2018年2月28日水曜日

小玉ユキ 坂道のアポロン 1巻

1966年初夏、横須賀から地方の高校へ転入した薫。幼い頃から転校の繰り返しで、薫にとって学校は苦しいだけの場所になっていた。ところが転入初日、とんでもない男と出会い、薫の高校生活が意外な方向へ変わり始め…!?



ある世界を知り人生が一変するきっかけはこんな出会いから始まるのかもしれない。
そんな始まりです。


主人公西見薫(ボン)は小刻みに震えたと思ったら、雨が降っている屋上に行くために鍵を貸してくれという、すこし弱っている人物です。
川渕千太郎はそんな彼の行動になぜか興味を持ちます。
ともに繊細なものを持っているけど、普通では関わりあうことはなかなかなさそうなふたりの友情と純情で、元気な女の子迎律子が間に入って、一方通行の三角関係が描かれていきます。


舞台は九州のどこかで、会話は薫以外九州弁で行われ、方言がなんとなくなごみます。
個人で電話を持つこともなく、感情は向き合って言葉伝えるか、目で相手の様子を知るかしかない時代設定も好みです。


最後に女性が出てきて、その彼女を見て千太郎が顔を赤らめます。ジャズと恋。面白そうな作品です。
続きます。


小玉ユキ 坂道のアポロン 1巻
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2018年2月26日月曜日

ハロルド作石 7人のシェイクスピア 3巻

“失われた年月(ザ・ロスト・イヤーズ)”
―謎に包まれたシェイクスピア空白の時代。
片田舎の教育のない青年が、7年後には偉大な詩人になっていた。その間、彼がどこで何をしていたのか―――記録は、一切残っていない。
1564年 ストラトフォード・アポン・エイヴォンに生まれる。
1582年 結婚。
1583年長女スザンナ誕生。
585年教区に双子(ハムネット、ジュディス)受洗の記録。
…しかしそれ以降、1592年に偉大な詩人としてロンドンに現れるまで、シェイクスピアに関する記録は一切、途絶える。
この“失われた年月(ザ・ロスト・イヤーズ)”と呼ばれる7年間こそが、実は天才劇作家を育んだ季節であった……
謎の女との出会い、そして処女作“ODETTE(オデット)”上演…天才劇作家の歴史の空白を埋める!!


最初の芝居で散々な評価を受け、それが芝居にのめり込ませるきっかけになり、芝居を作る作業に何よりも熱心になって現在に至るランス・カーター。
彼の芝居は次第に人気を獲得していくが、食料品商ギルドのオランダ帰りのジョン・ハーマン、ワイン商ギルドのクレタ・マシューズというリヴァプールにおける二大巨頭の芝居の評価に肩を並べることができないでいるのでした。

本を売り歩く行商人トマス・ソープによって知識を得て、リーの詩は見事に観衆を魅了し、ランス・カーターはこれまでにない、身震いするほど感動と自信と確信を得ます。

ラドクリフ司祭の伝言もランスの気持ちを後押しし、ロンドンで演劇で勝負する決意を固めます。
そのために欠かせないのは、リーの紡ぐ言葉で、リーをロンドンに連れて行くためにはどうしてもミルの助けを必要とし、ミルの返事を待ちます。
ワースはランスの決意の固さを知り、必要なものを手配する役割を引き受けます。

この作品のタイトル「7人のシェイクスピア」の7人というのは、ランス・カーター(ウィリアム・シェイクスピア)、リー、ワース、ミル、トマス・ソープ、宮内大臣ジョージ・ケアリー卿、エリザベス女王陛下のことなのでしょうか。それともジョージ・ケアリー卿とエリザベス女王陛下は入らず、あと二人、ロンドンに到着してから登場するのでしょうか。
1巻のハムレット上演後、ランスカーター(ウィリアム・シェイクスピア)が帰宅し、
「つまり陛下はまたリーをご所望なのですね」
の会話に続く、リーの悲しそうな、幸福そうには見えない表情は何を物語っているのでしょう。
ロンドンには明るい未来が待っていないように思えます。

ワースが戻り、宴を開くために、市場に買い物に出かけたランス、リー、ミル。
そこで見たリーの不思議なちから。
リーの詩と言葉が3人の男のこれらを変えていく場面が面白かったです。
ミルの側転も面白かったです。
リーの言葉が持つ力がどれだけ人の心を揺さぶれるのかを試したランスの野心はどこへ向かうのか。
ンス、ワース、ミルの三人の男が偽名を使っている理由。
とても気になります。

2018年2月24日土曜日

ハロルド作石 7人のシェイクスピア 2巻

ランス・カーターとリーの出会い、リーを献身的に世話するミルの優しさ、リーに対するランスの振る舞い、ワースの不器用な心配りが面白かったです。


あらすじ
昨夜見た月の女神セレナの涙。
なにかの思し召しと涙の落ちたあたりを捜索するランスとワース。
気を失い倒れている少女を発見し連れ帰る。
体力が回復しミルから言葉を教わるリー。
少女に不思議ななにかを感じる三人。
リーに芝居を書くきっかけを話すランス。
スープ、魚の出来事。
ランスとワースの喧嘩を収めるリー。
リーの発する言葉に驚き、敬意を払うランス。
ローソク事件。
ワースの贈り物。
リーに紙とペンを与えるランス。
翌日紙に書かれた言葉に感動するランス。


劇的です。
災いの種をずばり言い切るリー、リーから感じる不思議な何かが確信に変わり、決断するランス。
すごく面白かったです。ミルが泣かせます。

2018年2月22日木曜日

ハロルド作石 7人のシェイクスピア 1巻

ランス・カーターとリーという中国人女性のウィリアム・シェイクスピア物語…かな。まだよく分かりません。

1600年ロンドン。
ウィリアム・シェイクスピアを名乗る男がハムレット上演後にエリザベス女王から頂戴した伝言、
「次の機会を楽しみにしている」
「つまり陛下はまたリーをご所望なのですね」
こんな会話から始まります。

そして、13年前の1587年にさかのぼり、リヴァプールの中国人集落で暮らすリーがどういう経緯でランス・カーターに出会ったのかが描かれています。

父親によってつけられた焼印、悪魔だ、存在が災いをもたらすなどと他人からならまだしも、両親にも言われ否定されます。
初めて存在を認められたのは町のために犠牲になることでした。
描かれ方がドラマチックです。

勝手すぎる町の人、この騒ぎを鎮める方法を知っていたリーに泣けてきます。
そして天啓を受けます。

7人のシェイクスピアとタイトルにどういう意図があるのかは今後の展開でわかってくるんだろうと思います。面白そうな作品です。

2018年2月20日火曜日

江口寿史 江口寿史のお蔵出し 夜用スーパー

単行本が出版されるだけで、なんかもう嬉しくなります。

欲をいえば、毎週は無理でも、隔週、毎月、隔月でなにかしらの作品にお目にかかりたいです。
収録されてある、
「うつうつひでお日記を読む」
のところに、ウケたい=認められたいから一所懸命サービスする、してしまう、というところを読むと、面白くならなければ、出したくないという思いが強いんだなと感じました。


小品を読んで、あとがきを読んで、せんべいは齧りませんが、ムフフと楽しみました。


●ドキワ荘の青春
おことわりがなければ、サラッと手塚先生と読んでしまっているところでした。妄想が始まったときのテラさんの目つきが面白いです。


●アフロ課長とレイバン娘
あとがきを読んで、ホントに?と思いました。日本の漫画界には江口寿史漫画も必要です。


●絶叫
ビビッてうまく伝達できない不良たちが面白かったです。神堂のそれは武者震いではありません。


●寿丼
編集者の舞草さん(マイマイ)と鈴木さん(アッキー)によぎるかすかな不安を描いてくれたのが面白かったです。
名言、教訓も炸裂して面白いエッセイマンガでした。


●ハタチの頃とかなんとか…
江口寿史版まんが道。早く読みたいです。


●トリビュられたり トリビュったり
トリビュられる立場の人はちょっと淋しさを憶えているのかもしれませんね。

●はじめての鹿威し
あの音ってインパクトあります。


●ラッキーストライク
こういう絵のストーリー漫画が読みたいです。


とにかく多彩な絵で、盛りだくさんの内容で楽しませてくれました。



目次
gag #1 ドギワ荘の青春 / ドギワ荘の凄春 / ドギワ荘の性春 / ドギワ荘の盛春 / SEX And The CITY / アフロ課長とレイバン娘 / レイバン娘のレイバン現状 / アフロ課長の幸せの時間、崩壊寸前!! / 違和感課長 / ゼロの昇天 Collaboration マフラーで殺して(マフラーズ:原作/一條マサヒデ) / 絶叫(マフラーズ:原作/一條マサヒデ) / 伊東(w/相原コージ) essay ご近所探検隊リターンズ / 寿丼 / 吉祥寺 / 今日は「はつね」に行こう / 讃岐うどんツアー のこり火篇 / 八丈島ぢビール / 吾妻ひでお「うつうつ日記」を読む / 吉田戦車という名前 / OT道 / ハタチの頃とかなんとか… / 1989泡の日々 / 吉祥寺妄想トリビア / トリビュられたりトリビュったり / ファッション漫才 / ゲームする女 / 東京深いところ gag #2 東京物語(グラサンMIX) / 御一行様 / はじめての鹿威し / イソノの嫁 / あおぬ゛ま゛くん / メガ4コマ もみあげクン story ラッキーストライク / 平成大江戸巷談イレギュラー(原作/椿屋の源) SELF LINER NOTES

2018年2月18日日曜日

江口寿史 キャラ者 3巻

野崎多美(タミ)とプックンの出番が少なくなってしまったのが寂しいです。
最後まで描いてくれるのかな。描いてほしいです。


江口寿史 キャラ者 3巻
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2018年2月16日金曜日

江口寿史 キャラ者 2巻

前の流れを知っていないと面白くないネタが多々あります。
弓月ハルカ、キャラ者の組織KSSD、その他のキャラが何かを演じて生きていることの面白さや哀しさを感じるのが面白いです。


江口寿史 キャラ者 2巻
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2018年2月14日水曜日

江口寿史 キャラ者 1巻

ゴミの収集日前日の夜に、こそっとゴミを捨てようとする野崎多美(タミ)を注意するプックン。
そのまま彼女の家に行き、クドクドと説教し、そのまま家に転がり込み居着いてしまうというところから始まります。

プックンは何者なのか。
プックンの腕の下の棒はなんなのか。
プックンに伸びるもう一つの腕はなんなのか。
それは気にかけてはいけない点なのですが、とっても気になってしまいます。

江口寿史のギャグ漫画です。
1ページで完結する形式だけど、前の流れを知っていないと面白くないネタが多々あります。
見開きの左側に漫画が掲載されていて、右側はパラパラマンガになっています。

最初はタミちゃんとプックンの二人だけなんですが、次第にプックンの仲間、タミの両親や友人、江口寿史の以前の作品に登場したキャラも登場します。
たった数コマ描かれるだけなのにタミの住むアパートの大家さんや両親の個性が強すぎで笑えます。

2018年2月12日月曜日

江口寿史 青少年のための江口寿史入門

短編集「なんとかなるでショー!」「寿五郎ショウ」「爆笑ディナーショウ」のなかから江口寿史本人が気に入っている作品をとり上げ再編集したのもです。

しりとり家族
最後をどう締めくくるのかと思って読んでいきました。ホッとしました。いい話です。


くさいはなし
こちらもいい話。


岡本 綾
こわい話を読んでいるときの何かが起こる前の緊張感に似た感じを受けました。


KV-201XR
進歩はすばらしいかもしれないけど寂しいです。


ハァドボイルド
なんだそりゃとつっこみたくなりました。


下品な一家
バカバカしすぎてぐるっと一回転して面白かった作品です。


旅の極北
眠る人々
そうなんだよなと納得してしまいました。


目次
圧縮 / 彼女は毎朝、東西線で / しりとり家族 / くさいはなし / 岡本 綾 / KV-201XR / 恋はガッツで / 絶食 / 怪獣王国 / 正義の人たち / ハァドボイルド / 下品な一家 / 意味なし芳一 / スプリンタージュン / 旅の極北 / ヌードラマ / 眠る人々 / 作品解説 / あとがき



江口寿史 青少年のための江口寿史入門
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2018年2月10日土曜日

江口寿史 ひのまる劇場

江口寿史のデビュー作「すすめ!パイレーツ」の次に描かれた作品です。

探偵事務所を始めて依頼を受け解決するドタバタコメディなのかと思いきや、主人公のはずの探偵事務所所長の白智小五郎、助手の戸田光国の存在感が連載が進むごとに薄くなり、一切出てこなくなってしまうという驚きの展開を見せてくれる凄まじい作品です。

本当にビックリしました。面白い作品です。


江口寿史 ひのまる劇場
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2018年2月8日木曜日

江口寿史 ストップ! ひばりくん

ギャグもコマのテンポもいいドタバタコメディ作品です。

坂本耕作は母から亡くなる直前にひとりになったら東京にいる大空さんのお世話になりなさいと言われ東京にやって来ます。

駅には大空のおじさんが迎えに来ていて車に乗り込みます。
車中、なにかがおかしいと不安を感じながらも大空家に到着します。

立派な門構えの家で表札には、
「関東極道連盟 関東大空組」
と書かれています。

母の言う大空のおじさん、大空いばりは大空組の組長だったのです。
こわくなった耕作は逃げ出そうかと出口を探していると、ひとりのかわいらしい女の子に出会います。

2018年2月6日火曜日

吉田秋生 海街 diary 3 陽のあたる坂道

悩んでも、迷っても、落ち込んでも、出会っても、別れても、嬉しくても、悲しくても、それでも…人は、恋をする。



最初の出会いから季節がひとめぐりした夏…。すずと3人の姉たちは、父の一周忌で再び河鹿沢温泉を訪れた。複雑な思いを胸に抱くすずだが…?家族の「絆」を鎌倉の美しい風景とともに情緒的に描く、大注目のシリーズ第3弾!




揺れる感情をくみ取ろうとしたり、まったく触れもしなかったり、傍観していたりと人間味のあるドラマが面白いです。

自由奔放な陽子さんの現状を訊き、淡々と対処した長女幸にこれまで見せたこともない怒りをぶつけるすず。

一年で、他人だった三姉妹とすずが感情をぶつけ合えるほど親密に確かなつながりを持つようになったんだなと思える場面でした。



濃い一年を送ったというけど、「嫌い」は「好き」よりずっと早く伝わってしまうのかもしれないと感じたすずの感情は敏感な子供心を思い出させてくれました。



「もしも」という選択はすずが成長していくのにあらゆる状況を想像させるのに役立っているなと感じます。



陽のあたる坂道は人の優しさが感じられるいい話でした。

止まった時計は選んだ道に迷いが生じてどんな結論を出すのが望ましいかというのは人それぞれで、どんな結論にしろ自分の中にいい思い出として大事しまえることが大切だなって思いました。



吉田秋生 海街 diary 3 陽のあたる坂道
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2018年2月4日日曜日

吉田秋生 海街 diary 2 真昼の月

 鎌倉での生活に慣れ始めたすず。

家族のこと、友人のこと、チームメイトのこと、親のことを通じて相手の思いを感じ、気持ちに耳を傾け、自分の後ろめたさを正直に告白したりと、人と人が関係していく中で起こる出来事が丁寧に描かれています。




花底蛇

本当の家族じゃないけど上手くいく家、家族なのに一緒に暮らしているのに関係が破綻している家、家族にはさまざまなかたちがあります。

祖母が大切に育て、手入れしていた草木がいまも変わることなく在り続ける庭、世代が変わると樹々は切り落とされ、外部から何かを隠すように草花の鉢を隙間なく埋めつくす庭。

庭から感じ取れるその家庭、住む人の雰囲気。

故郷で過去に縛られず、引っ張らず、前を向いていこうと決意する者、終らせようとする者。いろんな人がいてその数だけ思いが、考えがあります。

上手くまとまらないけど、数ある選択肢の中で何が正しいというのはなくて、生きることは自分で決めることなんだなと思いました。



二人静

自分の居場所がある心地よさと安心感、そして、失う恐さ。

とっさに計算し言葉がでなかったというすずの胸に内と、自分の記憶が重なる部分がありました。

桜の花の満開の下、男ではなく女でもなく共通の似た体験を通じて生まれる絆、側にいても感じる疎外感、思春期の揺れる恋心。

この年頃のそわそわする気持ち、時間が経ってやっと気がつく鈍感な感覚。

漫画や小説のように自分の人生を俯瞰で見ることができたらどんなだろうと考えてしまいました。



真昼の月

同じ家なのに、息が詰まる場所だった人、大切だと思う人。

同じ景色を見て過ごしていても感じることは人それぞれで、あるところでアンカーを下ろしたまま、わだかまりが取れなくなる長女幸の気持ちは強情なのかな。

すずの言葉は重みを感じました。



似たような経験が物語と重なります。




吉田秋生 海街 diary 2 真昼の月
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2018年2月2日金曜日

吉田秋生 海街 diary 1 蝉時雨のやむ頃

男の部屋で朝を迎えた三姉妹の次女・佳乃(よしの)に父の訃報が届いた。母との離婚で長い間あっていない父の死に、なんの感慨もわかない佳乃は・・・。鎌倉を舞台に家族の「絆」を描いた限りなく切なく、限りなく優しい吉田秋生の新シリーズ!!




浅野すずが置かれている境遇を察して、「あたしたちといっしょに暮さない?」といった幸の思い。

このまま境遇でこれからも過ごすのと、三姉妹の鎌倉の家で一緒に生活をするのと、二つの選択肢を用意したら、選べる自由があるとしたら、すずはどっちを選ぶ?幸はすずに自分で選ばせようとしました。

それは幸が過去に選ぶことができなかった、受け入れるしかなかったという記憶が今もなおわだかまりとしてあることを感じる場面でした。



いろんなことを溜めこんでいたすずに、梅酒がきっかけで、ようやく吐き出せる場所が見つかります。

三姉妹に話す言葉遣いが敬語じゃなくなり、お互いが認められたという安心感を感じ始めます。



人と人が関わることで生まれる感情や突然変わってしまう日常へのとまどいが面白い作品です。



吉田秋生 海街 diary 1 蝉時雨のやむ頃
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