2024年5月14日火曜日

モリタイシ 中田永一 くちびるに歌を 1巻

青く、切なく、鮮やかに、青春の歌声は、波風に乗って…

大きな海と広い空に囲まれた離島の中学校合唱部。三年生になった少年少女たちの最後の一年が始まる。それぞれに事情を抱えた彼らは今、一つの「目的」に向け、歩き出す。




長崎県西部の海にある島々を五島列島と呼びます。140ほどの島があり人が住んでいるのは30程度です。比較的大きな島にある城の跡地に建ち、かつての城門を校門として利用している中学校の合唱部がNコン(NHK全国学校音楽コンクール)で九州大会を目指す物語です。

登場する人物たちはそれぞれ悩みを抱えていて、合唱部で交流しながら練習して克服していきます。



桑原サトルは友達がいません。友達を作ろうとしません。

休み時間は寝たフリをして過ごしています。

3年生になり4月の始業式にクラス替えが行われ掲示板を見て1組だと自分のクラスを確認し教室に向かいます。


仲村ナズナはクラス替えの掲示板を見て1組だと確認し、仲のいい友達がいなくてがっかりします。第二音楽室に人影を見つけたので行ってみます。ピアノの音が聴こえ、知らない曲だと思い教室に入ります。知らない女性が座って演奏しています。ナズナは女性と目が合います。

女性は演奏を止め、今の曲あそこから先は存在しないからと言います。

ナズナは綺麗な人だなと女性を見つめます。

女性は何か用だった? と訊きます。

ナズナは合唱部の部員で教室に人影を見つけたので友達かと思い来たのだと言います。

女性はそうなんだ、よろしくね、と言います。

ナズナはどういうことかわからず、え…? と訊き返そうとしたらチャイムが鳴ります。

女性はチャイムが鳴ったから行かないとと言います。

ナズナは引き止めず、はい、と言います。教室を出てあの女性は誰なのか考えていると男子にぶつかります。

男子は幼なじみのケイスケです。ケイスケは美人の先生が来るらしいという情報をどこかで仕入れナズナに教えます。ケイスケは友達のリクを見つけ話します。

ナズナは美人の先生と言ったので、音楽室にいた女性のことなのかと思います。



桑原サトルは寝たフリをしています。

先生が始業式が始まるから体育館に集まれと教室にいる生徒に言います。

サトルは一番最後に体育館に向かいます。



校長からこの4月から産休の松山先生に代わって、音楽の授業を担当してもらうことになった柏木ユリ先生を紹介します。柏木先生には合唱部の顧問も務めていただくと言います。

ナズナはさっき音楽室で会った女性が合唱部の顧問になるからよろしくと言ったのだと思います。

男子生徒は柏木先生に心を奪われます。



サトルは他の男子生徒が柏木先生のことでざわざわしていても、机で寝たフリをしています。家庭の事情があってそうしているほうが都合がいいと考えているからです。

放課後帰ろうとしたら、校庭で合唱部が一列に並んで何かしようとしています。

柏木先生がラジカセのスイッチを押し、指揮をとります。

10人の合唱部の部員の歌声にサトルは圧倒され衝撃を受けます。

サトルは学校帰りに兄を迎えに行きます。サトルの兄はサトルの話を聞いて昔の記憶を思い出します。

夜、布団に入りサトルは長谷川コトミのことを思い出します。中学1年の2学期長谷川コトミの席はサトルの後ろで目が大きくて愛くるしい顔立ちの容姿、おだやかな口調でおっとりしていて、男子、女子、先生からも愛されている人柄、嫌がることも率先して行動し、誰の悪口を言うことも絶対にしなかい、すべてが完璧で、この世に天使というものいるなら彼女のような人のことを言うのではないかと考えています。ところがある日長谷川コトミの口から漏れ出た言葉に驚いてしまいます。その時もサトルは寝たフリをしていたのでコトミのつぶやきに反応せずにいます。サトルはコトミの言葉が信じられなかったようで無反応を装っていても背中からにじみ出る汗を止めることはできません。

コトミはサトルに、

「……聞こえとった…? ねえ… 聞こえとったとやろ…? 本当に寝とると…? 寝たフリじゃなかと…?」

と話しかけます。

サトルは寝たフリがバレてると思いながら、寝たフリを続けます。

コトミは、

「みんなには… 言わんでよ…? も、もし噂が広まったりしたら… 許さんけんね…」

と言います。

サトルは寝たフリを続けます。授業が始まり消しゴムを落とすとコトミが拾ってくれます。それからコトミのことが好きになります。



仲村ナズナは家で音楽を聴いています。電話が鳴り受話器を取ると聞いたことのある声だったので慌てて電話を切ります。

翌日合唱部の部室に行くと、三人の女子の見学者が来ています。昨日の校庭での練習風景を見て興味を持ったようです。

ナズナは2年の福永リョウコと打ち合わせていて、見学者が来た時に見せるネタを披露します。そして、合唱部に入部してくれたときの特典を挙げて勧誘します。

部長の辻エリは勝手な約束をするナズナとリョウコを叱ります。

柏木先生がやって来て練習が始まります。いつもなら準備運動から始めるところがいきなり発声練習から始めます。キツイ準備運動を見て見学者が入部をためらうといけないからです。発声練習を終え、各パートごとの練習を始めようとしたら産休に入った松山先生がやって来ます。

部員と柏木先生は松山先生と話します。柏木先生と松山先生は同級生で仲のいい友達です。

コトミは見学者に松山先生について話し、見学者の質問に答えます。

横峰カオルはナズナに混声合唱をやってみたいと言います。

ナズナは男子が入部するのは嫌だと言います。ナズナは父親が出ていったのがきっかけで男子嫌いになってしまったのです。

松山先生はそろそろ帰ると言います。練習頑張って、と言い、

「『くちびるに歌をもて』 『ほがらかな調子で』ってね それを忘れんでね」

と助言して帰っていきます。

柏木先生はエリにハルコ(松山先生)が言ってたのって何? と訊きます。

エリは、

「松山先生の好きな詩の一節です。 くちびるに歌をもて。 勇気を失うな。 心に太陽を持て。 そうすりゃ何だってふっ飛んでしまう! ってそんな感じの詩があるんです。」

と応えます。



翌日の昼休み。

ナズナは柏木先生を見かけ挨拶をします。

柏木先生は昨日見学に来た生徒3人が入部したこと、その他にも入部届を持ってきた生徒がいると入部届の用紙を見せます。

ナズナは入部届に書かれた氏名を見て顔色が変わり、その人物を探します。



サトルはトイレから教室に戻ると自分の席にケイスケが座ってリクと話しているので戻れず、仕方なく図書館で時間をつぶそうと教室を出ようとします。ナズナが勢いよく教室に入ってきてぶつかりそうになります。

サトルのことは視界に入っておらず、ナズナは、

「ケイスケェ!!」

と合唱部で鍛えた喉で全力で叫びます。

ナズナの声にケイスケはびっくりします。

ナズナは入部届を見せ、何なのよコレっ、と言います。

ケイスケはリクと合唱部に入ることにしたと言います。

ナズナはものすごい剣幕でケイスケに不純な動機での入部は絶対に認めないと言います。

エリがナズナを探し教室に入ってきます。

エリは向井ケイスケと三田村リクに真面目に活動してくれるのなら問題ないと言います。

ナズナは納得がいきません。

サトルはようやく自分の席につけます。



放課後サトルは兄を迎えに行こうとします。靴に履き替え、合唱部の歌声の美しさを思い出します。先生に呼び止められ、段ボールに入った荷物を合唱部に持って行ってほしいと頼まれます。断ることができず、段ボールを音楽室に持って行きます。

扉を開けると中にいた生徒が全員サトルを見るので、サトルは入るのを躊躇います。

柏木先生がやって来て、サトルに入部希望者? と声をかけます。

サトルは松山先生から荷物をとだけ言います。

柏木先生は音楽室に入ることをすすめ、入部届とペンを手渡します。

サトルは断り切れず、入部届とペンを受け取りどうしていいか迷っています。

長谷川コトミがサトルを見つけ声をかけます。コトミはサトルに入部するのか訊きます。

サトルは違うと言えず、用紙にクラスと指名を書きます。

ケイスケとリクがやって来ます。

リクはサトルを見つけ軽く会釈します。

サトルは目を逸らしてしまいます。そろそろ兄を迎えに行かなくてはいけない時間になったので音楽室を出ようと誰かに声をかけようとします。誰にも声をかけられず、黙って出ていこうとします。コトミが音楽室を出ていこうとするサトルを呼び止めます。

コトミが帰るの? と訊くと、サトルは今日は用事があってと言います。

コトミはちょっと待っててと言い、CDを渡します。今練習している曲だから聴いてみてと言います。

サトルはパソコンにコピーしたらすぐ返すからと言います。

コトミはパソコンに詳しいのと訊きます。

サトルは詳しいってほどじゃないと応えます。

コトミは今度パソコンのことで質問してもいいかなと言います。

サトルは僕でわかることだったらと言います。



サトルは兄を迎えに行きます。コトミと会話したことがうれしかったようです。合唱部に入ったらこんなふうにコトミと交流することが多くなるかもしれないと考えます。

サトルは兄と家までの帰り道歩きながら、合唱部に入るなんてできるわけがない。兄のために僕がいるのだからと合唱部に入ることをあきらめようとします。



サトルが音楽室を出ていったところにナズナがやって来ます。

ナズナは音楽室に男子がたくさんいるのでげんなりしています。



柏木先生は今後の活動について話し合おうと言います。

エリが予定を黒板に書き出します。7月末に開催されるNHK全国学校音楽コンクールに向けて練習していると新しく入ってきた部員に説明します。Nコンでは課題曲と自由曲を歌い、課題曲は「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」という曲で自由曲はまだ決まっていないと説明します。

柏木先生は忙しくて楽譜を注文し忘れていて、男子がたくさん入部したので逆によかった、女声楽譜を頼むところだったと言います。

ナズナは混声合唱をやるということですかと訊きます。

柏木先生はこれだけ男子が入部したのだから混声合唱にしたほうがいいだろうと言います。

ナズナは全員未経験だしやめておいたほうがと言います。

柏木先生はみんなで頑張ったほうがいい思い出になると、混声合唱の楽譜を注文すると言います。

ナズナはあきらめます。

柏木先生は松山先生から宿題を預かってきたと言います。「手紙」という曲をよく理解して歌うために未来の自分宛てに手紙を書くよう言います。

男子生徒は、えー、と嫌な顔をします。

柏木先生は提出はしなくていいから、できれば真剣に本心を書いて欲しいと言い部員に原稿用紙を配ります。

リクは2枚原稿用紙をもらいます。ケイスケはリクに原稿用紙を渡します。書かないつもりのようです。

柏木先生はケイスケがやる気になるように言葉をかけます。

ケイスケは簡単にやる気になります。



サトルは兄と帰宅します。

母親に合唱部に入りたいと言います。一日おきでいいから兄を迎えに行くのを休ませてほしいと言います。

父親が隣の部屋で聞いていて、頭ごなしに反対します。

サトルは駄目だって言われるのはわかっていたようです。明日柏木先生に行って辞めさせてもらおうと考えます。パソコンを起動し、コトミから渡されたCDを聴きます。じっくり歌詞を聴いていると涙がこぼれます。

翌日、サトルは父親にもう一度合唱部に入りたいと言います。

父親は反対します。

母親が間に入って、サトルにいいよ、と言います。

父親も勝手にしろと言います。

サトルは母親に感謝します。



サトルは教室の席に着くとリクから声をかけられます。

サトルは何を言わるのか怯えます。

リクは原稿用紙を手渡します。昨日宿題が出て15年後の自分宛に手紙を書くように言ってたと言います。リクが原稿用紙を2枚もらったのはサトルの分だったのでした。リクはケイスケのせいで後ろの席の男子に絡まれていたのを庇ってあげられなかったおわびだと言います。

サトルは何度も感謝します。この日からサトルの学校生活が少しずつ変わり始めます。



部活動が始まります。

発声練習から始まります。地味な練習です。ケイスケは適度に手を抜いています。

柏木先生が男子生徒のやる気を上げます。

男子生徒同士仲良くなります。

サトルはリクと仲良くなります。互いに読書が趣味でサトルは面白かった本をリクにすすめます。

ケイスケは友達になったサトルを自分の秘密の場所へ連れて行きます。

サトルは友達と過ごす時間を楽しんでいます。

コトミはサトルに部活に慣れた? と話しかけます。

サトルはコトミと会話できるようになってこんな学校生活を送れるなんてと舞い上がっています。

でも幸せな時間はそう長くは続きません。

男子と女子で対立が始まります。男子が柏木先生がいないと真面目に練習をしなくなります。

ナズナはケイスケを呼び出します。ナズナは策をめぐらせて辞めさせようとします。二人は幼なじみなのでケイスケはナズナが何かを仕掛けてくることはわかっていてどんな手段を使ってきても対抗策を持っていて撃退してしまいます。



サトルが音楽室に行くとまだ誰も来ていなくて荷物を置くと、コトミがやって来て声をかけます。サトルは緊張でコトミと二人きりで音楽室にいられず出ていこうとします。

コトミは呼び止め図書館に行くというサトルにここで時間をつぶせばいい、すこし話したいことがあると言います。

コトミは部員の男子と女子の対立について話します。そして家族の話になりサトルは父親に言われている通り嘘をつきます。

男子と女子の亀裂は広がっていきます。

Nコンの都府県地区コンクールまであと2か月ちょっとです。




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