夏まつり以降、急接近したあかりと島田と林田。
不思議な3人の関係は時にすれ違い、
時に重なり合いながら、
三月町や川本家を舞台に新しい関係が生まれていく。
そして秋も深まる頃、零にとって最後となる
駒橋高校の文化祭を迎えるが、
奇しくも同じ日に開催される職団戦の会場に零はいた。
クラスの出し物に奮闘するひなたと立会人を務める零。
それぞれの場でそれぞれの思いを
抱えながら過ごす秋の一日が始まる――。
桐山零、林田先生、島田八段、川本ひなたの人間模様が面白いです。
●140 ふわふわの宝物
幼稚園の帰り道、川本あかりはよるご飯の献立をかんがえています。
モモは楽しそうに歌をうたっています。
あかりはモモがうたう猫の歌から連想して、猫のいる八百屋が浮かび、そこでトマトを買うことにします。
八百屋にはマニーという名の猫がいて、店の看板猫です。猫好きの三日月町の住人の人気者です。
マニーは偶然なのか商売上手なのか客におすすめをそれとなくすすめます。
愛らしいマニーの仕草は客の心を捕え、その日の献立を変えてしまう力を持っています。
あかりは卵と炒めるつもりでトマトを買いに来たのに、マニーによってトウモロコシに変更になり、天ぷらにしようと決めます。
三日月町の商店街にはマニーをとりまくたくさんの逸話があります。
あかりとひなたはマニーをとりまく商店街の様子におじいちゃんの和菓子店のこれからについて思いを巡らせます。
人が自然と集まり、楽しくて心地良い時間を過ごせる場所。
あかりとひなたはそういう空間を作りたいという夢を抱き始めます。
小さな目標は日々に張り合いを与えます。
●141 なつかしい味 1
あかりとひなたは甘味処にいます。
ちほちゃんに会いに北海道を訪れたとき、仲良くなった台湾出身のリンユーから台湾のスイーツ「豆花(トウファ)」を紹介してもらいました。
豆花が食べられる店が東京にあるというので、訪れています。
豆花に入っている甘いピーナッツが特に気に入って、自分たちでも作れないかと食材屋で生ピーナッツを入手し、翌日、ピーナッツの甘煮に挑戦します。
ネットの情報を頼りに、一晩水にひたしたピーナッツの薄皮を剥こうとします。
しかし、薄皮が簡単に剥けずに苦戦します。
なかなかはかどらず、あかりとひなたは頼りになる助っ人桐山零を呼び出します。
桐山くんは黙々とピーナッツの薄皮を剥いていきます。
桐山くんの助けを借りても買ってきたピーナッツはまだたくさんあります。
桐山くんはさらに助っ人として林田先生と島田さんを呼ぼうとします。
あかりはピーナッツの薄皮を剥くために先生とプロ棋士に手伝ってもらうことが申し訳ないようです。
ひなたがこのままじゃ終わらないというので桐山くんは林田先生と島田さんにメッセージを送ります。
●142 なつかしい味 2
桐山くんが林田先生と島田さんに送ったのは
あかりさんから伝言→「生ピーナッツの皮むきを手伝ってもらえませんか?」との事「お礼に晩ごはんがついてます。今夜は豚コマカレーです」だそうです。
という内容です。
林田先生は桐山くんからのメッセージで慌てて用意し川本家に向かいます。
林田先生は「あかりさん」と言われ冷静になれず、「島田さん」と言われじっとしていられず、島田さんより先に川本家に居なくてはと必死です。
島田さんは残念ながら東京にいなくて、今いる場所洞爺湖の写真を送ります。
グループにしているのか、林田先生にも島田さんのメッセージが送られてきていて、それを読んだ林田先生はホッとします。そして、ホッとした自分に落胆します。
桐山くんはあかりとひなたが考えているであろうこれからのことについて全部応援するつもりでいます。
今日、林田先生を呼んだのは理由があります。
野口先輩が林田先生を心配していて、なんとか手助けをしたいと言うので協力するつもりでいます。
●143 赤い橋のほとりで 1
桐山くんはあかりに何ができるか考えています。信頼している二人、林田先生と島田八段のどちらかがあかりさんを支えることになればいいなと考えています。あかりとのきっかけづくりにとピーナッツの薄皮むきに林田先生と島田さんを呼んだのでした。
桐山くんは島田さんは来られなかったので、夕食を食べている時に話題に出たハゼ釣りを次回の集まるきっかけにしようとします。
●144 赤い橋のほとりで 2
桐山くん、林田先生、島田さんはハゼ釣りの道具を買い、川本三姉妹と合流します。
モモは魚釣りに興奮し、全部自分でやろうとします。
モモが針にエサをつけるところからやりたがるので、島田さんはエサを見せます。
島田さんのの手のひらにはイソメがいて、モモはイソメを目にし、恐ろしさのあまり固まってしまいます。
モモは針にエサをつけるどころか、エサを手に取ることさえ出来なくて、釣りそのものを断念してしまいます。
その様子を見ていた桐山くんは良くない雰囲気に焦ります。
周りを見てみると、父子で釣りを楽しんでいます。
桐山くんは川本三姉妹が父親のことを思い出してしまい、嫌な気持ちにさせてしまうかもしれない、もしかしたら釣りを企画したのは失敗だったのかもと危惧していたら、ひなたに腕をつかまれます。
ひなたは、
「れいちゃん!! ひなもやってみたいっっ」
桐山くんの心配しすぎたのだといくらか安心します。
ひなたは晩ごはんのおかずのためにハゼ釣りをがんばってみるようです。
ひなたはもモモと同じくイソメが苦手のようで、桐山くんに頼ります。
桐山くんは淡々をエサをつけて、釣り竿をひなたに手渡します。
桐山くんもほんとうはイソメのような見た目が苦手なのに、ひなたの前ではなんでもないことのように強がっています。
桐山くんの、笑顔が見られるなら強がってでも叶えてあげたいという気持ちは、ひなへ向ける優しさがとても伝わってきます。
そんな桐山くんとひなたの様子を林田先生と島田さんが眺めています。
二人は桐山くんがひなたの前では少し無理して演じていることを見抜いていて、桐山くんの振る舞いにカチンときています。
島田さんは桐山くんを心配していて度々川本家にお邪魔しているし、林田先生も桐山くんが年相応の楽しいことを体験してほしいのに、自分の心配をしていることにムカムカしています。
林田先生は桐山くんのアシストに感謝しつつも年下であり、生徒であるので、情けなさや気恥ずかしさ、そして何より島田さんと張り合って勝てる勝算はあるのか見込みはあるのか。
いろんな思いが駆け巡り林田先生は島田さんに尋ねます。
「あかりさんの事どう思ってますか」
●145 赤い橋のほとりで 3
島田さんは、
「…わ…わからん…」
と応えます。
島田さんのプロ棋士としての顔が覗けます。
島田さんは自分を的確に分析して、他の天才、秀才、化物と呼ばれる棋士と比較して、どうあるべきなのか、どうありたいかを林田先生に話します。
●146 赤い橋のほとりで 4
あかりは釣った魚を丸揚げにするため下処理しようしたとき、釣るために使った餌のイソメが腹の中にいることをふと冷静になり考えてしまいます。
あかりは足がいっぱいある虫が苦手で、桐山くん、林田先生、島田八段の男たちが代わってハラワタを取ることになります。島田八段がさっそく作業にとりかかるのに対し、桐山くんと林田先生もハラワタを取るのが苦手のようで、島田八段ひとりで魚全部を処理します。
あかりとひなが料理してみんなで頂きます。
あかりが魚のフライを食べるのに躊躇します。あかりの様子を見て島田八段が、
「…大丈夫 ハゼはまだイソメを消化吸収してませんよ」
と言ってあげます。
あかりは島田八段に言い当てられて恥ずかしそうにします。
島田八段とあかりの様子を見て、林田先生はその中に入れずさみしそうです。
あかりは揚げ物ばかりだと食べられないかもしれない島田八段の胃を気遣い、さっぱりとした小鉢を出します。
島田八段は、
「うまい!!」
とあかりに感謝します。
ふたりのやり取りを見て、桐山くんと野口先輩は林田先生の心にピシッと亀裂が入る音が聞こえます。
●147 赤い橋のほとりで 5
食事のあと花火をします。
それぞれの思いが心を温かくさせてくれます。
桐山くんは心の変化を心地いいと感じていて、考えも変化していきます。
林田先生はそんな桐山くんの変化にうれしそうです。島田八段もいまの桐山くんの姿を見られてよかったと言います。
ひなたは桐山くんを違う角度から見ています。男性陣の頭にはてなマークが浮かぶひなの言葉が面白いです。
●148 秋の風景 1
10月に入り、文化祭の準備です。
桐山くんは隠れています。
先生たちが桐山くんを探しています。
桐山くんは高校生活最後の文化祭を生徒として楽しみたいのに、先生たちがゆるしてくれません。
先生たちは文化祭の2日目に、職業団体対抗将棋大会に出場して勝利するため桐山くんを会場に連れて行こうとしています。
先生は桐山くんに頼りきりです。
文化祭1日目は先生たちの将棋の特訓に付き合わされています。
文化祭でのひなの様子が気になる桐山くんはハッと気がつきます。高校に行こうとした理由、高校生活に向き合えている、探していたものに触れられている自分に、間に合ったと気がつきます。
●149 秋の風景 2
桐山くんに頼りっきりの先生たちのたたかいが始まります。
●150 秋の風景 3
桐山くんは先生たちが勝てるように頑張って稽古をつけているのに、桐山くんの姿が見えないと、先生たちは桐山くんを、
「正論ばかり振りかざす… あの… 融通の一切きかない『神の子』になっ」
と才能のかたまりだから自分たちの気持ちが分からないとか、教え方が厳しすぎるとか、助言に文句を言い合っています。
桐山くんがたまたま聞いてしまったところが面白いです。
●151 秋の風景 4
先生たちが対局している間、桐山くんはひなから送られてくるメッセージを見ています。ひなのメッセージのひとつひとつに桐山くんは色んな表情をして読んでいます。
●152 秋の風景 5
桐山くんはずっとひなのことを考えています。この1年のいろんな顔のひなを思い出し学校へ向かいます。
ひなは桐山くんと文化祭を楽しみたかったようで、学校に入ってくる桐山くんを見つけて、大きな声で名前を呼び、高校に入ってから楽しいことばかりの日々をくれた桐山くんに泣きながら感謝の言葉を伝えます。
桐山くんのひなへの思いと、ひなが思うことが重なって、とてもいい場面です。
続きます。
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