●第95話
恵紀鏡(けいききょう)は夕鈴にどこから仕入れるのか噂話を伝えます。
噂話とは陛下と周宰相の不仲説です。
夕鈴は気になって陛下に訊ねます。陛下は笑顔ではぐらかします。そうなると、余計に気になるもので浩大に訊いてみます。
浩大は陛下が言わないなら言えないと言います。
夕鈴は思っていたよりもちゃんとした理由がありそうなので、周宰相に直接訊いてみることにします。
周宰相は、
「陛下の私生活へは極力 関わらぬよう日頃より心掛けております」
と応え、なぜと訊くと、
「…私が以前 陛下からのご信頼を失ったから …に ございます」
と応えます。
そして、
「…『この国のために』 『王のために』 貴女は必要な方でございます お困り事がございましたら お申しつけください …お妃様」
と言います。
周宰相の背後から、
「周康蓮」
と声がします。陛下です。恐ろしく冷たい声です。
「己の領分からは出るなと 私は昔 お前に言ったな?」
と言う陛下はひどく怒っています。
周宰相はすぐにひれ伏し、
「立場をわきまえず 軽率な発言を申しました …ご処分を」
と言います。
その様子を見ていた夕鈴はあまりの陛下の迫力に腰が抜けてしまいます。
陛下は夕鈴を抱きかかえて、
「…今日のところは聞かなかったことにする 戻れ」
と周宰相に言います。
落ちついた夕鈴は陛下に訊ねます。
陛下は、
「なんでもないんだ 夕鈴は心配しなくていい」
と言います。
●第96話
夕鈴は陛下の怒りを目の当たりにして、何かしらの確執はあるとわかります。徐克右(じょこくう)に訊いてみることにします。
徐克右は、
「−――――… あれはどちらかといえば裏切り、かと」
と応えます。
夕鈴は想像していたよりもずっと重い出来事のようで、李順に相談しようとしてみます。しかしすぐに、教えてくれないだろうと結論を出し、陛下の口から話してもらおうと、強硬手段に出ます。
陛下は後宮からの報せで、夕鈴の元へ向かいます
夕鈴は以前監禁された檻部屋に籠城することにしたのでした。
檻部屋にやって来た陛下は、
「何をしているんだ 君は!」
と言います。
夕鈴は陛下に周宰相とどんなケンカをしているのか教えてくれるまで檻部屋に閉じこもると決意を表明します。
夕鈴を影から護衛している浩大は夕鈴に期待しています。
陛下は、
「…わかったよ 少し話そうか」
と言います。
夕鈴は陛下が話してくれないだろうと思っていたのに、あっさり話すと言ってくれたので、檻部屋から出てきて、陛下に抱きつきます。
陛下は夕鈴を失うわけにはいかない、奪われるわけにはいかないと考えています。
●第97話
陛下(珀黎翔・はくれいしょう)は幼少期王都を離れ、静かに暮らしていました。
李順の父親が黎翔を世話していた縁で李順がその頃からお守り役をやっていました。
黎翔の兄は黎翔を暗殺しようと暗殺者を送り込んでいました。
黎翔の父である国王が亡くなり、兄がその後を継ぎました。
兄が国王になり権力を握ると、一番最初にするのは黎翔の処刑です。
李順の父は黎翔を隠します。王宮には行方不明と報告し、黎翔は北の辺境で国境警備をしている隊長桓行(かんこう)に預けられます。
桓行は黎翔に、
「―――おい小僧! 今日から俺がお前の親父で お前はうちの一員だ いいか!?」
と言います。黎翔の人生が大きく変化します。
北の辺境で生活していると、王都で国王の不興を買って左遷されて周康蓮がやって来ます。
周康蓮は黎翔の正体を知っていました。
黎翔は周康蓮から多くのことを学びます。
●第98話
黎翔が守りたいものがあっけなくなくなってしまいます。
野蛮な異民族を完全に排除せよと国王陛下から任務が与えられた将軍がやってきます。
将軍が指揮を誤り、自軍を壊滅させてしまいます。
桓行は黎翔にこれからどうするか伝え、自分は敵を足止めすると言います。
黎翔は逃げ延びます。桓行に言われた通り、王弟を名乗り、軍を立て直し異民族を撃退します。せっかく手に入れた自由がなくなり、幼い頃の窮屈な状況に戻ってしまいます。
●第99話
黎翔はさみしさを感じます。仲間たちも接する態度が変わり、孤独感が増していきます。
周康蓮は黎翔に話があると言います。国王が倒れ、危険な状態であると報告します。そして、黎翔に王都へ向かうように言います。国王に正当な手順で王位を譲ってもらいこの国の王になってくださいと言います。そのための手回しもしたと言います。
黎翔は周康蓮が無断で行ったことを怒ります。
その後、白陽国の国王となり実績を積み上げていきます。黎翔が冷酷非情の狼陛下と呼ばれるようになった頃、周康蓮に、
「決してその己の領分から出るな 私に隠れて 私の周りに干渉するような真似はするな 不愉快だ」
と言います。家族も仲間もすべて手からすべりおちたと感じた瞬間でした。
陛下は夕鈴にこの一連の話が周宰相とケンカというのかはちょっとわからないと言います。
「…でも君は あまり気を許さないようにして 『国のため』ならいつ利用されるかわからないから」
と本気で怒った理由を説明します。
夕鈴は裏切られまいとする陛下に涙します。
翌日、夕鈴は周宰相と話をします。
周宰相の思いがわかり、夕鈴は周宰相とともに陛下のいる政務室に向かいます。
●第100話
夕鈴は陛下に周宰相と対話をしてほしいと言います。
陛下は必要ないと言います。
夕鈴は陛下の空腹を満たしてあげたいと周宰相と二人きりにします。
周宰相は妃が用意してくれた機会なのでひとつだけ発言の許可を求めます。
陛下は許します。
周宰相は桓行について話します。
陛下は夕鈴と出会ったことで別の考え方ができるようになったと言い、気持ちを明かします。
陛下の言葉を聞いた周宰相は、立派になられたと泣き出します。
夕鈴によって、陛下の空腹は少し満たされたようです。
続きます。
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