2016年6月26日日曜日

高橋留美子 赤い花束 高橋留美子劇場3

 いろんな家のお父さんが描かれています。



●日帰りの夢

仕事を終え帰宅すると妻と息子は自分たちだけ寿司を出前して食べていた。

「やだっ、パパ早いじゃない、きょうは…」

寂しすぎるお父さん東雲が主人公です。

転校を繰り返していたため、クラスメイトもよく覚えていないけど、クラス会のお知らせのはがきが送られてきました。

幹事を見ると当時好きだった女の子の名前が書かれてあり、最後に交わした会話を思い出します。

退屈で居場所がないのも手伝ってクラス会に出席しようと思い立ちます。

妄想を膨らませ、胸の高鳴りを抑えつつ会場に到着すると、やはりそこにも自分の居場所がなく帰ろうとすると好きだった女の子が遅れて到着します。

しかし、妄想も過ちも何事もなく帰宅。

帰宅すると家族が慌てている様子で妻は涙目で心配していたのでした。無関心だと思っていた家族に対してすこし安心したような気持ちと、一人で食べるのを楽しみにしていた駅弁を家族三人で分け合うことになり残念な気持ちと交錯した終り方でした。

家族に邪魔にされ外に女がいると疑われてしまう日常で、初めて参加するクラス会にウキウキしてわきあがる妄想を抑えられない様子や、ふくよかな、ふくよか過ぎでツヤツヤな顔に和服姿で登場する憧れの女の子と同じ名前の女性をみて、妄想から何もかもを打ち砕かれてがっかりするお父さんが面白かったです。



●おやじグラフィティ

単身赴任から戻ると息子は成長していて無口になっているし、見たことのないペットは自分を警戒している居心地の悪い状況。

なのにある日、帰宅すると自宅の壁に落書きが…。

それがエスカレートし、怒りが頂点に達するお父さん。

話してみると分かるんだけどな、というごく単純な手段を使わずに分からなくなってることってあるなと思いました。



●義理のバカンス

お義母さんと旅行することになった奈美子さん。

親孝行をしてあげようと頑張り楽しい旅行になりそうだと思ったのもつかの間、鬱憤が溜まっていきます。

我慢しているのにお義母さんは、

「気を遣うわ、もう、やんなっちゃった」

などと電話で友人に話しているところを目撃してしまいます。

互いに限界に達しそうになったときに大きなしだれ桜を目にしてどうでもよくなってしまいます。

ただ旅行に来てよかったと素直に思えたのでした。桜を見たあとのオチが面白かったです。



●ヘルプ

介護が必要な実父を持つお父さん。介護は妻に任せっきりだったのですが骨折して入院してしまい、自分が看ることになってしまいました。

しっかりしていた父親を知っている息子、息子に介護してもらうのを快く思わないおじいちゃん。

家族にはそれぞれ役割があり、分担して生活していて、介護される側になった父親でさえ息子の心配をするところが面白かったです。



●赤い花束

こんな姿で死んじゃったら悔やんでも悔やみきれないと成仏できずに自分の葬式を眺める吉本一。

涙ひとつ流さない妻と息子。

死んでしまってから気がつく家族の気持ち。

冷めた対応の妻。

号泣してる息子のガールフレンド。

妻の気持ちを察することなくただ自分と一緒にいてほしいと思う気持ちを込めて贈った薔薇の花束。

面白さと取り戻せないけどお父さんが欲しかった幸福感で締めくくっている素敵な作品でした。



●パーマネント・ラブ

単身赴任のお父さんの定食屋たまたま見かけた美しい女性に恋をし誰にも知られぬまま終った話。

浮かれて自分一人だけがその気になって舞い上がり、あれよあれよと終る恋ってあるある、なんて思いながら楽しみました。



高橋留美子 赤い花束 高橋留美子劇場3
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