唯と信長のやり取りが面白かったです。唯にほんの少し歴史に興味があれば、興奮する場面なはずなのに、まったく興味がなく、若君一筋なところが面白いです。
尊が現代に戻り緑合城の歴史博物館を訪れて、資料を見て感動しているところが好きです。過去に行って、誰かに影響を与えたことが後世にまで残っているなんて機会があったらこんな気持ちになるのだろうなと想像します。
信長は若君に自ら出向いてきたのに縁談を断るなんてことはないだろうなと言います。
部屋の雰囲気はピリピリしています。
若君は信長の申し出を受けるつもりはなく、拒否しようと話そうとすると、
「あっ お待ちをっ 」
と声が聞こえてきます。
「これ!! 何を騒いでおる!」
殿が言います。
襖が開くと涙目の唯が立っています。
若君は、
「唯…」
目の前に姿があるのに驚いています。
尊は声が出せないので、心の中で叫んでいます。
殿は、
「唯之助っ… こなた 身籠っておったのか!!」
とこの場に唯が現れたことより、お腹の膨らんだ姿に驚いています。
唯はお腹に手をやりながら、のしのしと若君の前まで歩いて行き、その場に座り込みます。位置的には殿と信長の間に座り、若君を正面に座ります。
信長は部屋に入って来たおかっぱの女子が清永(若君)の正室だと知り、忠永(殿)がその女子を唯之助と呼ぶのが不思議そうです。
尊は場の雰囲気を無視して座る唯に心の中でツッコみを入れています。
信長を無視して、唯は若君に、
「えっ 縁談って… 何それ どーゆーこと!?」
と言います。若君はたぶんどうやって戻って来たのかを聞き出したいのに言えなくて、唯、と名前だけつぶやきます。
殿は唯に子ができたことを知らされず、若君を叱ります。
若君はうまく辻褄を合わせ説明します。
若君の説明に納得した殿は、唯に、
「でかしたぞ 唯之助!」
と言います。
唯は涙ぐみながら若君に、夫が再婚しようとして酷いと言います。
若君は少し焦っています。
殿が、
「唯之助 もうよい 客人の前じゃ 今は下がっておれ」
と言うと、唯はすいませんと言いつつも、
「でも ひどくない?」
と信長に同意を求めます。
尊は誰に話しかけているのかわかっているのかと心の中で叫びます。
信長は黙っています。尊、殿、志喜殿、小平太、若君に緊張が走ります。ようやく、
「まったくもって ひどい」
と言い、
「清永 おぬし けしからん男ぞ」
と笑い始めます。
「それならそうと早う申せ 無駄足を踏ませおって」
と若君に笑顔で言います。
信長は唯にも、
「唯之助と申したな これはわしが少々強引であった すまぬ」
と言います。信長が謝ります。信長は新しいもの、変わったもの、珍しいものに興味があり、この時代にはいないであろう女子が若君の正室あることを面白がっているようです。海道一の手弱女を世話しても、断れないよう圧力をかけても、従わない若君と若君しか見ていない唯に興味が増しているようです。
「良い子を産めよ」
と言い、唯は、
「あ はい どーも」
と、どうでもいいような言い方で返事します。
信長が帰り、唯は尊を責めます。
「尊!! あんたが付いていながらどーしてこんなことになったのよ!!」
唯は尊には目を見開いて怒ります。
唯は自分の居所に行きます。
渡瀬とつゆが唯がお腹を大きくして帰って来たので驚きます。
夜、若君は唯と二人きりになって嫌な思いをさせたと謝ります。
唯がどうやって戦国の世に戻ることができたのかが描かれます。
起動スイッチが作動しなかったので、次の満月にもう一度挑戦します。しかし、作動しません。その次の満月も同じ結果です。
それからすこし過ぎて、歴史の木村先生が早川家にやって来ます。木村先生は桐の箱に入っていた古びた紙を唯と両親に見せます。
古びた紙に書かれた字は尊のものであることがわかり、木村先生に感謝します。
尊が書いた説明書を読み研究室の機械を組み立て、燃料が溜まるのを待ちます。燃料が溜まり、満月の夜、起動スイッチが動作し唯は戦国の世に行くことができます。
唯は小垣城に戻って来ます。
唯がいきなり現れたのを見て高山家の小姓が大声を上げます。
宗熊と家臣が、
「これ!! 何ごとかっ」
と部屋から出てきます。
小姓は、
「そっ… そこにっ 人が… いきなりっ」
と驚きのあまり尻もちをついてます。
唯は、
「あっ 宗熊!?」
と言います。
宗熊は、
「おお 唯殿か」
と唯が突然現れても驚くこともなく、笑顔で応じます。
「どうして 宗熊がここにいるの?」
と聞くと、宗熊の家臣が動揺しつつ、
「いやっ それは当方がお訊ねしたきことっ」
と、どこから入って来たのか、なぜそんなにくだけて話せるのかを聞きたそうです。
宗熊は、
「久しぶりじゃのう よう参られた」
と言います。
宗熊の対応に家臣は、なぜ平然としているのだと言いたげです。
部屋に入り、唯は、
「それじゃ今は宗熊殿が小垣の城主なのー ひと晩だけお世話になります 朝になったらすぐ御月へ帰るんで 柔らかめのお布団と朝ごはんがあればいいんで」
と遠慮することなく宗熊に言います。
「相わかった」
なにも疑問に思うことなく宗熊は返事します。
家臣は自分がおかしいのかと思ったのかもしれません。諦めて、唯に、
「それはなりませぬぞ 今 途中の村で大規模な百姓一揆が起こっておりますゆえ危のうございます」
と言います。
唯はすぐに小垣を出られず、8日が過ぎて、高山兵に護衛され、駕籠にのって緑合に向かいます。
そして、緑合の館に着いてすぐ、若君の縁談の話を聞いたのでした。
翌日、唯が戻ったと聞き、天野信茂が駆け足でやって来ます。唯のお腹が大きいことを泣いて喜んでいます。
尊は御月家の人々に大切にされていることが知れて安心しています。
唯は尊の姿が見当たらないので孫四郎に、どこにいるのか聞くと、
「けんきゅーしつじゃ」
と応えます。
唯は新しく小屋が建っているのを見つけます。中に入ると尊は書き物をしています。小屋の中は見慣れた光景です。
「何… やってんの?」
「何って 研究だよもちろん」
といろいろ作ってたら、若君が建ててくれてのだと言います。
尊の研究から出来上がった発明品は緑合の人々に恩恵を与えています。
三之助は尊の助手として、いろいろ学んでいます。
尊の戦国の世での生活はこれで終わります。
男の子が誕生します。名前は天丸と名付けられます。緑合は大騒ぎです。
小平太とつゆが縁組します。
小平太の稲妻に打たれたような衝撃を感じる表情や吉乃の二人をくっつけるための策が面白いです。
御月家は穏やかな日々が続いています。
信長の推挙で帝から官位を賜ることになり殿と若君は都に行くことになります。
唯と天丸はお留守番です。
殿と若君が不在の時に緑合領内に敵が侵攻してきます。
天野信茂は偵察を送り、城の守りを固めるよう指示します。
唯にも軍勢が緑合に向かっていると知らされます。
若君が戻るのは早くて明後日。それまで緑合を守らなくてはいけません。
三之助が唯に、尊が残していった発明品を見せます。
敵を足止めするため、三之助と悪丸の三人で準備を始めます。
続きます。
森本梢子 アシガール 15巻
(アマゾンのサイトに移動します)
●関連リンク
集英社 アシガール
0 件のコメント:
コメントを投稿