ダンピール(人間と吸血鬼の混血)はいずれ吸血鬼になる。この事実をアルジャーノン、レオン、クリスはエスターに秘密にしておきたかったのに、予想もしないところからエスターが知ってしまいます。哀しい展開です。
レオンとエスターの新婚生活は穏やかに過ぎていきます。
二人はロンドンへ行き、オペラを鑑賞します。
オペラ歌手のシャロン・ディクソンはレオンの元恋人で、彼女はわざわざやって来てエスターに恋人同士だったことを伝えます。
帰りの馬車でエスターは劣等感でいっぱいになります。レオンの顔を見ると泣いてしまうので見ないようにしています。
レオンは過去の女関係がエスターにバレてエスターの顔を見ることができません。
レオンとエスターのわだかまりはすぐに解決します。
レオンはウィンターソン家の諜報部員ロビンにアルジャーノンの行方を探させています。アルジャーノンが黒薔薇城からいなくなって行方不明なのだと言うのです。
それを聞いたエスターはレオンとともに黒薔薇城のクリスに会いに行きます。
クリスはエスターに怒られます。吸血鬼の王がエスターの迫力に小さくなっています。千年以上生きてきてこの反応が出来るクリスが面白いです。
クリスはアルジャーノンが心臓の病で長くは生きられないと打ち明けます。アルジャーノンの部屋で見つけたメモに元外科医でいまはダンピールの生態の研究をしている人物の名を見つけ、その博士を訪ねようと思っていたと言います。
エスターは一緒に行きたいと言い、レオンも同行します。
列車に乗って南へ向かいます。
博士の名はラルフ・サリンジャーと言います。彼の住む村まで三人旅です。
酒場で食事をしていると、ひとりの女性が入って来ます。
エスターの頭にキンと耳鳴りが響きます。その女性は吸血鬼です。酒場の人に尋ねると、サリンジャーの娘モニカだと言われます。
クリスはサリンジャー博士には子供はいないはずだと言います。彼女は吸血鬼だからと推測をたてます。
エスターとレオンとクリスはラルフ・サリンジャーの邸を訪れます。
応接室に通され、ラルフが入って来ます。
ラルフはエスターを見ると、
「アルジャーノン…?」
と言います。
エスターはサリンジャー博士がアルジャーノンのことを知っていたので、いまどこに、と尋ねると、
「アルジャーノンは1週間前に病で死にました」
とラルフは言います。
エスターはいまどこにともう一度尋ねます。上の階に棺を安置していると言われます。
部屋に入るとアルジャーノンが棺に座っています。
「どういうことだよ クリス どうしてエスターがここにいるの」
と言います。
エスターはアルジャーノンが生きていたので抱きつきます。
エスターの頭にキンと耳鳴りが響きます。
「アル?」
「やはり甦ったねアルジャーノン 吸血鬼として――――」
とサリンジャー博士は言います。
エスターは、
「吸血鬼…? アルが… どうして…」
と混乱しています。。
アルジャーノンが答えます。
「研究の成果だよ 僕は吸血鬼になりたかったんだ 僕のこの美しさを永遠に後世に残せる不老の吸血鬼にね!僕は生ける芸術品になったんだよ!」
なんだかよくわからない説明にエスターはとにかくアルジャーノンが生きていたこと、会うことができたことを喜びます。
クリスはレオンとサリンジャー博士に、
「しばらく ふたりにしてあげようか」
と言い部屋を出ていきます。
庭を歩きながらレオンとクリスは話します。
「茶番だと思うかい?」
「……」
「やはり君は知っていたんだね 彼らのことを それはそうか 君は吸血鬼ハンター一族の当主だ
「知恵としては… だな あれを実際に目の当たりにしたのは初めてだ」
「『エスターには知らせないでおきたい』 それがアルの願いだよ」
「そんなことは俺だって… 俺だって蓋をしておけるのならそうしたい… 永遠に あれを知ったらエスターはまた苦悩する もうこれ以上あのひとを傷つけたくはないんだ…!」
「そうだね 蓋は死守しよう私たち3人で」
サリンジャー博士がやって来てアルジャーノンが研究していることについて話します。
「何か手立てがあるのか!?」
レオンはクリスに尋ねます。
モニカとエスターが話します。
モニカがレオン、クリス、アルジャーノンがエスターに皆んなが伏せたい秘密をおしえてしまいます。
エスターはショックを受けます。
アルジャーノンはモニカを責めます。クリスはそんなアルジャーノンを抑えます。
夜、エスターは嫌な夢を見て気分転換に外に出ます。
レオンは気づかれないよう後を追います。桟橋で佇むエスターに話しかけます。
「真夜中にひとりで出歩いてはいけないよ」
エスターはレオンに胸の内を話します。
「私がいつか死んで吸血鬼になって本能に目覚め あなたやお邸のひとを襲ったりしたら そのときは必ず 私のこの首をあなたの手で刎ねてくださいね」
レオンは切ない表情です。
モニカが来ます。エスターは、
「泣いててもしょうがないです 『そのとき』が来るまで私は私のできることをして 幸せになろうって…」
と言い、モニカはエスターに抱きつきます。
「そうですよ 不幸なことなんてありません」
と言い、
「あなたもすぐに幸せになりましょう」
とエスターの背中をナイフで刺します。
エスターはそのまま倒れてしまいます。
アルジャーノンに責められてもモニカはエスターを吸血鬼にさせたいと思う動機がわかりません。自分の幸福が、他人にとっても幸福だとでも考えているのでしょうか。
続きます。
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