主人公は、東京の下町に一人で暮らす、17歳のプロの将棋の棋士=桐山零(きりやまれい)。しかし、彼は幼い頃、事故で家族を失い、深い孤独を抱えた少年だった。そんな彼の前に現れたのは、あかり・ひなた・モモの3姉妹。彼女たちと接するうちに零は…。様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語です。
主人公は桐山零というプロ棋士(将棋指し)の少年です。
桐山零が棋士になったいきさつと、彼と川本家の3姉妹との出会いのきっかけが描かれています。
桐山零は小さい頃、同じ年頃の友達がつくることができずにいました。
クラスの子たちが話す話題は次々と変わり、零には何を話しているのかわからずあわせることができませんでした。
零の父は以前は棋士を目指していました。あきらめて医者になり家業の医院を継ぎました。
零は将棋が苦手でした。しかし、忙しい父と一緒に過ごすために将棋を覚えました。盤をはさんで父と語りあえる大事な時間だからです。
穏やかな家族の時間はある日突然なくなってしまいます。零を残して、両親と妹が事故で亡くなってしまいました。親類は誰一人零を引き取ろうとはせず、施設に入れようとします。
そこに零の父の友人幸田が現れ、零に、
「……君は 将棋 好きか?」
と訊ね、
「…はい」
と零はこたえました。こたえるしかありませんでした。
親類の言う「施設」というものがどういうものかはわからないけれど、ほっと落ちつける自分の時間はなくなってしまうということだけはわかるからです。
零は幸田に引き取られて、将棋の家の子として生きていくことになりました。
幸田の家には女の子と男の子がいます。長女の香子は4つ年上で、長男の歩は零と同じ小学校3年です。2人とも棋士を目指していました。
幸田は将棋を愛していて、将棋が全ての中心でした。幸田に気にかけられたければ、強くなるしかありませんでした。
幸田は実の子どもといえども甘やかすことはなく、容赦しませんでした。
零の将棋はめきめきと上達していきます。幸田家の長男歩は零に将棋で抜かれてしまい自分からやめてしまいました。姉の香子は零に勝てなくなり、幸田がやめさせてしまいました。
零はもくもくと将棋を勉強し、中2の終わりにはプロの一歩手前、三段リーグに進みました。
零の将棋の成績が上がるにつれ、周りからの陰口がきこえてきます。
「あの子 桐山の子だろ ライバルの子をわざわざ育てて自分の子が食われちまったってわけか… 皮肉なもんだな」
零は高校には進学せず、プロになって自立しようとします。自分が幸田の家をめちゃくちゃにしてしまうと思ったからです。
中学生でプロになり、対局をかさね、現在17歳。将棋界をにぎわせています。
桐山零は川本家で時々夕食をごちそうになります。零をあたたかく迎えてくれるのは川本家の長女あかり、次女ひなた(ヒナ)、三女モモです。
桐山零とあかりは銀座の店で出会います。
零をよく思わない先輩が無理矢理零にお酒を飲ませて、つぶした上に、店の前に置き去りにしていきました。
あかりは店の前でぐったりしている零を自宅に連れて帰り、翌日正気になるまで面倒をみます。それがきっかけで、川本家にはちょくちょく訪れるようになったのでした。
あかりはふんわりした雰囲気のお姉さんです。三姉妹には両親がいなくてあかりが家事をすべて行い、祖父相米二(そめじ)の和菓子屋を手伝い、叔母の銀座の店を手伝っています。
ヒナは中学生。彼女は零に元気を与えてくれます。
モモは元気いっぱいの幼稚園生。毎日が楽しそうです。
桐山零と対局する棋士たちはとにかく個性豊かな人たちです。
二階堂晴信は零と対局して勝つことを目標としている零の親友でありライバルです。負けたときの悔しそうな彼の顔を見ると切なくなります。
松本一砂は棋風は攻撃的で、普段は底なしに明るい人物です。あかりさんとお近づきになりたいらしく、銀座のあかりの叔母のお店に通っているようです。零があかりと仲良くしているのを知ったら松本一砂はどうなっちゃうんだろう。
スミスは零に負けた松本を元気づけようとする、周囲の空気を察知し良い方向に持っていこうとする優しい人です。
桐山零は将棋が強くなることで自分の居場所を見つけようとしたのに、強くなればなるほど孤独感がより大きくなっていってしまいました。これからどんなふうにして何を取り戻していくのでしょう。
続きます。
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