唯が戦国時代に来ていなければ、阿湖姫は刺客に暗殺されたか、捕えられて高山宗熊と縁組が成立して、高山家松丸家連合軍対羽木家で戦になり、羽木家は滅亡していたかもしれません。
唯が阿湖姫の代わりに捕えられて、羽木家と高山家で小競り合いは起こらなかった事実となります。
唯が来たことによって起こる事実は、唯が危険を冒して動いていなければ、若君は高山に降り首を取られていたかもしれないし、この小競り合いの末羽木家は滅亡していたかもしれません。
それ以前に、羽木家は永禄二年を越すことはできなかったので、いずれにしても唯が来たことによって羽木家は滅亡を回避していることになります。
いるはずのない人間がいることによって起こる出来事は歴史にどう影響するのか、歴史の大きな流れには些細な出来事として変わることはないのか、これからどのように描いていくのか楽しみです。
若君たちは麓までおりてきています。川に架かる万代橋を渡ると羽木領に入ることができます。
若君の場所からは、万代橋の橋の上を狙う高山勢の伏兵が見えます。
若君たちは橋を渡ることができずに困っていて、強引にでも渡るべきかどうか決断を迫られています。
奇念が羽木方に動きがあり、万代橋を渡ろうとしていると言います。
若君は万代橋に目を向けると、橋を渡ろうとしている一隊の先頭を進むのは兄の成之だと分かります。
成之の部隊が橋の上を狙う高山勢の伏兵に気づいていないと考える若君は、吹雪に乗り、高山勢の伏兵に向かって駆けていきます。万代橋を渡る味方が気づくよう大声で叫び、派手に駆け降りてきます。
万代橋の上の味方は若君を発見し、高山勢の伏兵を蹴散らします。
若君は成之の無事を確認します。
成之は若君を救出するための作戦であったと言います。
若君は成之の言葉に唯が無事に川を渡ったのだと知ります。
成之は若君をからかいます。唯はあっぱれでございましたと、口にします。
若君の顔色が変わります。
若君の顔色を確認してから、成之は唯が小垣で手当てを受けていると言います。若君で遊んでいます。
若君が本陣に入り指揮をとります。万が一を考え指図すると、その命令はすでに成之から申しつけられてすでに動いていますと言われます。成之が少し変わったと実感します。
木村政秀の妻女は唯が何者かと訝しがっている女官に若君の格別にご寵愛の姫だと言います。
女官は唯を見て、これが? と驚く者、悲しみに沈んでいる者がいます。
唯は黒羽城の奥御殿で目を覚まします。
おふくろ様が唯についていて、眠っている間に起こったことを説明します。
唯はおふくろ様の説明を現代語に翻訳して有頂天になります。
浮かれている唯のところにお殿様のご正室、若君のお母上がやって来ます。
唯は姑との初対面は好印象の手応えを感じます。若君も一緒に黒羽城に戻っていると思っていたのに、まだ小垣で高山勢と戦っていると知ります。急いで小垣の若君のもとに駆けつけなければと立ち上がります。
お方様は唯に行ってはならぬと止めます。
藤尾という奥御殿を取り仕切る者が、唯の身の回りの世話をすることになります。
藤尾は唯が若君の寵愛の姫だと信じたくないようです。もし本当だとしても認めたくないようです。
奥御殿の女中たちも唯を認めたくない者が多くいます。唯に地味な嫌がらせが始まります。唯を見て品定めして、聞こえるように嫌味を言う者、水に塩を混ぜる者、様々です。
唯は居心地の悪い奥御殿を出て、若君のいる小垣に行こうかと考えていると、阿湖姫が唯を訪ねてきます。
阿湖姫は唯に知っている小垣の状況を教えます。
小垣では和議を結ぶことになります。
唯への嫌がらせは激しくなっていきます。
唯は自分のことだけなら我慢しているつもりだったけど、おふくろ様への悪口が聞こえてきたから、腹が立ち、ちょっと驚かしてやろうと思いつきます。
唯は目測を見誤り、襖を派手に壊してしまい、ちょっとやり過ぎてしまったと、仏間の仏様に向かって反省します。
唯の行動は藤尾を驚かせます。
藤尾は唯を若君に近づけさせてはならないと遠くに追いやろうとします。
唯は藤尾の企てを察知し、城を出た後こっそり小垣に走っていこうと考えます。
翌日、唯は目を覚ますと、藤尾が目の前にいてびっくりします。
尼寺へ行けと言いに来たんだと思い、用意しようとします。
藤尾は若君が城に戻ったと唯に言います。
唯は急いで若君がいる部屋に向かいます。
若君は眠っています。唯が若君を見つめていると気配を感じ若君は目を覚まします。唯が来るのを待っていたようです。ようやく再会です。
唯は若君が無事で安心します。
若君と唯の間に誰も入ることができない空気を感じ、藤尾は唯を認めざるを得なくなります。
藤尾は一度さがりますが、襖一枚隔てたところで座っています。そして、咳払いをして、若君に伝言を伝えます。
若君は藤尾にお方様が呼んでいると言われ、仕方な母上の部屋に向かいます。
現代にタイムスリップしても動じることのなかった若君がお母上には簡単に動揺させられています。若君にもこんな面があるのかと思う面白いやりとりです。
藤尾は唯が若君の寵愛の姫であることを信じるしかなくなり、唯を本格的に教育しなくてはとこれまでの姿勢を改めます。まず唯は、お殿様の御前にあがる折の作法を教えてもらいます。
殿は若君の嫁が唯之助だと言われ大笑いしています。唯之助が女子であることがわかると、唯を呼びます。
唯は早速、藤尾の教育の成果を見せる時が来ます。
お方様が、
「近う 参りなされ」
と唯に声をかけます。
唯は藤尾の教育の成果を何も出すことなく、自分の思うように殿に近づいていきます。
唯の様子に、若君は微笑み、お方様は口元を押さえています。
殿だけは、
「断じてならぬ」
と怒り心頭です。
お殿様に認めないと言われて、唯は泣いています。
女官たちはちょっと笑いながら唯を慰めます。
そこに若君がやって来て、唯に心配するな、父上は必ず認めるから大丈夫だといいます。
若君と唯が話していると、お殿様がお呼びです、と難なく唯は認められることになります。
婚儀は来月に決まります。
唯は若君にそれまで天野家に帰り、おふくろ様と過ごすよう言われます。
唯は目標を達成して浮かれています。
しかし、ふと冷静になって考えてみると大事なことを忘れているのに気がつきます。
唯は若君に大事なことを確認しに行きます。
若君はそうならないように、いろいろ策を練り手を打っておるところだと言います。
唯は一応納得し、若君と別れます。天野家に戻る途中、奇念から声をかけられます。
奇念は修行の旅に出ると言います。
唯は僧侶としてあるべき姿を語る奇念に感動しています。
続きます。
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