エスターはギルモア公爵の邸へ連れて来られて、アルジャーノンはレオンの邸へ行きます。
レオンはエスターが自分の意思で戻ってくることを願っています。
エスターがどこで心が変わるのか、それとももう少し時間がかかってしまうのか展開が楽しみです。
エスターはレオンに睡眠薬を飲ませ眠らせて邸の裏口から出ていきます。レオンの叔父リチャードが用意した馬車に乗り、雇ってくれるという商人の家へ移動します。
外は雨が降っています。
エスターはレオンに薬を盛り、何も言わず姿を消してしまうというひどいことをしてしまい、これでレオンとはぜんぶ終わったと感じます。
馬車が揺れ、外が騒がしくなります。
エスターの頭にキンと耳鳴りが響きます。吸血鬼が馬車の外にいます。
ドアから姿を現したのは、ギルバート公爵の執事クライヴです。
「こんばんは お迎えに上がりました エスター様」
朝になりレオンは目を覚まします。
エスターはいません。昨夜の記憶がかすかに残っています。
執事のノアが部屋に入って来ます。昨夜の状況を報告します。邸にはリチャードの息のかかった者がいて今回の計画に加担した使用人がいます。
レオンは報告を聞き苛立ちます。
レオンはエスターの不安を取り除いてあげられなかったから思うようにやらせようと睡眠薬入りのハーブティーを飲んだのでした。
使用人が入って来て、
「失礼します リチャード様がお見えです。」
と言います。
レオンは追い返せと言います。
「いえですが… 急用だそうで とても取り乱したご様子で…」
と言うと、ノアがレオンに代わり応接間で待ってもらうよう指示します。
レオンは渋々着替えてリチャードに会います。
レオンが応接間に入ると、
「おおっ 遅いぞ レオンっ」
と立ち上がり声を発します。
レオンは怒りを隠そうとせず、睨みつけエスターはどこかと迫ります。
リチャードは、
「そんなこと 教えられるか! ふんっ 私にもわからんものがおまえにわかるものか!」
と昨夜馬車が襲撃され、エスターの姿が消えたと言います。
「現場の状況を見る限り、恐らく… 娘は吸血鬼に攫われたのだろうと―――――――」
レオンは衝撃を受けます。
エスターは気を失っていて、目が覚めるとギルバート公爵(クリス)の腕の中にいました。クリスが目の前にいることに驚きます。頭の後ろに痛みを感じます。
クリスは抵抗するエスターを連れてくるのに、クライヴが手荒い真似をしたようだ、きつく言っておいたから許してくれといいます。
エスターはここはどこかと尋ねます。漂う気配で落ち着かないようです。
クリスは、
「私と同胞が肩を寄せ合ってささやかに暮らしていてね 世間では優雅に『黒薔薇城』などと呼ばれているが まぁ 要するに『吸血鬼の巣窟』というわけだよ」
と言います。
エスターは大変なところに来てしまったと声にならない叫びをあげます。
クリスはエスタに連れて来た目的は、
「レオンの妻にならないのならなかった だったら 私のものになればいい ねぇ エスター 私の花嫁にならないかい?」
と言います。
レオンとゲイリーが馬車が襲われた現場に向かいます。
現場は警察が調べています。
レオンとゲイリーは馬車の破損具合などを見てリチャードの言う通り吸血鬼の仕業だと確証を得ます。
エスターはクリスの申し出を、即答で断ります。そして帰るので服を返してと言います。
クリスはどこに帰るの? と聞きます。
エスターはリチャードから雇ってくれる方を紹介してもらったからそこに行くと言います。
「ああ それ その話なら 私がもみ消しておいたよ」
とクリスは笑顔で言います。
「な…っ なんで… そんなことを…!?」
と言うと、
「君はもう侯爵令嬢だ 商人の元で奉公など以ての外だよ」
と言います。
ギルモア公爵令嬢。ギルモア侯爵という人物が誰なのか明らかになります。
「ギルモア侯爵は君の本当の父親だよ エスター」
「私はいま 彼から君を任されているのでね この邸を我が家だと思ってくれていい ここは君の部屋だよ」
と言います。
事実を知り、エスターは急に恐ろしくなります。吸血鬼と人間の混血(ダンピール)。知らされてはいました。しかし、吸血鬼の父親の存在を知ると、本当に自分の身体に吸血鬼の血が流れているんだと考え身体が震えます。
アリス(アルジャーノン)が部屋に入って来ます。クリスがエスターを追いつめるので腹を立てています。
クリスはエスターにアリスもダンピールだよと言います。
エスターはアリスが同じダンピールだと知り、共通の境遇だからか親近感を覚えます。
クリスは食事にしようと言い食堂へ移動します。
テーブルにはエスターにのみ食事の用意がされています。二人に食事はしないのかと尋ねます。
アリスは眠いからいらないと言います。
クリスは、
「じゃあ私は頂こうかな クララ」
一人のメイドを呼びます。メイドはクリスの前に立ち、肩を出します。
クリスはメイドに吸血します
その光景を見たエスターは混乱します。使用人を食料にするのかと聞くと、クリスは血を提供するのは業務に含まれていて、納得した上でこの邸で働いてもらっていることを説明します。そして、エスターをこの邸に招いたのは自分の考えを知って欲しいから、吸血鬼と人間の共存を望んでいるからだと話します。
エスターが吸血鬼と人間が共に暮らすのは難しいのではと言うと、クリスは利害が一致すれば仲良く暮らせると思うと答えます。
エスターは、
「あのっ 結婚はその… 私 好きなひとがいるので… できません すみません」
と言うと、
「はいはい わかってるよ レオンだろう」
とそんなことは分かっている、何を今更と言いたげに返します。
エスターは驚きます。
「え なっ なんで知ってるんですか!? 誰にも言ってないのに…」
と顔を真っ赤にしています。
「? なんでって 口にせずともわかるさ 私と初めて会ったときから 君はレオンに恋をしていたじゃないか」
とクリスが言うと、エスターは自分が自覚するずっと前からレオンを思っていた事を知らされ恥ずかしそうです。
「――まぁ 私はそれも承知で求婚しているのだよ 君はもうこの先レオンに会わないと覚悟をして来たのだろう? ならば いつまでも思い続けているのは不毛というものだ ねぇ だからエスター 彼のことは忘れて 私に恋をしたらいいんだよ」
とエスターの唇を奪おうとします。
「…し しませんっっ」
とエスターはつっぱねます。時間はたっぷりあるから、この邸で生活しながらじっくり考えてみてくれたまえ、と言われ、部屋に戻ります。いろいろ考えを巡らせてみても行きつく先はレオンのことで、レオンを思い涙があふれます。
アリスはクリスの言動に怒っています。
クリスはアリスに謝りつつ、アリスがこれまでどうやってエスターを守って来たかわかると言います。だから、エスターをこの邸に攫ってきたのは正解だったと言います。
アリスはそれでも約束を破ったことには変わりないと言うと、エスターの部屋に向かいます。
アリスがエスターの部屋に行くと、エスターはアリスが思っていた通り泣いていました。
アルジャーノン(アリス)は面倒見のいいお兄さんです。
アルがエスターを大切に思うのは、アル自身もエスターにたくさん助けられたからだと言います。いい場面で泣けてきます。
エスターは目覚めると行動を始めます。
レオンの邸ではレベッカがなぜ早く黒薔薇城行かないのかと急かしています。
レオンはその前にやることがあると言います。
ノアが部屋に入って来て、
「レオン様 お客様がお見えです」
と言います。
客間の前は何人もの使用人が騒がしくしています。
レオンが客間に入ると、
「ただいま レオン」
エスターがソファに座っています。
ゲイリーとレベッカはエスターではあるのにどこか雰囲気が違っていて、何かが変なのに何が変なのか分からないようです。
レオンは歩み寄りエスターの頭を掴み持ち上げると、
「どういうつもりだ アルジャーノン」
と言います。髪はウィッグでエスターに変装したアルジャーノンでした。
「やぁ レオン ひさしぶり」
アルジャーノンはレオンにすぐわかってしまったことは気にすることなく言います。
ゲイリーとレベッカはアルジャーノンがエスターと似すぎて驚いています。
レオンとアルジャーノンはエスターを吸血鬼の危険に巻き込みたくないという同じ思いを認識し合います。
クリスはエスターに今度仮面舞踏会を催すから参加するように言います。
アルジャーノンはレオンにクリスの邸で開かれる仮面舞踏会の招待状を渡します。
レオンはエスターを黒薔薇城から攫うことはしない、エスターの意思を大事にしたいと言います。
それを聞いたアルジャーノンはレオンの痛いところを突きます。ノアでも言わないことです。
炊きつけれれレオンはやる気を見せます。
アルジャーノンはレオンの邸に住むから部屋に案内してと言います。
アルジャーノンはレオンを揺さぶるのが上手です。こんなに振り回されるのはレオンの人生でもそうないことだと思います。
舞踏会当日です。
エスターはスカラリーメイドとして階下で楽しそうに働いています。
執事のクライヴがやって来てエスターに舞踏会の準備を始めると言い連れ出します。
舞踏会の会場は吸血鬼ばかりだと覚悟して臨んだエスターは、少ないながら人間がいる光景を見て不思議に感じています。
クリスはエスターを踊りに誘います。
踊りが始まるとエスターは呼吸が乱れます。周りに吸血鬼がたくさんいて怖くて仕方ないからです。眩暈がして足の力が抜けてしまいます。
クリスはエスターを抱きかかえ、会場を出て吸血鬼がいない静かな部屋に連れて行きます。ダンピールであるエスターには刺激が強すぎることは分かっていたようです。アリスも最初は具合が悪くなっていたと話します。
エスターはアリスは今日出席しているのかと聞きます。
クリスは彼女はいつも欠席してると言います。そして、エスターを舞踏会に出すと言ったら怒って出て行ったと言います。
エスターはアリスを心配します。
クリスは居場所はわかっているから安心していいよと言います。それを聞いてエスターは安心します。
クリスはなにか飲み物を持ってこさせるから少し休みなさいと部屋を出ます。
エスターはソファに身体を預けます。吸血鬼はエスターを怯えさせます。クリスも同様で一人になると体の強張りがほぐれ、眠りに落ちそうになります。
そっと頭を触れられ目を開けます。
レオンが優しい眼差しで立っています。
エスターはレオンだとわかると瞳は涙でいっぱいになります。
ドアがノックされ、レオンは外に通じるドアから出て行きます。
部屋に入ってきたのは女性の吸血鬼です。
吸血鬼はなにやら腹を立てていて、エスターに文句を並べると血を吸おうとします。
部屋の中を見ていたレオンは吸血鬼にナイフを投げます。銀製のナイフが吸血鬼に刺さります。
吸血鬼はレオンに襲いかかります。レオンの方が上手で吸血鬼を倒します。
レオンはエスターの手を取り部屋を出て行きます。
倒された吸血鬼は悔しそうに、エスターの血を吸いつくしてやるとわめいています。
「おやおや 随分物騒なことを言うね」
吸血鬼が振り向くとクリスが立っています。
クリスは冷気を漂わせ、吸血鬼(エヴァ)に詰め寄ります。
エヴァは震えあがります。
レオンに手を引かれたエスターは夢見心地です。
レオンはエスターを抱きしめます。そして、耳もとで、
「…先程のようなことは日常的に? ここでの暮らしは辛くはないですか?」
と囁きます。エスターは、
「…っ …いいえ… いいえ…なにも辛いことなどありません 毎日…っ とても楽しく暮らしています…っ」
と応えます。
レオンはエスターの額に口づけします。
「また会いに来るよ きっとあなたを迎えに来るから そのときはまた俺の名前を呼んで」
と言い、姿を消します。
エスターはレオンの今言った台詞を遠い記憶のどこかで聞いた気がします。すごく大切だったことはわかります。しかし、それが何だったのか思い出すことができません。
レオンはエスターが自分の意思でレオンを選ぶのを待つようです。
●番外編1
主人公はレオンの邸に飼われている犬ジョンです。
ジョンは吸血鬼に襲撃される前からずっとレオンを見て来て、ジョンの目線でレオンとエスターが語られます。
中々進展しないレオンとエスターの仲をのんびり観察していくようです。
●番外編2
レオンはエスターがまったく気持ちを理解してくれなくて、わかってもらうためにもう手段を選ぶつもりはないようです。
それでもエスターに気持ちと思いが通じていることに気づいてもらえず、レオンがいよいよかわいそうになってきました。
続きます。
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