。さらにヨナは、

「あの時 高華国にやって来た船は全て沈めましたし 人身売買も麻薬も止めさせて 南戒の商人も貴族も高華国で捕えているので今更ですがご報告しておきます」

と言うと、使者は、

「何だと!?」

と立ち上がり声を荒げて、威嚇しようとすると、

「あら お心当たりでも?」

とヨナはやり込めます。ケイシュクとジュドも驚いています。

会談が始まります。




弱体化する国。飢える民。ここを見て見ぬふりをするイル王は文に自分を「つなぎ」だと書きます。

そんなことでよかったのか? と思います。兄ユホンを王にしてはならないとい理由で、生まれてくる子ヨナが緋龍王の生まれ変わりという理由で、どうして高華国の未来を託せるのかうまく飲み込めません。

続きます。



草凪みずほ 暁のヨナ 34巻
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2022年7月8日金曜日

草凪みずほ 暁のヨナ 33巻

ヨナは緋龍王の生まれ変わりで、スウォンが緋龍王の末裔。

末裔は緋龍王の血筋だけがかかる緋の病という病を背負っています。

四龍と共鳴している緋龍王の魂は再びこの世に生まれます。この時代に生まれてきた理由や目的などないとは思います。でも、どうして今? という気持ちがなくなりません。

この辺りをどう描くのでしょう。楽しみです。

スウォンの両親の話が主です。




ジェハは皆のもとに戻り、キジャ、シンア、ゼノに、ヨナが会いに来られるのは困る、ハクに会うつもりはないと言われたと伝えます。


夜が明け、ヨナはミンスにもう一度スウォンに会わせて欲しいと頼みます。


ミンスはいい返事はもらえなかったと言います。


夜になり、ヨナはスウォンに会わせてもらえないなら、自ら執務室に行こうとします。

兵士の監視を搔い潜り執務室にたどり着きます。扉に手をかけようとした時、背後に殺気を感じます。振り返ると同時に首を掴まれてしまいます。相手のあまりに冷たい目が心の底から恐れを感じます。死が頭をよぎります。

その時、スウォンが間に入ってヨナを仕留めようとする相手を制止させます。

「待って下さい ヒューリさん」

と言うと、距離を取り、闇の中に姿を消します。

スウォンはヨナを執務室に通します。

ヨナはスウォンに執務室に出入りする許可を求めます。

スウォンは許可します。


許可をもらったヨナは部屋に戻ります。その途中ハクを見かけます。ハクを守るため会いたいのに見つからないように隠れます。

ハクはヨナの気配に気づき、辺りを探します。しかし、見つけられませんでした。部屋に戻り、ヨナはなぜ隠れたのか、四龍が会いに来なくなったのか、ヨナと四龍も会えていないことに違和感を感じ、いろんな可能性を考えます。


翌日、ヨナは執務室に行き、スウォンから国の状況について説明されます。

話していると、ケイシュク参謀がやって来ます。ケイシュクは執務室にヨナがいることが気に入らないようです。ヨナを一瞥し、スウォンに、

「…陛下 今日の軍事演習に四龍を参加させて宜しいでしょうか?」

と言います。

「ゼノさんも参加するんですか?」

と聞くと、はい、と返事するので、

「わかりました」

と執務室を出て行きます。


ヨナはスウォンの母ヨンヒの死が伏せられている不可解さと同時に、母上は本当に賊に襲われて亡くなったんだろうかという疑問がわきます。



ケイシュクは兵士に軍事演習に参加した四龍と1対1の戦闘訓練を命じます。

四龍からはキジャが出てきます。兵士はハクを監視しているラパです。

ラパはキジャに斬りかかります。キジャは微動だにしません。ケイシュクは慌てて声をあげ、ラパは剣を止めます。

何の真似です? とケイシュクが言うと、キジャは、

「…我々の主は緋龍王…即ちヨナ姫様只一人 ヨナ姫様の命なくば四龍の力は発動しないということだ どうしても我らの力を使うのなら ここに姫様をお連れしろ 我々から緋龍王を奪えると思うな」

と言います。

皆静まり返っています。

「…あーー… 問題ありません 四龍さんの能力が無くても我が高華国軍は常勝ですから」

とスウォンが声を出します。

スウォンは部屋に戻ろうとします。ゼノが何かに気づき、すっとスウォンの腕に腕を絡ませます。

「じゃあゼノがもう少し王様とお話しするから」

と言い演習場から一緒に出て行きます。キジャ、シンア、ジェハもついて行きます。


庭へ向かい、スウォンと四龍だけになって、ゼノが、

「…大丈夫か?」

と言います。スウォンは、

「何がです?」

と返事します。ゼノは全てわかっているようです。

「時々… 頭が割れるように痛むだろう? 隠しても無駄だ 俺は不死の能力を持つ黄龍ゼノ お前の母親を知っている 発病したんだな 緋龍王の血筋だけがかかる 緋の病に」

キジャ、シンア、ジェハは、ゼノの言葉に意表を突かれます。

キジャはゼノに説明を求めます。

「お前らが代々四龍の血を継いで来たように緋龍王にもいたんだ ひっそりと」

と説明を始め、

「王様兄ちゃんはその血を代々受け継いできた 緋龍王の末裔だよ」

と言います。

それを聞いたキジャは、

「緋龍王の末裔… この者が…? 私は姫様に出会って雷に打たれたような衝撃を受けた… だが この者からは何も感じぬぞ」

とゼノの口から緋龍王という言葉が出たので聞いてみます。

ゼノは、

「娘さんは 緋龍王の生まれ変わりだから 血筋とは違う 俺らは緋龍王の魂に共鳴してるんだ 緋龍王には5人の子供がいたけど 四龍が仕えたのは緋龍王だけだから」

と答えます。

スウォンは黙って横で聞いています。そして、納得します。ヨナが本当に緋龍王の生まれ変わりであること。イル王がヨナを「あの子は緋龍王の化身なんだよ」と言った言葉についてどうやってそんなの証明するんだと思っていたのに、ゼノが言った「魂の共鳴」という説明に、信じないわけにはいかなくなってしまいます。そして、緋龍王の血筋だとか末裔だとかいうのは、本当に意味のないことなのだと思い知らされます。



緋龍王の血筋はなぜ脈々とつないできたのか。ヨナは執務室でそれを伺える手記を見つけます。手記はスウォンの母ヨンヒが書いたものでした。



手記はヨンヒの父が緋の病で亡くなるという記述から始まります。

ヨナは緋の病という言葉を初めて目にします。

続いて、

(私もいつか緋の病に 緋龍王の血筋にさえ生まれなければ…)

と書かれてあり、ヨナはヨンヒが緋龍王の血筋であり、スウォンが緋龍王の血を継ぐ者なのだと知ります。スウォンの体調がよくないのは、この緋の病というものが原因なのかもしれないと思い手記を読み進めていきます。


スウォンの父ユホンの人柄、ヨナの父イルの人柄、ヨンヒの一族の秘密、ヨナに神の声を伝えた神官のイクス、ヨナの母カシのこと、大神官という地位の人物について書かれています。


ヨンヒが城に入り、ある日庭でカシとイクスに出会い、そこにイルが登場し、皆で神殿にお祈りに行きます。

神殿には大神官がいて、ヨンヒを見るなり緋龍王の血を引く末裔であるを見抜いてしまいます。

ヨンヒは必死に否定します。カシにも大神官と同じ能力がありその事実は見えています。

イルは驚きます。

そこに怒りの形相でユホンがやって来ます。ユホンはイルの殴り、ヨンヒを神殿から連れ出します。




スウォンが王座を狙ったのは緋龍王の末裔として当然就くべき場所だったからとも考えられます。

スウォンが残酷な手段を選んだ理由がまだわかりません。次の王になるには王からの指名がなければ承認されないからなのでしょうか。

続きます。



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2022年7月4日月曜日

草凪みずほ 暁のヨナ 32巻

戒帝国との戦に向けて準備を進めているところで問題が起こります。

ヨナがその問題を知ってしまいます。

ハクも四龍もヨナの様子が変なことは感じていますが、それが何なのかはわかりません。

それぞれが不安定な状態です。




スウォンはケイシュク参謀にジェハとグンテ将軍の対戦を観て、何か言いましたかと尋ねます。

ケイシュクは、グンテに少し試合前にお願いしました、と答えます。

スウォンはケイシュクの意図に理解を示します。

隣で聞いていたヨナはスウォンに、

「…なぜ ケイシュク参謀の勝手を許しているの…?」

と尋ねます。やや沈黙があって、必要だったからと答えます。

これ以上の会話を嫌がったのかスウォンはヨナが座る席の位置について尋ねます。

ヨナは、

「私は案内された席に腰掛けているだけ それで どう思われようとも大したことじゃないわ」

と答えます。

ケイシュクが口をはさみます。

「しかし 客席で見ている雷獣はそう思っているでしょうか…?」

ヨナは、

「ハクは貴方の思い通りになんかならない」

と返します。

ケイシュクは考え違いをしているように感じます。自分の考えが間違っていないと確信しているから仕方ないです。


キジャはさらに攻撃を加速させます。ジュド将軍は防戦一方です。

ジェハもキジャを見て派手に暴れます。グンテ将軍はジェハの蹴りの威力に驚いています。

攻撃は休むことなく続きます。

闘技台の床が壊され、砕け散った岩のような大きな塊や破片が観客席やスウォンのところまで飛んできます。

この状況を見てようやくケイシュクが慌て始めます。しかし、判断を誤っていて、ヨナ、スウォンを守り、ハクを監視しろと兵士に命じます。

観客は岩や石が飛んでくるので逃げ出します。

大きな石が飛んできます。ハクが片手で岩を受け止めます。立ち上がると即座に兵士がハクを制止しようとします。兵士はハクを警戒しすぎて周りが見えていないようで、飛んでくる岩にも気づいていません。ハクが兵士の顔すれすれで岩を防ぎます。

「前見とけ 危ねえぞ」

ハクは兵士に注意します。


ジェハはグンテにわざと斬られ、キジャは力尽きて倒れます。

ハクがジェハのもとに駆け寄ります。

ケイシュクはハクが動いたのを見て、兵士にスウォンを守るよう命じます。

スウォンはケイシュクに、

「彼は今 私の事など眼中にありません」

と言います。

スウォンはキジャとジェハが派手に暴れ、次の対戦ができなくなるくらい闘技台を派手に破壊したのは、シンアとゼノの能力を見せたくないのだと分析します。

一般の観客には四龍の力のすごさを充分に示すことができたのでケイシュクの目的は達成できました。


ハクはジェハを起こし話しかけます。

グンテがジェハを、ジュドがキジャを抱え、医療班に引き渡します。

ハクは闘技台からヨナを見つめます。あまりに離れて所に座っているのを見て、どうしたら近くに行けるのか考えます。

ハクは監視する兵士に夜話があるから来てくれと告げ、部屋に戻ります。



日が暮れ、グンテは妻ユウノとともにスウォンに会いに行きます。

グンテは四龍の能力の恐ろしさを話します。他国に渡してはならない、ヨナ姫が四龍を従えた経緯が気になると言います。



夜、ハクの部屋に監視していた兵士が訪れます。兵士の名はラパと言います。

ラパは緊張した面持ちでハクが何を言うか待っています。

ハクは、

「俺を空の部族軍に加えてくれ」

と言います。そして、ユンの医術を学ぶ約束を果たせと言います。

ハクは、ヨナの側にいるために軍の一番下から駆け上るのが手っ取り早いと考えたみたいです。


ラパはハクを空の部族軍第三十五番隊に連れて行きます。

自己紹介をすると、第三十五番隊の兵士はハクがどういう人物か知っているので疑問符が浮かんでいます。

隊長のサンドは不安を感じています。もし暴れだしても誰も止められないからです。

ハクはテキパキ準備し、仕事をしようとします。

第三十五番隊の仕事は掃除、給仕、洗濯です。ハクはすんなり隊に入れた理由がわかります。


ハクが働いている様子を、ジュド将軍が発見します。

近くまで駆けつけ本当にハクだとわかるとなぜ空の部族軍にいるのかと言います。

ラパが慌ててジュド将軍に第三十五番隊に入隊しました、ケイシュク参謀の許可も取ってあります、と報告します。

ジュドはケイシュクが許可してもスウォン陛下に忠誠を誓う者でなければ、入隊は認めない。スウォン陛下に忠誠を誓えとハクに迫ります。

ハクは、

「………スウォンに直接言いたかったけど あんたに言うよ どうしてイル陛下は殺されなければならなかった…? どうしてイル陛下と姫さんはあんな裏切りを受けなければならなかったんだ!?」

とジュドに問います。

ジュドはスウォンの父ユホンの死の真相についてハクに尋ねます。

ハクは事故ではないのかと言います。

ジュドはユホン様はイル陛下に殺されたのだと言います。

ハクはスウォンを思います。自分と過ごした時間は嘘だったのか。話したことはなんだったのか。そんなことを考えていると、空から一羽の鷹がハクのもとに舞い降ります。スウォンの鷹です。周りの人はスウォン以外の人間に降りたのを見たことがなく、静かに驚いています。

ハクは、

「グルファン」

と鷹の名を呼びます。昔の記憶がよみがえっているようです。グルファンもハクを覚えているようで懐くようなしぐさをします。そして、ジュドに、

「――ジュド将軍 ここで俺がスウォンに口先の忠誠を誓っても何の意味もない だが 姫さんは あんたらと同盟を結ぶと決めた 覚悟をもって緋龍城に戻って来たんだ 主君の誓いを俺が一方的に反故はしねぇ」

と言います。

ジュドは剣を収め、何も言わず去っていきます。

ハクはあの夜のことをヨナと話すことを避けていたことに気づきます。向き合わなくてはと思い始めます。



四龍の過ごす部屋ではゼノがキジャとジェハの具合を聞くと、ジェハは、

「大分いい」

と言い、キジャは、

「これが緋龍城の力なのか…? いつもよりぐっと回復が早い」

といった会話をしています。

どこから入って来たのか、四龍に気づかれることなくスウォンが四龍の会話に入って来て、

「へー そうなんですか?」

と尋ねたりします。

スウォンはゼノに少し話したいと二人で外に出ます。


庭に出て、スウォンはグルファンの声が聞こえるのに姿が見えないので探すしぐさをします。

ゼノは黄龍の能力が興味があるのかと、聞くとスウォンはまあそうですねと、不老不死に興味があることを明かします。

話しているところにジュドが報告があるとやって来ます。言おうとするとグルファンの声が聞こえてスウォンは声のする方に歩いていきます。

スウォンはグルファンの声の方を見ると、ハクの姿を見つけます。

ジュドはハクが第三十五番隊に入隊したと言います。

スウォンはしゃがみこんで、

「…なに やってんの…」

とつぶやきます。

ジュドは判断を任され、ゼノはスウォンの様子にちょっと興味がわいています。



夜になります。

ヨナは自分一人で部屋から出歩きたいけれど、心配かけるといけないからミンスが戻ってくるのを待っています。

物音がしたのでミンスが戻ったのだと思い、声をかけようと扉のほうに行くと、ミンスではなくスウォンが苦しそうで今にも倒れそうな様子です。

ヨナはスウォンを支え寝床まで連れて行きます。

汗をかきつらそうな声を上げているスウォンをヨナはギュッと抱きしめます。

スウォンは少し落ち着きます。正気に戻ると、目の前にヨナがいるので驚きます。すぐに部屋を出て行こうとします。しかし、痛みが走るようで立ち止まります。

ヨナは顔色が悪いからと再び寝床に連れて行き、寝かしつけます。


ケイシュクがヨナの部屋にやって来ます。

スウォンが眠っています。

ケイシュクは護衛にミンスを連れてくるよう指示します。


ヨナはミンスがスウォンの主治医であることに驚きます。

ミンスはスウォンに薬を与え、スウォンは再び眠ってしまいます。

ヨナはミンスにスウォンの症状について尋ねます。

ミンスは少し疲れているだけだと言います。

ヨナはふとスウォンの母ヨンヒを思い出します。長い間病を患っていると聞いていたけれどどうしているのかと尋ねます。

ミンスはヨンヒ様は城から離れた別邸で養生なさっていますと答えます。


スウォンは夢を見ます。

イル王が言います。

「やあ 来たねスウォン 私を殺しても緋龍王にはなれないよ 試してみるといい そして振り返るといい ほらそこに 赤い髪の真の王が きっと君を死に落とす」

たぶんスウォンが剣でイル王を貫く直前に交わされた言葉だと思います。

目が覚めたスウォンはイル王の言った言葉の意味を探ります。



四龍はヨナに会いたいの会えない状況に限界が来ています。

ヨナもジュドに四龍には会えないと言われます。四龍だけではなくジュド、ケイシュク、ミンス以外の人間との接触も出来ないと言われます。

ヨナはジュドにスウォンに会わせて欲しいと言います。

ジュドはヨナを執務室に案内します。

執務室にはミンスがいます。書物に囲まれスウォンは眠っています。

ヨナはスウォンの姿を見て、幼い頃スウォンの母ヨンヒが頭の痛みでうずくまっていた光景を思い出します。ミンスにスウォンの病を見てしまったから他の人との接触を断たなけらばいけなくなったのかと、ヨンヒはもうすでにこの世にいないのではないかと、状況とスウォンの様子から考えられる推論を口にします。

ミンスは、

「駄目です…っ それ以上… お話になってはなりません…! 貴方様を守れなくなってしまう…!」

とヨナの口をふさぎます。

ミンスの真剣に話す様子にヨナは、スウォンの病は死に至るものだと悟ります。


ヨナは部屋に戻ります。

脱力しどうすべきかわからなくなってしまいます。

そんなヨナのもとにジェハが現れます。

ジェハはヨナの手を取り、

「行こう ヨナちゃん」

とハクのもとへ連れて行ってあげると言います。

ミンスの言葉を思い出し、ヨナはジェハに誰にも会わない、

「しばらく独りになりたい」

とジェハを追い返します。




ヨナはどうするのでしょうか。スウォンと話すときは来るのでしょうか。その前にハクはヨナと話せるでしょうか。

ヨナが緋龍城に戻ったことで選択を迫られる場面が多くなります。

選択といっても戦を止めることは出来なさそうなので、勝利のために何を決めるのかという展開になりそうです。

続きます。





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