アーサー・マクドナルドの企てはエスターの活躍によって失敗します。
エスターはユアンの手引きで牢に入れられたレオンに会い、エスターはアーサーと手を組むと見せかけてギルモア侯爵(ジェイル)を救います。クリスのコウモリに願いを託し、ユアンと準備し、アーサーの計画をめちゃくちゃにしてしまいます。
前巻でユアンが味方しそうにないと思ったので、ユアンがエスターに手を貸したのはビックリしました。エスターを手伝いつつアーサーに報告していたのかなと思いながら読んでいました。
クリスがハイランドにやって来たのは劇的でした。クリスはどこにいたんでしょう。ロンドンにいて、偵察に行かせたコウモリがロンドンとスコットランドを往復するのは大変なのではと思います。コウモリはそんなに速く飛べたかな?と思います。まさか、ロンドンからずっとレオンとエスターについて来ていたりして。
クリスとレオンの会話、クリスとジェイルの会話の場面が面白かったです。
アーサーが吸血鬼ハンターの当主の首を獲るのに長い時間待っていたように、クリスもレオンが成長し真実にたどり着くのを長い時間待っていたと思うと、その優しさに感動します。吸血鬼にとってレオンが成長する十数年など取るに足らない時間だとしても、歴代ウィンターソン家当主の中でも一番心を通わせたレオンとは早く和解したかったのだろうと思います。クリスは人間と共存を思って恐らく1000年くらいは進展しなかったのだろうと思います。もしかしたらクリスにとってのこの十数年は生きて来た中で最もじれったい時間だったのではなかったのかと想像します。
レオンはジェイルに毒を飲ませたという容疑で投獄されてしまいます。
エスターとノアとエヴァとイオンは離れに軟禁されます。
エヴァは閉じ込められて怒っています。状況がわからないので暴れるのは我慢しています。
ジェイルに毒を飲ませたのは誰か。エヴァはエスターに、
「まさか彼のこの旅の目的はハイランドの吸血鬼への復讐だった… とかじゃないでしょうね」
と言います。エスターは、
「レオンはそんなことしません」
と強く否定します。
エヴァはエスターの言葉を聞き、犯人は誰で、レオンとジェイルの二人だけの部屋で何が起きたのか、そして今何が起こっているのか考えます。
牢に入れられたレオンにアーサー・マクドナルドが会いに来ます。
レオンは話すうちに、クリスマスの夜のウィンターソン家襲撃、今回の毒の件の真の首謀者がわかります。
一日が過ぎます。
離れの部屋に軟禁されているエスターたちは食事は届けられていて、ドアの小窓から差し入れられています。
食事が届けられる時間となり、ガチャッという音がしたのでノアが行くと、ドアの鍵が開けられています。
食事のトレーにはメモがあって、
(ひとときだけなら あなたたちを 会わせてあげることができる)
というメッセージと、邸の見取り図、地下の部屋へ行くルートが記されています。
エスターとエヴァは行くしかないと部屋を出て行きます。
記されたルートに従い、歩いているとエスターの頭上からコウモリが落ちてきます。
エヴァはコウモリを見て、
「この子! クリス様だわ 分身よ! クリス様の一部! 偵察に寄越してらしたんだわ!」
と言います。
夜が明けて、弱ってるコウモリに優しく語りかけるエヴァに、エスターはエディンバラのホテルでエヴァが言いかけたことについて話します。アーサー・マクドナルドからクリスマスの夜に襲撃を聞かされても腑に落ちないと言います。エヴァに、クリスマスの夜の襲撃でレオンが炎の中にクリス様を見たと言っていたと話し意見を求めます。
エヴァはありえないと言い切ります。
それを聞いたエスターはペチコートを破り、切れ端にナイフで指を切り血文字でメッセージを書き、クリスのコウモリの足にくくりつけます。そして、コウモリを陽の当らないところに置いてあげ、
「コウモリさん 日が暮れたらこれをクリス様に届けてください お願いします」
と言います。
レオンはひとり、クリスを信じきれず決別したことを悔やみます。扉が開く音がします。足音が近づき、顔を向けると、
「レオン?」
と声をかけられます。エスターです。
エスターは本当にレオンに会うことが出来て、泣いています。
レオンは驚いています。
エスターはジェイルが倒れた時何があったか教えて欲しいと言います。
レオンは、
「今回の事件は ハイランドの吸血鬼の王… 延いては イングランドの吸血鬼の王への叛逆… アーサー・マクドナルドとその一派によるクーデターだということだ」
と説明します。
それを聞いたエスターはみんなで助けますからと言い去ります。
アーサーが軟禁部屋を訪れます。エスターに話があると部屋から連れ出します。
エスターは事態を打破する糸口を見つけようとします。
アーサーはエスターに手を組みませんかと申し出ます。
エスターはレオンを救うためアーサーの申し出を受けます。受ける条件としてレオンの釈放とジェイルを看取らせて欲しいと言います。
アーサーはエスターの要求を認めます。
レオンは牢に外光を取り入れる小窓にコウモリを見つけます。
エスターはジェイルの部屋を訪れます。
部屋の中にはユアンがいます。
エスターはユアンのこれまでの経緯を知ります。そしてユアンがアーサーの指示でミルクティーに銀の粒を入れたことを知ります。
エスターは自分に出来ることを実行します。
レオンはエスターを幸せにすると誓ったからにはどんな方法でもとると決めます。
待っていた人がやって来ます。
レオンの牢にたくさんのコウモリが入って来ます。コウモリの群れは集まって人のかたちを作ったかと思うと本当に人に変わります。クリスです。
「やぁ レオン 今晩は」
「やれやれ 待ちくたびれたぞ ギルバート」
レオンは小窓にいたコウモリに血文字で、
「今すぐ来い」
と書いてリボンを結び付けていました。
クリスはエスターにも、
「レオンを助けてください」
と血文字で書いたメッセージをもらったと言います。
「それで? 君があろうことかこの私を呼び出すだなんて このハイランドでいったい何が起こっているのかな」
とクリスが言うと、レオンは説明します。
ジェイルの意識が戻ります。夢を見ていました。遠い昔クリスと交わした会話の夢です。
ユアンはジェイルにつきっきりだったでの仮眠をとっています。
どうしてこんな夢を、紅茶に毒が入れられていたこと、記憶を探りながら、見た夢について考えたりしていると、気配を感じます。
「なるほど… すぐそこにいたからお前が夢に出てきたというわけなのかな」
クリスはレオンに続いてジェイルに会いに行きます。
「私の夢を見てくれるなんて嬉しいじゃないか 久しぶりだね ジェイル」
「クリス―――――――」
「君もなかなか貴重な眺めだね」
「嗤うがいい この期に及んでなお 未練がましく 生きているこの無様な姿を」
「生きているんじゃない 生かされているんだよ」
「?」
「君にいいことを教えてあげよう」
クリスはジェイルの耳もとで囁きます。ジェイルは、
「なん… だと…?」
クリスから驚きの事実を聞かされます。
クリスは、
「さて これを踏まえた上で 君は私に何をして欲しい? 永い永い付き合いだ お望みとあらば私はいまこの場で君に鎮魂歌を捧げることも厭わないよ」
と言います。
ジェイルは静かに目を閉じます。
アーサーのところに、ジェイルが崩御したという報告が入ります。
アーサーは笑みを浮かべ、ジェイルの部屋に向かいます。
エスターとユアンが泣いています。
アーサーはベッドの上の灰を確認すると、
「陛下が崩御された よって咎人 レオン・J・ウィンターソンの処刑を執り行う 牢から出せ」
エスターが、
「なっ なにを言って… 私が女王になればレオンは釈放してくださるという約束では…」
「約束ぅ? さぁ 覚えていませんね
皆の前で吸血鬼ハンター一族当主の首を刎ねる…
我々ハイランド吸血鬼の新たな門出に相応しい素晴らしいイベントになるでしょう!」
といいアーサーは部屋を出て行きます。
ウィンターソン家当主の処刑と新王の戴冠式が執り行われます。
エスターに冠をかぶせます。祝杯が捧げられます。
レオンの処刑が始まります。
執行人が斧を振りかぶったところで、夜空に花火が上がります。コウモリの大群がやって来てひとかたまりとなり地上に降ります。クリスです。疾風のような速さで執行人の斧を切断し、レオンの拘束具を壊します。そしてレオンに銀製の剣を手渡します。
ハイランドの吸血鬼はクリスの登場に驚いています。
アーサーは予定が狂い、衛兵を呼びクリスを捕えようとします。
しかし、衛兵は相手がクリスなので動けません。
「諸君 今宵はいったいなんの宴かな?」
とクリスが声を発すると、アーサー以外の吸血鬼はひざまづきます。
アーサーはエスターが我らの王だと言います。
エヴァとイオンも姿を現わします。
クリスは、
「私に無断でウィンターソン当主の首を刎ねようとは これは私に牙を剥いたと捉えていいのかな?」
と言い、吸血鬼の戦意をくじきます。
アーサーはいよいよ立場が悪くなります。
隠れていたアーサーを崇拝する吸血鬼がエスターを捕まえます。
「動かないでください! 彼女の首をへし折られたくなければね!」
と言います。
アーサーが、
「良くやりましたね」
とエスターの手首を掴みます。
「来い!」
と引っ張ると、手袋が破れます。エスターの腕に咬み痕を見つけます。
アーサーの心臓が大きく跳ねます。
邸のバルコニーからジェイルが姿を見せます。
アーサーは破れかぶれとなり、エスターを八つ裂きにすると叫びます。
エスターは忍ばせていた銀製の短剣をアーサーの腕に突き刺します。
悲鳴を上げるアーサーに、レオンの剣が突き刺さります。
「道を外れた吸血鬼よ 吸血鬼ハンター一族ウィンターソン家が当主レオンの名において あなたを滅する」
続きます。
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