大野ふみと木曳野暁の重なり合わない気持ちが面白いです。
木曳野暁(先生)は宮本書店でサイン会のイベントを行います。
サイン会は書店の店員の桂さんという女性が担当します。
桂さんは木曳野先生が大野ふみという若い女の子を連れて来たので警戒します。
桂さんが木曳野先生にふみが家族か親戚なのかと尋ねると先生は、
「ウチの家政婦です 怪しい者ではないのでご心配なく」
とふみの頭をコツンと小突いて紹介します。
桂さんは木曳野とふみの距離感が気になるようで、ふみに、
「いい? 小娘 家政婦か何か知らないけど 私と木曳野先生の仲をちょっとでも邪魔しようもんならただじゃおかないからね」
と敵意剥きだしで、警告します。
桂さんは木曳野先生の側に得体の知れない女がいることに焦りを感じているようです。
桂さんふみに見えるように木曳野先生に過剰なスキンシップを行います。
ふみは負けないという気はあるものの、場違いな空間で何をどうすればいいのかわからず、大人の輪から取り残されてしまいます。
ふみはサイン会の後の打ち上げにもついて行きます。
そこでもふみは木曳野が座る席から離され、会話にも入れず、疎外感を感じます。
ふみが席を外すと桂さんがついてきて、さらに落ち込むことを言われてしまいます。
ふみは木曳野のことを彼の口から聞きたかったのに、桂さんから聞かされて、くやしくて腹立たしくて、最後にはみじめな思いにさせられます。
ふみは木曳野から言われたひと言にも傷ついてしまい、抱いていた淡い気持ちがしぼんでいきます。
翌日、友達の相生君からは思うのをやめるのもありなのではと言われ、ふみはそういう考えもあるんだと今後について考えます。
帰宅すると、木曳野が台所でふみの帰りを待っています。
木曳野は吾郎から貰ったスイカを切りながら、ふみに昨夜の様子が気にかかると言います。
木曳野はふみに、自分は人の気持ちをあまり汲めないし、察しもよくない、ただふみのおでこにしたキスに関して軽率な行動だったと謝ります。
ふみは自分の思いと、木曳野が考えていることが食い違っていることに気がつきます。
木曳野が言ったことと、桂さんが言ったことはたまたま重なったように思えていただけで、同じことを指していないことに気がつきます。
木曳野はふみを家族だと言います。
家族だと言われたふみは、木曳野を好きだという気持ちは伝わりそうにないと悟り、この思いを忘れようとします。
数日が過ぎます。
ふみは夕食の買い物を済ませ帰宅すると、木曳野に、
「娘 悪いが今日は夕食はいらない 桂さんに呼びだされた」
と言われます。
ふみは木曳野への思いを忘れようとしているのに、今日のように木曳野が仕事だとしても女性と会うことにうまく折り合いがつけられません。
「…行って欲しくないです」
本音がこぼれます。
チャイムが鳴ります。
ふみは先生が戻ってきたのか、行くのをやめたのかと心が弾んで玄関に出ると、吾郎が立っています。
吾郎はお土産を持ってきた、暁(木曳野)はいる? とふみに尋ねます。
ふみは、
「先生は今出掛けてて……桂さんと」
と木曳野がいないことを告げると、折り合いがつかない気持ちがあふれ出て、涙となってこぼれます。
ふみはひとりで食事を済ませお風呂に入りそれでもまだ気持ちが沈んだままなので、小さい頃よくやっていた遊びを始めます。
遊びというのは押し入れにライトを持ち込み、ふすまを締め小さな空間でお菓子を食べ本読むというものです。
この遊びには自分で決めたルールがあって、押し入れにこもっている間に外からふすまが開いたら罰ゲームを行います。
罰ゲームとは自分の本当に気持ちを言うというものです。
ふみは小さい頃押し入れにこもって、父の帰りを待っていて、ふすまが開いたら、ひとりでさみしいと気持ちを言うということを決めていたのに、そうはならなかったことを思いだします。
ふすまが開くことなんてない、あるわけがないと思っていたら、ふすまが開きます。
目の前に木曳野が立っています。
ふみは決めた遊びのルールである本当の気持ちを木曳野に言います。
ふみは父親に対してさえ我慢していたのに木曳野にはどうしようもなくなってしまう本当の気持ちを泣きながら言います。
木曳野は戸惑います。
桂さんと話したこと、ふみをどう思っているかなどじっくり考えこみます。
自分にとってふみとその他の女性では何が違うのか考え続け、そのまま眠りに落ちたようで、机で朝を迎えます。
木曳野は朝食を準備する音が聞こえたので台所へ向かいます。
ふみは泣きはらして、まぶたが大変なことになっています。
先生は、
「お前はオレにどうして欲しい?」
と尋ねます。
ふみは、
「何もしてもらわなくても もう元気いっぱいなので大丈夫です」
と本音を胸にしまい込みます。
先生は、
「それじゃあ 俺の気が済まんのだが」
と言うと、
「じゃあ 励ましてください」
とふみは明るくふるまいます。
木曳野は何も言わず、ふみをそっと抱き寄せます。
ふみはどういうことなのかわからず、自問自答します。
どうして木曳野は抱き寄せるという行動をとったのでしょうか。
今後にどうつながっていくのか楽しみです。
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