2016年12月22日木曜日

入江亜季 コダマの谷 王立大学騒乱劇

●コダマの谷

とある王国の王立大学が舞台の物語です。

目的があまり明らかにならず、それぞれの事情と人間模様が描いています。

ライダーやアーサー、ユリウス、学院長といった男たちよりも、自分のことをおれという女の子のマージとアーナスタ家の姫ウーナの思いや行動が面白かったです。



●忘れている事、思い出したこと

ニール・ライダーは入試をトップで通過したのに、それ以降の成績は進級に差し支えないギリギリのラインを保ち、卒業を拒んでいるちょっと変わった男です。

何か目的があって大学に残っているようです。

もしもライダーが、

「何か大事なことを忘れている」

ことを忘れていたら、マージはどんな反応をしていただろう。

ただ黙ってがっかりしていたのかな。



●天上からの来訪者

近い将来やってくることへの備えのため、手を回して学院にもぐりこんだ王国の王子アーサー。

切れ者なのか未熟なのかわかりにくい人物です。

ライダーがどういう人物が興味があってつながりを持つため彼の住む部屋の屋根裏を寝床にしていたのに、初対面は散々なものになってしまいました。

ライダーは一体何をしているんだろう(明かされることはありませんでした)。



●やることがあるんだ

兄のユリウスを負かしたライダーと婚約相手のアーサーに興味があり、ふたりがいる学院に女は入学できないのに偽って入学したウーナ。

彼女の立ち位置が面白いです。

変装したウーナを容易に女性だと見抜くアーサー。

男の子の格好で自分を「おれ」というマージも即女の子だと見抜いてしまいます。

「あんまりからかうんじゃねえよ」

と、マージをアーサーから遠ざけようと、マージの背後から手を回し軽く抱きしめる格好になり、ライダーを背中に感じちょっと頬を赤らめたマージがかわいらしいです。



●利得と動揺

理想の女性像とぴったりと思った人が、国王の決めた相手だと知ったときのアーサー。

直球の求愛行動が可笑しかったです。



●駈け引き

マージがアーサーに言った、

「吸わないってまえ言ったよ」

というセリフがものすごく好きです。



●最終話

アーサーの会話を偶然立ち聞きしてしまうウーナ。

これほどまでにまっすぐに想われていることを知るとどういう気持ちになるだろう。



●After the Echo Valley

マージが「おれ」から「あたし」に変えるところを描いて欲しかったです。

一つひとつの話の終わりに描かれている挿絵が楽しかったです。



●フクちゃん旅また旅

父親と旅をしていろんな経験をするフクちゃんのショートストーリーです。

迷子になって知らないヒトに連れられて、頭ん中が不安と恐怖でいっぱいなったり、滅亡した国の幼い王様を説得したり、野宿で食べ物がなく乾パンを独り占めしたい気持ちを抑えたり、稲荷神社のキツネにからかわれたり、一目ぼれしたり、奇跡が起こったり、空想したり、似た男の子と入れ替わったり、宿屋のお嬢ちゃんに優しくされたり、知らない間に誰かを勇気付けていたりします。



入江亜季 コダマの谷 王立大学騒乱劇
(アマゾンのサイトに移動します)

2016年12月20日火曜日

入江亜季 乱と灰色の世界 2巻

陣は乱の考えていることなんてお見通し。

冒頭の乱と陣の会話が面白かったです。




4人の魔法使い。一家の妹・乱を中心に4人の魔法がきらきらと輝く。人気絶好調のマジカル・デイズ!大きな小さな日常の問題ごとが、魔法使いファミリーを悩ませる。願いはひとつ、家族4人いっしょに仲良く暮らすこと…。




●たま緒来たらば

ずっと乱と凰太郎とたま緒の3人しか出てこないで欲しいな、なんて思っていたら、見開きを使ったページに四人ほど他の人物が描かれていました。

だからどうなんだ?ということなんだけど、たま緒が魔法か何かで特別な空間を作ってしまい、3人しか存在しない空間の中で監視していた、とかだったら、全があわてて逃げようとしたことにつながりそうかな?と思いました。



●千客万来

乱の魔法で大騒ぎになります。

陣を怒られてべそをかく乱。

乱にとって陣はどれだけ恐い存在な んだろう。



●全の飛んだり跳ねたり

「起きな始まるよ」

と、たま緒は寝ている乱を起こすのに、たま緒は表立って動いているところが何も描かれていません。

どうしてなんだろう? 今回の主人公ではないからかな。

漆間家であまり存在感がなかった全が活躍します。

静と同じく偉大な魔法使いのようです。



●晴れてめでたし

梅ももさくらのエステが面白かったです。

静は家に帰って家族4人で暮らしたかったのに、大事な役目のために仕方なく離ればなれになって過ごしていたんですね。

なにかあるようなセリフばかり言うたま緒。

彼女は何をしているんだろう。



●魔法の作法

乱は早く大人になりたいけど、

「まー小さいのにしっかりしたお子さんで」

とも言われたいことが判明します。

日比誠はダメな子だなあ。



入江亜季 乱と灰色の世界 2巻
(アマゾンのサイトに移動します)

2016年12月18日日曜日

入江亜季 乱と灰色の世界 1巻

描かれている物語の前に起こった、きっかけになった出来事を想像して読むのが楽しい作品です。

魔法が使える家族のお話です。

空想と現実がうまく混ざり合っています。

想像する描かれていない前置きは、勝手にあれこれ思い描いているので、登場する人物の特徴が作者の意図とは異なるものを作り上げているかもしれません。

それはそれで気がついたときに修正しながら、最初から読み返せる楽しみが増えるのでいいかな?と思います。




●ちいさな乱

漆間乱(うるまらん)は小学四年生の女の子。

大きな魔力を秘めた魔法使い。…のはずだけど、幼いからなのか、まだ自在にコントロールできません。

意識があるときはたいしたことはできず、せいぜい物を少しどうにかできる程度です。

ただ、意識がないとき、眠っているときなどは力が多少暴走し、自分を含め、身の回りのあらゆるものを浮遊させたりできます(乱本人はこのことには気づいていません)。


乱は魔法を自在に使えるようになりたくてあらゆる試みをしてみたんだと思います。

そして、魔法がある程度自在に使える道具を探し、発見します。

それは靴でした。

それも乱の足には合わないとても大きなサイズのスニーカーでした。

履いてみると、乱は自分の思うとおりに魔法が使えようになったんだろうと思います。

まず魔法を使ってやることは姿を変えること。

「乱はまだ子供だから」

と、事あるごとに納得させるために言われていて、反発心を抱いていたんだと思います。


興奮して嬉しくなって、兄の陣(ぜん)や父親の全(ぜん)に大きくなった姿を披露したはずです。

そして、二度とするんじゃないと思いきり叱られたんじゃないかと思います。

こんな感じのやりとりがあって、陣は乱が懲りずに大晦日の大掃除に魔法を使うことを見越して靴を隠したんじゃないかなあと思いました。

靴を探す乱。

乱の目の届かないところに隠そうとする陣。

何かを察知しこたつを動かし、天板の上に椅子を置いて登ろうとするコマがかわいらしかったです。



●静帰る

妹思いの陣。

母親の静(しずか)がいないことで乱が寂しがっているのは分かっていて、時々突然やって来て半日ほどの滞在で帰っていってしまう静に、そんなことをしたら余計に乱の寂しさが募り、かわいそうだからやめてくれとでも言ったことがあるんだと思います。

乱をかばうために静にやたら冷たい態度で接する陣を全も静も分かっていて、子供たちには見せないけど、どうにかしたい、と歯がゆい気持ちでいるんだと思います。

乱に魔法を教える静。

乱の魔力は強そうです。

静の手鏡を割ってしまった陣への罰が面白かったです。



●陣出陣

ある程度思い通りに魔法が使えるという自信を持った乱の行動。

何度も失敗して、陣が探しに行き、全が心配するということがあったんじゃないでしょうか。

今度はうまく行くと靴を携えて出発しまが、時間が悪かったようです。

子供は起きていられません。



●プカプカ実験室

陸路で静の元へ行くのは諦め、空から行こうとしたのでしょう。

小学生の知恵をフル回転させて、飛ぼうとしたのですが、ことごとく失敗して傷だらけになってしまいます。

薬局で傷薬を大量に買い込む陣。

乱の見えるところに大きな字で家訓を書く全。

陣も全もまさか乱が理科の授業の実験を応用するなんて思ってもみなかっただろうな。



●最上階の王子

飛ぶことにばかり気をとられて、風に流され、降りることさえできないくらい上空を漂う乱。

あまりに無邪気な乱。そりゃそうです。小学4年生なんですから。



●扉

「あの村には力の強い魔女たちが交代で務める大事な役目がある。ママが長い時間抜けることはできないんだよ」

全が乱に言ったセリフです。

静の大事な役目が描かれています。

モテモテの陣、動揺する乱、乱に魔法を教えるという、全があわてて逃げようとする先生とは?




語られていないことがたくさんあり、そこが想像をふくらませます。



入江亜季 乱と灰色の世界 1巻
(アマゾンのサイトに移動します)

2016年12月16日金曜日

石黒正数短編集2 ポジティブ先生

短編のの面白さ…思い知れッ♪ 「それ町」の石黒正数が贈る多彩な世界嵐山歩鳥初登場作品「夜は赤い目の世界」正義の味方物語「ジャスティス・ジャスト」カラー4p描き下ろし世紀末綺譚「種」etc.


作品の視点が面白かったです。直線でないというか、ひねってあるというか。藤子・F・不二雄のSF(すこし・ふしぎ)にほんの少し似てるかなと思いました。


●種
ミニミニ人類の歴史のような作品でした。


●ジャスティス
小さい頃よく思っていた、
「仮面ライダーとウルトラマン、その他の正義の味方が一度に出てきたらいいのに」
を再現してコメディの味付けをした作品だなと思いました。


●夜は赤い目の世界
吸血鬼退治。舞台が日本らしく、吸血鬼の眠る箱が和式だったり、出現したドラキュラが栄養満点の体格だったのに笑いました。
コントのような展開もあって楽しい作品でした。


●ポジティブ先生
この短編集の表題になっているので期待してしまいました。
短すぎてびっくりしました。


●ネジまで愛して
展開がはやかったです。
短編のサイズではなく3話か4話くらいの長さになるとより面白くなったんじゃないかなと思いました。


●デーモンナイツ
戦っていないときの悪役は何をしているのか。
悪役のある日のハプニングでのドタバタが面白かったです。
オチのデーモンキングの台詞は絶対に言ってはいけません。


●怪奇!透明人間が来る
どこかで読んだことがあるような話でした。

2016年12月14日水曜日

石黒正数 それでも町は廻っている 8巻

●笑ってごらん
最後のページの歩鳥の憎たらしい顔。タッツンの気持ちすごく分かります。


●踊る大捜査網
商店街の人たちがシーサイドに大集合しました。シーサイドで起こる出来事が面白いです。


●KAPPA QUEST
猛と雪子の大冒険です。虫よけの光景は嵐山家では定番なんですね。池での思惑の一致が面白かったです。


●サインはB!
おや、紺双葉が歩鳥を頼るようになりました。


●さよなら麺類
ちょっと切ない話でした。荒井和豊の台詞は歩鳥には楽しそうな顔していてもらいたいという思いが伝わってきます。変わってほしくないものほど姿を消し、変わってしまいます。合理性を追求し、ハードルがどんどん上がっていくことは本当にいいことなんだろうかと思うときがあります。

2016年12月12日月曜日

石黒正数 それでも町は廻っている 7巻

●ホワイトデビル
知らないことを教えられて理解しようとするとき、自分の中にある似ているだろう知識と結びつけて何とか理解しようとします。
歩鳥の野球のルールを自分なりに解釈している脳内の様子が面白かったです。
野球にまったく興味がなく、学校から応援に狩り出されていやいや観戦している者、対戦相手が父親の母校でいわゆる代理戦争で観戦に熱が入っている者、チームの監督になりきって采配を批判しながら観戦する者。
野球を観戦するというだけでもいくつものドラマが生まれています。
真田広章が野球を熱心に観戦しているのを見て、野球が好きなんだと思ったタッツン。
歩鳥の奇想天外な新しい野球をバカにしたら、真田は歩鳥の肩を持ち、プロ野球の観戦に誘ったら、野球に興味がないと言われ、歩鳥のように斬新な野球ルールを提案したら、完全に否定され、真田に対して何を頑張ってみても裏目にしか出ないタッツンに笑いました。


●秋まつり
歩鳥が楽しそうにしているのを見ているだけでこちらまで楽しくなります。


●コンタクト
御神体にこんな機能が備わっていたら、面白名と思います。


●ガッカリなカード
歩鳥はこの手のゲームは得意そうに思えたのにな。やはり歩鳥は探偵になるしかないのかもしれません。


●時は待ってくれない
歩鳥の弁当事件が面白かったです。ショックで真田が食欲をなくし、タッツンが真田に渡せなかったお弁当はたまたまいた浅井という男の子にあげてしまい、タッツンはまたも真田以外の男の子の高感度を上げてしまいました。


●テリトリー
ユキコが出てくるのが楽しみです。どう笑わせてくれるのか期待が膨れます。


●それ町サスペンス劇場2乙女を襲う氷のやいば!?凶器は雪山に消えた
門石先生って、歩鳥が鼻息荒く読み耽っていたミステリー小説の作者じゃなかったっけ。門石先生が亀井堂静だと歩鳥が知るとどんなにびっくりするだろう。リフトで登っている最中にストックを落としてしまった歩鳥。ストックを落としたところまで真田に男だからおんぶしてほしいと頼みこむと、
「こんなところでイチャつくな」
と静、
「そうよボンクラ」
とタッツン。
今までのいろんなことも込めて言った一言のように感じ笑ってしまいました。


●血のバレンタイン
歩鳥が渡せなかったチョコレートを何げに奪い合おうとする真田勇司、菊池貴明、荒井和豊の三人芝居が面白かったです。
紺双葉の提案と歩鳥のオチも面白かったです。

2016年12月10日土曜日

石黒正数 それでも町は廻っている 6巻

主人公の歩鳥は成長を見てみたいという思いと、いつまでもこのまま予測不能の女の子でいてほしいという思いを両方持った魅力的な人物です。

兄妹や友達、商店街の人たちとともに笑わせ続けてほしいです。


●フリーマーケットで歩鳥とキス
商店街のおじいちゃんおばあちゃんに人気があり、同世代には真田広章にしか人気がない歩鳥と、同世代には大人気だけど、意中の人には振り向いてもらえないタッツン、自分が好きな子に夢中で周りなんて見えない真田広章。
三人のうちで一番誰が楽しい一日を送れているのでしょう。
急に電話で呼び出しをくらい、フリマを手伝わされることになった真田。
妄想する癖を直さないといけません。


●ざっくばらん
真田の一言が気になるタッツン。可哀相な立ち位置です。


●逢えない二人
針原兄妹は本当によく似ていました。病人なのに見舞いにやってきた伊勢崎エリに気を使う猛。エビちゃんのことをまったく意識していないと思っていたのに、そうでもないんだとわかりました。


●タイムカプセル
ちょっと泣かせる展開なのか? と思わせつつ、さすがの歩鳥でした。


●ヒーローショー
ユキコが面白いです。この年齢ですでに見る視点が違います。まっすぐな眼差しで質問の答えを待つのが面白かったです


●歩鳥初体験
本人が意図しないところで商店街の人たちに優しさを配っていたんですね。


●紺先輩の静かな怒り
商店街では歩鳥の友達も親切にされていることがわかりました。


●まぼろしの少年
歩鳥の推理が少しズレてしまいました。だけど、どこへ行っても歩鳥は楽しそうです。

2016年12月8日木曜日

石黒正数 それでも町は廻っている 5巻

ミステリー色が強く余韻を残すストーリーが多くて、絵の雰囲気もどこかしら緊張感を受けます。
それでも歩鳥をはじめとする主要人物や妹のユキコには笑わせてもらいました。

神社の神主八代辰巳が、
「もう神様なんて信じねえ」
とぼそっと言ったのには笑いました。

嵐山家の猛(たける)はまともなのに、雪子(ユキコ)は歩鳥同様自由に生きているのが面白いです。


●夢現小説
どれが夢でどれが現実だったんだろう。亀井堂静の裏の家業を歩鳥が知るという話は描いてくれるのかな。


●嵐山家、家事になる
喫茶「シーサイド」で常連が集まり、しゃべる様子が久しぶりに戻ってきました。真田勇司、菊池貴明、荒井和豊の三人組の何気ない会話が楽しいです。


●大嵐の夜に
台風でひとり心細いだろうと、嵐山家に一泊することになった紺双葉。寝相の悪い歩鳥に蹴られ、蹴飛ばされ、1人っ子なのでびっくりしただろうし、無防備だったので相当痛かっただろうなと思います。
ジェセフィーヌはジョセフィーヌよりポンちゃんと呼ばれたほうが音のあたりがいいのでしょうか。

2016年12月6日火曜日

石黒正数 それでも町は廻っている 4巻

歩鳥の推理が冴える?4巻でした。

亀井堂静(かめいどうしずか)の魅力を削ぐプレゼンテーションの末、一枚の絵をしぶしぶ購入させられた歩鳥。なんでもそれは埋蔵金を示すっぽい絵図でそれを頼りに、歩鳥、弟の猛、タッツン(辰野俊子)、紺双葉、針原春江で、G県鬼保根村に向かうことになったのでした。
おそらく商店街の温泉旅行と同じく、G県鬼保根村に行くことを渋っただろうタッツン。見事に歩鳥の策略にはめられたのでしょう、集合場所にやってきて猛を見たときのタッツンの残念そうな顔。歩鳥ごときにやられた怒りと自分の情けなさで一杯だったろうなと思います。
なんとかタッツンは真田広章といい感じになってほしいけど…。
上手くはいきそうにないですね。
ユンボ。タッツンと猛と同様の経験があります。針原さんがわからなそうな顔をしている猛に親切に教えてあげるのを聞いて、頬を赤らめているタッツンがなんかかわいらしいです。

宿泊先さえも嘘をついていた歩鳥。怒りにふるえるタッツンと口をとがらせて鳴らない口笛を吹き悪びれる様子もない歩鳥が、一度や二度ではないことを物語っているみたいです。


●メイド探偵大活躍
初めて舞い上がる歩鳥を見ることができます。警察官の松田旬作の振り回されっぷりが面白かったです。

●実に奇妙なカード
クラスメイトの伊勢崎エリに猛が振り回されます。学校にいるときと二人で会っているときの温度の差が小学生だったのかな。猛は学校では知らないフリをするべきだったのかな。

2016年12月4日日曜日

石黒正数 それでも町は廻っている 3巻

歩鳥は普通の人とは優先する順番が違っていて、そのズレが面白くてたまりません。
歩鳥の面白さに磨きがかかっているのと、タッツン(辰野俊子)の真田に対する想いの報われなさが可哀想すぎて面白いです。

タッツンの誕生日会での紺先輩の伏せておきたかったこと、学園祭でのタッツンの妄想爆発、シーサイドを一人で任された歩鳥の奇跡、サンタ大作戦の姉歩鳥とは違う妹の夢を壊さずきちんと落としどころを作った弟猛、なんちゃって探偵で歩鳥に振舞わされるタッツン、椅子を巡る歩鳥に負けたくない数学教師森秋夏彦の挑戦、幼い頃の無邪気な歩鳥が亀井堂静によってミステリーに興味を持ち始めた話、シーサイドの目玉商品の開発、シーサイドマスター兼メイドの磯端ウキの旦那と大いに楽しませてくれました。

2016年12月2日金曜日

石黒正数 それでも町は廻っている 2巻

ここは下町、丸子商店街!この、一見フツーの通りに存在するメイド喫茶「シーサイド」。女子高生探偵に憧れる天然少女・嵐山歩鳥とそつのなさで人生をこなす辰野俊子に重厚な服が何げに似合うババァが繰り広げるメイドカフェじゃない、メイド喫茶(自称)コメディー。死や風邪菌、温泉をも弄ぶ石黒ワールド、何が何でも第2巻発動!


チカラの抜け加減が面白いです。
メイド喫茶が舞台での話のはずなのに、メイドの話なんてちっとも出ていません。
プラス思考というか、失敗を悔やまない性格、突飛な行動をする嵐山歩鳥が面白いです。

商店街の寄り合いで行く温泉の顔ぶれで態度を180度変える真田広章と辰野俊子(タッツン)。
拒んでいるそれぞれに意図してかどうかはわからないけど、揺さぶりをかける広章の父勇司と歩鳥の加減が面白いです。
温泉地でのタッツンに対しての気の利かなさ、広章の揺れる恋心と葛藤も面白かったです。

事故に巻き込まれてしまった歩鳥。迎えにきた天使や最後の審判が西洋式だなって思っていると、日本式の手続きが日本っぽすぎて面白かったです。

初めて日をまたぐ経験をする歩鳥の弟猛(たける)。
昼間とは違った町の様子に興奮するところがなんだか懐かしく感じました。
絶妙な場所に登場する警察官松田旬作。歩鳥の性格を知り尽くしているのがおかしかったです。
ツメが甘い広章、ちょっとかわいらしい紺双葉(こんふたば)、出てくるキャラが個性的で面白いです。
クスクス笑いがこみ上げてきます。
醸し出す雰囲気が好きな作品です。