父親が再婚し、新しい母とその連れ子との生活に馴染めない美月。渋谷のストリートでギターを爪弾くアダムという青い瞳の男性と出会い、強く惹かれた。彼にもう一度会いたい美月は…? 時空を超えた魂の愛!
高校生の望月美月は路上で弾き語りをしているアダムに魅了されます。アダムについて行こうと決め、待ち合わせた場所で交通事故に遭ってしまいます。意識が遠のいている間に夢を見ます。
自分が誰なのか。どこへ行こうとしていたのか。どこへ行けばいいのか。何も思い出せません。目の前にひとりの少女が立っています。いなくなった猫を探してます。探していた根が見つかったとたんその少女は美月の目の前から忽然と姿を消します。
小学生の白石蛍は入院しています。いなくなった飼い猫ルルを探して交通事故に遭ってしまいました。入院中テレビの音楽番組を見ていると、EVIL EYE(イーブルアイ)の「Last Quarter(ラスト・クオーター)」という曲が流れていました。蛍はこの曲がどの曲よりもかっこよく感じ、ピアノを習っているからなのか、曲は頭に残っています。だけど、誰が歌っている、何ていう曲かまではしっかり見ていませんでした。
蛍は事故に遭ってから夢を見るようになりました。ルルを見つけたかと思うと、ルルが女の人に変り、その女の人は悲しそうに泣いている、という夢です。
夢で見る女の人は知らない人なのに蛍は鮮明にその顔を覚えています。
退院してからも同じ夢を見続けます。
美月同様、蛍も家庭が温かいとはいえず、蛍の支えとなったのは飼い猫のルルでした。ルルのことが忘れられず、探しに行く蛍。ルルに似た猫を見つけ、ついて行くと、立ち入り禁止と立札がかけられた傷みのひどい洋風の建物の中に入っていったので、入れそうなところを見つけ蛍も建物の中に入っていきました。
いまにもお化けが出てきそうな雰囲気の中、猫を探す蛍。誰もいないはずなのにピアノの音が聴こえてきます。蛍は人がいたことにびっくりし、あわてて建物から出て行こうとするが、耳がピアノの旋律をとらえます。それは入院中テレビから流れていたEVIL EYEのLast Quarterだったのでした。
逃げ出すことも忘れ、誰が弾いているの知りたくなって、ピアノが聴こえる部屋をのぞくと、女の人がピアノを弾いていました。猫が鳴く声でピアノはとまり、蛍の存在に気づき、
「誰?」
と女の人は蛍に声をかけます。
蛍は勝手に家に入ってきたことを謝りながら、女の人の顔を見ると、夢の中で見る女の人なのでびっくりします。
わかっていはいるけれど、自分の夢の話を女の人に話し、覚えていますか? と問いかけると、女の人は、
「覚えてる…猫を探してた女の子…うれしい…もう一度あんたに会いたかった」
と答えます。
蛍は夢じゃなかったと知ります。
蛍は不思議なことに遭遇します。女の人はこの建物から出ることができず、名前、年、住所、家族の顔、友達の顔、なにも思い出せないと泣き出します。
蛍はどうしていいかわからず、自分より大きな身体を抱きしめてあげることしかできませんでした。
蛍は女の人に明日も来ると約束し、女の人は蛍に友達のしるしに指輪をプレゼントしました。
翌朝、蛍は自分の左の中指の指輪を見て、もう一度夢じゃないことを確認しました。
古びた建物に閉じ込められた女の人を蛍は友達に協力してもらって救おうとします。
蛍にしか見えない女の人は誰なのか。小学生の推理と行動でハラハラドキドキする展開が面白いです。
矢沢あい 下弦の月 上
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