描かれている物語の前に起こった、きっかけになった出来事を想像して読むのが楽しい作品です。
魔法が使える家族のお話です。
空想と現実がうまく混ざり合っています。
想像する描かれていない前置きは、勝手にあれこれ思い描いているので、登場する人物の特徴が作者の意図とは異なるものを作り上げているかもしれません。
それはそれで気がついたときに修正しながら、最初から読み返せる楽しみが増えるのでいいかな?と思います。
●ちいさな乱
漆間乱(うるまらん)は小学四年生の女の子。
大きな魔力を秘めた魔法使い。…のはずだけど、幼いからなのか、まだ自在にコントロールできません。
意識があるときはたいしたことはできず、せいぜい物を少しどうにかできる程度です。
ただ、意識がないとき、眠っているときなどは力が多少暴走し、自分を含め、身の回りのあらゆるものを浮遊させたりできます(乱本人はこのことには気づいていません)。
乱は魔法を自在に使えるようになりたくてあらゆる試みをしてみたんだと思います。
そして、魔法がある程度自在に使える道具を探し、発見します。
それは靴でした。
それも乱の足には合わないとても大きなサイズのスニーカーでした。
履いてみると、乱は自分の思うとおりに魔法が使えようになったんだろうと思います。
まず魔法を使ってやることは姿を変えること。
「乱はまだ子供だから」
と、事あるごとに納得させるために言われていて、反発心を抱いていたんだと思います。
興奮して嬉しくなって、兄の陣(ぜん)や父親の全(ぜん)に大きくなった姿を披露したはずです。
そして、二度とするんじゃないと思いきり叱られたんじゃないかと思います。
こんな感じのやりとりがあって、陣は乱が懲りずに大晦日の大掃除に魔法を使うことを見越して靴を隠したんじゃないかなあと思いました。
靴を探す乱。
乱の目の届かないところに隠そうとする陣。
何かを察知しこたつを動かし、天板の上に椅子を置いて登ろうとするコマがかわいらしかったです。
●静帰る
妹思いの陣。
母親の静(しずか)がいないことで乱が寂しがっているのは分かっていて、時々突然やって来て半日ほどの滞在で帰っていってしまう静に、そんなことをしたら余計に乱の寂しさが募り、かわいそうだからやめてくれとでも言ったことがあるんだと思います。
乱をかばうために静にやたら冷たい態度で接する陣を全も静も分かっていて、子供たちには見せないけど、どうにかしたい、と歯がゆい気持ちでいるんだと思います。
乱に魔法を教える静。
乱の魔力は強そうです。
静の手鏡を割ってしまった陣への罰が面白かったです。
●陣出陣
ある程度思い通りに魔法が使えるという自信を持った乱の行動。
何度も失敗して、陣が探しに行き、全が心配するということがあったんじゃないでしょうか。
今度はうまく行くと靴を携えて出発しまが、時間が悪かったようです。
子供は起きていられません。
●プカプカ実験室
陸路で静の元へ行くのは諦め、空から行こうとしたのでしょう。
小学生の知恵をフル回転させて、飛ぼうとしたのですが、ことごとく失敗して傷だらけになってしまいます。
薬局で傷薬を大量に買い込む陣。
乱の見えるところに大きな字で家訓を書く全。
陣も全もまさか乱が理科の授業の実験を応用するなんて思ってもみなかっただろうな。
●最上階の王子
飛ぶことにばかり気をとられて、風に流され、降りることさえできないくらい上空を漂う乱。
あまりに無邪気な乱。そりゃそうです。小学4年生なんですから。
●扉
「あの村には力の強い魔女たちが交代で務める大事な役目がある。ママが長い時間抜けることはできないんだよ」
全が乱に言ったセリフです。
静の大事な役目が描かれています。
モテモテの陣、動揺する乱、乱に魔法を教えるという、全があわてて逃げようとする先生とは?
語られていないことがたくさんあり、そこが想像をふくらませます。
入江亜季 乱と灰色の世界 1巻
(アマゾンのサイトに移動します)
0 件のコメント:
コメントを投稿