「アシガール」の続編です。
唯の姪、尊の娘、速川月(つき)が主人公です。
アシガールシーズン2。数ページでもう面白いです。前作を読んでいてリズムがわかっているから余計に面白く感じてしまうんだと思います。
ある日、月が尊の研究室(物置)にいると、尊の発明したタイムマシンが15年ぶりに作動。唯と若君の子孫・玉姫と家臣・勇之進が江戸中期から時を超えてやってきた。勇之進への想いを胸に秘め、大名家に輿入れするという玉姫の話を聞き…。
時は令和。月が祖父母と暮らす家にある晩、三百年前から政略結婚前夜の玉姫と幼なじみの勇之進がやって来た。
相思相愛なのに結ばれないふたりに同情する月は、タイムマシンの起動スイッチを興味本位で触っているうち、うっかり自分がタイムスリップ。
気がつけば江戸時代、玉姫の代わりに大名家にお輿入れする羽目となる。
初対面の夫は年下の無愛想な美少年、でもちょっとワケありで―――?
速川唯(ゆい)は弟尊(たける)が発明したタイムマシンを触ってうっかり戦国時代にタイムスリップしてしまいます。偶然出会った若君羽木九八郎忠清(はぎくはちろうただきよ)に一目惚れし、若君のために一生懸命困難を乗り越え、思いを遂げます。そして、唯は戦国の世で生きていく選択をします。今作品は唯の物語の続編です。
唯の時代から150年過ぎた江戸時代中期八代将軍徳川吉宗、暴れん坊将軍の時代の唯と忠清の子孫である御月家の姫が現代にタイムスリップしてきます。
現代は唯の子久永(ひさなが)がタイムスリップしてやって来たのを最後に15年が過ぎています。
尊は結婚し、娘が一人います。娘の名前は月。高校生です。
父親尊に似てかしこく、伯母唯と違って足が遅いです。でも唯に似て度胸があります。そして、うっかり屋です。
尊の研究室(物置)で月は遊んでいます。遊んでいるのか、研究をしているのか、勉強しているのか。何か作業しています。背後に人の気配を感じ振り返ると、姫のような人と侍のような人二人が急に現れて何か話しています。
姫と侍は自分たちの世界に没頭していて周囲の変化に気づいていません。
月は黙って姫と侍のやりとりを聞いています。あまりに気づいてもらえないので、
「あの――― お取込み中すみませんが どちら様ですか?」
と声をかけます。
姫と侍は月の声を聞いてようやく周囲の様子が変わっていることに気がつき、見たこともない服装の女の子が立っているのに驚きます。
侍は姫をかばい、
「貴様っ 何奴!!」
と月に向かって大きな声で言います。
月は、
「もしかして 御月家の方ですか?」
と言います。姫が、
「え… …こなたは?」
と言います。
研究室が騒がしいので祖父母がやって来ます。姫と侍を見て、
「あらま」
と祖母は言います。
祖父母は姫と侍を居間に案内します。
姫と侍は部屋が昼間のように明るいことに驚いていると思います。
月は姫がおそらく久永の妹だろうと推測します。
姫は、
「私は 緑合(ろくごう)御月(みつき)藩 六代藩主 御月定永(さだなが)が娘 玉と申しまする」
侍は、
「城代家老 天野信昌(のぶまさ)が嫡男天野勇之進信重(ゆうのしんのぶしげ)にござる」
と名乗ります。
月の予想は外れて、玉は六代藩主の娘というので、月が玉に、
「ちなみに今年は何年ですか?」
と訊ねます。
玉は、
「え… 享保15年かと」
と応えます。
月は調べてみると時代は江戸中期、八代将軍吉宗の時代だと、久永から150年たっている祖父母に教えます。
祖父母は玉が唯の子孫だと喜びます。
話しを聞いていた玉は、目の前のいるのが唯の両親だと知ります。しかし、信じがたいようです。
御月家では唯と尊は何度も家の危機を救ってくれたと語り継がれていて、唯と尊は数百年先の世から来たと聞かされていたので、信じ難くも現実のことなのだと理解します。
祖母は月を尊の娘だと紹介します。
月は玉に事情を訊ねます。
尊の作った起動スイッチの懐剣は「天下唯一尊の懐剣」と名付けられ御月家の家宝となっています。
玉は縁談の話がありました。
玉が勇之進を慕っていることは藩主定永はわかっています。しかし、相手の志喜家は将軍家と縁が深いので御月家として断ることができず悩んでいました。
玉は父親が悩んでいる姿、家臣や領民のことを考えると自らの務めを果たさねばと、志喜家に輿入れすることを決意します。
定永は家のため決意した玉に感謝し、天下唯一尊の懐剣を授けます。
輿入れのため城を発つ前夜、眠れず庭で勇之進を想い、満月に懐剣を捧げ幸せを祈ろうと剣と引き抜くと起動スイッチが動作します。
勇之進は眠れず、庭を歩いていると、玉が自害しようとしているところを目撃し慌てて懐剣を奪おうとしたところ起動スイッチが動作して二人そろってタイムスリップし現代に来たのでした。
月は玉に志喜家の人は玉の顔を知っているのかと訊ねます。
玉は一年前一度だけ志喜家御用人野口十八郎左衛門という者と会ったと言います。
月は一年も前にちらっと会っただけなら、誰かと入れ替わっても気付かれないのではと言います。
玉は身代わりなど考えたこともないようです。
勇之進は、もってのほか、バレたら御月家に厳しい御沙汰があり存続が危うくなると言います。
月は思いつきで言ってことをあやまります。
玉は覚悟はできている、急いで城に戻らないといけないと言います。
祖父母はむこうに戻れるのはひと月後の次の満月の夜になる、こっちではひと月でも向こうではほんの少ししか時がたっていないから大丈夫だと、だから今はあせってもしかたない、ゆっくり休んでいい方法を考えようと言います。
月は一人研究室に戻ります。
父親の尊に報告しなきゃとパソコンを起動します。
放り出されている天下唯一尊の懐剣を見つけます。
話しに聞いていた天下唯一尊の懐剣に触れることができてうれしそうです。起動スイッチの構造を知りたくて、鞘に納めた刃を再び抜いてしまいます。
起動スイッチが動作してしまい、月の姿が消えます。
パソコンで尊と話しているのは祖父母です。
祖父母は起動スイッチについて訊きます。
尊は今夜にも戻れると言うと、祖父母は慌てます。月がいなくなり、起動スイッチもなくなっていると言います。
月は江戸時代にタイムスリップしてしまいました。
月は庭に隠れています。
玉がいなくなったと女中は捜索しています。
一人の女中が月を見つけます。曲者っ、と誰かを呼ぼうとしたので月は、
「あっ… あ 待ってください 決してあやしい者ではありません! 私は速川月 速川尊の娘で速川唯… 唯の方の姪です!」
と叫びます。
女中は唯と尊の名が出て、
「……なに?」
と驚きます。
月は玉と勇之進は無事であり、今は遠いところにいると言います。
女中はじっと月を見つめます。
「こちらへ ついて参れ」
と月を玉の父親の藩主定永のところに連れて行きます。
定永は月を見て驚いています。
みんな理解が早く、月は次の満月までの1か月、何事もなく無事に過ごせそうだと安心します。
ところが城代家老天野信昌が殿に意見します。
月は自分がうっかりやって来たことで御月家がピンチになるかも知れないとわかり、
「あの~~ なんでしたら とりあえず代わりに 私が行きましょうか?」
と軽く言ってみます。勇之進は反対したので定永と信昌も当然反対するだろうと思ったのに
「そうしていただけるか?」
と話しがすすんでいきます。
月は焦ります。
女中は時間がないので仕度をと、部屋に案内します。
華やかな着物に、豪華な頭の飾りつけ、見る間に輿入れの準備がすすみます。
女中は月にきちんと挨拶をします。今後月を玉姫と呼ぶと言い、玉姫付年寄葛葉と名乗り、天野家出で城代家老天野信昌の妹だと言います。そしてもう一人小笹(こざさ)という腰元を紹介します。二人は志喜家に一緒に行って月のお側に仕えると言います。
月は断れない雰囲気を感じ、覚悟を決めます。
輿に乗り、よく考えてみると輿入れとは結婚することだと気づきます。
2日かけ4か所の休憩所に立ち寄り、志喜家居城松月城に向かいます。
志喜家は滅ばず、江戸になっても続いていて驚きです。
まっすぐ松月城に入城すると思っていたのに、途中、ご家老本間頼母の屋敷に立ち寄ります。
志喜家家老本間頼母は月が本当に玉姫かどうか怪しんでいます。
月は現代で玉姫が話していたことを思い出し、難局を切り抜けます。
本間頼母は無礼を詫び、松月城に入城します。
松月城に着くとすぐに婚礼が行われます。相手は志喜晴貴15歳。年下です。
その夜、初夜の契り、床を共にすることになります。
なんとか回避したい月は葛葉と小笹に作戦を手伝ってもらおうとします。
しかし、晴貴はどこか具合が悪いようで、作戦を実行に移す必要はなくなります。
翌日、葛葉と小笹が城内を偵察し、情報を集めます。
晴貴は重い病を患っていることがわかります。
月は晴貴の祖母天光院に会いいろいろ話すうちに晴貴は毒を盛られた可能性があることを知ります。
月は次の満月、あと5日後の満月に晴貴を連れて現代に戻り、晴貴の病気を治療して戻ってくる気満々です。
月の活躍は御月家、志喜家の両家にどんな影響を及ぼすのでしょうか。続きが楽しみです。
連載途中の「じゃのめのめ」は「たまのこしいれ」が終わってから再開するのでしょうか。どちらも待ち遠しいです。
続きます。
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