名探偵シャーロックホームズの姪クリスティ。彼女の元に家庭教師グレースの友人からの奇妙な依頼が舞い込んで来る。彼女を付回す影の狙いとは?そしてホームズの姪であるクリスティの隠された出自もついに明らかに。クリスティの思い描く理想の未来が彼女の口から語られる感動の第5集。
●孤独な自転車乗り
今回の依頼人はグレース先生の友人ヴァイオレット・スミス。
ホームズのもとに、見知らぬ男に狙われ、つけ廻されているという相談でやって来ました。
物語の冒頭は、クリスティがエイミー料理長から教わりながら、生地をこねてパイを作っているいるところから始まります。
クリスティが見当たらず、アンヌマリーに居場所を訊ね調理場にいることを知ると、
「主人が調理場に入り、使用人の食事を作るなんて!」
と目くじらをたててクリスティを叱るコネリー夫人。
コネリー夫人に見つかると当然こうなることを予期していたクリスティ。
焼きあがったミートパイを、
「いつものお礼」
といって笑顔をそえてコネリー夫人に差し出します。
クリスティの人の心を鷲掴みする方法が可愛らしいです。
自分が焼いたミートパイを食べさせたい人物が館の外にも居ます。
伯父のホームズです。
ヴァイオレット・スミスがホームズに相談しようとしているところに、クリスティは意気揚々とミートパイを持って参上し、彼女とグレース先生に出くわしたのでした。
別のどうしても外せない事件があるホームズに代わり、ワトソン博士と当たり前のようにクリスティがヴァイオレット・スミスの事情を訊きます。
ワトソン博士が言うべきセリフをクリスティが奪ってしまったり、その夜のグレース先生との会話やクリスティがウィル伯父(ホームズ)を真似て言う、
「面白い…これは面白いかもしれんジョン。気が付かなかったかい?不自然がいくつか連なると事件の匂いがしてくるもんだよ」
というセリフ。クリスティはいつか言ってみたいと思っていたんだと思うと面白いです。
さっそく事件の解明に乗りだし行動するかと思いきや、ウィル伯父さまとワトソン博士がどう動くか推測し、のんびりと私用を片付けるクリスティ。
なんだか貫禄が出てきたように感じました。
ホームズ探偵事務所では、クリスティの考えどおり、ワトソン博士がファーナムに向かいます。
ワトソン博士からヴァイオレット・スミスの報告を受けホームズがクリスティが真似たセリフと同じニュアンスで語りだしたところには顔が綻んでしまいました。
自分で料理をしようとするし、ショッピングの代金も自分で支払うクリスティをコネリー夫人はどうして伯爵令嬢がこういう振る舞いをし、考え、行動し、興味を示す対象が他のお嬢様と違うのか不思議に思います。
グレース先生も同様にクリスティに努力を傾ける方向が違うことを意見します。
クリスティはレディーとして社交界にデビューすること以上に大切だと思っていること、その目的のために頑張っているのですが、今回の事件解決後にそれらが明らかになります。
見据えているものがしっかりしています。
事件のクリスティの推理はホームズのものとは過程が異なりますが、同じ結論に達し見事に解決します。
クリスティは次第にウィル伯父さまと肩を並べ、近い将来ホームズがてこずる難事件を手助けできるようになるかもしれません。
そんな話もいつか読めるといいなと思います。
グレース先生とクリスティがこれからについて話していると、ノーラが一通の手紙を持ってきます。「V」の刻印が刻まれた赤い封蝋。
それは呼び出しの合図で、夜、クリスティはグレース先生とともに、祖母と呼ぶ人物に会いに行きます。
通された部屋で待っていたクリスティが祖母と呼ぶ人物を見て驚くグレース先生。
こんな人物がいたらそりゃあビックリします。
クリスティの推理好きはどうやら祖母の影響が大きいようです。
ベイスン、アンヌマリーしか知らない重大な秘密。
この秘密をグレース先生も共有することになりました。
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