目指すは、遥かなる“津軽”!
エチゼンくんとモモヤマさん、マリちゃんと会長さん…
不思議にアヤシく素敵な仲間が、不思議にアヤシく素敵な日本をドライブする、ファンタスティック・ロード・コミック。みんなが待っていた、誰も見たことのない、懐かしくて新しい、「旅」が始まります。
朝倉先生の全てが私のツボにはまりすぎる。私のかけがえのなかった子供時代にひっぱっていってくれる。もう大好きすぎてゲロ吐きそうだ!
よしもとばなな(公式サイト日記より)
エチゼンくんが居眠り運転をしてしまいました。モモヤマさんに起こされてようやく状況を把握したときにはもう手遅れで、地面やガードレールに車体をこすり、フェンスにぶつかりようやく停車します。
大暴れしたのに車はまったくの無傷でした。モモヤマさんが大量の鼻血を出しただけで済んみました。モモヤマさんとエチゼンくんはなんとか落ち着き、
「遅刻しちゃうわ。早く行きましょう」
車を走らせようとします。
エンジンをかけ出発しようとして前方を見ると、ひとりの女の子がボンネットにすずしげに座っています。
「あの、なにか?」
エチゼンくんが女の子にたずねます。
「あれ見て」
女の子の視線の先にぺっしゃんこになったホンダのバイクが横たわっています。笑顔で右のバックミラーをメリメリと踏んづける様子を縮こまって車内から眺めているふたり。
女の子はチゼンくんとモモヤマさんが約束の時間に遅れそうなのでバイクの修理を後回しにすることを了承し、モモヤマさんとエチゼンくんの車に同情します。
到着したのはあるお宅。
エチゼンくんとモモヤマさんはひだまり社という介護業社で、移動入浴サービスを提供しているのでした。
なんとなく手伝わされることになった女の子。おばあちゃんの入浴を手伝います。
女の子(マリちゃん)の行き届いた心くばりに大いに満足したおばあちゃん。
「ちょっと表の陽にあたってみたいわね」
気力を取り戻したのか、久しぶりにこんなこと言うのです。
それなら、とエチゼンくん。
彼はクラゲ拳の使い手で、術をおばあちゃんに施します。見るからに怪しさでいっぱいの準備運動をするエチゼンくんを不安と緊張でいっぱいの表情で眺めているおばあちゃん。ところが、施術後、支えられながらも自分の足で縁側までたどり着けたのです。
縁側で陽をあびるおばあちゃんの幸せそうな顔。帰り際に、
「マリちゃんまたね。ありがとう」
と、マリちゃんの手を取り感謝するおばあちゃん。
握った手の温もりと人に感謝されたことが心に残るマリちゃん。
エチゼンくんとモモヤマさんはマリちゃんにとって、いままで出会ったことのないタイプの人でした。
バイクが直るまで、マリちゃんはエチゼンくんとモモヤマさんの家に世話になることになりました。
大きなカバンを見て、家出だとエチゼンくんが勘ぐる場面では、エチゼンくんとモモヤマさんの仲の良さが伝わってきます。
お酒を用意し、飲み始めるとすぐに、エチゼンくんはマリちゃんに特製の創作和菓子を食べさせようとします。無理やり食べさせられ続けているモモヤマさんの、
「まさか、あんなものを食べさせるつもり?」
という露骨な拒否反応を遮りつつ、マリちゃんにすすめようとする和菓子は「ぬれもなか」というものです。新しいもの好きなのか、甘いもの好きなのか、マリちゃんはモモヤマさんの心配をよそに味見します。固いのか柔らかいのか、伸びるのか伸びないのか、未知の和菓子ぬれもなかをカプッと口に入れ、くにゅくにゅと怪しい音を立てながらじっくり味わいます。髪の毛が昆布のようになるほど汗をかいて、息が荒くなり、感想を待つエチゼンくん。これまでいい反応がなかったようで、心の中で、いい反応とよくない反応が入れ替わり、気持ちが揺れ動いています。
「この皮おいしいよ」
マリちゃんの思いもかけない感想にびっくりするエチゼンくんとモモヤマさん。なかの餡を改良し、より美味しいぬれもなかを目指すエチゼンくんでした。
バイクが直らなくて、マリちゃんはエチゼンくんとモモヤマさんと一緒に行動するようになりました。
その日は仕事が早めにすみ、それぞれ自分の時間を楽しみます。マリちゃんはサーフィン。エチゼンくんは浜で車に積んである組み立て式の風呂でのんびり湯に浸かっています。モモヤマさんは
「わたしは今超はまってるのがあるから」
とひとりどこかへ行ってしまいます。それぞれ時間を過ごし、エチゼンくんとマリちゃんが家に戻ると、モモヤマさんが超はまっているというものを目撃します。モモヤマさんの趣味が笑えます。
夜、電話がかかってきます。
千葉県の福祉課からのもので、どうやらエチゼンくんとモモヤマさんのひだまり社というのは県から指定事業所証書を受けておらず、偽装したモグリ業者だったのです。
慌てるモモヤマさんといつかバレる日が来るだろうと覚悟していたからなのか動揺することもないエチゼンくん。
再び電話がかかってきて、マリちゃんが出ます。
青ざめるモモヤマさん。
電話は県の福祉課ではなく、ひだまり社への依頼でした。
マリちゃんから依頼者の名前を訊いてエチゼンくんとモモヤマさんは同時反応します。どうやら昔世話になった人の名前だったのです。
依頼主は横村道也。横道会(おうどうかい)という暴力団の会長でエチゼンくんはそこで運転手をしていました。数コマにわたって横村道也会長のハードな生き様が回想されています。
屋敷に到着し、部屋にとおされると、ひとりの老人が背中を向けて立っています。
「ご無沙汰しております。エチゼンです」
挨拶をするエチゼンに、
「誰?」
会長は老化が進んでしまっていて誰のことも覚えていないのでした。会長の妻しょう子さんのひだまり社への依頼は、
「会長を老人ホームへ連れて行ってもらえないでしょうか」
というものでした。
老人ホームは津軽にあり、そこまで送ってほしいというものでした。
運転手をしていた頃、よく会長と話していたエチゼンくん。
昨夜の千葉県の福祉課からの電話で、ここではもう営業できないといことはわかっていたので、しょう子さんの依頼を引き受けます。
事情をまだ話していないので、ひだまり社の仕事を心配するマリちゃん。
「いいのいいの」
軽く受け流すエチゼンくんと後ろめたい表情のモモヤマさん。
しょう子さんに明日来ることを告げ、屋敷をあとにします。
帰りの車中で、マリちゃんは会長を津軽まで送るという依頼を引き受けた理由を知ります。
「この裏切り者」
おばあちゃんに感謝され、エチゼンくんとモモヤマさんはちょっと違うと思っていたから出た言葉だと思います。バイクの修理も終えていないので一緒行こうとマリちゃんを誘うのですが、返事をしないマリちゃん。
翌日、会長としょう子さんを迎えに行くと、屋敷に怪しげなふたりがこそこそと、なにかを嗅ぎまわっています。
エチゼンくんとモモヤマさんが会長を車に乗せ、マリちゃんがしょう子さんを呼びに行くと、しょう子さんが残って怪しげなふたりの気を引くので、その隙に出発するようマリちゃんに言います。軽い身のこなしで車に戻り、
「出して」
としょう子さんを置いて急いで出発します。
怪しげなふたり組みはエチゼンくん、モモヤマさん、マリちゃん、会長を乗せた車を見つけると、車で追いかけてきます。
前途多難な津軽までの旅はこうして始まります。
謎の追っ手を気にかけつつ、モモヤマさんの昔の友達が手助けしたり、カーチェイスして明智左馬助の湖水渡り顔負けのスゴ技が飛び出したり、仲間意識が芽生えたり、エチゼンくん、マリちゃんの過去が明かされたり、会長が幽体離脱してしまったり、モモヤマさんの過去が明かされたり、マリちゃんが謎の追っ手に逮捕されてしまったりします。
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