エスターはレオンの役に立ちたい。レオンはおとなしく守られていて欲しい。互いを思う気持ちがうまく重なりません。
レオンとエスターにに舞踏会の招待状がたくさん届きます。
レオンはエスターを婚約を発表したのだから何れお披露目しなくてはいけないのに好奇の目に曝すような真似はしたくないと言います。エスターの存在を公にしたので危険なことがあるかもしれないと護身用にレオンの母が持っていた聖水が入ったガラス瓶と銀製のナイフを贈ります。
舞踏会にレオンとエスターが一緒に出席します。
淑女たちは白薔薇様(レオン)赤薔薇(ゲイリー)青薔薇(レベッカ)の麗しい姿にうっとりしています。
ひとりの淑女が、
「…あら あの女性は?」
とレオンの隣にいるエスターを見つけます。
「ヴァレンタイン伯爵が女性を連れて舞踏会へいらっしゃるなんて…」
「やだ あなたたち まだご存知ないの?
あの方はギルモア侯爵令嬢
先日 ヴァレンタイン伯爵がご婚約を発表されたお相手よ」
それを聞いた淑女たちは、目が点になる者、青ざめる者、失神する者がが続出します。
ゲイリーとレベッカはその様子をお気の毒とでも言いたそうな目で見ています。
レオンは気にする様子もありません。知った顔も舞踏会に出席しています。オペラ観劇のときに会ったレニー卿、サリヴァン子爵の邸で会ったゴドフリー・ハドソンなどと挨拶をします。
エスターに意地悪をする者もいます。わざと聞こえるようにおとしめることを言います。
レオンはエスターに気にするなとは言葉には出さず、ダンスに誘います。
レオンとエスターのダンスは見ている人を魅了します。
ゴドフリーはどこか気に入らないようです。そんなゴドフリーの表情を見つめる淑女がいます。
ゴドフリーは会場の外に出て椅子に腰かけているとその淑女が話しかけて来ます。
「初めてお目にかかりますわね 私はエリザベル・オーウェン」
と自己紹介し、レオンとエスターの仲を引き裂くのに協力しませんかと持ち掛けます。
エスターがレオンの婚約者として舞踏会に出るようになってから数日が過ぎます。
エリザベス嬢はゴドフリーが煮え切らない態度なので、煽るようなことを言い、今夜計画を実行すると言います。
エスターはレベッカと休憩しています。
レベッカが食べ物を取って来ると言い、席を立つと、早速エスターに聞こえるように嫌味を言う淑女が出てきます。
陰口だけならまだましで、
「あら ごめんなさぁい 手元が狂ってしまったわ」
とエスタにワインをかける淑女までいます。
エスターは部屋を出て庭の噴水の水でドレスについたワインを洗い流そうとします。淑女たちの陰口が気にせずにいようとしても頭から離れません。もっと背が高かったら、スタイルがよかったら、もっと美貌があったら、髪が輝く金髪だったならとレオンに釣り合わないと言われ、自分に無いものを並べ、涙ぐみます。
けれども、貴族の世界で生きていくと決めたのと、レオンの、
「あなたはいつもどおり笑っていればいいんだよ」
と言う言葉を思い出し、できることをしっかりやろうと奮い立たせます。
涙を拭き急いでレベッカの所に戻ります。
途中、小姓に呼び止められ、
「こちらの書簡をお預かりいたしました 必ずおひとりでお読みくださいと」
と告げられ書簡を受け取ります。
エスターは目を通すとレベッカの所へ行き、用事が出来たと告げ出て行きます。
レオンはエリザベス嬢呼びだされています。
エリザベス嬢はレオンに自分の気持ちにこたえて欲しいと言います。
レオンは恐ろしく冷たい表情です。
そんな二人の所にゲイリーとレベッカがやって来ます。
「おーい レオン」
「あ いた!」
2人とも焦っています。
ゲイリーは、
「エスターに危機だ!」
と言いレオンに書簡を渡します。
「ゴドフリー・ハドソンとターナー侯爵令嬢を拘束している このままだと命の保証は無い 助けたければ誰にも告げずひとりで庭まで来い
あなたの同胞より」
ゲイリーはこの書簡は小姓がエスターに渡したものだと証言をとったと言います。そして、書簡をエスターに渡すように小姓に託した人物がエリザベス嬢だと言います。
ゲイリーの説明を聞いたレオンは怒りを抑えきれないようでエリザベス嬢に何をしたか問い質します。
エリザベス嬢は震えながら、
「ち… ちが… ちがうんです… 私が用意した手紙とは内容が…! 私が書いた手紙は伯爵にお渡ししたものと同じ… ハドソン様がエスター様を外に呼び出すだけのメッセージでした」
と言います。
レオンはエスターを呼び出したのは吸血鬼だとわかり行方を捜します。
エスターは書簡に書かれていた通りひとりで庭にやって来ました。誰もいません。
エスターは小姓から渡された書簡をレベッカと別れた後、わざと落として来ました。レベッカが拾ってくれることを願いながら、ゴドフリーとターナー侯爵令嬢を捜します。
「あなたの同胞より」とあったから、エスターは吸血鬼の気配を感じ取ろうとします。かすかに感じ取った気配を頼りに行ってみると、小屋を見つけます。中に縛られたゴドフリーとターナー侯爵令嬢を見つけます。
エスターは中に入り、二人の縄を切ります。
急いで逃げたいのに、ターナー侯爵令嬢は足を痛めて一人で歩くことができません。
エスターの頭にキンと耳鳴りが響きます。吸血鬼が小屋に向かって歩いて来ます。小屋に入り、
「こちらにいらっしゃいましたか ギルモア侯爵令嬢エスター様 食事の用意をしておりましたゆえ遅れてしまいました 主から手厚くもてなすよう言われておりましたのに 申し訳ない」
エスターは主という言葉に引っ掛かります。
ゴドフリーはエスターを守ろうとシャベルで吸血鬼に殴りかかろうとします。しかし、かわされてしまいます。
吸血鬼は、
「なんの真似だ 殺されたいか人間」
とゴドフリーの頭を鷲掴みします。
エスターはレオンの渡された護身用の聖水を吸血鬼にかけます。聖水は目にかかり焼けただれうずくまります。
その隙にエスターはターナー侯爵令嬢に肩を貸し小屋を出ます。ゴドフリーもターナー侯爵令嬢に肩を貸し協力して邸に戻ります。
エスターは通りかかった小姓にターナー侯爵令嬢を任せ、吸血鬼の狙いは自分だからとターナー侯爵令嬢とゴドフリーから離れます。
ひとりになったエスターはレオンのところに戻ろうとします。しかし、頭にキンと耳鳴りが響きます。吸血鬼が近くまで来ています。どこかに隠れるところを探します。
吸血鬼は聖水をかけられ、頭に血がのぼっています。エスターの血を匂い嗅ぎ分け隠れているエスターを見つけます。
吸血鬼がエスターに襲いかかろうとする寸前でレオンが現れ、銀製の剣で吸血鬼を身体を貫きます。ゴキンと潰し、吸血鬼は砂になります。
エスターはレオンになぜすぐ言わず、危険なところに行くのかと怒られます。
「私はあなたの…吸血鬼ハンターの妻になるのですから」
と頑張った理由を打ち明けます。
エスターは帰りの馬車で、
「私がんばります レオンの隣にいても恥ずかしくない淑女になれるように… だからレオン きらいにならないで…」
と言い、眠りに落ちます。
エスターがレオンの役に立ちたいという思いの根っこの部分がわかる言葉です。
エスターはある目的のため旅に出掛けるレオンのためにパンを作ろうと貸本屋に出掛けます。
パンに関する本を探そうと棚を見ていると封筒が挟まった本を見つけます。中身を見ると本棚の番号と場所が書かれてあります。
エスターはゲームのようだと何が出てくるのか期待して封筒探しを始めます。何度か繰り返し、封筒を開けると文章が書かれてあります。
文章を読んでエスターはレベッカの邸に行きます。
レベッカに封筒の文章の内容を見せます。
「あなたの婚約者レオン・J・ウィンターソン今回の旅で我々の標的となるであろう あなたの同胞より」
と書かれてあり、エスターは舞踏会の時の書簡と似ていると話します。
レベッカはエスターには伏せているレオンの旅の目的を話します。
レオンの今回の旅の目的はエスターの父親であるギルモア侯爵に会いに行くことなのだと教えてくれます。
そうとは知らなかったエスターは邸に戻るとレオンに一緒に連れて行って下さいと言います。
当然レオンは駄目だと、邸の留守を守ってくれと言います。
聞き入れてもらえないエスターはレベッカに、
「…レベッカ 連れて行って頂けないようなので 自分でついて行ってもいいですか!?」
と何が何でもレオンの旅に同行しようとします。
駅でレオンとエスターは睨み合っています。
帰れと言うレオン。引き下がらないエスター。
レオンはエスターのチケットを取りあげ、列車に乗れなくします。そして、エスターを引き寄せ口づけし、
「おとなしく待ってるんだ いいね」
と言い、列車に乗り込みます。
エスターはレオンの背中を見つめ、自分を守ろうとするレオンの気持ちを察しながら、それでも一緒に行こうと行って欲しかったと涙します。
エスターの背後に人影が迫ります。その人物はエスターを担ぎ上げ、列車に乗り込みます。ちょうど列車が発車する時刻で、扉は閉められ、降りられなくなります。
エスターの頭にキンと耳鳴りが響きます。
エスターを担ぎ上げ、列車に乗せたのは吸血鬼でした。
列車は動き始め、個室から逃げられません。
吸血鬼は自己紹介をします。
「私はアーサー・マクドナルド あなたの父君ギルモア侯爵に秘書としてお仕えさせて頂いております」
舞踏会での書簡、貸本屋での封筒は彼の仕業でした。
恐さを抱きながら話していると、列車の屋根を人の歩く音が聞こえてきます。
エスターがいる個室に外から入ってきたのはレオンでした。
レオンはエスターの無事を確認すると、アーサー・マクドナルドに、
「次の停車駅まで私も同席させて頂いても?」
と言います。
「どうぞもちろん」
アーサー・マクドナルドはにこやかに言います。
次の停車駅まで沈黙が続きます。
駅に着くとレオンはアーサー・マクドナルドにエスターの分のチケット代を支払います。そして、自分の個室にエスターを連れて行きます。
執事のノアが表情を変えず淡々とレオンの行動を説明するところが面白いです。
終着駅エディンバラに到着します。
レオンたちは、
「遅かったじゃないの人間 待ちくたびれたわよ!」
と声を掛けられます。吸血鬼です。クリス主催の仮面舞踏会の時にレオンの返り討ちにあったエヴァという吸血鬼とイオンという吸血鬼です。
エスターは、
「なっ なんのご用でしょうか!?」
と警戒します。
レオンが、
「エスター ちがうそうじゃない」
とエスターを落ち着かせようとします。
エヴァは、
「私たちは護衛に来たのよ」
とアーサー・マクドナルドを指差し、
「野蛮きわまりない奴らから あんたたち夫婦を守るよう言われたの」
と言います。何か吸血鬼同士で対立しているようです。
アーサー・マクドナルドは、
「狼の根城にてお待ち申し上げております」
と言い去ります。
レオンたちはホテルに向かいます。ホテルに向かうまでのレオンとエスターのやり取りが面白いです。
食事を終え、レオンはエスターに明日はロンドンに帰るよう言います。
レオンにそう言われ、眠れないエスターは外に出ます。
エヴァがひとりでお茶をしているのを見かけます。二人で話をします。
エヴァはエスターにレオンと幸せになってもらうことが私の幸せにもつながっていることに気がついたから護衛を引き受けたと言います。
エスターは護衛が必要な理由、なぜ吸血鬼同士が啀み合っているのかと尋ねます。
エヴァはエスターが何も知らないことに驚いています。
人間と共存肯定派と共存否定派があって、前者はクリス、後者はエスターの父ギルモア侯爵だと説明します。
エヴァは全てを話すわけにはいかないと言いつつ、
「私と同じように譲れない想いがあるのなら なにを聞いてもなにを見ても へこたれてもらっちゃ困るのよ」
と言います。
エヴァに背中をおされ、エスターは明朝レオンに一緒に居させて欲しいとお願いしようと決めます。
朝、目が覚めるとレオンはエスターに、
「今日は親族のところへ行ってくる あなたはおとなしくロンドンへ帰るように」
という手紙を残し、すでに出掛けてしまっていました。
エスターはレオンと一緒にいるという選択をします。
●番外編
ゲイリーとレベッカが描かれています。
レベッカが男性にあまりモテないのも、付き合ってもすぐに男性が逃げ出してしまうのも、すべてゲイリーが陰で手を廻しているからなのでした。
ゲイリーはどういうかたちを望んでいるのでしょう。
レベッカがゲイリーに恋していると分かるきっかけを描かれるのが楽しみです。
いかにも悪そうなアーサー・マクドナルドは何を企んでいるのでしょう。
ギルモア侯爵の邸でどういう展開になるのか楽しみです。
続きます。
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