あきづき空太 赤髪の白雪姫 7巻
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相手は自分のことをどう思っているんだろう? という手探りの状態がともて面白いです。
夏目恋子と二宮剣はコタツでうたた寝しています。
恋子の母親はそんな二人を微笑ましく見ています。姉の愛子が帰宅し、うたた寝している恋子と剣を見て、「不愉快な光景」と表現します。
母と姉の両極端の性格では同じものを見ても、こうも感じかたが違ってしまいます。
剣が動いて手を動かすと、恋の膝辺りに、とんっ、と触れてしまいます。一瞬で剣は何に触れたのか察知し、恋子は誰に触れられたのかわかります。
剣はすぐにあやまり、恋子は動揺なんてしていない反応をします。
恋子は本当に寝ていたのかな?嘘寝じゃないのかな、なんて思います。
恋子は剣から贈られた髪留めのゴムを見せたかったみたいです。剣が気づいてくれるって分かっているのに、髪留めを見つけてくれると、素直じゃない可愛げのない態度をとります。
恋子は自分らしさはこれだと思っているみたいです。
恋子に何度も剣と自分は両想いなのではと思う出来事が起こります。でも、確信には至りません。両想いだったらいいのにという気持ちが強くなるにつれ、剣への想いがより大きくなっていきます。
剣のほうはどうなんだろう。おかみさんから恋子の気持ちは聞いて知っているのに、なぜか気持ちを伝えようとしません。どうしてだろう?
恋子はバレンタインデー、ホワイトデーと気持ちを伝えるイベントはあったのに、他の子より特別感を感じられるというところまでしか進展していなくて、ついに、恋の達人の母親に、
「どうしたらいいっすかね」
とアドバイスを求めてしまいます。
母親は、
「男に言わせるように持っていく」
と恋子にはとてもできそうにないことを言います。
恋子は告白なんてしたことがありません。したがって、告白は無理です。剣に告白してもらうしかありません。なのに、バイトに来た剣がお客さんとの会話の中で、
「…オレ 言えないかも」
と言うのを、恋子は聞いてしまいます。
勇気を出して、自分から告白する。
恋子も剣もそう思っています。
互いが頑張って伝えようとしている様子がとてもいいです。
新年度に入ります。
恋子と剣は2年になり、同じクラスになります。
始業式が体育館で行われ、新任の教員の紹介が行われます。
姉の愛子が赴任し、恋子と剣は驚きます。
二人だけの会話が、メッセージのやりとりだけだけど、増えてきてる気がします。
恋子と剣は友達としゃべっていても、スマホをずっと手にしていそうです。
続きます。
阿湖姫が明日松丸の城に帰ると唯に挨拶に来ます。
阿湖姫は唯のために帰ることになるのに、恨み言ひとつ言わず、危ないところを助けてくれたこと、共に過ごしたことは楽しい思い出だと言い、唯に若君様とのご婚儀まことにお目出度うござりますると言います。
唯はつらそうです。
阿湖姫は屋敷戻る途中、成之と会います。
成之は阿湖姫が明日黒羽城を発つと聞いて、思うところがあって言葉をかけます。
阿湖姫は成之にそんなわかりきったことを言うために参られたかと泣きながら訴えます。
成之は悪気があったわけでなく、言葉が足りなかったと阿湖姫が去ってから悔やみます。
夜、唯は阿湖姫にとって黒羽城での最後の夜になるから、何か楽しいことができればと、阿湖姫の屋敷を訪れます。
唯は阿湖姫を見つけます。阿湖姫は泣いています。阿湖姫が悲しんでいるのは自分に原因があると思い、とにかく謝ります。
阿湖姫は唯が原因で泣いているのではなく、成之様がと言います。
唯は阿湖姫に成之に何か言われたの? と聞きます。
阿湖姫は何でもないと言います。
何かあったのは確かで、唯は、私が仕返ししてやる、と阿湖姫の代わりに成之をこらしめてやろうとします。
阿湖姫は、もうよい、仕返しなどやめてくれと言います。
阿湖姫にそう言われると唯はどうすることもできないと、阿湖姫を見つめています。
外から、
「…阿湖殿 そこにおられますか」
と、声がします。成之です。
いいところに来たと、唯は外に出ていこうとします。阿湖姫が袖をおさえて止めます。
成之は阿湖姫から返事がないので、
「口をきいてはくださらぬか よい このままわしの話をお聞きくだされ」
と、部屋の人の気配を阿湖姫だと思い話します。
言葉の足りなかった部分を補って、阿湖姫に先程どうしてあんなことを言ったのかと説明し、そして、妻として成之のもとへ来てほしいと言います。
阿湖姫と一緒に聞いていた唯は考えもしなかった成之の言葉に阿湖姫のまっ赤になった顔を見てびっくりしています。
阿湖姫は突然の求婚に、
「…………成之様 そ…それは 阿湖を憐れんでのお申し出にござりましょう?」
と尋ねます。
成之は、
「まさか 己を憐れんで生きて参ったわしじゃ 姫を憐れむなど思いもよらぬことじゃ では」
と言い、去ります。
足音が消えると、唯は止めていた息を吐き、阿湖姫に、
「どーするの?」
聞きます。
翌日、阿湖姫は黒羽城を出て松丸家に戻りませんでした。
成之は誰も信じられぬと唯に言っていたくらいだから、今まで他人に本音を語ったことなどなかったんだと思います。
なぜ羽木家に生まれたのか、疎んじられるくらいならこの世に生まれる必要などなかった、と自分の出生を僻んだこともあったと思います。生まれてきた理由を何度も何度も繰り返し自問自答したんだと思います。
若君と唯の無事を祈る阿湖姫を見て、唯を救うため単身で高山家に乗り込むのを見て、若君が高山に降るのを何としても止めようと、命がけで大手山から走ってきた唯を見て、自分も誰かに思われたいという気持ちが芽生えたのではないでしょうか。
成之を変えたのは誰だろう?
阿湖姫なのかな。唯を好む若君かな。大きな影響を与えたのは唯です。唯に影響を受けた人たちを通じて成之は変わったのだと思います。
この三人を見て、自分以外の誰かのために何か力添えをしたい、支えたい、支えられたいと思う気持ちになったのかもしれません。
そして、その人はできることなら、阿湖姫であればいいなと思うようになったのではないでしょうか。
唯が戦国時代にきて、一番変化があったのは成之だと思います。
成之にとって一番悔やまれることは、自分の本心を阿湖姫だけでなく唯に聞かれてしまったことです。この夜唯が一緒にいたことを知ったら、成之はどんな顔をするんだろう? 意外に恥ずかしそうに身を小さくしたら面白いです。
翌日、唯は若君に昨晩の出来事を報告に行きます。
唯は移動する時、ほっかむりをするようになったのは何故だろう?
歴史が変わっていることに、唯は大丈夫ですと言い、若君はすこし間を置いて、そうじゃの、と返します。
婚儀まであと五日です。
唯が気合を入れていると、天野のじいが通りかかります。
天野のじいは唯を見るなり、深く長いため息をつきます。若君の奥方として唯は想像していた女性とかけ離れているからです。
じいはおふくろ様に耳打ちします。
おふくろ様は唯を別室に連れていき、大事な話があると言います。
おふくろ様は唯に実の母御より閨房の心得について聞かされたことはあるかと聞きます。
唯は聞いたことはありませんと答えます。
ないのであれば、唯に心得を教えるのは自分の役目だと、おふくろ様は話をしようとします。
話をしようとするところに若君がやって来ます。
若君がおふくろ様と唯二人きりだったので、取り込み中であったかと聞くと、
「今から おふくろ様から ケイボーのこころえを聞くところなんです」
と唯は若君に元気よくこたえます。
若君は、うっ、間の悪いときにやって来てしまったという顔をします。
おふくろ様はうつむき、目を伏せ、
「どうしてこの子は…」
という表情をしています。
若君は唯に用があり外出することを言いに来たといいます。
どこへ? 何かあったんですか、と聞く唯に、若君は内容ははぐらかし、日暮れまでに戻ると言います。
「それより 唯はおふくろ殿の申されることをしかと聞いておけよ」
と言い、出かけます。
半日くらいすぎます。
おふくろ様の話に唯は赤面するばかりです。
話が終わり、フラフラ歩きながら、若君の屋敷に着きます。
門番に、毎日ご苦労じゃな、と言われ、唯は、若君の屋敷に来るのが日課になっていることに気がつきます。別れたとたんに会いたくなるととても幸せそうです。
バッタリと成之に会います。成之も若君に会いに来ていたようで不在らしく出てきたところを唯に会ったみたいです。
唯は成之から若君が出かけた理由を知ります。
若君は北山にいる野上衆と和平の盟約を結ぼうとしています。
唯は野上衆は危険な相手ではないのか? と成之に聞きます。
そうこうしている内に若君が戻ってきます。
若君はフラフラです。部屋に着くなりバタリと倒れます。
唯が心配して声をかけると、若君は酒を飲んで酔うたと言います。野上衆は酒好きで注がれた酒を飲み干さねば話が進まないのじゃと
言います。どうでしたか? と尋ねる成之に、
「首尾は上々」
とこたえ、野上衆との和睦も相成った、めでたいといいます。
若君は打てる手はすべて打ったはずじゃ、と満足した表情です。
先日、唯が歴史が変わっている、大丈夫と言ったことに、若君はすこし間を置いて、そうじゃの、と返したのは、もうひとつ成し遂げておかなくてはならない問題があるからなんだとここで分かりました。すこし間を置いたことが気になっていたからそういうことなんだと安心しました。
若君が唯によって現代にタイムスリップしたときに、現代の歴史書で知った戦国時代でこれから起こる出来事は羽木家が滅亡するという歴史だけです。このままだと羽木家は滅亡してしまう。そのことが若君の頭にはあったんだと思います。
歴史では羽木家は高山家とは対立したままでした。松丸家との縁組は叶いませんでした。野上衆とも対立したままでした。
羽木家がしなかったことを次々と実現させ、滅亡の歴史とは違う歩みをして、異なる勢力図、ことなる構図を作れば、滅亡を回避できるかもしれないと若君は考えたのだと思います。
「打つ手はずべて打ったはずじゃ」
若君の言葉には明るい未来への思いが込められています。
夜中、若君の元に火急の用にてお目通りを願いたいと、高山宗熊より使者がやって来ます。
使者は若君に宗熊の書状を読んで下さいといいます。
若君は書状に目を通します。
内容は、清洲より相賀一成という織田の武将が宗熊の父宗鶴の元にやってきて、高山家が羽木家を攻めるなら、織田の兵三万、鉄砲三千丁をもって加勢すると申し出てきて、宗鶴は申し出を受け入れ、高山家と羽木家との約定を破ることになります、というものです。
若君は成之を呼び、宗熊からの書状を読ませます。そして、自分はこれから小垣へ行く、成之にはお願いしたいことがあるとこれからのことを話し合います。
唯は何かの前触れを感じてなのか目を覚まします。
部屋を出ると、おふくろ様が唯の元にやって来ます。
おふくろ様は若君が急に来て、これから小垣へ行くことを伝えに来たと言います。
唯は異変を感じとり、寝間着のままで若君を追いかけます。
唯はサンダルでも草履でも足が速いです。吹雪に乗った若君に追いつきます。
唯は若君にどうして急に小垣に行くのかとたずねます。
若君は普段と変わらない表情で、たいしたことではないと言います。
唯は若君の表情が分かるようになってきたらしく、
「ごまかせると思ったら大間違いですから!」
「まーた 自分ひとりで何とかしようと思ってるんでしょ!」
と何か大変なことが起こっていることを察知しています。
若君はすべてを話します。自分の考えを唯に伝えます。そして、唯に黒羽城に残り、手助けをしてほしいと言います。
ぎゅっと唯を抱きしめた若君の表情は最後の別れのようにも見えます。
唯は若君の言う通り、黒羽城に戻ります。
唯はおふくろ様に事情を話します。朝食をとっていると、小平太がやって来ます。
小平太は若君の不在を知り、唯にどこに行ったのかを聞きます。
唯は知らないといいます。
小平太は若君が小垣に向かったことは知っていて、すぐ追いかけると言います。
おふくろ様が機転を利かせます。すると、小平太はしょっぱい顔で唯を見ます。
唯は小平太を簡単にごまかせたと思っています。
おふくろ様は唯が後で気がついたらどうなるやらと思っているようです。
唯は庭を歩いていると頭に枯れ葉が落ちてきて、見上げると、孫四郎が木に登って降りられなくなってベソをかいているの見つけます。すぐに降ろしてあげようと、自ら木に登ろうとすると、
「姉上 やめぬか!!」
と止められます。見てみると三之助です。立派な姿になっています。
唯はおふくろ様から、小平太の口利きで、手習いや剣術のためご城内に通うておると教えてもらいます。
「いつまでも 男子のように木登りなどする故 若君様に疎まれるのじゃ!!」
と三之助は唯に言います。
お城で、若君の不在の原因は、婚礼が嫌で逃げ出されたと人が話していると三之助は言います。
唯は小平太のしょっぱい顔を思い出し、あれは自分を憐れんでいたのかと、誤解されていることに気がつきます。
おふくろ様は唯に高山のことが伏せられているので、今は噂を否定しないほうがいいと助言します。
おふくろ様の言う通り、放っておいたら、あらゆるところからの噂が唯の耳に届いてきます。
唯はちょっと憂鬱になっていると、視線を感じます。見てみると、天野のおやじ様です。小平太以上に憐れみのまなざしで唯を見ています。
若君は小垣に向かっていると、小垣城から黒羽城に向かって走っている味方に出くわします。
小垣の使者は若君に、高山寝返り、川の浅瀬に土俵を敷き詰めて一気に攻め入ろうとしていると伝えます。
兵の数二、三万と聞き、若君は、高山が準備しているという川の浅瀬が見渡せる場所に移動します。
若君が見たのは絶望的な光景です。
唯は庭でじっと黙ってたき火をしています。
阿湖姫がやって来ます。
唯は阿湖姫の表情から噂を聞いて慰めに来たんでしょ、と言います。
阿湖姫はそんな話は聞いていない、疎まれているのは自分のほうだと、すこし前に起こったことを唯に話します。
成之が阿湖姫の元を訪れて、
「まことに勝手ながら 先夜わしが申したことは全てお忘れくだされ」
と、明日にでも松丸家のお父上の元に戻るよう言い、去っていったと言います。
阿湖姫は唯に成之が妻になってほしいといった夜からの心の変化を唯に話します。
阿湖姫の胸の内を聞いた唯は、そうではない、と阿湖姫のために一働きします。
唯は成之をつかまえ、本心を聞き出します。
阿湖姫は隠れて聞いています。
唯の言う通りだったと阿湖姫が嬉しそうにするかと思っていたのに、唯が阿湖姫の隠れている部屋に入ったら、阿湖姫は驚きと恥ずかしさで気絶しそうになっています。
唯は時代に合わないやり方で失敗してしまったと反省しています。
阿湖姫は成之の気持ちが分かり、どうするのでしょう。
夜、唯はおふくろ様に新しい情報が入ったと起こされます。
「旦那様と小平太殿がご登城された」
「高山軍が領内に攻め入った」
「敵はすでに小垣を抜けてここへ向かっておる」
ということを唯に知らせます。
唯は小垣城はどうなったの? とおふくろ様に聞きます。
おふくろ様はわかりませぬと言います。
唯は小垣に行こうとします。
天野のおやじ様が城から戻ります。おふくろ様に出陣となり、戦の準備を頼むと言います。
天野のおやじ様の話を聞いて唯は、小垣に行くに行けなくなります。
唯は若君が心配したとおりになってきたと思い、小垣城に向かうのをあきらめ、黒羽城に急ぎます。
城では成之が殿を必死にとめようとしています。
殿は成之の進言を聞き入れようとしません。敵を蹴散らし、小垣を取り戻すと譲りません。
殿は成之に城の留守居をまかせます。
唯が入ってやって来ます。殿の前に立ち、
「出陣はなりません!!」
と体を張ってとめようとします。
殿の後ろに控えている家臣に、唯は簡単に投げ飛ばされてしまいます。
黒羽城では出陣の準備が整います。
「殿!! しばらく!! なにとぞしばらくお待ち下さい!!」
若君と共に小垣に向かった久六が戻ってきて殿に若君の言葉をそのまま伝えます。最後に、
「若君は『自分の存念は許嫁の唯に申し置いてござれば 唯が申すことお聞き下され』と父上に申し上げよ」
と申されたと言います。
殿は唯を呼べと言います。
唯はすぐ近くに控えています。非常に怒っています。
殿の横に座り、殿と家臣に若君の言葉を伝えます。
殿はいくらか冷静さを取り戻し、出陣は取りやめ、まず敵の情勢を探らせ、城の守りを固め、城下に触れを出し、民、百姓に難を逃れるよう申しわせ、次々に命令を下します。
唯はなんとか出陣をやめることができた、最悪の事態は避けられたと安堵します。
唯は久六から声をかけられます。若君からもう一つ大事な命令を受けてきたと言います。届けてほしいものがあって、何があっても必ず命がけで渡すのじゃとことづかって来たと言います。
久六が懐から取り出したのは懐剣です。唯が池に投げたタイムスリップの起動スイッチの懐剣です。
若君はずっと懐剣を持っていたのです。
「許せ 頼む」
そう申せば唯には伝わろうと若君が言ったと久六は言います。
唯は久六に次の満月はいつかと聞きます。
久六はあと七日か八日で満月だと思うと言います。
唯は満月までの七日間に、戦を止めて、みんなの命を守って、若君に会う、これだけはやりぬかなくてはならないと決意します。
高山の使者が書状を持って来ます。
内容は、城を開け、領内より退却、あるいは、高山の軍門に降る、嫡子忠清を高山家に預け入れるというものです。
若君を人質として高山家に差し出せという文言は唯を戦うしかないと怒らせます。
しかし、その夜、城から見えるのは、四日前若君が見たものと同じ絶望的な光景です。
戦意が喪失していきます。
唯は尊が作ってくれた、まぼ兵くん、金のけむり玉、でんでん丸、起動スイッチ、この四つの道具でなんとかならないかと考えます。
唯は何かいいことを思いついたようです。羽木家の窮地を救えるのでしょうか?
続きます。
唯が戦国時代に来ていなければ、阿湖姫は刺客に暗殺されたか、捕えられて高山宗熊と縁組が成立して、高山家松丸家連合軍対羽木家で戦になり、羽木家は滅亡していたかもしれません。
唯が阿湖姫の代わりに捕えられて、羽木家と高山家で小競り合いは起こらなかった事実となります。
唯が来たことによって起こる事実は、唯が危険を冒して動いていなければ、若君は高山に降り首を取られていたかもしれないし、この小競り合いの末羽木家は滅亡していたかもしれません。
それ以前に、羽木家は永禄二年を越すことはできなかったので、いずれにしても唯が来たことによって羽木家は滅亡を回避していることになります。
いるはずのない人間がいることによって起こる出来事は歴史にどう影響するのか、歴史の大きな流れには些細な出来事として変わることはないのか、これからどのように描いていくのか楽しみです。
若君たちは麓までおりてきています。川に架かる万代橋を渡ると羽木領に入ることができます。
若君の場所からは、万代橋の橋の上を狙う高山勢の伏兵が見えます。
若君たちは橋を渡ることができずに困っていて、強引にでも渡るべきかどうか決断を迫られています。
奇念が羽木方に動きがあり、万代橋を渡ろうとしていると言います。
若君は万代橋に目を向けると、橋を渡ろうとしている一隊の先頭を進むのは兄の成之だと分かります。
成之の部隊が橋の上を狙う高山勢の伏兵に気づいていないと考える若君は、吹雪に乗り、高山勢の伏兵に向かって駆けていきます。万代橋を渡る味方が気づくよう大声で叫び、派手に駆け降りてきます。
万代橋の上の味方は若君を発見し、高山勢の伏兵を蹴散らします。
若君は成之の無事を確認します。
成之は若君を救出するための作戦であったと言います。
若君は成之の言葉に唯が無事に川を渡ったのだと知ります。
成之は若君をからかいます。唯はあっぱれでございましたと、口にします。
若君の顔色が変わります。
若君の顔色を確認してから、成之は唯が小垣で手当てを受けていると言います。若君で遊んでいます。
若君が本陣に入り指揮をとります。万が一を考え指図すると、その命令はすでに成之から申しつけられてすでに動いていますと言われます。成之が少し変わったと実感します。
木村政秀の妻女は唯が何者かと訝しがっている女官に若君の格別にご寵愛の姫だと言います。
女官は唯を見て、これが? と驚く者、悲しみに沈んでいる者がいます。
唯は黒羽城の奥御殿で目を覚まします。
おふくろ様が唯についていて、眠っている間に起こったことを説明します。
唯はおふくろ様の説明を現代語に翻訳して有頂天になります。
浮かれている唯のところにお殿様のご正室、若君のお母上がやって来ます。
唯は姑との初対面は好印象の手応えを感じます。若君も一緒に黒羽城に戻っていると思っていたのに、まだ小垣で高山勢と戦っていると知ります。急いで小垣の若君のもとに駆けつけなければと立ち上がります。
お方様は唯に行ってはならぬと止めます。
藤尾という奥御殿を取り仕切る者が、唯の身の回りの世話をすることになります。
藤尾は唯が若君の寵愛の姫だと信じたくないようです。もし本当だとしても認めたくないようです。
奥御殿の女中たちも唯を認めたくない者が多くいます。唯に地味な嫌がらせが始まります。唯を見て品定めして、聞こえるように嫌味を言う者、水に塩を混ぜる者、様々です。
唯は居心地の悪い奥御殿を出て、若君のいる小垣に行こうかと考えていると、阿湖姫が唯を訪ねてきます。
阿湖姫は唯に知っている小垣の状況を教えます。
小垣では和議を結ぶことになります。
唯への嫌がらせは激しくなっていきます。
唯は自分のことだけなら我慢しているつもりだったけど、おふくろ様への悪口が聞こえてきたから、腹が立ち、ちょっと驚かしてやろうと思いつきます。
唯は目測を見誤り、襖を派手に壊してしまい、ちょっとやり過ぎてしまったと、仏間の仏様に向かって反省します。
唯の行動は藤尾を驚かせます。
藤尾は唯を若君に近づけさせてはならないと遠くに追いやろうとします。
唯は藤尾の企てを察知し、城を出た後こっそり小垣に走っていこうと考えます。
翌日、唯は目を覚ますと、藤尾が目の前にいてびっくりします。
尼寺へ行けと言いに来たんだと思い、用意しようとします。
藤尾は若君が城に戻ったと唯に言います。
唯は急いで若君がいる部屋に向かいます。
若君は眠っています。唯が若君を見つめていると気配を感じ若君は目を覚まします。唯が来るのを待っていたようです。ようやく再会です。
唯は若君が無事で安心します。
若君と唯の間に誰も入ることができない空気を感じ、藤尾は唯を認めざるを得なくなります。
藤尾は一度さがりますが、襖一枚隔てたところで座っています。そして、咳払いをして、若君に伝言を伝えます。
若君は藤尾にお方様が呼んでいると言われ、仕方な母上の部屋に向かいます。
現代にタイムスリップしても動じることのなかった若君がお母上には簡単に動揺させられています。若君にもこんな面があるのかと思う面白いやりとりです。
藤尾は唯が若君の寵愛の姫であることを信じるしかなくなり、唯を本格的に教育しなくてはとこれまでの姿勢を改めます。まず唯は、お殿様の御前にあがる折の作法を教えてもらいます。
殿は若君の嫁が唯之助だと言われ大笑いしています。唯之助が女子であることがわかると、唯を呼びます。
唯は早速、藤尾の教育の成果を見せる時が来ます。
お方様が、
「近う 参りなされ」
と唯に声をかけます。
唯は藤尾の教育の成果を何も出すことなく、自分の思うように殿に近づいていきます。
唯の様子に、若君は微笑み、お方様は口元を押さえています。
殿だけは、
「断じてならぬ」
と怒り心頭です。
お殿様に認めないと言われて、唯は泣いています。
女官たちはちょっと笑いながら唯を慰めます。
そこに若君がやって来て、唯に心配するな、父上は必ず認めるから大丈夫だといいます。
若君と唯が話していると、お殿様がお呼びです、と難なく唯は認められることになります。
婚儀は来月に決まります。
唯は若君にそれまで天野家に帰り、おふくろ様と過ごすよう言われます。
唯は目標を達成して浮かれています。
しかし、ふと冷静になって考えてみると大事なことを忘れているのに気がつきます。
唯は若君に大事なことを確認しに行きます。
若君はそうならないように、いろいろ策を練り手を打っておるところだと言います。
唯は一応納得し、若君と別れます。天野家に戻る途中、奇念から声をかけられます。
奇念は修行の旅に出ると言います。
唯は僧侶としてあるべき姿を語る奇念に感動しています。
続きます。
唯が初めて若君と一緒に過ごす時間が持てて、ようやくここまで来たかと展開が楽しいです。
宗熊が面白いです。唯をひと目見てからの宗熊の描かれていない部分を想像して面白がっています。
若君とは正反対すぎて、羽木家は殿の代を耐えられれば、滅亡せずに済むんだろうなと思います。
若君は唯を単身で助けに高山の居城長沢城に行くつもりです。
おふくろ様はそんな若君の胸中を見抜いているようで、悪丸に、
「決して若君の側を離れてはならぬ」
「吹雪には十分に草を食ませ手入れをせよ」
と若君の供をするよう言います。
若君は悪丸を供にして唯救出に向かいます。
唯は高山に捕えられて10日間、外からの情報は一切遮断されています。高山の殿から明日阿湖姫の兄が来るとだけ伝えられています。阿湖姫の兄松丸義次という人物がやって来て唯と対面すれば、阿湖姫でないことがバレて、命がなくなるかもしれないと危惧します。羽木家ではどうなっているのか気になっていて、若君は自分が高山の城長沢城に捕えられていることは知っているのか、明日の運命を心配しています。
若君は長沢城に到着します。
高山の殿は家臣から松丸義次が到着したとの知らせを受け、阿湖姫(唯)に用意が整い次第、会見の間に来るよう言います。
唯は覚悟を決め会見の間に向かいます。怖さしかなく、ずっとうつむいています。顔を見られると阿湖姫ではないことがバレてしまうので、顔をあげることができません。
高山の殿は唯に顔を上げるよう促します。
顔を上げられない唯は、
「久しぶりじゃの 妹よ」
と阿湖姫の兄から声をかけられます。
唯にとって覚えのある声です。
唯は顔を上げて松丸義次を見ると、阿湖姫の兄として座っているのは若君です。若君の顔を見て一気に張りつめていた気持ちが緩みます。
若君と声に出そうになる唯に、若君が、
「元気そうじゃの 阿湖」
と唯に高山方に正体がバレてはいけないから阿湖を演じるのだと合図します。
唯は助けに来てくれた若君の行動に感激します。
高山の殿は若君に今宵、阿湖姫と嫡男宗熊の婚儀を執り行うと言います。
若君は、婚儀の前に妹と二人だけで話をさせてほしいと言います。
高山の殿は婚儀を終え、めでたく二人が夫婦になった後、兄妹二人でゆっくり話せばいいだろうと若君の要求を拒みます。唯を支度のため退出させようとします。
唯は若君に助けを求めると、
「では 後ほど」
と何かあるような表情で若君は唯を見送ります。
羽木家の黒羽城では、仏間で阿湖姫が若君と唯の無事を祈っています。一晩中祈って体力の限界に達し、倒れてしまいます。
成之がたまたま通りかかり、仏間で物音がしたので見てみると阿湖姫が倒れているのを発見します。声をかけ、阿湖姫に何をしているのかと尋ねます。
成之は若君が単身で唯を救うため高山の城に向かったということを知ります。
阿湖姫は成之に若君を救ってほしいと頼みこみます。
成之はそろいもそろって阿呆ばかりじゃと、若君、唯、阿湖姫の行動を理解できないようです。
若君が城にいないことが殿の耳にも入ります。
小平太は殿に若君は唯之助を救うため高山の城に行ったのではないかと言います。
殿は小平太の推測を一蹴します。
小平太は自分の考えに自信があり、すぐにでも高山を攻め若君を救うべきだと譲りません。
成之が現れます。殿に小平太の読みは当たっていると言います。ただし、高山に攻めるのは忠清殿を危地に追い込むことになるから、もっとじっくり考えろと言います。阿湖姫から聞いたことを殿に伝え、小垣城から高山の様子を探らせるのがよいと進言します。
殿は成之、小平太二人を小垣へ向かうよう命じます。
高山家の長沢城では、婚儀の準備がすすんでいます。
唯は女官が着替えさせようとするのと必死で拒んでいます。
唯と女官が争っていると、白い煙が部屋を覆いまったく見えなくなります。
女官は白い煙が充満して混乱しています。
唯はこの煙は尊のつくった金のけむり玉だと分かり、若君が使ったんだと察知します。若君がもうすぐ助けに来てくれるとニヤけています。
しかし、唯の危機は続きます。遠くから不吉な音を立ててジワリジワリと近づいてくる者がいます。宗熊です。
宗熊は部屋に入ってきて、畳を擦りながら唯を探しています。
唯は宗熊が徐々に近づいてきているのが、畳を擦る音で分かります。怯えながらも宗熊が側に来たら、手当たり次第パンチを繰り出すつもりでいます。
唯の肩に手が触れます。
唯は拳を握りしめ、多分いるはずの方向にパンチしようとすると、グッと手を掴まれてしまいます。
「唯 わしじゃ」
唯の耳元で若君がそっとささやきます。
若君の背中におぶさって唯は長沢城を脱出します。
外では、悪丸が吹雪と待機していて、三人とも城門の外まで出ることができ、見事に脱出に成功します。
すぐに門番が今の三人が怪しいことに気づき、後を追いかけてきます。
唯は吹雪の手綱と悪丸の手を引き駆け出します。
道を進めば高山の砦があり、右へ行くと川と、山越えをして小垣を目指ししか逃げ道がありません。
高山の長沢城では殿が、松丸義次と阿湖姫が城から逃げ、牛背山に入ったと知らせを受けます。そして、また別の家臣から報告を受けます。羽木家に送りこんでいた間者によって、捕らえた姫は阿湖姫ではないこと、松丸義次と名乗って長沢城にやって来た者は羽木家嫡男忠清であることを知ります。
高山の殿は衝撃を受けます。宿敵羽木忠高の倅が目の前にいたのにみすみす逃してしまったと悔やみます。忠清を何としても羽木領に帰すな、山狩りをせよと命令を下します。
若君は唯を救出した後、どのようにして羽木領に戻るのか計画しておらず、山中で唯と悪丸に苦労をかけてしまっていることを悔いています。
唯はと言うと、若君とこんなに一緒に居たことはなかったので、状況を楽しんでいます。
山中二日目。
当てにしていた道が滝によって閉ざされ、なかなか勧めません。水しか口にしていません。
唯はそんな時の若君の様子を見て少しだけ若君を振る舞いの土台を知ります。
悪丸が寺を見つけます。
寺を訪れ、和尚から芋粥でもてなされ、湯と一晩の寝床を用意してもらいます。
若君は寺に迷惑がかかるといけないと思い、素性を明らかにします。
事情を知った和尚はそれでも一晩休んでいくようすすめます。
和尚の弟子の一人白念が姿を消します。
白念は高山に召し抱えてもらう目論見で高山軍に密告に走ったようです。
もう一人奇念という弟子がいます。
唯が和尚に奇念ではなく白念ですかを念を押して訊くのが面白いです。
若君、唯、悪丸、和尚と奇念は寺を出て、羽木領を目指します。
歩きながら唯は人は見かけで判断してはいけないと反省します。
和尚が道案内をして進みます。今いる大手山を越えれば小垣が見えると言います。
唯は大手山と聞き、バスハイクで来た山だと気がつき、もし現代で若君に出会っていたらと妄想します。
平地を見下ろせる開けた場所にたどり着くと、奇念が声を上げます。
川を挟んで羽木軍と高山軍がにらみ合っています。
高山軍は伏兵を潜ませています。羽木軍がそのまま進むと全滅してしまう可能性のある布陣です。
若君は両軍を見て、高山に降ると言います。
唯は若君を止めます。
若君はこのままだと羽木軍が全滅してしまう。それを阻止する手立ては他にないと言います。
唯はあることをひらめきます。奇念に今立っている場所からむこうの羽木軍までまっすぐ行けばどのくらいの距離? と聞きます。
奇念は、五、六里だと言います。
唯が計算していると、
「ならぬ」
と若君が言います。
若君は唯の考えた作戦は許さぬと言います。
若君は高山に降るしか手立てはないと和尚に話しています。
再び、唯は若君にすごくいいこと思いついたと言います。
唯は若君が自分に注意を向けている間に、悪丸にでんでん丸を使わせて若君を気絶させてしまいます。
唯は始めに思いついたとおり、羽木軍まで直線で駆けていくことにします。
羽木軍では成之と小平太が言い争っています。
若君が長沢城から脱出したというところまでは情報としてつかんでいます。
大手山のどこかにいるはずだという情報を知り、高山方の兵は若君を高山領から出さないためだと判断し、小平太は一気に攻め若君を救おうとしています。
唯は山を下り、伏兵が待機している麓までたどり着きます。甲冑を奪い、川に向かおうとすると、見覚えのある顔を見かけます。成之のところにいた坊主と密談をしていた高山の使者です。坂口殿と呼ばれ、会話の中で一気に羽木家を攻め滅ぼすと言っているの聞きます。
和尚一行は悪丸が若君をおぶって小垣を目指しています。
若君の意識が戻ります。
若君は唯が悪丸に若君を守るようにと尊の道具を置いていったことを知ります。
唯は羽木軍がすぐ目の前にいる川を挟んだ高山軍の先頭にいます。戦が始まれば止めるのは無理だと思い、イチかバチかで羽木軍に向かって走り出します。
成之が一人高山軍から飛び出して走ってくる兵を見て、足が速く、唯之助ではないかと言います。
一発の弾が唯の肩をかすめます。その衝撃と痛みで唯は倒れてしまいます。
羽木軍はなんとか唯を回収します。
銃声は若君の耳に届きます。不安が頭をよぎります。
羽木軍の本陣では助けられた唯が高山軍の状況を説明します。
成之は作戦を考えます。
唯は成之について行くと言いますが、肩を撃たれて傷口が腫れ、熱が出て倒れてしまいます。
唯之助を手当せよと木村政秀命じると、成之は妻女に言うて奥で唯之助を手当してやれと言います。
木村と小平太は成之がなぜそう言うのかわかりません。
成之は唯之助は女子だと明かします。
木村は成之は思い違いをしている、確かめればわかると唯に近づこうとすると、
「止めたがよい」
と成之は唯之助が若君にとってどんな存在か説明します。
小平太は成之の説明に思い当たることがあると言い、木村は納得し唯之助を奥に連れていき妻女に手当させます。
木村は妻女から唯之助が本当に女子であることを確認し、妻女に唯之助が若君の特別のご寵愛の姫だと言います。
妻女は驚きます。
続きます。
夏目恋子は二宮剣のことが少し気になって見ていた人から、次第に目で追うようになり、相手も想ってくれていればいいのになと思う存在になっていきます。
恋子にとって剣は「ふつう」という自分で決めた姿勢を捨ててもいいと思える存在のようです。
恋子は剣におでこにキスされて、もう「ふつう」の状態ではいられません。「ふつう」が剣によって乱されてしまいます。意識せずにいようとすればするほど意識してしまいます。
「ふつう」を取り戻したい恋子はこれまでよりも特に注意して「ふつう」に過ごそうとします。だけど、恋子の「ふつう」は剣のなんでもないことで一瞬で崩れてしまいます。
恋子は「ふつう」と取り戻したくて、意識していないということを言葉にするため剣におでこにキスしたことを忘れてと言います。剣は忘れるのは無理だと言います。
「オレ あんなことしたの初めてだもん」
と言われ、恋子は自分も忘れることなんてできなくてさらに「ふつう」から遠ざかってしまいます。
剣の出来事すべてが恋子の心に引っかかりを残します。剣のことを何も知らないのに交わした言葉、表情が何度も何度もよみがえってきます。
恋子は忘れようとすればするほど、しっかり心に残り記憶されます。
佐藤くんには感じることのなかった気持ち、今まで感じたことのない気持ちが、剣とのなんでもないことを含め、グッと感情が動くことに、それが恋なのか? と思い、もしそうなら、「ふつう」でいられなくなると動揺してしまいます。
恋子は恋をして、体温が上がるという恋子の考える「ふつう」ではない状態に落ちつていられません。
剣は恋子にクリスマス予定はある? と誘います。恋子は即答で誘いを断ります。
恋子のクリスマスの予定はないので、なんとか埋めようとします。心当たりのすべてがうまくいかず、空白になります。
恋子はクリスマスに剣と過ごしたい気持ちはあるものの、何かがその気持ちを動かそうとしません。それは「ふつう」でありたいからなのか、剣を意識する気持ちが何なのか気づけていないからなのか、まだわかりません。
恋子は剣へクリスマスのプレゼント買ってしまいます。いつ渡す気なんだろう?
恋子は目で剣を追いかけるようになります。気がついたら存在を探したり、追いかけたりするのはもう「ふつう」ではありません。
ふたりは学校では会話はせず、時々剣から恋子へ携帯にメッセージが送られてきます。恋子はかわいく返信したい気持ちと、「ふつう」が一番だからかわいく演出する自分は「ふつう」ではなくなってしまうという気持ちとで揺れ、結局「ふつう」にとどまることにして、ふつうの短い文を送り返してしまいます。
クリスマスの日。
恋子は結局予定を埋めることはできず、家にいます。
剣はこの日、バイトを入れていて、恋子とバッタリ出会います。友達と予定があるって言ってたのに、どうして家にいるの? と恋子は言われてしまいます。
恋子は言い訳にならない言い訳をし、剣のほうこそクリスマスになんでバイト入れてるの? 聞き返します。
剣は、
「誘った子からは断られてし」
と恋子を見て言います。
恋子と剣の会話を聞いていた母親は、素直じゃない娘のために少し助けてあげます。
二人でクリスマスの夜に歩くことに、剣は、
「ラッキー」
と素直に嬉しさを言葉にします。
一方、恋子は「ふつう」ではないこの状況をうだうだと考えています。恋子は素直じゃないです。それでいて、剣が他の人に取られてしまうかもしれないと感じると、剣との距離が離れるのは嫌だとはっきり主張します。やっかいな子です。
剣は今度は初日の出を見に行こうと誘います。恋子はようやくこれは恋だと認めたらしく、即答で返事します。
これは恋だと認めた恋子は剣に対する想いが同じように、剣も想ってくれてほしいと思い始めます。
恋子は「ふつう」を一旦封印することにしたみたいです。
恋子は「ふつう」でなくなってもいいと思うほど、人を好きになるなんて自分の人生に起こるなんて考えても見なかったと思います。
「ふつう」ではなくなった恋子がこれからどうしていくのか楽しみです。あと、剣は恋子の母親から恋子の気持ちは伝わったので、剣はどうしていくのかというのも楽しみです。
続きます。