天才博士と悪名高い魔女が目的地を目指して旅する物語です。
魔女は小さな獣と木の実を炒ってご飯を作っています。
人が空から降って来たので魔法で助けてあげます。
助けられた人は礼も言わず、
「落下したのは3時の方向からの突風が原因だが それも君の魔法か? 君も俺を狙う魔女かと聞いているんだ」
と横柄な態度で言います。彼は手枷をつけられています。
魔女は、
「お前など知るか 礼くらい言ったらどうだ」
と男の態度の悪さに助けたことを後悔し腹を立てています。
男はどうも、と言い、手を差し出し手枷を外してくれると嬉しいと言います。
魔女は怒りをこらえて知らん、と立ち去ろうとします。抱えている小型犬くらいの大きさの鹿に似た四足動物をポイッと放すと、ボンッと象くらいの大きさに姿を変えます。
魔女はその動物の背に乗り、
「森の中を低く飛んで フィーヨ」
と言います。
男は象くらいの大きさに変化した鹿のような獣を見て驚いているのかと思ったら、魔女と一緒に鹿の背に乗ります。態度を豹変し少し興奮した様子で、
「観察史上最大級のひとつ 通称 “死神の襲羽(しにがみのおそいば)” この目で見られる日が来るなんて!! お会いあできて光栄です 俺はネスター=ギルロイ 魔法使いと共生する君達 魔角類(ホラントラー)を研究している学者です!」
とホラントラーと呼ぶ大きな鹿に自己紹介を始めます。魔女に対する態度とは別人のようです。
立派な角をほめ、魔女がホラントラーをフィーヨと呼んでいたので、フィーヨどうぞよろしくと話しかけます。
ギルロイ教授を空から落としてしまった三人の魔法使いは彼を見つけます。
ギルロイを助けた魔女は三人の魔法使いに気づかれたので逃げようとします。
三人の魔法使いはホラントラーが“死神の襲羽”だとわかり、彼らもびっくりします。“死神の襲羽”を連れている魔女は300年生きてるクインタという大魔女で同業殺しで悪名高い人物として知れ渡っているからです。わかっていながら、三人の魔法使いはギルロイ教授を取り返そうとクインタたちを追います。
ギルロイ教授もフィーヨ“死神の襲羽”を連れている大魔女がクインタだと知っています。しかし、ギルロイ教授は魔女には関心がなく、フィーヨには丁寧に挨拶をしたのに、助けてくれたクインタには無礼な態度を改めようとしません。
クインタは怒り抑えつつなぜ捕らわれているのか訊きます。
ギルロイ教授は追いかけてくる三人の魔法使いは自分の研究に協力してもらっていた、けれど、まだ世に出ていない自分の発見を奪って独占するつもりでいるのだと説明します。
三人の魔法使いは魔法で攻撃を仕掛けてきます。
魔法はクインタの顔を覆う仮面をかすり、仮面が外れてしまいます。素顔が露わになります。
クインタは魔法を詠唱します。大地の精霊を呼び出し強い魔法で応戦しようと石で反撃しようとしたら、ギルロイ教授が、
「あ 待っ」
とクインタに言おうとします。
ギルロイ教授が言い終わるまでにクインタは石だと攻撃力が強すぎると思い直し、ずっと攻撃力の低い精霊土くれの子らよ、と呼び出し、
「天駆ける星のように 飛べ!」
と魔法を発動します。
クインタの魔法は三人の魔法使いに追跡を諦めさせる程度の痛みを負わせます。
クインタとギルロイ教授は逃げ切ります。
休憩をとり、クインタは、
「さてと お別れだ 教授」
と言います。
ギルロイ教授は、噂にきくクインタと今目にしているクインタに落差がある
観察を始めます。クインタの見た目がどう見ても10代で、完璧に若作りに成功していると感じています。
大魔女クインタには秘密があります。若作りではなく本当に若くて年齢は16歳です。大魔女と知られているのに魔法は1日3回しか使えません。
ギルロイ教授は、
「お別れなんてとんでもない 俺のボディガードになってくれ」
と交渉を始めます。
クインタは即いやだ、と断ります。
旅の目的は国の中央にある賢者の図書館に行くことで、そこに研究成果を登録すれば皆に等しく公開できるからそこまでボディガードをしてほしいと言います。
クインタはそこまで大事な研究なのか、どんな内容なんだと尋ねます。
ギルロイ教授は言えないと言います。
クインタは先ほどの三人の魔法使いの他に敵がいるのかと訊きます。
ギルロイ教授はなんとも言えないと応えます。
クインタはギルロイ教授の秘密主義に呆れ、それなら報酬はどれくらいだと訊きます。
ギルロイ教授はクインタの耳もとで報酬を提示します。
クインタは、
「え… そんなに…?」
と引くくらいの報酬の提示に驚きます。少し考えて、
「…おまえとの仕事で このクインタの悪名は高まる?」
と訊きます。
クインタにも目的があります。クインタの目的は世界一の魔女でいることです。
ギルロイ教授は少なくとも一部には悪くなると思うと応えます。
クインタは了承し交渉成立のサインを交わします。
三人の魔法使いはギルロイ教授を拾ったのが大魔女クインタなのでこれからどうするか話し合っています。
クインタとギルロイ教授は空を移動します。
ギルロイ教授は手枷を外してほしいと言います。
クインタは道具がないと言います。
ギルロイ教授は魔法で外してくれと言います。
クインタは契約にないことはしないと言います。
三人の魔法使いはギルロイ教授を見つけ、取り返すべくクインタとフィーヨに再び攻撃しようとします。
ギルロイ教授は三人の魔法使いにクインタをボディガードに雇った、手を出すとどうなるかわかるな? と言います。
三人の魔法使いは今さら退けないと魔法で攻撃をします。
クインタが使える魔法はあと1回です。魔法の攻撃が飛んできて、クインタはフィーヨに旋回するよう言ってかわします。かわすと同時に別の方向から魔法使いがクインタを狙って攻撃魔法を放ちます。
クインタはかわしきれないと魔法の攻撃を受ける覚悟をします。
ギルロイ教授が盾になってクインタを守ります。クインタの仮面が取れます。魔法攻撃はギルロイ教授に命中し衝撃でフィーヨから落ちてしまいます。
落下するギルロイ教授を魔法使いの一人が捕らえます。
ギルロイ教授にかばわれたクインタは、
「なんで……!」
とギルロイ教授を見ます。クインタにもう一発魔法攻撃が飛んできて命中します。クインタはフィーヨから投げ出され、川に落ちます。
フィーヨがクインタを救出します。フィーヨは乱暴にクインタを背に乗せます。クインタをくわえて空に投げ、ストンと背中に乗せるからちょっと面白いです。
クインタはギルロイ教授との契約を履行するためギルロイ教授を連れ去った三人の魔法使いを追いかけます。
三人の魔法使いはギルロイ教授を動けないように縛り、クインタに見つからないように森の中を走ります。
ギルロイ教授は自分たちと何かが一緒に移動しているのに気がつき、三人の魔法使いの一人に話しかけます。
同じ速度で移動しているのは狼だとわかります。
一人が狼を追い払おうと魔法を使おうとしたら、もう一人がクインタのホラントラーに存在を特定されてしまうから魔法を使うなと言います。
ギルロイ教授は狼に襲われるから空に上がれと言います。
三人の魔法使いは空に上がればクインタに見つかるからこのまま行くと言い張ります。
ギルロイ教授の言った通り狼に囲まれてしまいます。
狼が飛びかかって来ます。魔法が飛んできて狼は気を失います。
クインタが現れます。
「手を出すとどうなるか予想はしてるだろ 答え合わせをしようじゃないか」
悪魔のような台詞を三人の魔法使いに放ちます。表情も悪名高い大魔女そのものです。
三人の魔法使いは戦おうとします。風の精霊を呼び出し、クインタの炎を吹き飛ばそうとします。渾身の魔法はクインタとフィーヨに届きもしません。
クインタは逃げ出す狼を見て、
「狼はおまえ達より利口だ」
と三人を攻撃するための魔法の準備に入ろうとします。
「クインタ もういい そのへんで…」
ギルロイ教授がいクインタに言います。
三人の魔法使いはギルロイ教授を見ます。
「魔角類ホラントラーが焼けてしまう」
とギルロイ教授は続けます。
三人の魔法使いより魔角類(ホラントラー)が大事だというギルロイ教授を三人の魔法使いは残念そうに見つめます。
ギルロイ教授は解放され、三人の魔法使いは去っていきます。クインタがギルロイ教授に意外に三人の魔法使いを大切に思っているんだなと言おうとしたら、ギルロイ教授はその手の自分の考えを読まれることを好まないらしく、話題をすり替えます。
ギルロイ教授はクインタに仮面を渡します。外れた仮面を拾っていたようです。
三人の魔法使いはギルロイ教授を逃してしまい悔しがっています。
三人の内の一人がギルロイ教授の発見が手に入れられなければむちゃくちゃにしてやると言い残し、二人と別行動します。
クインタはようやくご飯にありつきます。
ギルロイはいつ借りを返してくれるんだ? と訊きます。
クインタは魔法でギルロイ教授の手枷を破壊します。
ギルロイ教授はあまりに簡単にやってのけるのでなぜもったいぶってと苦情を言います。クインタに目をやるとクインタはぐったりしています。
クインタは今日四回目の魔法を使ってしまったので起きていられなくなります。
ギルロイ教授はクインタを心配し、近寄り声をかけます。状況から考えると手枷を破壊するために魔法を使ったからだと推測できます。クインタがわかっていて魔法を使ってくれたのがわかり、クインタへの見方が少し変化します。クインタに外套をかけてあげて、ギルロイ教授とフィーヨは眠りにつきます。
クインタはギルロイ教授の目的地、国の中央にある賢者の図書館までフィーヨで直線ルートで飛んで行けるのに、ギルロイ教授がわざわざ街に寄って、隣の州の地図を手に入れようとするので理由を訊ねます。
ギルロイ教授は賢者の図書館に登録するには推薦状が要るのでそれを手に入れてから図書館に向かうと言います。
クインタの肩に小さくなった姿のフィーヨが乗っていて、街の人々は可愛らしいサイズの魔角類を見て楽しんでいます。
この街にも魔法使いが一人いると誰かが言い、すぐ近くで観光客に魔法を使った芸を披露していると教えてもらいます。
芸を披露していた魔法使いはギルロイ教授を知っていて話しかけてきます。
魔法使いはワートンと名乗り、この地域の領主に仕える魔法使いだと自己紹介します。そして、宿がないなら領主の館にいらしてはどうかと誘います。
クインタとギルロイ教授は領主の館に向かいます。領主と食事をしてクインタは領主と話し、ギルロイ教授はワートンと庭や資料室を見学に行きます。
ワートンはギルロイ教授の研究成果を狙っていました。
クインタは用心してギルロイ教授に魔法をかけていて、無事です。
クインタがギルロイ教授の元に駆けつけ、ワートンを懲らしめます。
クインタはワートンにギルロイ教授の研究成果のことをどこで聞いたと訊ねます。
ワートンは魔術協会のネットワークだと応えます。
ギルロイ教授はあの三人の魔法使いの誰かが情報を流したのだと言います。
クインタはこれで敵が一気に増えそうだなと言います。
ギルロイ教授は三人の魔法使いがそんな行動に出るとは思わなかった、嫌われてたな、とがっかりします。
ワートンは反撃に出ます。クインタの魔法を真似してクインタを動けなくします。
クインタはギルロイ教授のアドバイスでワートンの意識を奪います。縛って資料室に閉じ込めます。
ワートンというこの街に一人しかいない魔法使いを動けなくしたので、クインタとギルロイ教授は安心して、ベッドで眠ります。
クインタとギルロイ教授は隣りの州に向かいます。
雪山を通ってもクインタの魔法のお陰で寒さ知らずで、和気あいあいと向かいます。
愉しそうにしているクインタとギルロイ教授を見ている者がいます。三人の魔法使いの一人です。魔法使いは雪を矢に変えてクインタを狙います。
事前に気配を感じたクインタは矢が届く前に魔法使いを見つけます。氷の精霊を呼び出し、魔法使いを凍らせようとします。
クインタは凍らせた魔法使いを見ます。ギルロイ教授に協力していた三人の魔法使いの一人だとわかります。勝てないと分かっていてなんでまだ追ってくるのか不思議そうにしています。
ギルロイ教授はあの魔法使いは自分に片想いをしているからだと言います。魔法使いはニコル=ニコルと言い、彼女に魔術協会について訊ねます。
ニコル=ニコルはギルロイ教授に領主の館で2人が同じ部屋で泊まったのは本当かと訊ね返します。それから矢継ぎ早に質問します。どれも恋がらみのことばかりです。
クインタはニコル=ニコルをロープで縛ってクレバスに吊るします。
ギルロイ教授は魔術協会について訊きます。
ニコル=ニコルは三人の魔法使いの一人ロザムンドの仕業かもと言います。
クインタとギルロイ教授はニコル=ニコルを連れて移動します。
途中天気が崩れて雪嵐になります。
クインタはまた四回目の魔法を使います。ぐったりしてしまいます。
ギルロイ教授はクインタの二度目の症状に疑問を感じます。
今日は雪山で野宿です。
翌日、クインタは目を覚まします。まだ体調が完全に戻っていません。
ギルロイ教授はクインタに体調を崩す原因を指摘します。
クインタは見事にいい当てられたものの、黙っています。秘密は打ち明けられないと気を引き締めます。
クインタの体調が回復しないので、ギルロイ教授とニコル=ニコルは周辺の植物を見学に出かけます。
クインタが一人で眠っていると、二人の魔女がクインタを見つけます。
二人の魔女は魔術協会の仕事を請け負い山に来ています。クインタの体調が悪そうなので連れて行くことにします。
ギルロイ教授とニコル=ニコルが戻ってくるとクインタとフィーヨの姿がないので捜索します。
すぐにクインタと連れた魔女を見つけます。
二人の魔女はギルロイ教授がクインタの仲間かどうかわからないのでクインタがはっきり目を覚ますまで一緒にいてもらうと言います。
ギルロイ教授は二人の魔女にここで何をと訊きます。
二人の魔女は植物採取、絞め殺しの樹というのがあるらしく探していると言います。
ギルロイ教授は二人の魔女が探している絞め殺しの樹をすぐに見つけます。
二人の魔女はギルロイ教授が若いのに植物に詳しいので魔術協会の情報で知った皆が探している教授なのではないかと言います。ニコル=ニコルが失敗してギルロイ教授が探している人物だとわかり、教授の発見を手に入れたいと考えていて、ギルロイ教授を捕えようとします。
ニコル=ニコルはもう一人の魔女と戦っています。
クインタが目を覚まします。
ギルロイ教授を狙う魔女だとわかり、助けてくれた恩を仇で返すと言い、フィーヨを本来の姿に戻し、魔法の準備に入ります。
二人の魔女はホラントラーが”死神の襲羽”なので助けた少女が大魔女クインタであることがわかります。
クインタは一気に火の精霊、風の精霊、水の精霊を呼び出し、
「三様に猛り狂い 狙いを定めよ!」
と二人の魔女を震え上がらせる魔法を使おうとします。
「相手がクインタじゃ降参だ! あんたの獲物なら手を出さないと誓うわ!」
と二人の魔女は完全に白旗を挙げてしまいます。
しかし、クインタは、
「ついでに光の精霊よ!」
と四つ目の精霊を呼び出します。
「落とせ 稲妻」
火の精霊と風の精霊と水の精霊と光の精霊、四つの精霊が二人の魔女に向かって放たれます。
二人の魔女はなすすべなく逃げていきます。
クインタは4回巨大な魔法を使ったことでギルロイ教授の疑念を晴らすことができたと安心します。
ギルロイ教授はフィーヨに好かれたいと思っているし、クインタにも好かれたいと信用されたいと思い始めているようです。ギルロイ教授の興味の先はどこに行きつくのか楽しみです。
300年生きている大魔女は本当は16歳の女の子。大魔女クインタが使える魔法は1日3回。彼女は秘密を抱えています。魔法使いが魔法を使うとき手にしているものは杖やタクトのような棒が定番なのにクインタはその役割を果たすものがフライパンです。なぜにフライパンを選択? 重たいだろうに。理由を後に描いてほしいです。
ギルロイ教授も秘密にしていることがいくつかあります。発見したこととは何か。三人の魔法使いの他にチームと呼ぶ人がいて、そのことには触れられたくないようです。
ニコル=ニコルはこの先もクインタとギルロイ教授について来るつもりなのでしょうか。
魔角類(ホラントラー)の造形は不思議です。博物館にある骨格標本が動いています。水分はなさそうなのに目はあって声も出せます。クインタのフィーヨは鹿っぽいし、ニコル=ニコルのホラントラーは頭に角が四つある四足動物です。ニコル=ニコルのホラントラーも鹿の仲間なのかな。ホラントラーが生息している理由なども描かれるのかなと期待しています。
何か面白そうなことが起きそうだと思わせてくれる物語です。
続きます。
草川為 世界で一番悪い魔女 1巻
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●関連リンク
白泉社公式サイト 世界で一番悪い魔女
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