2019年4月16日火曜日

森本梢子 アシガール 11巻

どうやって唯がもう一度戦国の世に行くのか、については尊がやってのけるというのは想像出来ました。

でも、どうやって行くのかわかりませんでした。

まさか尊が未来の尊に託すとは驚きです。

若君を救出できて、現代で二人で過ごして、唯の思いも叶い、面白かったです。

二人で戦国の世に戻って生きていく、どんなことが起こるんでしょうね、続きが楽しみです。




唯が現代に戻ってきて四か月になろうとしています。

すこし痩せて、髪が伸びています。

唯は若君に触れられた髪を切りたくないようです。



唯が現代に戻ってきた夜、家族は戦国の世での様子を聞き、両親はとにかく唯が現代に戻って来られたことに安堵します。

尊は若君を守れなかったことで唯が別人のようになってしまって、見てるのも辛いので、もう一度戦国の世に行けるものなら行かせてあげたい、しかし、それをすれば両親がまた心配するし、もしかすると今度こそ会えなくなるかもしれないと思い、家族と若君と羽木家の人々とすべてが幸せになる方法はないものかと考えています。



学校で唯は歴史の木村先生に呼び止められます。

羽木家についてまたまた新発見があったというのです。

唯が見せてもらったのは羽木忠高(殿)から野上元丞(野上衆の棟梁)へ宛てた礼状です。

木村先生が推測すると羽木家は城と名をなくし、新しい地で生き延びたらしいというのです。

唯は黒羽城の人々は何とか生き残れたことを知ります。

それともうひとつ、木村先生は大手山の平生寺で羽木忠清(若君)の墓が見つかったというのです。

忠清は永禄四年に死んだことは間違いないようだと言います。

唯は若君と別れてすこし後に、死んでしまった事実を知っても必死に涙をこらえます。



その夜唯は家族に、明日大手山の平生寺に行って、墓が若君のものか確かめてくると言います。

両親は落ち着いて話す唯に恐怖します。

唯を心配して尊が一緒について行きます。



翌日、平生寺に着くと尊は寺の住職らしき人物に、最近見つかったという墓について聞いてみます。

「ああ、羽木忠清の墓ですね」

と案内してくれます。

住職は石塔に案内します。

しかし、その墓は忠清の墓というわけではなく、忠清の死から四十年以上後につくられたもので、骨はないと言います。

唯は、

「それじゃっ 誰のお墓かわからないでしょ!!」

と若君である可能性を否定しようとします。

住職は、

「いえ つい最近 この寺を建てた奇念上人の書付が出て来たんです」

と言います。

唯は奇念の名が出て、この墓が若君のものであると納得するしかなくなり、四か月間ずっとこらえていた涙が一気にこみ上げてきます。

尊は奇念が残したという書付を見せてもらいます。

書付には忠清は永禄四年の二月に黒羽城にてとあります。

若君は唯と別れてから三ヶ月、まだ何かがあったと考え、尊はピンッと閃きます。



バスでの帰り道。

唯は泣き尽くして瞼が腫れあがっています。

尊は書付をみたことで閃いたアイデアについて考え込んでいます。

一人黙々と一点見つめで思考する尊は、視線を感じて我に返ります。

唯が何か考えごとをしている尊をじっとりねっとり見つめています。

「尊 どしたー? 何か思いついてエキサイトしてる?」

ものすごく期待しているような様子では唯は尊に尋ねます。

尊は、

「いや 別に… やっぱ 少し… 疲れたかも」

と気のない返事をします。

普段の唯ならここで尊に何か言いそうなのに無言です。

唯は無言で尊を見つめます。

尊はなにも言わない唯がいつもの感じと違うので怖いようです。

尊は閃いたアイデアがうまくいくかどうか全く自信がないので、唯に何も言わないで一人でアイデアを温めます。




戦国の世の若君は捕らえられ、織田家武将相賀一成の与りとなり、織田方の先鋒として西美濃の加地城攻めを命じられています。

戦での能力の高さを評価され、相賀一成の娘婿として迎えられようとしています。




尊は研究室で閃いたアイデアについて考えます。

尊の思いついたアイデアとは、未来の自分に託すというものです。

未来の自分に新しいタイムマシンに盛り込む機能のリストをノートに書き出します。

○ひと晩で往復できるようにする

○2人同時に移動可能

○時空への影響を最小限にし、亀裂を起きにくくする

○到着場所を設定可に

○省エネ性能アップにより、燃料の消費を抑える

これらの機能を備えた起動スイッチを未来の尊が現代の尊の研究室に本日午前3時14分に送る、とノートに記します。



尊の目の前に起動スイッチが現れます。



尊は急いで唯を起こしにいきます。

真夜中に尊の研究所に家族が集まります。

尊は両親に説明します。

両親は起動スイッチが使えるとして、今戦国の世に行って大丈夫なのか、と尊と言い合いになります。

隣から向坂さんがやって来ます。真夜中なのに起きていたのか、早寝早起きなのかはわかりません。

向坂さんは唯の両親にとって悪いようにはならない、と言います。

唯はもう一度若君の元へ行くことができるとわかり、うれしさで涙を流します。

唯は若君とどうしても離れたくなかったこと、どんな怖いことになっても一緒にいたかったこと、現代に戻ってもう一度若君を助けられる方法があるとするなら、それは尊に頼るしかないということ、でも若君は別れ際に、尊に無理を言ってはならぬと言ったのでずっと何も言わず我慢していたことを告白します。

そして、唯はもう一度機会を手にすることができて尊に感謝します。

気合を入れて、いつもの唯に戻ります。




羽木忠高は緑合(ろくごう)という土地に移る決断をします。

家老の天野信茂は若君を人質に取られ、先祖が築いた土地を捨て緑合に移るというので、気落ちしもう何も身が入らない状態です。




唯は自分でハサミで前髪を適当に切り、持って帰ってきた甲冑を身につけ、もう一度若君に会える喜びを噛み締め、戦国の世へ向かいます。

起動スイッチで到着したのは山の中で、どこだかわからないところです。

唯の後ろから、

「誰じゃ!」

と声をかけられます。

唯にとって聞き覚えのある声です。

唯は、

「おふくろ様!?」

と言うと、おふくろ様が現れたので驚きます。

皆も唯が無事であったことを喜びます。

気落ちしていた天野信茂も唯の姿を見て完全復活です。

唯は状況を聞き、若君が別の女と婚礼させられそうだと知ると急いで若君の救出に向かいます。



黒羽城に着くと、門は固く守られています。

場内に入るのは難しそうです。

唯は強行突破しかないと動き出そうとしたら、のど元にチョップを食らいます。

覚えのある痛みです。

唯はあやめさんと再会します。

あやめさんは唯がこれから何をするかわかるらしく、力になってくれます。



あやめさんと場内に侵入し、唯は若君と再会します。

若君は唯の登場に驚きます。

あやめさんと唯は舞を隠れ蓑にして若君を城門まで連れ出します。



若君は再び唯に会えて嬉しかったと言います。

しかし、若君は自分は逃げるわけにはいかないと唯一人で逃げるように言います。

唯は起動スイッチが改良されたこと、羽木家の人々は皆緑合に向かったので大丈夫であることを説明します。

追手がやって来ます。

唯は、

「早く!! 私につかまって」

と若君に言います。

若君は唯を抱きかかえ、追ってきた相賀一成に、

「相賀殿 妻が迎えに参ったゆえ 忠清は月に行かねばならぬ 志津姫すまぬ ご容赦下され」

と言い残し、唯とともに追手の目の前から姿を消します。




尊の研究室では、尊と両親が目の前に唯と若君が現れ、上手くいって二人が揃って帰ってきたことに感動して泣いています。

唯は見事若君を連れて戻ってきます。

家に戻ります。

唯にとっては若君が自分の家にいて家族と普通に話す光景は初めてのことです。

唯は若君の姿を見つめています。

湯上がりの若君にテンションが上がり、再会出来た喜びを噛み締めています。



朝、目が覚めると唯はすぐ飛び起きて昨夜の出来事を確認するため一階へ駆け下ります。

庭でジャージ姿の若君が朝の鍛錬をしているのを見て、夢ではないことを確認します。



唯は現代で若君と一緒だったらやりたいと思うことを実現させていきます。



夕食で、父親が若君の父であるお殿様に会ってみたいと言い出します。

すると、母親は自分は吉乃様に会って礼を言いたいという話なります。

尊は家族が起動スイッチがこれから何度でも使えると勘違いしていることに気づき、次が本当に最後になることを伝えます。

若君は黙って尊の話を聞いています。



尊は若君が現代で生きていくことを考え始めているように思えています。

両親も向坂さんもそのつもりでいろいろ調べています。

そんな中、唯は絶好調です。

唯は若君としてみたかったあれやこれを全部叶えようと若君を連れ回します。

尊が呆れるほど唯は舞い上がっています。



ある日、唯と若君は黒羽城蹟を訪れます。

木村先生とばったり出会います。

木村先生は羽木家のその後がわからないと言います。

若君はショックを受けます。

その夜、尊は台所へ行くと、若君の部屋から唯の声が聞こえ、二人が一緒にいるところを目撃します。

そっと、自分の部屋に戻ろうとすると、

「次の満月に二人で戦国に戻りましょう」

という唯の声が聞こえます。

唯は若君がどうするべきかずっと考えていたようです。

二人で戦国の世に戻るため、唯は現代で若君としたいことして、見せたいもの見、全てやり尽くしていたのです。

尊だけでなく母親も唯と若君の会話を聞いています。

若君は、

「唯 お前はまこと 大たわけじゃ」

と唯の覚悟をしっかりと受け止めます。

続きます。



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