2023年5月10日水曜日

森本梢子 アシガール 14巻

現代っ子の尊は戦国で大変な目に遭っています。

ご飯が合わない。走れない。虫がいて眠れない。鍛錬がつらい。唯とはなにもかもが反対で面白いです。

戦国の世にあるもので工夫して何かを作ろうとしているのは尊らしいなって思います。

どうやって尊は現代に戻るのでしょう。続きが楽しみです。




現代に戻った唯はお隣さんの向坂さんがたまたま発見し、唯の両親に知らせ、救急車で病院に搬送されます。

現代医学で唯は4日で退院します。

自宅に戻った唯は、両親とぐちゃぐちゃに散らかっている尊の研究室を見ます。

「これで動くのかしらねぇ」

という母に、

「大丈夫だよ 私がちゃんと戻って来たんだし」

と唯は楽観的です。

次の満月まで1か月あります。



戦国の世。

尊は真剣を突きつけられ、初めて弱っているお姉ちゃんを見て、頭が混乱していました。唯を現代に送ってから、ようやく冷静になります。冷静になり、自分が戦国の世に残されたことに気づき、帰る方法もわからず青ざめます。

若君は、

「尊 か様なことに巻き込んでしまい相すまぬ」

と言い、

「明朝には緑合に送らせよう 信近と吉乃へ文を書くゆえ それをたずさえて行け わしが戻るまで天野の家でゆるりと過ごすがよい」

と、尊の不安を取り除こうとします。

尊は、

「いやいやいや 待って下さい!! そんなの無理!! 僕はお姉ちゃんのようにはできません!! 苦手なんです!! 知らない人の家で暮らすなんて絶対無理です!!」

と切羽詰まって言います。

若君は、戦の最中で、明朝には再び出陣すると言い、尊は若君と戦に行くか、緑合の天野の家に行くか選択を迫られます。

「僕 戦にします! 連れてって下さい!」

若君は常に側についていてやれないと言い、小平太と源三郎を呼び、二人に尊に目を配って欲しいと言います。

「はっ」

「承知いたしました」

と小平太と源三郎は引き受けます。

尊は、

「ホント… す…すみません よろしくお願いします」

と頭を下げます。


翌朝、尊は災難続きです。

出された朝ごはんのにぎりめしが食べられません。馬に乗れません。姉唯のように走れません。

東村上の本陣に到着したときには尊は小平太に担がれています。

若君はヘロヘロの尊に大丈夫かと声を掛けます。

「あ… はい 迷惑かけて… すみません」

声はなんとか出せるようです。

「では 参るぞ 父上にご報告せねばならぬ」

尊は若君の小姓としてついて回るようです。

若君は尊にでんでん丸を渡します。尊が受け取ろうとすると

「こら!! たわけ!! 何をしておる!!」

「こうじゃ!! 下から!! 両の手で!!」

と小平太と源三郎が片手で受け取ろうとする尊を目を剥いて怒ります。

「あ… すみません」

心の中では、うるさいな、と思いながらも、謝って言われた通りでんでん丸を両手で下から受け取ります。

若君は笑っています。


殿に会いに行くと、志喜正綱もいます。

若君は唯の状況を説明します。

志喜殿は唯のおかげで命拾いをしたと若君に感謝を伝えます。

城攻めについて話し合います。

殿は明朝にも全軍で一気に攻め込むと言います。

若君は城内の民らが巻き添えになると消極的です。

志喜殿は兵糧も残り少ないと他に手が見当たらないと言います。

話をしていると、

「御免 殿 ただ今 尾張より援軍が到着いたしました」

と報告が入ります。

「援軍」

志喜殿が尋ねると、

「は! 高山宗鶴殿 宗熊殿 御父子が参られました」

と言います。

殿と若君と小平太と源三郎と尊は、高山、と聞き緊張が走ります。

「はて? 援軍など請うた覚えはないが」

と志喜殿が若君に言うと、

「速やかに お帰りいただきましょう」

と高山父子を帰らせようとします。

高山宗鶴はすでに皆がいる部屋まで来ていて、

「いやいや 喜志殿 我ら軍を率いて参ったのではござらぬ 信長様はこう申された 『どうやら御月殿と正綱が村上城を攻めあぐねておるようじゃ その方が行って知恵を貸してやってくれぬか攻め口は建てた本人が一番よう知っておろう』 とそういう次第にござる 取り急ぎ供回りの者を連れ参りました」

と言い、志喜殿と御月殿を見ます。

殿忠永を見て、宗鶴は、

「なっ!!! きっ きっ… 貴様!! 何故ここにっ…!! 志喜殿!! この者は はっ」

と言ってバタッと倒れます。

一同驚きます。若君は尊に目をやります。尊はでんでん丸を鞘に戻しています。尊が宗鶴をでんでん丸で気絶させたのでした。

若君は尊に親指を立てて、「いいね」と笑顔を送ります。



翌朝、

高山宗鶴は村上城攻めに知恵を貸します。昨夜、宗鶴と忠永で話し合いがもたれ、協力することになったようです。村上城には抜け道があり、その道から城に侵入し奇襲をかけることができると言います。

若君は、奇襲を自らがやると言います。そして本隊は正面から攻撃し、城の中の民を逃がして一気に攻め上がるという作戦でいくことが決められます。

軍議を終え、尊は若君に思うところがありつつ沈黙しています。

若君も尊の考えがわかり、

「誰かが行かねばすまぬ戦じゃ」

と言います。


尊も鎧兜を身につけ、若君と共に奇襲作戦に同行します。

宗熊が城の抜け道に案内します。

しかし、村上城の見張りの敵兵に見つかり、矢が飛んできます。奇襲がバレてしまいます。

尊は目の前で味方の兵が矢で倒れる様を見て、気を失います。

若君は小平太と源三郎に一気に攻めると命令し、自ら先頭に立ち抜け穴から城に入ります。

若君はでんでん丸を駆使し、次々と敵兵を気絶させていきます。城の内部に潜入することに成功し、正面の門にいる本体に合図の矢を送ります。

本隊は正面の門を破り、一気に城を制圧し、室谷与十郎を生け捕りにします。


尊は宗熊に背負われ、若君の配下の兵に運ばれ、いろんな人に背負われ、最後は悪丸に背負われて緑合に運ばれます。

目が覚めると、布団の上にいました。

尊は側で看病してくれている女性に気がつきます。

「ここ… どこ?」

と尋ねると女性は、

「緑合の天野家の屋敷にございますよ」

とこたえます。

尊は、

「それじゃ… もしかしてっ あなたは天野吉乃さんですか?」

と言い、女性は、

「ま ホホ 左様にございます」

と言います。

尊は起き上がり、唯がお世話になったこと、両親が感謝していること、若君のそばで迷惑ばかりかけてしまったことなどを話します。

吉乃は若君が話したことを聞かせ、その後食事を摂るように説教します。

尊はまず生きることだけ考えることにします。


食事を終え、尊は若君に会いにいきます。若君の覚悟を知り、一日でも早く唯を若君の元へ戻す方法を考えなくてはと心に決めます。



若君は渡瀬とつゆに、しばらく唯は戻らないことを伝えます。唯が戻るまでいつも通り奥を守って欲しいと言います。

尊は天野家に世話になります。唯が天野の人達から信頼されいると知ります。



現代。満月です。

唯は出発する準備を整え、笑顔で起動スイッチの刀を抜きます。

両親と他愛のない話をします。

いつもならすぐに唯の姿が消えるはずなのに、一向に音沙汰がありません。

唯が気がつきます。別れ際の若君の淋しそうな表情がもう戦国の世には戻れないことがわかった上で、唯を現代に送り出したというのを今になって理解します。

母は尊は戻って来るから大丈夫だと言います。

父は御月家の家系図を見たから大丈夫だと言います。

しかし、唯は研究室の無残な状態を見て、どうやって戦国の世に戻ることができるんだろうと落胆します。



戦国の世。

尊は墨と筆で書き物をしています。

孫四郎は尊にかまってほしそうです。

三之助は尊が書いている見たこともない記号のようなものに興味を持ちます。

尊は三之助に丁寧に説明すると、すぐに三之助は理解し、さらに深めようとします。

尊は三之助と話したことによって、ある考えが浮かびます。若君に会いに行き、運まかせの地味な作戦と前置きし説明します。

唯が戻るためには現代で尊が分解した機械を組み立てて動かし燃料を作ってもらうしかないと言い、

「組み立て方法や操作方法をできるだけ詳しくわかり易く お姉ちゃんでも猿でもわかるように書いてみたんです」

と説明書を若君に手渡します。

若君は説明書に目を通しながら、

「猿でもか」

とつぶやきます。面白いです。笑ってしまいました。

尊は説明書をどうやってお姉ちゃんに届けるのか、その方法がわからなくて困っていたと言います。

唯の学校の歴史の木村先生が持って来た書状を思い出したと言います。その書状は木村先生が持って来るまで457年間誰の目にも触れず眠っていたということになり、その書状とともに説明書を入れておけば、もしかしたらお姉ちゃんに届くかもしれないという作戦を思いついたと言います。

若君は尊が書いた書状の内容を見て、御月家の菩提寺楽安寺の蔵の中にその書状はあると言います。

早速若君と尊は楽安寺の蔵に行って、説明書をおきます。二人は唯にこの説明書が届くよう祈ります。



蔵に説明書を入れて、4か月が過ぎます。

唯はまだ戻りません。

尊の髪はずいぶん伸びています。

若君はこの間信長の命で2度出陣しました。2度目の出陣では信長と共に阿久城を攻め取りました。

戻った若君に尊は信長はどんな人物か尋ねます。

若君は現代でゲームで見た信長とはまるで似ていなかったと言います。そして、信長は高山宗鶴に村上城、宗熊に小垣城を与えたと話します。

尊は高山父子はほとんど活躍していないのにと不平をもらします。

若君はいずれ唯が戻るのは小垣城になるので、織田家の家臣だと騒ぎになるから、宗熊が城主ならその心配はなくなるから安心だと言います。

若君と尊は唯が戻ることは疑いないことだと思っています。ただいつになるのかまったくわからないようです。

ふと尊は御月の家系図にあった若君の正室の名が女(天野氏)となっていたことが気になって、

「天野家は他にお年頃の娘さんっていませんよね?」

と尋ねます。若君はいないと言い、尊は唯が後何年も戻らないと言うことにはならないと安心します。


と思っていたのに。


若君は殿から呼び出しを受けます。

殿は信長から妙な文が来たと言います。若君の嫁を世話したいという内容です。

殿は丁寧に断りの返事を使者に持たせたと言います。


2日後。


志喜殿がやって来ます。

殿と若君が会うと、志喜殿は若君の正室について尋ねます。

若君は元気だと言います。

会いたいと言うとここにはいないと言い、何処にいるのかと言うとそれは申せませぬと返します。

志喜殿は本当は正室はもうこの世にはいないのではないかと切り出します。

若君は、

「左様なことは決してござらぬ!!」

と強い口調になります。殿は、

「志喜殿 これはいったい何の詮議じゃ!」

と不快感をあらわにします。

志喜殿は信長が強引に話を進めようとしていると言います。若君の後妻にというのが吹山城主天野守影殿のご息女菊姫だと言います。

廊下で会話を聞いていた尊は、天野という名が聞こえてあたふたします。

若君が断わろうとすると、志喜殿は、

「信長様は清永殿を気に入っておられる が それ故にご油断もなされぬ そういう御方じゃ」

と言い、要求を飲まねばどうなるかわからないから、慎重にご返答なされよと助言します。



若君の後妻の件を耳にした天野信茂は怒り狂っています。旧御月家の家臣は姫を迎えてはいかがかと進言します。

若君は穏やかに弓の稽古をしています。尊はそわそわして様子を見守っています。

織田家から使者がやって来ます。

殿と若君は使者を迎えると、使者は信長本人です。信長自ら若君を説得するためやって来ました。

尊は信長のまとう空気感に圧倒されます。

一方で西の館に高山宗熊がやってきます。

「これは宗熊様 突然のお越しいかがなされました?」

「うん 清永殿はおいでか」

「いえ ただ今は本丸の方へ 織田家の使者に面会されております」

「織田の使者? すると、また出陣か?」

「いえ… それが縁談にございます」

縁談と聞こえて宗熊の後ろから、

「縁談って 誰の?」

と声がします。小姓が声の主を見て、

「あ!!!」

と驚きの声を上げます。

続きます。



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