2017年11月20日月曜日

羽海野チカ 3月のライオン 12巻

あかりさんに必要なのは そこに共に入って 彼女を支えてくれる 人生の伴侶だ!!!!
――見えた…… 僕が今やるべき事…!!
桐山零は解った、と身近なところから分析を始めます。


●chapter. 115 およばれ
あかりにふさわしい人物はいるのか。桐山は身近な男性を紙に書き出し分析を始めます。
あかりさんの意思を聞きてみない、というのが零らしいのかもしれません。
桐山は父親のことで解決に尽くしてくれた林田先生と野田先輩を川本家のご飯に招待したときのことを思い出します。
林田先生が思ってもみないところから矢が飛んできて評価を下げてしまった話を思い出し、林田先生があかりにふさわしいか考えてみます。桐山は少し不安が残るなと結論づけます。
しかし、ご飯に招待された帰り道、林田先生があまり空気を読める人ではなく、変な方向にポジティブな人物であることが分かり、少しの不安は大きくなって、桐山の評価は下がってしまいます。
頑張れ、林田先生。まずはあかりの視界に入ることが先決です。


●chapter. 116 忠実なる愛犬エリザベス物語
二階堂家の愛犬エリザベスは主人の春信に忠実な犬です。
エリザベスの頑張りは春信には伝わらなくても、巡り巡って心の安らぎを与えています。


●chapter. 117 薩摩編 1
鹿児島で棋竜戦第三局が行われます。
藤本雷堂棋竜対土橋九段の対局です。藤本棋竜は二敗していて、この対局に負けると、唯一のタイトル「棋竜」を失ってしまいます。
藤本棋竜は絶対に落とせない対局です。
藤本棋竜のタイトルを落とせない理由が笑ってしまいます。女と才能のある人間に弱いところが見た目から想像しにくいです。

指宿には藤本棋竜の招待で桐山、川本三姉妹が来ています。
スミス、松本一砂、横溝も来ています。彼らはあかりのおばさん美咲の銀座の店の常連です。あかりが指宿に来るのを桐山に聞いて来たのか、プールにあかりがいるのを見かけたからか、全員プールサイドであかりに話しかける機会を狙っています。
藤本棋竜はプールにやって来ると、さっそくあかりを見つけます。
あかりを女神だと形容し、誰の女神だと観察していると、桐山が親しそうに接しているのを見ます。藤本棋竜は桐山が言っていた婚約者はこの人なのか、と桐山に嫉妬を覚えます。
桐山が藤本棋竜に気づき、今回の招待に感謝し、あかり、ひなたとモモを紹介します。
あかりとモモが親子だと勘違いしていた藤本棋竜は、二人は姉妹であり、ひなたが桐山の脳内婚約者だと理解します。
理解すると藤本棋竜の動きは速いです。冷静さを取り戻し、あかりに紳士的に話しかけます。藤本棋竜の心の動きが面白いです。
あかりはどこへ出ても注目される女性です。最後のコマの土橋九段も部屋の窓からあかりを見つけ、すごい美しい女性がいる、TVか何かの撮影かな、思うくらいです。あかり自身はどう思っているんだろう。三日月堂の三姉妹のおじいちゃんも言っていたように、あかりの幸せを願います。


●chapter. 118 薩摩編 2
藤本棋竜はあかりとお近づきになりたいようです。話しかけ、会話が続くかに見えた時、左から新地のお姉ちゃん、右から妻と娘に挟まれるという危機に見舞われてしまいます。
藤本棋竜はあかりとの会話を切り上げ、絶体絶命の危機を回避するため、プールに飛び込み姿を消すことを選びます。水の中で、対局に勝たねば、今を維持できないことを確認します。
棋竜戦第三局対局開始です。


●chapter. 119 薩摩編 3
対局中、一体何を考えながら指しているのか。藤本棋竜と土橋九段双方の対局中の思考が描かれていて面白いです。
大盤解説で先輩が前日の酒で立ち上がれず、桐山が代わりに壇上に立ち解説を始めます。
あかり、ひなた、モモは零が棋士として仕事をしているところを初めて見てびっくりします。
一矢報いることができず、藤本棋竜は145手で投了します。
棋竜は土橋九段に渡ってしまいます。


●chapter. 120 薩摩編 4
あかり、ひなた、モモ、零で砂蒸し風呂に来ています。
モモは砂風呂に入る三人を写真に撮っています。砂風呂から出た姿にひなたが放つ悪意のない一言が零の体中の力を失わせます。
ドンマイ、桐山くん。まだまだ長い道のりになりそうです。
いろんな家族のかたちがあります。砂風呂から出て、ラムネを飲みながら、棋竜を失った藤本に家族が言った言葉を思い出して、川本三姉妹は、これでよかったと思えるエンディングを目指して、これからも過ごしていこう心に決めます。


●chapter. 121 ぼんぼりの灯る道 1
今年の夏まつりの三日月堂の売り物を何にするか、おじいちゃんとあかり、ひなたで話しています。
桐山は翌日対局なので家で勉強しています。
順位戦で対局相手は滑川七段です。


●chapter. 122 ぼんぼりの灯る道 2
7月下旬。B級2組順位戦第二局。
スミスは千駄ヶ谷にある将棋会館に着くまでに汗でびっしょりです。
スミスは横溝を見かけ、
「今日2人とも万が一近い時間に終わったら上野のビアホールとか行かね?」
とか、
「そして 桐山を誘って あかりさんの近況とか あかりさんのこの夏の予定とか聞きたいね」
とか、
「あっ そうだ 桐山 今ここにあかりさん誘わね?」
とか言って、まだ対局が始まってもいないのに、対局後の話ばかりして盛り上がります。
気分を上げようとしているのに、目の前に滑川が現れ、どんよりとした空気と雨雲を連れてきます。
汗びっしょりだったスミスは、雨にも降られてしまいます。
桐山零は滑川七段と対局です。先手は滑川です。
滑川は珍しい手を指してきます。桐山はずっと小さい頃にこの手をみたことがあります。研究してきた作戦は見事にハズレてしまい、さて、どうしたものかと席を立ちます。
桐山の隣で対局するスミスは、桐山がどうするのか、自分の対局より関心を持っています。

スミスは以前、横溝が言っていたことを思い出します。
横溝は滑川との対局に苦手意識が植えつけられています。
B級1組順位戦最終局、横溝は滑川と対局し、「勝てば残留」「負ければ降級」というがけっぷりで負けてしまいます。
スミスは横溝のこの負けはあとを引くぞ、来季ボロボロだろうなと思ったことを思い出します。
横溝はスミスの言う通り、滑川が立っている姿を見るだけで負けた最終局面を思い出すと言います。負けてからずっと調子悪いままだと言います。
スミスには横溝の気持ちがわかります。
スミス自身4年前、B1に手が届きそうになった最終局で滑川と対局しています。滑川にとっては消化試合なのに、ものすごい粘着力で巻きつかれて阻止されてしまいます。
スミスはそこから4年、停滞しています。

そんなことを思いながらスミスは桐山を見ています。スミスは桐山がもし忘れられない負け方をしたら、自分や横溝のように、桐山の記憶にも傷がつくのか? と桐山がどうするのか見つめています。

桐山は間を置いて席に戻ります。
隣で対局しているスミスも田中も、桐山が次の一手をどう指すのか、手を止めて見ています。
桐山は滑川と同じ手を指します。まったく研究していないところへ進む気です。
桐山は慌てず、動揺も見せず、そういう手で来るならこうしてみる、と当然のように恐さを感じることなく飛び込んでいきます。
平然と指している桐山を見て、スミスは心の強さに感心します。
(桐山なんか負けちゃえ 負けて苦手意識とか植えつけられちゃえ!!
で そこから激しく試行錯誤して 見事立ち上がった暁には そのノウハウを 俺と横溝に懇切丁寧に伝授してよ)
と心の中で叫びます。
桐山には将棋に対して恐さがないようです。


●chapter. 123 ぼんぼりの灯る道 3
桐山と滑川が対局している時の川本家の様子が描かれています。
モモが熱を出して寝ています。
あかりとひなたは夏まつりの準備で話をしています。
ひなたは、忙しくなることは予想できるので、去年のように零に手伝って欲しいけど言うか迷っています。指宿で仕事をしている零を初めて見て、簡単に呼んで手伝ってもらってはいけないのではないかと思いが生まれます。でも、あかりやひなたが零に遠慮して、言いたいことを言わずにいることを零が気づいたとき、何よりも零が淋しい思いをすることもわかっていて、やっぱり今度の夏まつりも零に手伝ってくれるか聞いてみようということに決めます。

桐山は研究していない戦法で始まった対局について考えています。どうして滑川はこの戦法で挑んできたのか。実践で指されていない手をあえて引っぱり出して来たのは、活路を見出したのか、研究されていない場所で戦うと経験値で勝る滑川に分があると踏んだのか、どちらなのか考えています。
将棋に対してはムキになる傾向になりがちな零は、滑川の戦法に挑みます。しかし、ちょっと冷静になり盤面を見つめると、なんだか奇妙なかたちになっていることに気がつきます。


●chapter. 124 ぼんぼりの灯る道 4
川本家のお昼はそうめんです。モモは熱が出ているのに、三人で一袋茹でます。川本家はいつも食べ過ぎです。

桐山は滑川の指す手の意図がわからず苦戦中です。
滑川は桐山が迷っているのに、最善手を指すことに、この対局を心から楽しんでいます。
未踏の地を歩く桐山と滑川の対局の隣で、スミスと田中の将棋は定跡で進みます。

●chapter. 125 ぼんぼりの灯る道 5
桐山は滑川の意図が見えて来ます。振り回された挙句、千日手に持ち込もうとしているのを制するように勝負に出る1手を指します。
桐山は滑川の仕掛けるトラップにも気づき、丁寧に落ち着いて指し171手で勝利します。
スミス、田中、横溝はビアホールに向かおうと将棋会館を出ると、朝のスミスと横溝の会話を聞いていた滑川がタクシーを呼んで待っています。滑川は恐ろしい雰囲気を演出するのがとても上手いです。


●chapter. 126 夏まつりの夜
夏まつりです。
桐山は去年同様の役割を果たします。
ひなたの友達つぐみちゃん、林田先生、野口先輩も手伝いに来ています。
モモは元気がありません。盆踊りにいきたいのに、忙しくて誰も連れて行ってくれる人がいないので、ひとりでしょんぼりしています。
理由がわかった零は、二階堂に連絡します。二階堂が来てモモは大喜びです。
二階堂は夏まつりに、島田をメールで誘っています。
島田はお祭りに来てみたものの、二階堂がつかまらず、探して三日月堂までやって来ます。
あかりが店先に売り子で立ち、島田に、
「おひとついかがですか?」
とすすめます。島田はレモンゼリーを注文し、食べていると、桐山に声をかけられます。
林田先生は島田の大ファンで、目の前に島田がいることに驚いています。
島田はレモンゼリーを食べて久しぶりに胃痛が消えます。ゼリーなのか、あかりの笑顔なのか、島田が緊張をゆるめることができます。
急に雷が鳴り、強い雨が降ってきます。
雨を避けようと急いで走る人が三日月堂の店先に並べたテーブルに体をぶつけ、脚が折れてテーブルが傾き、のせていた白玉の鍋がこぼれそうになります。
あかりは白玉の鍋を守ろうとします。守ろうとして鍋を必死に持とうとして自分の体勢が崩れてしまいます。
鍋を抱えたあかりが倒れそうになるのを、右から林田先生があかりの体に手を回し、左から島田さんがあかりの二の腕をぐっと握り、支えます。
あかりはなんとか倒れずにすみ、白玉の入った鍋もこぼさずにすみます。
みんなであかりが作ったカレーを食べ、夏まつりがそれぞれの記憶の中に素晴らしい一日として残ります。


続きます。


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