2016年6月30日木曜日

入江亜季 群青学舎 1巻

●異界の窓

まぼろしだったの?何だったの?という話でした。

隣りの席に座る山背(やましろ)くんという名前の男の子がいたはず。話しかけられたのも覚えている。だけど、クラスの誰も、先生さえも山背くんのことを知らない。どうも大森くんにだけ見えているようです。

きつねのしっぽに似たものが生えている少年は人間の世界に興味を持ち、からかいに来たもののけの類か。それとも、大森くんだけが見た幻想なのか。一面ツタで覆われた教室は違うのか、違わないのか。物語がもう少し長ければなと思いました。



●とりこの姫

心と態度は裏腹という話でした。

泣かされたと騒ぐ女の子がたくさんいる。

町で見かけるたびに違う女の子を連れている。

学校ではこんな噂で有名なクリス。

マリオンはそんなクリスを、あまりに人気がある彼が一体どんな人なのか気になって、見ているうちに好きになってしまいます。

いいかげんで、気をもたせるばかりなのに、クリスの誘いを断る女の子はいません。それなのに、どうして自分まで他の女の子のようにクリスを好きになってしまったんだろうと、マリオンは許せなさとくやしさとそれでもこみあげる好きだという気持ちがごちゃまぜになっています。

クリスのテンポになんか乗らない。あくまで強気にそして冷静に。言いたいことは言うんだ。と自分に言い聞かせてクリスと友人たちがいるカフェにマリオンは挑んだんだと思います。

クリスの相手を見透かしたような余裕を感じる態度に負けないというマリオンの強い態度気が面白かったです。

彼女の思惑は失敗したかもしれないけれど、いままでにない反応をする女の子に奇妙な感情が生まれ、クリスに変化が起こったので、「after story」以降のクリスとマリオンは学校でも有名なカップルになったんじゃないかなって思います。



●先生、僕は

さえないとか、若くて美人だったら言うこときいてやるのにとか言ってたのに、

「よかった」

と微笑む先生の表情に宇佐美くんがドキッとしまう話。

もう一度先生の微笑んだ表情が見たいと思う宇佐美くんはなんだか大人だなって思いました。



●花と騎士

ユリアナにとってはショックな話です。王族なのに姫なのに下女扱いされ、

「おぬしのことか どうりで」

と、女なのに男だと思われ、頭にきて、自らの手で相手をのしてしまいます。

侍従たちの策略が見事に成功したのに喜べない王女が面白かったです。



●ピンクチョコレート

ほれ薬を発明し、効果を試すため所員の男女がほれ薬を飲むという話。

作ったのはほれ薬ではなく、気持ちが素直になる薬だったのかな。都は何も覚えてないのに、春日くんははっきりと覚えているのは、都にはほれ薬が効いたということなのかなと思いました。



●森へ

静かな森を歩く老婆。自然の恵みをいただき、お地蔵様に感謝しお供えをします。

森が感情を持ったように雨を打ちつけ、雷が響くなか、抗うことなくただじっと待ち続けます。

再び森は静かさを取り戻し、そこに住むいのちが活動を始めます。

歩く老婆。別の場所にお地蔵様を見かけます。

よく見ると、お地蔵様の足元に先ほど老婆が供えたおむすびの笹だけがありました。

口元にはいくつかの米粒がついています。

静かに手を合わせる老婆。

森を守る神々に感謝の気持を捧げます。



●白い火

優等生一条漣子と問題児藤間一彦の話。

人に話せない事情を抱え、たびたび藤間にお金を借りる漣子。

壁をつくるような冷たい漣子の態度に、

「お前俺に会いに来てんの?金借りに来てんの?」

と、隠していることが何なのかわからず、つい、藤間は漣子に訊いてしまいます。

漣子には訊かれたくないこと、いいたくないことがあります。

借りようとしたお金を藤間につき返し、

「なんとかするから大丈夫」

笑顔で告げるが、すぐにどうにもできず藤間に頼ってしまいます。

自分がなんとかしていかなくてはいけない。だけど、誰かに頼りたい。そんな漣子の抱える事情を藤間が知ったときに漣子にいったセリフがよかったです。我慢しなきゃと自分に言い聞かせ、仕方ないとあきらめる。こらえるしか選択肢がないと思っていた漣子のどん底の思いに光がさします。

「なんで言わねえんだ ……お前はもっと賢いと思ってた」

はやく気づいてやれなかった藤間の気持ちが強く握っていた漣子の手首の痕から感じられます。事情を話そうと決意し、藤間の家を訪れ、中から女性が出てきたときのことを思い出す漣子。いろんな感情があふれだし、涙がこぼれます。

感情のままに涙し、甘えることができ、安らげる場所を見つけた漣子。これからずっと幸せでいてくれればいいなと思いました。



●アルベルティーナ

看板娘のわたしに何も感じないなんて許せない!という話。

父娘で営むカフェ、アルベルティーナ。

看板娘ティナはその指先にさえ視線を集めるほどの色気のある美しさで、彼女目当てに連日多くの男性客がこの店に訪れます。

客たちは飲み物を何杯もおかわりし、ティナが近くを通るたびにデートを申し込んだり、すこしだけでもおしゃべりしようと誘うのですが、どれもさらりとかわされてしまいます。

ティナにはひとつ気に食わないことがあります。それは男性客の中のひとり、ブットシュテットという先生のことです。

アルベルティーナにやってくる男性客はほぼティナ目当てでやって来て、ティナの振る舞いひとつひとつにそわそわし、魅了されているのに、ブットシュテット先生だけはティナを気にかける素振りも見せません。

新聞を読み、珈琲を一杯飲み終えると店をあとにします。

ティナのほうから話しかけてみても、素っ気ない短い言葉しか返ってきません。

カフェにやってくるありとあらゆる男性は自分を目当てにやって来ているというのに、ブットシュテットだけはまったく関心を示さないことが許せないティナ。

自分がモテないと店は終わってしまうと断言するティナはブットシュテット先生を自分に振り向かせようとします。

簡単なことだわ。

そう考えていたのに思ったようにいかないティナ。ブットシュテットの無関心な様子に、次第に彼を目で追うようになっていきます。

ブットシュテットの素っ気なさが気に入らないのは、ティナが彼のことを気に入っていたからなんだと思わせる、店にやってくる男性客の数が減っても構わないという、ティナの台詞が大胆でした。

この短編をブットシュテットの視点から想像するのも面白いです。

アルベルティーナは珈琲を飲んで新聞を読むためだけにやって来るにはにぎやか過ぎるはずなのに、常連だとわかるくらい来店しているのは、きっとティナがいるからなんだと思います。

ただ、他の男性客のようにティナに話しかけるのは苦手なようで、黙々と新聞を読んでいます。

いつものように新聞を読んでいる隣にティナが座ったのには驚いたはずです。

記事を追う目は固定して動かなくなり、全神経を隣りに座っているティナに集中していたと思います。

伸びてくる手にすぐ反応できたのもそのせいだと思います。

目が合ったとティナが感じたとき、ブットシュテットも彼女と同じように感じて、気恥ずかしくなってカフェに通うのをためらってしまったのが、ティナには逆の効果があったようです。

店の前を通ることはあるけど、閉店したあとじゃないと使わないことにしていたのか、たまたま忙しい日が続いて、通るときは店が閉まった遅い時間になっていたのか。

ふと振り返ると、傘を持ったティナが立っていたのは意外な出来事だったと思います。

約束を果たすという口実でアルベルティーナにやってきて、いつものように新聞を手にとり、席について広げて読もうとしたら、背中に気配を感じて、肩のあたりから手が伸びてきて新聞を取り上げられ、それだけでもドキッとするのに、その上ドキッとするような格好で話しかけられ、そのことを指摘すると、どぎまぎするようなことを言われるブットシュテット。

一体、なにが起こったんだろう?と思ったにちがいありません。

翌日、ブットシュテット先生はどんな顔でアルベルティーナにやって来るんだろう。面白い物語でした。



入江亜季 群青学舎 1巻
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2016年6月28日火曜日

しおやてるこ たまりば 1巻

多摩川の近くに住む、そうそう接点を持つ機会はなさそうな年の離れたふたりの恋物語です。




主人公の高校生中原美和と川崎春生の出会いのきっかけは、美和の弟たっくんです。たっくんが川で石投げをして一緒になって遊んでいるという大人に会いに行ったことからこの物語は始まります。



美和は平日の昼間に小学生と遊んでいるという大人を不審に思い、たっくんが危ない目に遭ったら大変だと、でも、ひとりじゃ心細いので仲のいい美和の友達のあやちゃんについて来てもらい、たっくんと約束した橋までやって来ます。

たっくんからは、

「ジョニー・デップ似」

と聞かされていて、美和からそれを聞いたあやちゃんは興味津々でやって来ます。

待ち合わせた橋の上で、たっくんのうしろでもじもじしながら立っている男は、

「ジョニー・デップです」

と恥ずかしそうに言います。

姿かたちどこも似てなさ過ぎて激怒するあやちゃん。

一方の美和は、なんだか放心したようにその男を見つめ、我に返って、自己紹介を始めます。



表現のしようがない感情が胸の中でぼんやりとふくらんでいき、これが恋というものなのかなと思い始めるのと同時にとめどなくあふれてくる好きだという気持ちが抑えられなくなっていく美和。

遊び半分で美和につき合っていたのに、美和の熱心さに次第に本気で応援するようになるあやちゃん。

プライベートがうまくいっていなくて気持ちが沈みがちになり、多摩川でたそがれていたとき、元気に遊んでいるたっくんと出会いいくらか気持ちが軽くなるのを感じ、美和たちと一歩引いたところから大人としての立場でおしゃべりを楽しんでいたのに、気持ちのコントロールができなくなっていくハルオ。

どんなことがあってもハルオがよそ見することはないと思っていたサチ。

この四人の人間模様が面白かったです。



しおやてるこ たまりば 1巻
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しおやてるこ たまりば 2巻
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2016年6月26日日曜日

高橋留美子 赤い花束 高橋留美子劇場3

 いろんな家のお父さんが描かれています。



●日帰りの夢

仕事を終え帰宅すると妻と息子は自分たちだけ寿司を出前して食べていた。

「やだっ、パパ早いじゃない、きょうは…」

寂しすぎるお父さん東雲が主人公です。

転校を繰り返していたため、クラスメイトもよく覚えていないけど、クラス会のお知らせのはがきが送られてきました。

幹事を見ると当時好きだった女の子の名前が書かれてあり、最後に交わした会話を思い出します。

退屈で居場所がないのも手伝ってクラス会に出席しようと思い立ちます。

妄想を膨らませ、胸の高鳴りを抑えつつ会場に到着すると、やはりそこにも自分の居場所がなく帰ろうとすると好きだった女の子が遅れて到着します。

しかし、妄想も過ちも何事もなく帰宅。

帰宅すると家族が慌てている様子で妻は涙目で心配していたのでした。無関心だと思っていた家族に対してすこし安心したような気持ちと、一人で食べるのを楽しみにしていた駅弁を家族三人で分け合うことになり残念な気持ちと交錯した終り方でした。

家族に邪魔にされ外に女がいると疑われてしまう日常で、初めて参加するクラス会にウキウキしてわきあがる妄想を抑えられない様子や、ふくよかな、ふくよか過ぎでツヤツヤな顔に和服姿で登場する憧れの女の子と同じ名前の女性をみて、妄想から何もかもを打ち砕かれてがっかりするお父さんが面白かったです。



●おやじグラフィティ

単身赴任から戻ると息子は成長していて無口になっているし、見たことのないペットは自分を警戒している居心地の悪い状況。

なのにある日、帰宅すると自宅の壁に落書きが…。

それがエスカレートし、怒りが頂点に達するお父さん。

話してみると分かるんだけどな、というごく単純な手段を使わずに分からなくなってることってあるなと思いました。



●義理のバカンス

お義母さんと旅行することになった奈美子さん。

親孝行をしてあげようと頑張り楽しい旅行になりそうだと思ったのもつかの間、鬱憤が溜まっていきます。

我慢しているのにお義母さんは、

「気を遣うわ、もう、やんなっちゃった」

などと電話で友人に話しているところを目撃してしまいます。

互いに限界に達しそうになったときに大きなしだれ桜を目にしてどうでもよくなってしまいます。

ただ旅行に来てよかったと素直に思えたのでした。桜を見たあとのオチが面白かったです。



●ヘルプ

介護が必要な実父を持つお父さん。介護は妻に任せっきりだったのですが骨折して入院してしまい、自分が看ることになってしまいました。

しっかりしていた父親を知っている息子、息子に介護してもらうのを快く思わないおじいちゃん。

家族にはそれぞれ役割があり、分担して生活していて、介護される側になった父親でさえ息子の心配をするところが面白かったです。



●赤い花束

こんな姿で死んじゃったら悔やんでも悔やみきれないと成仏できずに自分の葬式を眺める吉本一。

涙ひとつ流さない妻と息子。

死んでしまってから気がつく家族の気持ち。

冷めた対応の妻。

号泣してる息子のガールフレンド。

妻の気持ちを察することなくただ自分と一緒にいてほしいと思う気持ちを込めて贈った薔薇の花束。

面白さと取り戻せないけどお父さんが欲しかった幸福感で締めくくっている素敵な作品でした。



●パーマネント・ラブ

単身赴任のお父さんの定食屋たまたま見かけた美しい女性に恋をし誰にも知られぬまま終った話。

浮かれて自分一人だけがその気になって舞い上がり、あれよあれよと終る恋ってあるある、なんて思いながら楽しみました。



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2016年6月24日金曜日

高橋留美子 専務の犬 高橋留美子劇場2

●専務の犬

ここぞというときに男をみせる小暮、ゴージャスの主人を決める目、最初から最後までとても面白い作品です。



●迷走家族F

いつもなら起こるはずのない出来事が次々と起こり不安が高鳴るはずき。

一家心中しようとしている。はずきは確信します。

懸命に回避しようとするけど、大好きな先輩に彼女がいることがわかるとどうでもよくなってしまいます。

だけど、家に置いてきた先輩のことを綴った日記を思い出すと顔から火が出そうなくらいの恥ずかしさがこみ上げてきて、再び生きる情熱を取り戻したりするといったドタバタが繰り広げられる面白い作品でした。



●君がいるだけで

倒産した会社の重役だった男堂本の妻が病気になって、妻の代わりにパートにでるという話。

パート先は弁当屋で料理経験もサービス業の接客業の経験もなく店長を困らせるし、努力家なんだけど、努力が実を結ばない日々を送ります。

言い分は正しくてもサービス業において客は絶対であるので叱ったり、投げ飛ばす堂本の行為は店長にとって不要な存在以外のなにものでもないのですが、威圧する存在感に首を告げることができません。

変わろうと努力するのですが、そう簡単に変われない。全く縁のない人に話し涙したことで少しふっきれたのか、以前とは違った一面が顔を出します。

店長と堂本のやりとり、変わるきっかけになったアッチャラーさん。面白い作品でした。



●茶の間のラブソング

食あたりで妻が亡くなったはずが、仕事を終え、自宅に帰ると妻が座って普段通り会話しています。

なぜか成仏できずにいるらしく、自分以外は妻が見えない。成仏できない理由が分からず、幽霊になった妻と暮らしているという話。 部下の桃井さんが食事を作ってくれたり、自宅の周りをジョギングしたり、度々家に出入りしたりといった絶妙な距離で接してきます。ん?もしかして…、と思ってしまうのは仕方ないかもしれません。幽霊になって嫉妬する妻、何もみえてやしないウソつき住職がおかしく、ラストにしんみりしました。



●おやじローティーン

単身赴任を控えた古田年男。その直前に記憶を失ってしまい、妻のことも息子のことも分からなくなってしまい、自分は13歳だといいます。手がかりは財布の中にあった女子高生と撮ったプリクラ。

記憶を失っている間のこともしっかりと覚えているんだろうなと思いました。



●お礼にかえて

マンションの住人の対立を面白おかしく描いた作品。

九官鳥の九ちゃんが発する謎の言葉。その言葉は、いじわるする女王を大人しくさせる呪文だけどその秘密は分かりません。ドラマチックに展開し、わかりやすい攻守の争いが面白かったです。



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2016年6月22日水曜日

高橋留美子 Pの悲劇 高橋留美子劇場1

●Pの悲劇

ペット禁止の団地で日和見的な立場でペット摘発を見ていた羽賀さん宅に、旦那が1週間という条件で取引先から珍しいペット預り、団地自治会のペット禁止派にバレずにやり過ごすことができるのかという話です。

禁止されているのにペットを飼う入居者と、何が何でもペットを飼うことを反対する反対派の入居者。

狭い住まいでストレスを溜めて過ごすことになるペットの気持ちを思い、ペットを飼うことを禁止する反対派の先頭に立つ筧さんの気持ちがわかる羽賀さん。

最終日に筧さんにバレてしまうのが面白いです。ペンギンなのに毛糸のマフラーや着ぐるみを着せられている姿も面白かったです。羽賀さんのお宅でペンギンを預かっていたことを筧さんが知っていたらどうなっていただろう。ペット反対派だけど、きっと好きなそぶりも見せずバレないように可愛がっていたかもしれないなと思いました。



●浪漫の商人

資金的にこれ以上はやっていけないと、結婚式場を閉館することを決める縁。 縁の気持ちを揺れを察してあまり口には出さないが、先代にお世話になったという男性の結婚式を通して、人と人の関係の大切を気づかせ、もう一度結婚式場の運営を頑張ってみようという気にさせる従業員が一刻館の住人と重なりました。



●ポイの家

最初に遠慮して言わなかったためにいらぬ苦労をしてしまう話。

広岡家の家族のコンビネーションが素晴らしく、律子さんの頑張りが涙ぐましいです。



●鉢の中

噂話や外見の印象や人付き合いの悪さから想像が悪いほうへ悪いほうへ向かってしまうが、全て誤解だったという話。 他人の不幸はわかるもんじゃない。利根川さんの精一杯の笑顔には主人公の一言は自分の言葉が通じる人が近くにいたという安堵の笑顔に感じました。



●百年の恋

ギリギリのところで生還したお婆ちゃん星野りさ(90)。戻ってきたら超能力がつかえるようになっていました。

お年寄りならではの記憶の差し替えといくつになってもドキドキする気持ちが面白いです。



●Lサイズの幸福

長年の夢が叶いそうなところまで来ているのに寸前で妨害されます。突然華子の目の前に現れたのは座敷童。不幸を告げるの兆しなのか…。

華子、旦那、お義母さん。登場する人物がとってもいいキャラです。

なんとか実現したい。そればかり考えるあまり、大事なことを見落していることをおしえてあげようとしている座敷童と、お義母さんとのギクシャクする様子、感情の豊かな華子さんが面白いです。



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2016年6月20日月曜日

志村貴子 放浪息子 15巻

男の子になりたかった女の子、高槻くん(高槻よしの)はその信念が揺らいでにとりん(二鳥修一)に合わせる顔がないといい、にとりんは女の子の服が着たい女の子が好きな男だと認めます。

最終巻です。

小学校からそれぞれ思いを持ち続け、迷いながら高校生になりました。これからどうなるかはわかりません。にとりんはこれまでを文章にし、高槻くんはにとりんに手をつないでもらうことで罪の意識のようなものを拭い去れました。 にとりんはこの先たくさんの困難が待っているだろうな。ひどい目に遭わないでほしいな。高槻くんは迷いや後悔が生じないように輝いてほしいなと思います。



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2016年6月18日土曜日

志村貴子 放浪息子 14巻

 表紙の、にとりん(二鳥修一)はかわいいが過去になり、迷いを抱えているように感じます。

前巻よりさらに、あんなちゃんの心の声が面白かったです。

さおりん(千葉さおり)はにとりんを見つめる表情がいちばんかわいいです。

表情がますます男らしくなったにとりん。どんどんきれいになる高槻くん(高槻よしの)。弟思いの真穂。その他、たくさんの登場人物にスポットが当てられています。



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2016年6月16日木曜日

志村貴子 放浪息子 13巻

さおりん(千葉さおり)とあんなちゃん(末広安那)の心の声が面白かったです。

成長を恐れるにとりん(二鳥修一)。骨格がしっかりし、筋肉がつき、外見の柔らかさがヘリ、声が低くなっていく。それでも女の子の服を着て、カツラをかぶり、外を歩きたい。しかし、次第に、女装した男だと気づかれ、奇異の目にさらされるということが起こりうる年齢になりつつあります。

そんなとき、ただ女性の服装を着たいという海老名泰一郎という男性に出会います。彼と話して、にとりんはどう考えるんだろう。

高槻くん(高槻よしの)は以前ほど男の子になりたいとは思わなくなっています。あんなちゃんのすすめもあって、モデルの仕事に興味を持ち始めます。高槻くんも、にとりん同様、どう生きていくことになるのか続きを楽しみにしています。

あんなちゃんはますますにとりんのことが好きになっているみたいで、あまり自分の感情を表に出さないあんなちゃんの心の声や行動が面白かったです。



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2016年6月14日火曜日

志村貴子 放浪息子 12巻

多感な少年少女の不安定な気持ちが成長とともに変化していきます。



中学校生活最後の文化祭です。

ちーちゃん(更科千鶴)はお化け屋敷の模擬店で入場者を怖がらせるために張り切ります。巻末のおまけマンガでモモ(白井桃子)とたのしそうに予行演習する風景がちーちゃんってこんな子なんだろうなと思わせてくれます。

3年2組、シュウ(二鳥修一)や高槻くん(高槻よしの)のクラスの出し物はファッションショーです。

男の子の服を着たいという気持ちが薄れたわけではなく、男の子の格好はしたいけれど、男の人から女の子らしいとか、かわいいなと意識されたいと思う一面が芽生えるという変化が生まれました。

そういう自分の感情にすこし戸惑う高槻くん。一度だって女の子の服を着たいだなんて思ったこともなかったのに、気になる人に女の子としてかわいらしい面を見せてどぎまぎさせたいという心が生じたのかもしれません。

シュウは変わりなく、ひたすらにかわいらしい女の子の格好をしてかわいいと、言われたい、思われたい、と、その姿勢は揺らぐことはありません。

3年2組のファッションショーは司会進行を担任の兼田先生が務め、生徒が緊張した面持ちで、男の子たちは恥ずかしそうに、女の子は自信があるのか、華やかさに視線を集中させ、ショーを盛り上げています。

シュウと高槻くんの出番を見ようと駆けつけ、ユキさんとしーちゃんがギリギリ間に合います。スポットライトを浴びたふたりの姿はとても可愛らしく、ユキさんは一瞬言葉を失ったような表情を見せます。 高槻くんと手をつないでステージを歩くシュウは、女の子の格好をしている自分を見られることが気持ちよさそうです。

周囲の音が一切耳に入ってこないこのひとときを楽しんでいるようです。

高槻くんは慣れない化粧もして、注目を浴び、緊張しっぱなしみたいです。自分の思い描くイメージをつくりだせてさおりん(千葉さおり)も満足そうです。

日頃から抱えていた思い、ひどい目にも遭ったけれどファッションショーのステージによってひとつの区切りをつけられたシュウでした。

クリスマス。 昼間はユキさんとしーちゃんとシュウと高槻くんの四人でお祝いします。

ユキさんとしーちゃんからシュウと高槻くんそれぞれへのクリスマスプレゼントに驚きます。

ユキさんたちと別れ、帰り道に兼田先生の家族とばったり出くわすシュウと高槻くん。兼田先生の奥さんが男の子と女の子がふたりで歩いているからてっきりデートだと思い、口にすると、高槻くんは兼田先生に会ってドキドキしているうえに、デートだなんて言われて冷静さを失い、大きくなってしまう声で必死にデートじゃないと否定します。

そのことが余計にデートしているところを見つかってしまって照れているように感じられてしまう兼田先生と奥さんと、高槻くんが兼田先生に誤解されないように弁解しているように感じられるシュウ。高槻くん自身は何にあたふたしているんだと思っているのかもしれません。

ところで、安那ちゃん(末広安那)とシュウはどうなったんだろかと思っていたけれど、なんだか元に戻ったようです。

安那ちゃんは華やかな業界で仕事をしているのに落ち着いているというか、冷静というか、自分の中にしっかりとしたものを持っているなって思わせます。

シュウの自宅ではお父さんがひとり、そわそわと落ち着かない様子です。クリスマスを家族でお祝いするのに真穂(二鳥真穂)の彼氏である瀬谷(瀬谷理久)が来るというので娘の父親として若干緊張しているようなのです。

真穂が瀬谷とふたりでクリスマスを祝うと言ったら、夏の海のときのように反対され、それなら家に連れてくるという話になったんじゃないかと想像します。もしかして、真穂は最初から瀬谷を連れてくる気だったのかもしれません。渋々承諾した父は、この日が来るのがとても憂鬱だったにちがいありません。前々日くらいからため息ばかりついていたんじゃないでしょうか。なのに真穂ときたら、きもいとかゆって。ちょっとかわいそうな二鳥父でした。

さおりんはお母さんとフミヤ(二宮文弥)から誘われた教会のクリスマスミサ会に参加します。フミヤはこの日、大きな決意をしてさおりんを待っていたみたいです。

花束を贈り、受け取ってくれれば、さおりんにクリスマスプレゼントとして用意していた指輪も贈るつもりでいたのでした。

受け取ってもらえる確率なんて絶望的なくらいゼロに近いはずだとわかっていて、それでももし受け取ってもらえたなら、気持ちを伝えようと彼は計画を練っていたんだろうな。フミヤにとって、さおりんの返事は目から涙が溢れるほど嬉しいもので、フミヤにとって最高の聖夜となりました。

年が明け、初詣。 高槻くんはもしかしたら、また偶然出会うかもしれない、と兼田先生の姿を探してしまいます。

ささちゃん(佐々かなこ)に探している様子に気づかれてしまった恥ずかしさから、ささちゃんの気になっている人の名を出してしまうあたり、じゅうぶんに恋する女の子になっています。

ひとり静かに手を合わせているシュウは何を思っているんだろう。

バレンタインデーではシュウの安那ちゃんに対する愛情の表現と安那ちゃんのシュウの言葉に反応するポイントがかわいらしかったです。

入学試験を終え、手応えを感じた人もいれば、結果が出るまでわからないというひともいて、不安な時間を過ごし、結果発表、そして、卒業を迎えます。

シュウだけが叶わず、すべり止めで受けた高校に進学することになります。そのことでやる気を失い、やけになって思いついたのか、いつか挑戦してみたいと思っていたのか、大胆なイメチェンを行います。

シュウの頭を見た真穂のツッコミと涙を流して笑う姿が面白いです。

シュウは赤毛のアンをイメージしてのカラーリングのようです。姉に笑われ、安那ちゃんに笑われ、ユキさんにびっくりされます。シュウのあまりのかっこよさにちーちゃん(更科千鶴)の心にグサッと刺さるような衝撃を与えた中学生最後の集まりは全員の記憶に残っただろうと思います。

初恋らしきものを経験した高槻くんはこれからの人生にどう影響していくんだろう。

カラオケルームでさおりんがシュウと交わした会話は、さおりんはシュウのことをどれくらい覚えているだろう、忘れずにいるだろうと考えてしまいます。

ドライなさおりんが唯一感情を揺さぶられる存在のシュウへの思いがどうなっていくかも楽しみです。

高校生活が始まります。仲の良い友達とは別の高校に通うことになり別れ別れになります。

さおりんは高校入学を機に自身を変えなくては、と思ったようで、積極的にクラスメイトに接しようと頑張っています。

ぱっと見たときの可愛らしさは備えているので、ほんの少しだけ笑顔になるといいよというフミヤの助言は的を得ています。さおりんのことになるとフミヤは優しすぎる存在になっているなと思います。

高槻くんを初めて見た人は、男の子に見えてしまうのかな。以前さおりんの言ったように、ボーイッシュな女の子にしか見えないと思うんだけどな。

シュウは高校入学と同時にバイトを始めるつもりでいたらしく、まず最初にユキさんのところへ行きます。

ユキさんはシュウが自分のところにやって来ることはわかっていたようで、シュウに対して大人の立場で諭します。

シュウはガッツがあるというのか、ダメに違いないけれど挑戦してみようという行動力がたくましいです。女の子の制服での登校や文化祭のファッションショーの経験で吹っ切れたようです。

シュウがバイトを始めるときかされたマコちゃんは、なくてはならないことのように、シュウがバイト先で着用するだろう制服の姿を想像するので、これからどうなっていくんだろうと心配になってきます。

バイト先で、おじいちゃんに手を握られるシュウの表情が面白かったです。うれしそうなおじいちゃん。人は見た目がすべて。なんかそう思ってしまう場面でした。いつまでこのバイトを続けていけるのでしょうか。シュウが喫茶店の看板娘になる、なんてことになりはしないでしょうか。



志村貴子 放浪息子 12巻
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2016年6月12日日曜日

志村貴子 放浪息子 11巻

3年に進級しました。

真穂は瀬谷と同じ高校に通っているようです。

声変わりって自分で気づくものなのかな。どうなんだろう。

声変わりよりも衝撃的なのはシュウの髪型。思い切りがよすぎます。シュウ(二鳥修一)の髪型を見て、心揺れる人たちがいます。そして、髪を切るときのエピソードが面白かったです。きっとシュウは店ではちょっと高めの声で話したんだろうな。しかし、店員が気づかないなんてすごいことだな、と思います。

京都への修学旅行。

夜の高槻くん(たかつきよしの)とさおりん(ちばさおり)の進路の会話にドキドキしました。

安那ちゃんの照れ、鼻息が荒くなるさおりん、メイクした高槻くんがかわいらしかったいです。



志村貴子 放浪息子 11巻
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2016年6月10日金曜日

志村貴子 放浪息子 10巻

なんでシュウ(二鳥修一)はフミヤとそんな遊びをすることになったのでしょうか。さおりんがいないところでシュウに張り合うフミヤがよくわかりません。

このふたりはどういう関係になっていくんだろう。日々成長していることを実感せずにはいられないシュウ。かわいくいられないなりつつある中でどう変化していくか楽しみです。

真穂の、

「とかゆって」

という台詞。妙に似合うというか、らしいというか、かわいらしくてハマります。真穂が言ったことで好きな言葉になりました。

真穂、シュウの学校の文化祭に安那ちゃんを連れて行こうとする麻衣子とたまき。麻衣子は口では極悪なことを言うけど、優しさを感じます。あれっ?シュウが女装して登校したあとからずっと安那ちゃんは真穂とも連絡をとっていなかったんだろうか。どうなんだろう。

安那ちゃん(末広安那)がシュウに気持ちを話すときの表情がよかったです。シュウはやっぱり男の子だなって思いました。



志村貴子 放浪息子 10巻
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2016年6月8日水曜日

志村貴子 放浪息子 9巻

シュウ(二鳥修一)が大胆な行動に出ました。しかし、世間は都合良く受け入れてくれません。

ユキさんに告げた自分の言い分はわからなくもなけれど、どんな反応を期待したのだろう。どれだけの人が、もしかしたら好意的に受け入れてくれかもしれないとシュウは想像したんだろう。

真穂とシュウが家に引きこもって、最初にお見舞いにきたのがさおりん(千葉さおり)だったことが真穂にはくやしかったみたいです。安那ちゃんであってほしかったのかな。

シュウの友だちの気遣いや優しさはよかったのに、土居に対する嫌悪感はさらに大きく膨らみました。

高槻くんがどんどんかわいくなっていきます。しーちゃんの過去が明らかになり、自分と重ねて見る高槻くんは、男と女どっちが好きなんだろう。

登場する人物のそれぞれの気持ちについて考えてみたくなる作品です。最初の目次のさおりんによる人物紹介が面白かったです。



志村貴子 放浪息子 9巻
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2016年6月6日月曜日

志村貴子 放浪息子 8巻

シュウ(二鳥修一)と高槻くん(高槻よしの)よりも真穂とさおりん(千葉さおり)の行動が楽しみです。

土居のいやらしさがものすごく嫌いです。いいようのない嫌悪感を抱いてしまいます。

安那ちゃんと女の子の格好をしたシュウのデートに偶然出くわした、買い物に来ていた高槻くんとさおりん。四人でカラオケに行き、さおりんはシュウと安那ちゃんが会話しているのを意識せずにはいられません。小さな抵抗を見せ、張り詰めそうになる空気を変えようと高槻くんは言わなくてもいいことを言ってしまいます。そのあと、さおりんと安那ちゃんは何も話さなかったのかな。

40ページの、

「ハー、いいお湯でした」

という真穂の台詞。なんでもないセリフなんだけどすごく好きです。どうしてだろう。



志村貴子 放浪息子 8巻
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2016年6月4日土曜日

志村貴子 放浪息子 7巻

ユキさんの台詞を読むまでマコちゃん(有賀誠)の気持ちを考えてもいませんでした。

ジュリエット役にシュウ(二鳥修一)がなっていたら、ということばかり想像して、悪気はなくても、ものすごく傷ついてしまうことがあることを、マコちゃんの立場を描いてくれたことよって気づかせてもらいました。

繊細な気持ちの揺れが伝わってくる作品です。

物語は急展開します。

シュウは安那(末広安那)への印象が知り合った頃から比べて大きく変わります。部屋にシュウと安那ちゃんの二人だけで居るときの、素知らぬふりをしているのか、緊張しているのかわからない空気感がいいです。

安那ちゃんはちょっと損するタイプで、どんなかたちであれ、安那ちゃんは意識しないように努めてはいるけど、シュウが安那ちゃんに気がつけたという展開はとてもいいなと思いました。

真穂が、

「あんなのどこがいーんだよ」

と安那ちゃんに言うけど、そりゃあ、真穂から見るとまっとうな感想だと思います。

ようやくです。ようやくさおりん(千葉さおり)と高槻くん(高槻よしの)が仲直りできました。ふたりはどういう仲になっていくんだろう。



志村貴子 放浪息子 7巻
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2016年6月2日木曜日

志村貴子 放浪息子 6巻

シュウ(二鳥修一)に抱いていた疑問をさおりん(千葉さおり)がぶつけてくれました。

そうなんです。

シュウは高槻さんとどういうかたちになりたいのかというのと、さおりんの抑えきれない感情が伝わってきます。

あまり他人の言葉に耳を貸すことのないさおりんにものを言える人が現れないかなと思っていたので、マコちゃん(有賀誠)がその役割を担当してくれてちょっとうれしくなりました。

真穂は瀬谷とふたりっきりで海に行くことを両親から許可してもらえませんでいた。デートにシュウを連れていくことになり、真穂はまたも複雑な気持ちになります。

腹が立つのにシュウがちょっといなくなると、妄想が暴走して心配しまくる真穂の忙しい感情が面白かったです。

さおりんがロミオに、そしてジュリエットにシュウがなってほしいです。

これまで上手くいくことのなかったさおりんの思いが叶ってほしいのにと思ったのに今度も叶いませんでした。さおりんは浮かばれないな。



志村貴子 放浪息子 6巻
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