若君と唯は戦国の世で生きていく決断します。
唯の若君と一緒ならどこでもいいという覚悟に、若君への思いの大きさを感じます。
戦国時代で生きていくなんて困難のほうが多いはずなのに。
何度も離れ離れになっていたから、最後はもう二度と会えないという終わりにならなくて、二人が結ばれるという結末は本当によかったなと思います。
若君は唯の両親に唯を自分の生きる時代永禄の世に連れて行きたいと申し出ます。
「この忠清 生涯 妻はひとりと決めております 何があろうと一命をかけて唯を守り抜くとお誓いいたす」
この言葉に唯の両親は、
「唯をよろしく お願いします」
と唯が戦国の世に生きていくことを認めます。
若君と唯が黒羽城から姿を消して二か月が過ぎています。
再び若君と唯は戦国の世に戻ってきます。
山中に到着します。
山を越えて緑合(ろくごう)に行かなくてはいけないこの場所に到着したのはどうしてだろうと思っていると、悪丸が現れます。
悪丸と会うために若君と唯は山中に到着したのでしょうか。
悪丸は黒羽城に残してきた若君の愛馬吹雪を取り返してきたのです。
悪丸は馬番の隙をついて吹雪を連れ出したと誇らしげに言います。
出発しようとしたら、馬泥棒の悪丸に追手がかかります。
若君と唯は戦国に戻って早々追手から全力疾走で逃げます。
若君と唯と悪丸の道中は一旦置いておいて、緑合の様子について描かれます。
阿湖姫は松丸家に戻らず成之を慕い、羽木家の者とともに緑合へ歩いて向かいます。
緑合に着くと、松丸家の状況が届きます。
阿湖姫は松丸家が織田に降り、羽木家同様領地から退去したとことを知ります。
一行が緑合に到着して十日後。
忠清が黒羽城で病のため急死したという知らせが入ります。
殿も羽木家家臣も若君の死を鼻で笑います。
皆が口をそろえて唯之助がうまくやったと言い、二人は近いうちに戻るだろうと確信し、家中にいっそう団結力が生まれます。
ひと月が過ぎます。
みな仲良く力を合わせて働いています。
阿湖姫は成之と顔を合わせることは増えるものの、なかなか二人きりで話す機会が作れない状況を寂しく思います。
でも、阿湖姫は成之のほうから話しかけてくれるのを待つことにします。
緑合に松丸義次がやってきます。
義次は織田方より阿湖姫の縁組の話があって、姫を連れ戻すために来たと言います。
殿と義次の間で話が進みます。
阿湖姫は何も言わない成之を見つめます。
成之は阿湖姫に、悪い話ではない、ここにいても光が見えない苦労ばかりの暮らしより、織田方に嫁いだほうが安らかに暮らしていけるでしょう、と義次の言うようにするようすすめます。
義次は阿湖姫に明日にでも発とうと言います。
その夜、阿湖姫は悲しみにくれます。
阿湖姫の頭の中に唯が出てきます。
唯ならどうするだろうと考え、意を決して成之の部屋を訪れます。
成之を呼び、
「私と共に 逃げて下さりませっ!!」
と大きな声で言います。
心より大切に思う人と、幸せに暮らしたいと思いを成之に伝えます。
阿湖姫の決意に成之は心を動かされ、父上と義次殿を説得する、共に生きていこうと約束します。
緑合は領地が小さく、住まいも足りておらず、皆肩を寄せ合って暮らしているといってもいいくらいで、誰がどこにいるかなどすぐわかってしまいます。
内緒話などできないくらい人であふれています。
殿にも義次にも成之と阿湖姫の会話は筒抜けです。
その他の人たちにも二人の会話は聞かれてしまい、すぐに緑合に住む人々全員が二人の関係を知ることになります。
殿も義次も成之と阿湖姫を祝福します。
成之と阿湖姫が結ばれ、あとは若君と唯が戻るのを待つばかりです。
若君と唯と悪丸の山越えは過酷でへとへとになりながら緑合へたどり着きます。
羽木家の人々は若君が無事に戻り歓喜しています。
殿と御月の叔父上様(御月晴永)と若君と唯と家老たちのやりとりが笑えます。
若君と唯の住まいが完成し婚礼の儀を行い初夜を迎えます。
現代では歴史の木村先生が唯の自宅を訪れます。
唯は結婚して外国に行ったということになっています。
木村先生は羽木家のその後のことで驚くべき発見があったので知らせに来たといいます。
速川家にとって何より知りたい唯のその後です。
木村先生は羽木家について話します。
羽木家のお殿様羽木忠高は名を御月忠永と改め、羽木家は生き延びたと言います。
忠高が御月忠永だとすると、その後を継いだ御月清永が忠清になるが、確証は取れていないと言います。
御月家の家系図が残っていて、それを見ると清永の正室は天野氏となっていて、尊と両親がおそらくこれが唯だろうと思い、唯が乱世を無事生き抜いたのだと知ります。
戦国の世に戻ります。
藤尾が唯に身の回りの世話をする渡瀬を紹介します。
渡瀬は顔は笑っているのになぜか怖い。
そんな人です。
唯は渡瀬と上手くやっていけるのでしょうか、楽しみなところです。
唯は450年という時を超えて、出会うはずのない人と出会い、結ばれるはずのない人と結ばれたことを迷い、許されることなのだろうか、と立ち止まって考えてみます。
でも、ここで生きることを自分で決めたのだから、できることを精一杯やって生きていこうと覚悟するところで終わります。
番外編
其之一 天野の兵法
天野家と吉乃の二人の息子が連携して、なし崩し的に吉乃が信近と一緒になることを了承させるという作戦を行う話です。
男衆5人の思いが一致して、協力しあって成ったことが面白いです。
吉乃は初めあたりから天野信近の心に気づいていたから、5人の仲の良さに決意したのかもしれません
其之二
成之の心の変化が描かれています。
大将としての采配と度胸、優しさと大きな責任を背負っている若君を比較してもおよそ肩を並べることができないと感じ、臣下として支え、兄として弱音を吐ける場所になるような存在になろうと心を変える成之がかっこいいです。
若君と唯は成之だけではなく羽木家の多くの人々の心を変えたんだろうなと思える話です。
其之三 ひどく腹を立てている若君
唯と初めて出会った場面の少し前が描かれています。
1巻で若君が寝そべっていたのは理由があったんだと、唯と出会って戦や奪い合いや殺し合いを避けるということがより明確になったんだなと思う話です。
若君は毒キノコをしいたけだといって食べようとした小僧が唯だったと気づいたら、どんな顔をするんだろう。
どこかで唯が若君に毒キノコの話をしてほしいなと思います。
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●関連リンク
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