大人の側からの視点が多く描かれていました。
これまでとは違う展開で感触が少し変わってきました。
宇仁田ゆみ うさぎドロップ 4巻
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大吉のりんへの接し方が大吉のじいさんであり、りんの父親である宗一に似ていて、りんがすんなりと大吉との生活に入れた理由のひとつが、りんを生んだ母親吉井正子が二人を離れたところから見てるのを描くことによってわかりました。
りんと大吉の一緒に暮らすまでの描写が少なかったのでこの場面を描いてくれて少し納得できました。
りんが成長するにつれて、大吉のりんに対する不安と心配は大きくなっていき、その心配症っぷりと、コウキが大吉に大人の男に感謝されてちょっと満足げなところがよかったです。
コウキは誰の言うことも聞かないのに、りんの言うこと(だぶん大吉の言うことも)だけは素直に聞くのだろう。
学童保育所でのエピソードを描いてほしかったなと感じました。
6歳女児と30独身男のほのぼの成長期です。
りんの小学校入学とりんを生んだ母親探しが描かれています。
自分の知らない場所に大吉に連れられていくと常に大吉の服なり手を握って安全を確保しようとするしぐさ、それを当たり前に振舞える大吉。
ユウキくんのママのいう通り何処からどう見ても親子です。
りんは大吉に気持ちをぶつけられるようになり、いろんな人に接することができるようになってきました。
はみがきの場面と198ページからのりんと大吉の会話がよかったです。
日々成長する子供の思いもよらない一言にハッとさせられるいい場面でした。
ある晴れた秋の日。河地大吉はじいさんの訃報を聞きます。
有休をとってかけつけてみるとそこに見知らぬ女の子がいました。
その女の子はじいさんの子だという。
女の子はりんといい、年齢は6歳。
孫の大吉からすると叔母にあたるりんは大吉を見るなり側を離れようとしませんでした。
葬式が終り、りんを誰が引き取るのかという擦り付け合うような話し合いがなされているのを側で聞いていた大吉はりんに、
「おれんち来るかァ?」
と声をかけ、りんはすぐさま応じ、30歳独身の大吉が6歳のりんの父親代わりになり二人の生活が始まります。
なぜかほおっておけなかった大吉と、大吉の声にすぐに応えたりん。なるべくしてなったような出会いです。
子育てに関することを何も知らない大吉が、日々成長していくりんを通じて今まで考えもしなかったことや、初めて体験する気持ちが描かれています。
大吉は6歳の子供が何を考えているのかを知ろうとし、抱えいる不安をどう取り除いて安心させてあげるか、わからないながらも、りんにとって頼りにできる存在であろうと頑張ります。
りんは漠然とだけど、自分の置かれている立場をわかっていて、じいさんに似てるからなのか、インスピレーションなのか、大吉の元で生きていくのですが二人の会話がとてもいいです。
大吉は幼いりんにひとつひとつ確認していき、りんは確認することでわき上がる疑問を大吉に、ときには恐る恐る、ときには無邪気に聞き返したりします。
しんじゃうっていうこと、いなくなるっていうこと、ひとりになることに、得体に知れない恐怖を感じていた幼いときのことを思い出しました。
そしていま幼い子にこういったことを尋ねられたとき安心させてあげられる言葉はきっと大吉の言ったことに似ているだろうなと思いました。
面白い作品です。
前巻とは違う面白い短編が収録されています。
●PETRA GENITALIX
人類が文明を築き、ある規律で運営しようとするとき、規律という大きな力に不都合な存在は異端とされ、やっかいごとはその人たちに押し付けてきた歴史を描いているみたいでした。小さな少女が問う言葉は生きていくのに身につけていなければならない大事なことを教えてもらいました。
●うたぬすびと
約束をあえて破ることで願いを叶えた少女。よくわかりませんでした。
●ビーチ
おばあを見て狼狽えなかったのはどうしてだろう。不思議が少なくなってしまったいま、大切にしたい世界です。
身近に起こることと、どこか重なっていくような感覚になる短編集です。
●SPINDLE
現実感を感じさせないのに、つくりものにも思わせない物語が面白かったです。
●KUARUPU
科学を信じきっている現代に生きていて、科学を超える力の存在をどこかで期待している自分がいました。
●騎鳥魔女
知らずにいることってたくさんありそうです。
都澤理紗はどこにでもいるような女子高生である。よく笑い、よく食べ、よく眠り、ちょっとだけ学ぶ。そんな彼女の「特別なこと」をひとつ挙げるとすれば、野球部ただ一人の女子部員であること。ささやかだけれども眺めていると訳もなく胸が騒ぐ・・・・・・部活少女・ザワさんの日常素描。
19世紀末の中央アジアの遊牧民や商人の文化や風俗、人々が何に重きをおいているのかがこの作品を通して知ることができました。
居候のヘンリー・スミスはアンカラへ旅に出た。カラザでは盗難に遭うが、いま、運命の女性に出会う…!
アミルとカルルクのほんわか夫婦と別れ、アンカラへ向かうのに手配してもらった案内人と会う約束の市場にやってきたスミス。
いくら探しても案内人らしき人物は見当たらず、どうしたものかと、とぼとぼと繋いであった馬のところまで戻ってくると、荷物をのせたロバとともに馬がいなくなっています。
気が動転し、慌てて探してみても目撃者もなく、ダメだよ目を離しちゃと言われてしまい途方にくれてしまいます。
周囲を見まわしていると、スミスさんと同じようにキョロキョロと何かを探している様子の女の人が目に入ります。
その女の人もスミスさんの存在に気づき、近寄ってきて、スミスさんと同じ場所に繋いでいた白い馬の行方を尋ねます。
スミスさんは同じ事情であることを説明し、ふたりでそれぞれの馬を探してまわります。
ある市場の主人らしき人が、
「場長さんに相談してみな」
というので、いわれたとおり場長さんという人物がいる建物に向かいます。
場長さんに相談してみると、場長さんはある程度の目星がついているようで、難なくそれぞれの馬と荷物をのせたロバを取り返してくれます。
大切な馬だったらしく、無事に戻ってきて涙ぐむ女の人。
荷物の中身もなくなっていないことを確認し安堵するスミスさん。
捜し物が見つかり、この場で別れようとすると、女の人が、
「あの……もしよろしければうちにいらっしゃいませんか? お客様に来て頂ければ義母も喜びますし まだお泊まりが決まっていないようでしたら」
といい、何かの縁を感じたのか、スミスさんは女の人の招きに甘えて、世話になることにします。
女の人の名はタラスといい、義母とふたりだけで暮らしています。
同じ被害に遭って知り合い、ゆるやかにお互いが惹かれていき、将来を約束し、文化の違いによって引きされてしまうという、スミスさんとタラスさんの結末がさみしいです。
初めてタラスを見かけたときの、スミスさんの一瞬で心が奪われてしまったかような表情や、決断してタラスの家に向かうと思いもよらないことが起こり、一方的に話がつき、この土地の文化を思い知る場面が印象に残りました。
タラスさんはスミスさんに向ける表情や、髪をほどき、髪が風になびいている姿や、羊とじゃれあっているときに見せる表情、そして、早朝、義母が起きる前にスミスが立ち去ろうとするところで見せる表情が美しいです。
感情を表に出さないタラスさんがスミスさんの身に何かあったかもしれないと感じると、居ても立ってもいられず、馬に飛び乗り、市場まで駆けつけ、スミスさんの安否を確認し、
自分の心情を吐露する場面は、コマを眺めていると、アミルやパリヤと同じように顔がまっ赤になっていくようでした。
もう登場しないかもしれないと思われた、カルルクやアミル、パリヤが再登場してくれてのは嬉しかったです。パリヤの四コマも面白かったです。
想像力豊かなパリヤ。
何を想像して、顔をまっ赤にして、のぼせてしまったんでしょう。
多感な女の子です。
アミルにだけは素直に気持ちを話せるところや、どうしてか空回りしてしまうところがかわいらしいです。
縁が順調に進んでいけばいいなと思います。
語り部ってスミスさんだったの?
エイホン一族の話が続くと思っていたから、スミスさんが旅立って視点がスミスさんに向けられたのに戸惑いました。
もうエイホン一族のカルルクとアミルを見られないかと思うとちょっと寂しい気がします。
とはいえ、まっすぐで元気なアミルさん、勇敢なアルルクさんと見られてよかったです。その後のエピソード、第9話「嫁心」の話はよかったです。パリヤはせっかくでてきたのに、今回で出番は終わりなのでしょうか。
裏表紙の絵がいい雰囲気です。
ゆっくりとした時間の流れ、異文化の人と人とのつながりが心地よく感じる作品です。
舞台は19世紀中央アジア、カスピ海周辺の地方都市。
アミル・ルガルとカルルク・エイホンの結婚式から物語は始まります。
狩りをしたり、母親の言いつけを守らない子供がいたり、部族間の交流や争いがあったり、風邪をひいて大慌てしたりと物語が展開していきます。
すこしずつ夫婦のかたちがつくられていくんだと思います。