2024年12月30日月曜日

谷口 ジロー 千年の翼、百年の夢

ある男性がルーブル美術館で体験した不思議な出来事について描かれた作品です。

夢と現の間に入り込み奇妙な体験をします。奇妙な体験は強い意識の中にある記憶でルーブル美術館の美術品の作家と出会ったり、戦争中の奮闘や世を去った最愛の妻に再会したりします。すべては男性の願望から起こった夢なのか、身体で感じられる体験として残る出来事なのかはわかりません。

ルーブル美術館という迷宮で画家と美術品を見にやって来たであろう有名人と言葉を交わし歴史の場面を目撃するという体験は出来るなら経験してみたいと思いました。日本にある美術品も鑑賞した有名な誰かがどう感じたのかと文章にしたものがあれば読んでみたいです。




男性はスペインのバルセロナで開催された国際マンガフェスティバルのイベントを終えせっかくだから皆とは別行動をとりパリに5日間ほど滞在し東京へ帰る予定でした。

しかし、疲労がたまっていたのか体調を崩しホテルで薬を飲みベッドで眠りにつきます。

翌朝、目覚めると少し気分は楽になっていたので朝食を摂りにホテルを出ます。カフェで朝食を摂りパリの街をブラブラ歩きます。

男性は5日間パリの美術館巡りをする予定でした。ルーブル美術館を訪れたことがないと思いパリ滞在中はルーブル美術館に行ってみようと決めます。

館内に入ると展示物を見て回るのにも苦労するほど人で混雑しています。人のいないところ探し移動していると風邪がぶり返したのかめまいに襲われしゃがみこみ意識を失ってしまいます。



意識が戻るとたくさんいた人達の姿はなく、さっきまでとは空気の臭いが違う気がします。男性は自分はどうかしてしまったのか、これは夢かとつぶやいていると女性がやって来ていいえこれは夢ではありませんと言います。

女性は夢に似た状態にあると言い、あなたの夢想の中の時空ある夢よりもずっと現実によりそった次元ですと説明し、私たちはルーブル宮に宿るものでルーブルの守り人だと言います。

男性は信じられないと戸惑います。

女性は男性に背を向け歩き出します。

男性は待って下さいどこへ行くのですか? と訊きます。

女性はあなたたちがいちばん見たいもの、モナ・リザやミロのヴィーナスでしょうと言い男性を案内します。そして空調設備に案内します。

男性はなぜ僕はと言います。

女性はルーブル宮は夢の迷宮、夢と現の間にあります、このルーブル宮を訪れるたび、あなたは夢の続きを見ることでしょうと言います。

男性は歩き続ける女性にあなたはいったい誰ですか? と訊きます。

女性はニケ、サモトラケのニケと応えます。

男性は現実に引き戻され、サモトラケのニケの彫刻の前に立っています。



2日目のルーブル。

男性は昨日の奇妙な体験を振り返ります。

ジャン=バティスト・カミーユ・コローの絵画「モルトフォンテーヌの思い出」を見ます。再び夢と現の間に入りこみます。

男性は画家浅井忠と話します。

ニケがやって来て、カミーユ・コロー本人を見かけます。

男性は徳富蘆花について考えます。



男性はパリを離れオーヴェル・シュル・オワーズに向かいます。

オーヴェルの教会を訪れ教会の裏から路地を抜け坂道を上がっていくと再び夢と現の間に入りこみます。

男性は画家のフィンセント・ファン・ゴッホに会って話しをします。

現実に戻るとドービニーの邸宅美術館の前にやって来ています。

翌日男性はルーブル美術館に展示しているドービニー絵画を見ます。ニケがやって来たのでオーヴェル・シュル・オワーズでの体験はあなただったのかと訊きます。

ニケはさあどうでしょうと応え、ルーブル宮は魂が集う場所であなたの待ち人もここへ来ると言います。



火曜日男性はルーブル美術館は休館日だったのでオルセーに行ってみようかなと考えているとニケが自分を見ていることに気がつきます。

ニケに連れられて来たのは1939年のパリです。

第二次世界大戦中でドイツ軍から美術品を守るため梱包、搬送作業に追われている様子を見ます。

男性はその中で世界で一番有名な油彩モナ・リザの搬送、ジェリコーのメデュース号の筏の搬送の様子をニケに説明されながら当時の美術品を守ろうと奮闘する様子を見ます。そして、ジョジャールという人物の決断によってルーブル美術館の美術品が守られたことを知ります。



5日目男性はルーブル美術館に行くと夢と現の間に入り林芙美子に会い言葉を交わします。

誰もいないルーブル美術館の館内を歩くとどこからか音楽が聴こえてきて音のありかを探していると人が立っています。男性の失った妻です。男性は二度と会えない最愛の妻に会えて涙します。

妻は心配しないで私のこと、大丈夫だからもう苦しくないから、あなたにはとても感謝しているわと言います。

男性は会えて良かったと妻を抱きしめます。

妻の姿がすこしずつ消えていきます。妻は生きてあなた強く明るいほうへと言い消えてしまいます。

男性はニケが現れ話します。

ニケは男性に喜びを感じてもらいたかった、光を生きるということ生きてここにあるということ、ささやかなほんの小さなものにも“生”の時があり物語がある、ものに宿る魂への鎮魂、あなたはそれらの間を見ることができたと言います。




男性のような体験をしてみたいという願望があるので面白い作品でした。

男性とニケにどういう関係があったのかはわからず、なぜニケが男性の前に現れたのか不思議です。



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