2024年12月20日金曜日

望月ミネタロウ ちいさこべえ 3巻

茂次の意地と人情が描かれます。

意地を事務員のなつこには話しているのが意外でした。誰にも話さずに意地を貫いて去る者は去って仕方ないと腹を括っているように見えたからです。

人情については又吉が物を盗んだ店は幼馴染の一徳が経営している店で無茶を言っているのを承知でなんとか許してほしいと頭を下げて頼む茂次の姿で描かれています。ここで一徳に人情を前面に出してひたすら詫びを入れているのはこのあとにりつと話す内容につながるのだなと思いました。

3巻でようやく物語の輪郭がわかりました。面白かったです。




茂次はりつに俺は意地っ張りか? と聞きます。

りつは少し黙って考えてから意気地なしより意地っ張りのほうが男らしいですと言います。

茂次は分かったと言います。着替えて居間に行ってそれから出掛けると言います。



居間にやって来た茂次は大と横浜にこれから保険会社と三の町の施主の所へ行き再普請に取りかかると伝えてくると言います。

横浜は驚き反対します。

大はグッとこらえて黙っています。

横浜は施主に手付けを返したほうがいい、これ以上借金を積み重ねると大留が潰れると言います。

大も無茶だと言います。

茂次は何も言わず出ていきます。

玄関で大は横浜の言う通り施主に手付けを返そうと言います。

茂次は親父ならそうすると思うか? 投げ出すか? と訊きます。

大は時代も事情も違うと言います。

茂次は家を建てると請け負ったら契約通り家を建てて施主に引き渡すのが仕事だ、こんなことで手詰まりだって途中で投げ出すまねなんかしねえと言います。

事務員のなつこがやって来て、玄関での茂次と大の話を聞いています。



横浜は茂次が強情だと大留を継ぐべきじゃなかったとひとりごとを漏らします。りつにお茶をくれねえかと頼みます。

りつは横浜のつぶやきを聞いていたので怒った表情でご自分でどうぞと言います。

横浜はりつの迫力に怯んで自分でお茶をいれます。



茂次は家を出ます。

大は考えられねえとぼやきます。

なつこが大にちょっとお話がありますと言います。



茂次は施主の所へ行き再普請の了解を取り付けます。



なつこは若棟梁との会話を話します。経理の事で若棟梁に詰め寄ったと言います。

茂次は横浜から金を借りるという件は忘れろって言っただろうと言います。

なつこは茂次にみんな大留のことを考えているんですと言います。

茂次はそれはわかってると言い、大たち職人には言うなと前置きし、自身の気持ちを話します。みんなの大留を立て直したいという気持ちが痛いほどわかるから何も言わなかった。横浜のことについても横浜は大留を出た人間で、出た人間であっても大留の危機があれば何としても助力しようとする。しかしそれは互いにとって一生の荷になるかもしれないから構うなとこっちが突っぱねる感じの物言いをするしかない、それ以前に他人の力で立て直ろうとすることは親父が喜ばないだろうと言います。

なつこは黙って茂次の話しを聞いたと大たち職人に説明します。

大と職人は茂次の考えを知ります。

職人たちは茂次を信じることが出来なかったことを恥じ自分達に出来ることは何かと問います。

大はしっかりと仕事をするだけだと言います。

横浜も玄関近くに来ていてなつこの話を聞いていて茂次の思いを知り怒りも呆れも収まります。



夕食はハンバーグを作り茂次の帰りを待ちます。

茂次は家を出る時横浜も大も職人もカリカリしていたのに帰ってきたら全員が何もなかったように清々しい表情をしているので不思議がります。



夕食後茂次はなつこに火事の時布団屋の主人がなくなり家も焼けてしまったことを思い出し、うちで出来ることがあればしてやりたいから連絡を取っておいてくれと言います。

なつこはわかりましたと言って帰ります。

茂次の横で話しを聞いていたりつは急につんけんとした態度を取り始めます。



りつは茂次に対しずっと怒っています。

茂次はりつの様子に気づいています。しかし何も言わず暖簾を持って信用金庫の支店長福田に会いに行きます。福田に自宅の権利書と大留の看板と暖簾を出してこれで金を借りたいと申し出ます。

福田は審査してみると言います。



数日後茂次は事務員のなつこに金を借りられたと言って各所の支払いを指示します。大には普請の再手配を伝えます。その間にも火事の被害を受けた家の法事を手伝ったりもします。

りつは黙々と手伝いをします。

数週間忙しい日々が続き疲れもあって茂次はりんのつんけんとした態度にカッとなって手を上げてしまいます。



翌朝りつは起きて台所に行くと、

すまなかった 気が立っていたんだ 茂次

という書置きを見つけます。



りつはスーパーマーケットでなつこに会います。なつこから茂次とゆうこが結婚という話しが進んでいると聞かされます。

りつは屋敷にそう長くはいられないだろうなと考えます。



茂次は帰りが遅くなり台所へ行くと夕食とりつの書置きがあるのを見つけます。

茂次はりつの部屋に行き障子越しに話しをします。昨日は叩いてすまなかったと言いりつの言葉を待ちます。

りつは私も悪かったです、でももし謝るんなら茂さんのお父さんお母さんに謝ってくださいと言います。

茂次はなぜ両親が出てくるのかわかりません。

りつはつんけんしている理由を話します。町内の家の法事は手伝うのに、どうして両親のお骨はそのままにしておくのかわからないと言いすすり泣きます。

茂次はしばらく黙ってりつの小さな嗚咽を聞いてから話し始めます。両親のお骨をそのままにしておくのは親父や母ちゃんを仏あつかいしたくないからなんだと言います。まだ二人には仏になってもらいたくなくて死んだことを認めたくなくてそのままにしている、大留を立て直すまで仏あつかいしないつもりなのだと言います。

りつは茂次の気持ちを聞いて謝ります。



茂次と大は仕事が早く終わったので呑みに行きます。

いろんな事をこれまで以上に頑張ろうと確認し合い、茂次が職人のクロの姿を見かけないと訊くと、大は最近いろんな口実をつけてちょくちょく休んでいると言います。

店を出て茂次は大留工務店の敷地を見て気持ちを新たにします。



子供達が描かれます。

一番年下のあっちゃんは怖い想像をしてりつに泣いて訴えます。

又吉はお菓子を万引きし、店の人が警察に引き渡そうとしてりつと茂次が謝り店の人を説得します。

夜茂次はりつに初めて子供達を屋敷に置いてほしいと言った時のことについて話します。屋敷には置けないと言った時りつが何か言おうとして飲み込んだ言葉を訊きます。

りつは何だったか覚えてないと言います。

茂次はりつが言おうとした言葉を推察して言います。

りつは茂次の言葉を否定します。しかし強く否定できません。

茂次はあらゆる出来事でりつの口にしなかった言葉が頭の中で響いていると言います。りつの存在から求めていた何かを得たようです。

りつは口にしなかった言葉が茂次の頭に繰り返し思い起こされていると知り、ギュッと手を握り茂次を見つめます。



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