「タニムーなんかあったら菊田のこと守ってよ」
近い将来、なにかありそうなことを言い出す鬼灯くん。
松伏戦国村を建設中のキノシタレクリエイションという会社を調べてみると、社章が鬼灯家に因縁のある木下家家紋、通称「逆さ木下」と同じものでした。
ことあるごとに、父から木下家の家紋を見せられた鬼灯影斎。
なにかありそうな予感が頭をよぎり、そのカンは的中します。
父から授かった「忍法帖」が収められている木箱には細工が施されていて、二重底を発見し、開けてみると「任命書」が隠されていました。
鬼灯家に下された任務
“木下家の監視および不穏な活動の妨害”
依頼主は…… 徳川家康
鬼灯家と木下家のたたかいが勃発しそうです。
木下長宗は木下家十五代当主で、彼の父は木下家の長年の夢を着々と進行していました。
まだ、父の計画を知らない木下長宗。
そんなことよりも、菊田さんとのデートで頭がいっぱいです。
しかし、菊田さんとのデートは木下さんが頭に思い描いていたほどうまくはいきませんでした。
松伏戦国村がオープンします。
木下家四百年の無念を晴らすという木下長宗の父の野望を息子は薄々カンづきはじめます。
木下長宗と菊田さんのデートのとき、戦国村での誰にも気づかれないたたかい。
影に撤しながら菊田さんを守る鬼灯くんがかっこいいです。
戦国村での吹き矢大会後、菊田さんは木下さんからの連絡がぱたりと途絶えてしまい、元気がありません。
木下さんは父から木下家の悲願に加担させようと、学習睡眠で寝ている間に植えつけられていました。
父のやり方に抗おうとして、菊田さんに浮かれている場合ではなくなっていたのでした。
そんなこととは知らず、とくかく行動しないと、と思い立つ菊田さん。
その前に、気合を入れたくて吹き矢教室の服部講師のもとに向かいます。
自分の吹き矢がなくて、先生のものを使って渾身の力をこめて吹きます。
鬼灯くんは菊田さんの吹く服部先生の矢とわかる塗装を見て、あることに気がつきます。
その矢は、10年前、鬼灯くんの父を乗せたまま墜落したジェット機の内部に残されていた矢と同じ塗装だったのです。
ここで、鬼灯くんにはある疑惑が浮かびあがります。
もしかしたら、ジェット機を墜落させたのは、吹き矢教室の服部先生なのではないか。
真相をつきとめるため鬼灯くんは動き出します。
服部先生の正体を明かすために忍法を使って襲います。
しかし、服部先生のほうも鬼灯くんの動きを察知していて、そう簡単に見破らせません。
鬼灯くんが真相をつきとめようとしている同じ頃、木下家ではついに父が長宗に戦国村の中枢の秘密を明かします。
そこで、明かされる10年前の真相。涙の物語です。
菊田さんは木下さんに、
「会わないほうがいい」
と言われた理由を探ろうと、自作の忍者ショーを行います。
木下さんの気持ちを知りたくて、アドリブを織り交ぜ、答えを待ちます。
「もうこれっきりにしよう」
「巻き込みたくない」
菊田さんの求める返事とは異なるものでした。
菊田さんが書いた忍者ショーの脚本は偶然、木下家の秘密に迫るものでした。
木下家のひみつ兵器は、メカ蝦蟇(がま)といい、人の心を操る妖術電波を発生させ、全ての人間を支配できる、というものでした。
しかし、この兵器、メカ蝦蟇は始動する前に、木下長宗からスイッチをすり替えられ、鬼灯くんから構造の要のボルトというボルトを大量に引き抜かれていたのでした。
メカ蝦蟇は動くこともなく自壊してしまいます。
木下家の野望は失敗に終わりました。
鬼灯くんと接服部先生が話す場面、服部先生の心の声が面白かったです。
言葉少なめに互いに分かりあえたと思えるいい場面でした。
「もうこれっきりにしよう」
木下長宗にそう言われて、落ち込む菊田さん。
気持ちが落ち込んだとき、話を聞いてくれるお母さんはいません。フラれた原因はお父さんにあるという、誰かに当たらずにはいられない気持ちになります。
お母さんが出て行ってから初めて父の気持ちを知ることになった菊田さん。
変わらなきゃと思った父にならい、自分も変わろうという気持ちになります。
もう一度木下さんに会いに行きます。
木下長宗は父のこと、木下家代々四百年の野望、その野望を自分にも押しつけてくること。菊田さんに打ち明けます。
そして、
「巻き込みたくない」
「父を説得するからそれまで待っていてください。」
ともにふたりで立ち向かいたかった菊田さんの望むものとは違っていたので、菊田さんはあきらめることにしました。
翌日の菊田さんの表情は晴れ晴れとしたものになりました。
失恋した菊田さんに、想いを伝えろと鬼灯くんにタニムーが言います。
「ロンドン、菊田も一緒に行く?」
鬼灯くんの想いは菊田さんには届きませんでした。
このまちを、菊田さんを中心にタニムー、鬼灯くんの三人の関係がまだまだずっと続いていくようです。
場面場面で描かれるキャラクターの持つ感情や動きが豊かでした。
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