茂次が人生の目的を見つけます。
りつに会って話して今後を考えるきっかけになります。りつと二人で生きていくことを想像するようになり先を考え、りつに大留をやってもらいと思い自分は棟梁として一人前になると決意します。
たまたまりつが連れて来た子供達ともいい関係が作られて、家というものをどういうかたちにするかぼんやりと出来上がりつつあります。
留造から継いだ大留が違った色を出して進んでいくのだろうなと思わせる締めくくりでした。
茂次の意地と人情を描いた面白い作品でした。
りつは自分の部屋で横になり茂次との会話を思い出します。茂次の言った通りそれに似たようなことを言うつもりだったと思い出します。そんなことよりも茂次が些細な会話を憶えていたことで、小さい頃のことを憶えてくれていた事や自分を心配してくれたことなどいろいろ気遣ってくれていたと感じます。茂次がもしかしたらゆうこよりも自分のことのほうが好きなのかもと淡い期待を膨らませたところで現実に戻りそんなことはありえないという結論に達します。
秋の気配がやって来た頃茂次たち大留工務店は忙しく仕事に追われています。そんな時大と職人は親父の具合が悪いため田舎に帰るから休むと言ったクロを見かけます。
クロは嘘をついていました。大たちから逃げ出し大留から姿を消します。
大は茂次に報告します。
茂次は仕方がないと言います。
2週間が過ぎ「三の町」の再普請がほぼ仕上がります。
りつは三の町が仕上がったと聞いて茂次が少しは休めるかなと期待します。
秋が過ぎ冬が来て暮れの事を考える時期になります。
材木問屋の和泉社長が家に来て茂次にビンゴ大会で当たった「温泉・家族全員ご招待」券を使ってくれと持ってきます。
茂次はありがたく頂戴し従業員に五日間の休みをやり、旅行にはりつと子供達と見習い達に行かせようとします。
りつは茂次に温泉に行かないのかと訊きます。
茂次は子供達を任せていいなら家にいるよと言います。
子供達の一番下のあっちゃんが熱を出してしまいます。
りつはあっちゃんの世話をするため温泉は行けないと言います。
茂次はりつが行けないなら温泉はなしだなと言います。
翌朝、子供達は事情を聞かされると楽しみにしていたので納得せず茂次とりつが留守番すればいいと言います。
キクはりつが行かないなら僕も行くのをやめようかなと言います。
りつはキクに一番のお兄ちゃんなんだからみんなの事を頼みたいのだと言います。
キクは渋々分かったよと言います。
茂次はりつのキクへの態度に違和感を感じます。
あっちゃんを残して子供達と見習い職人で温泉に出掛けます。
茂次は一行を見送ってからりつに久しぶりに羽を伸ばせるから買い物か映画でも行ってきたらどうかと言います。
りつは茂次の言葉を相手にせず、茂次こそずっと仕事に追われていたんだから気晴らしにどこか行ってきたらどうですと言います。
茂次は休みの間家で食っちゃ寝だと言います。
りつはすこし口角を上げてうれしそうに太っちゃいますよと言います。
茂次は言った通り部屋で本を読みうたた寝をして過ごします。
りつはいつもと同じように家事をこなします。
茂次は部屋から出てきて洗濯物を干しているりつに話しかけます。
りつは起きたのなら掃除機をかけようと思うと言います。
茂次はそんなことはいいとりつを気遣おうとします。コーヒーを飲むか? と言います。
りつは淹れますと言います。
茂次はいやいや俺が淹れるからと台所に向かいます。
りつはついて行きます。
りつは茂次がコーヒーを淹れるのを待っているのがどこか落ち着かない様子で茂次のお昼ご飯をと言って立ち上がろうとします。
茂次は後でいい座ってろと言います。
りつは前に話したキクのことを話そうとします。でも思い直してなんでもないと話すのをやめます。
りつが頬杖をついて待っていると、茂次はお前はいつも眉間に皺を寄せているなと言います。
りつはえっ と言いムスッとします。
茂次は怒らせてしまったと話題を変え福祉施設の話をします。
福祉施設の話からゆうこの話になります。
茂次はりつがゆうこに添削をしてもらっていたこと驚きを感じます。
茂次が食べた食器を片付けながらりつは仏頂面と言われたのを気にして鏡に向かって笑顔の練習をします。納得いかない様子です。
りつは買い物に出掛けようとします。でもやめて茂次にあるもので何か作ろうと思いますと言います。
茂次はそうしろ、お前も一緒にゴロゴロ食っちゃ寝しようと言います。
茂次とりつとあっちゃんでゴロゴロして過ごし、夜ご飯は即席麵で済ませます。
あっという間に一日が終わり翌日午後子供達が帰ってきます。
五日の休みの最終日の夜。
りつは布団に入り茂次のことを考えています。障子の外に人の気配を感じます。部屋にキクがやって来ます。
キクは障子を開け部屋に入ってきます。
りつは寝たフリをしてキクの様子を伺います。
キクは布団の側まで来て、りつをお母ちゃんと呼びます。お母ちゃんおやすみと言って部屋を出ていきます。
りつはキクが自分をどう見ているか知ります。キクのことを誤解していた自分を恥じて泣きます。
りつは茂次の部屋に行きます。障子越しに話し始めます。
茂次はりつが何を言おうとしているのか分からず明日の朝に話そうと言います。
りつはわかりましたと部屋に戻っていきます。
茂次は目覚めると障子の隙間にりつからの手紙を見つけます。手紙を読んでりつの部屋に行きます。布団は畳まれていて荷物がなくなっています。台所へ行くと朝食が準備されています。携帯にかけても電源を切られています。子供達が起きてきたので朝食を食卓に運ぶように言い、りつを探しに家を出ます。
りつの置手紙にはおひまをもらいますと書かれています。
りつはバスに乗ります。
茂次はりつがバス通りに向かったはずだと走ります。大から電話がかかります。
大はクロに会ったと言います。
茂次はりつを探しながら大の話を聞きます。
りつは母親の墓に来ています。掃除して手を合わせます。お腹が空いたのでベンチに座りおにぎりを食べようとします。
りつの目の前に茂次が現れます。りつは驚きます。
茂次はりつに前にお前の母ちゃんの墓がどこにあるか聞いといてよかったぜと言います。
茂次は大からの電話の内容を話し始めます。これからいろいろ経験したらまた違うふうに変わるんじゃないかと言います。そしてお前がいないと困ると言います。
りつはそれなら人手を雇えばいいと言います。
茂次はりつの言葉には答えず自分の考えを話します。りつに「大留」をやってもらいたい、結婚してくれないかといいます。
りつは思いもよらない茂次の言葉に固まります。すこししてゆっくり立ち上がります。手にしていたおにぎりを落としたことで我に返ります。茂次に少し前からいつ言い出そうか迷っていたんだ、お前は嫌か? と訊かれ大粒の涙を流します。うれしい、だけど、と首を横に振ります。だって利息があるじゃないと言います。
茂次は利息が何のことかわかりません。
りつはゆうこのことだと言います。
りつの説明を聞き茂次はそんな話を鵜吞みにしたのかと、ちょっと歩くぞと言いりつの荷物を持って歩き出します。
りつは茂次の後ろをついて行きます。
茂次は歩きながら利息についてゆうこについて話します。りつがゆうこを好きなんでしょと言うと茂次は好きだ、けどお前に対するものとは違うと言います。りつがそんなの、と茂次から視線を逸らすと茂次はええい面倒くせえ! 分かったもういいっ、後は好きにしろっ! と言ってりつの荷物を置いて歩いて行ってしまいます。
りつは腕を組んだまま動かず茂次の後ろ姿を見ています。組んだ腕を後ろ手に組み直し茂次の姿が見えなくなると、待って、と茂次の後を追いかけます。
年末近くになります。
茂次はゆうこと喫茶店で会います。
ゆうこは大留の看板と暖簾を茂次に手渡します。りつのお話ノートを誉めます。
茂次は帰宅するとサクラにばったり会います。いい機会だからと思いサクラにここはお前の家でずっとうちの子だとそして俺とりつがいつでもここにいると言います。
サクラはうれしかったようで、でも素直になれなくて、奇妙な言い回しで感謝の気持ちを伝えます。
大晦日。
茂次は喪中にもかかわらず新年を祝うことにします。
両親の一周忌を終えいくつか季節が過ぎた頃茂次とりつは結婚式を挙げます。
子供達は大留の家から学校に通っています。祝いの宴は家で夜遅くまで行われます。
茂次は疲れて部屋の布団でうとうとしています。りつが隣で座っています。少しすると仏壇に行きおじぎをして両親の位牌に向かって、これからどうぞよろしくおねがいします、と手を合わせます。
終わりです。
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