2017年10月28日土曜日

森本梢子 アシガール 6巻

唯は毎日、尊に燃料はできたか、学校の歴史の木村先生に羽木家についてその後何かわかったか、と聞き続けています。

尊は早く完成させるから、邪魔しないでと言います。

木村先生は唯に怯えています。唯の姿を見かけると、さっと存在を消し去ろうとします。それでも唯は木村先生を見つけると、人間離れした速さで木村先生に近づき羽木家について聞こうとします。

木村先生は歴史的な発見ではなく、小垣市の古戦場を発掘調査している知り合いが持ってきたという面白いものを唯に見せてくれます。

古い写真です。

木村先生は写真に写る人物が唯に似ているからと見せてくれたのです。

唯には見せられた古い写真が何であるかわかっています。自分の部屋の写真立てに入れていた写真です。

写真は若君が戦国時代に持っていったのです。


自宅で家族に木村先生からもらった古い写真を見せます。

父親はこの写真がどこでみつかっのか唯に聞きます。

唯は小垣城のあった所の近く、戦場のあとで見つかったと言います。

尊と両親はそれぞれの考えを話します。

尊は若君がうっかり落としたんだと言います。

父親は若君がいらなくなったから捨てたんだと言います。

母親は若君がおじーちゃんになるまで肌身はなさず持っててくれたと言います。

家族は涙ぐんでいる唯がさらに悲しまないように言います。



夜、唯は夢を見ます。

若君の素敵な笑顔が出てきます。

若君の素敵な笑顔は唯に向けられたものではなく、べつの女子に向けられています。唯は女子の後ろ姿で松丸阿湖だと確信し、嫉妬の炎に燃えます。

ふと屋根に目を向けると、刺客が若君を銃で狙っています。銃が放たれた音で唯は目を覚まします。



唯は本当に爆発したような気がし目が覚めます。

外から、

「尊!!」

と声が聞こえます。

唯は尊に何かあったと、庭の実験室に急いで行きます。

実験室が派手に爆発を起こして無残な姿です。

両親は残がいをかき分け尊を探します。唯は尊がもしかしたら…とただ見守っています。

厚い扉をこじ開けて防護服を着た尊が出てきます。無事です。

父親は尊を叱ります。

尊は、どうしてももう一度唯を若君に会わせてあげたくて燃料を作るのに無茶をして実験室を爆発させてしまったといいます。

母親が無茶をして燃料づくりに失敗して全部壊してしまったのねと言うと、尊は機械は壊れたけど燃料はできたと言います。

2回分。行って帰ってくる分の燃料ができたと言います。

唯はもう一度戦国時代に行けると分かり歓喜します。

両親は唯が戦国時代に行くのは大反対です。

尊は唯があきらめそうにないし、何年かかっても行く気だし、その時までずっとあのTシャツを着る気だし、と言います。


尊の台詞に、読み返してみると唯は現代に戻ってきてからずっと若君が着ていた変なプリントのTシャツを着ていました。気がつきませんでした。


両親が止めるのを振り切って、唯は戦国時代へ行く準備をします。

尊は唯のために新たな道具を発明します。金のけむり玉という煙幕の強力版で、百メートル四方を一時間真っ白にすると言うものです。

出発する準備万全の唯を見て両親はあきらめます。

ただし、母親は必ず帰ってくると約束してと言います。

唯は素直にわかったと言います。懐剣を抜きます。

抜いてから唯は、

「あっ でも お母さん もし 帰って来なくても心配しないでね だって ほら その時は 首尾よく 若君と結婚したってことじゃん?」

と言い、さっきの、わかったという言葉はどこに行った? という台詞を言い終わらないうちに姿が消えます。

両親はあきれ、尊は、お姉ちゃんはあーでなきゃと、目を閉じて姉らしさを噛みしめています。



唯は戦国時代に戻ってきます。5か月ぶりの戦国時代のなつかしいにおいに、本当に戻ってこられたことに感動しています。

すぐにでも若君に会わなくてはと黒羽城に向かいます。

走っていると、

「ぎゃあああ」

と悲鳴が聞こえてきます。

唯は恐る恐る声のした方へ行くと、黒装束の男たちに襲われている集団を見つけます。必死に抵抗しています。

唯は尊が作ってくれた金のけむり玉を早速使い、駕籠の集団を安全な場所まで連れていき救います。

唯は助かったとお礼を言われます。

駕籠の中から声がして、

「私からも礼を申します 履物を」

と、駕籠の中から出てきたのはかわいい姫です。

唯は話をしていくと姫が、松丸阿湖だと知ります。

唯は想像していた松丸阿湖と違うので、もしかしたら若君が阿湖姫に会うと好きになるかもしれないと不安になります。若君に会わなくてはと黒羽城の城門にやって来ます。

門番は婚礼が終わるまで誰も入れてはならぬと唯を通してくれません。


唯は天野の邸に行き、おふくろ様に会いに行き5か月間の状況を説明してもらいます。

唯はおふくろ様に若君の婚礼を阻止しに来たと言うと、おふくろ様に若君がご承知なされたことだから邪魔をしてはなりませんと言われます。戦国時代の人たちといろんな関係性ができた今、唯は自分の意思だけを押し通すことはできないと涙します。

どうすることもできない唯は、あと1か月は現代に帰ることができないし、天野の家で若君を祝うのはつらすぎるので、梅谷村に行くと言います。

一人で大丈夫かというおふくろ様に唯は、子供のいないお人好しの六助夫婦に泣きついて、ご飯毎日食べさせてもらうと言います。

おふくろ様の眉毛はつり上がっています。


唯はトボトボと梅谷村までの道を歩きます。休んだり、ぼーっと考え事をしたりしながら歩いていると、馬が走る音が聞こえてきます。

何だ? と音がするほうを見ると、若君です。

大声で、

「若君ィィィ!!!」

と叫びます。

若君は馬をとめます。自分を呼ぶ声が唯に似ていたからです。

もう一度、唯は若君と叫ぼうとしたら、

「若君様!」

と若君が来た方から女子の声が聞こえます。

唯は声の方を見ます。若君も見ます。

阿湖姫が馬に乗って若君の後を追って来たのです。

唯は小さくなって隠れます。

若君と阿湖姫は少し話し、城の外は危ないから城に戻ろうといいます。

唯は若君と阿湖姫の後ろ姿を見送ります。唯にはとてもお似合いのふたりに映ります。

若君は阿湖姫との城までの帰り道に、昨夜高山の刺客に襲われたことをたずねます。阿湖姫は危うく皆殺されるところを唯之助と申す者に救われたと言います。

若君は唯之助という名を聞いて静止します。どのような年格好だったかと聞きます。阿湖姫の話す唯之助は若君にとって心当たりがありすぎる人物です。

先ほどの、「若君ィィィ!!!」という声も気になり、もう二度と会うことはできないとあきらめていたのに、少しの可能性が生じだと思います。

阿湖姫の従者がやって来て、若君は阿湖姫を従者に任せ、また来た道を戻ります。


若君と阿湖姫を見送った所で唯はひとり泣いています。阿湖姫はかわいいし、若君を祝えないし、とどうにもならない愚痴をブツブツつぶやいて、ようやく梅谷村に向かおうという気になります。

草むらから出ていこうとすると、若君がじっと唯を見ています。

阿湖姫と二人で城に向かったはずの若君が唯の目の前にいます。

唯は若君にびっくりします。

若君はいるはずのない人がいるのだから唯と比べものにならないほどびっくりしていると思います。

唯には自分をじっと見る若君の表情が怒っているように見えています。

ところが、若君は唯を抱きしめます。

若君は唯に再び往き来できるようになったのかと聞きます。

唯は尊は二回って言ったからあと一回です、と言います。若君に触れることができて幸せそうです。

若君は、

「では帰れるのじゃな」

と言います。唯はハッと我に返り、嘘をつかれて現代に帰ってしまった前回のタイムスリップを思い出し、

「若君!! 今また どうやって私を帰そうかなって思ったでしょ!!」

と言い、立ち上がります。池へ向かって走っていき、池に懐剣を投げ捨てます。

若君は唯の行動に驚き、池に入って懐剣を探そうとします。

唯は若君を引き止めます。

「私 決めたんです!! 今度若君に会えたら もう あっちには帰らないって! ずっと若君の側にいるって! 会えなくなるのはもう二度と嫌だからっ」

と、婚礼の邪魔をしに来たと若君に言います。

「されど」

と若君は唯の家族のことを思い、言葉を続けようとするけど、

「わかってます!」

と唯が若君の言葉を遮り、

「お家のために松丸家との縁談断れないんでしょ? いいんです! 婚礼の邪魔をしに来たけど それはもうあきらめました!」

唯が戦国時代に来た理由が分かり若君の口元はゆるみます。

若君は唯に松丸家との婚礼は行われないと言います。そして、唯のほほに手をそえて、

「お前がこれほどの覚悟で戻ったからには 他の者を娶ろうとは思わぬ」

と言い、顔を近づけてきます。

唯は目をつぶる場面だと目を閉じて待っています。


間の悪いことにこの場面に小平太が登場します。

小平太は若君に城に戻るように言います。松丸家より婚礼を見合わせたいと言ってきていると伝えます。

若君は予想通りの事態に平常心です。

小平太の邪魔によって唯がずぶ濡れになってしまい、若君は自分の射籠手を唯に着せてあげます。

若君の様子に小平太がなぜ? という顔をします。


唯は天野のおふくろ様のところに戻ります。黒羽城までの道で急な展開をおさらいします。冷静にあった事ひとつひとつ考えてみるとプロポーズされたことに気づきます。

おふくろ様は唯が梅谷村に行くと言ったのに、戻ってきた上に若君にも会ったと知り、唯を叱ります。



阿湖姫は松丸家の世話役石倉から明日の婚礼を取り止めると言われます。黒羽城内で大変な噂を耳にしたからだと言います。

忠清(若君)様は羽木家の家督を継ぐ気はなく、兄の成之様に譲りたいと申しているという噂です。

阿湖姫はそれでも構わぬと言います。

かめと石倉は忠清様が跡目ではないとなると婚礼は取り止めとなり帰ることになると言います。そして、松丸家と羽木家との盟約も破棄になると言います。

阿湖姫は落胆します。



唯は厩にやって来ます。仲間は久しぶりの再会もそこそこにいつもの仕事にかかるよう言います。

阿湖姫が厩に若君を追いかけるため馬を借りたお礼にやって来ます。

唯は阿湖姫と名前が聞こえ、コソコソとその場から逃げ出そうとします。

阿湖姫は後ろ姿で唯之助であると気づき、声をかけます。唯が羽木家の者だと知ります。もう一度会って礼をしたかったと、馬番の組頭に唯を連れて行ってもいいかと許可を取ります。


唯は困った表情です。阿湖姫は話してみるととてもいい子です。

唯はつらくて、阿湖姫に特に若君の話の相談をされるとどう答えていいものか困ります。

唯は阿湖姫に帰り際には明日も来てほしいと言われ、断りきれなくて曖昧な返事で去ります。



翌日、唯は阿湖姫に今日は用事があって城下に行きますと言います。阿湖姫は唯に一緒に連れて行ってほしいと言います。

唯は連れて行くことにします。


城下にはたくさんの高山の間者が潜入していて、隙あらば阿湖姫をさらおうと狙っています。

もうすぐで目的地に到着というところで、高山のスパイに阿湖姫がさらわれてしまいます。

唯はなんとか阿湖姫を奪い返します。逃げるにも阿湖姫の足が遅くて逃げ切れそうにありません。注意深くまわりを観察すると、阿湖姫を狙っている者がそこらじゅうにいます。

唯と阿湖姫はなんとか隠れます。唯は着ているものを交換しようと言います。唯は自分が姫のふりをして阿湖姫を狙っている者を引きつけるから、阿湖姫は安全になったら城に戻ってくださいと言います。

唯は着ているものを脱ぐと、阿湖姫が、

「こ…こなた 女子…か?」

と言い、女子だと阿湖姫にバレてしまいます。

唯は阿湖姫の格好をして逃げます。高山のスパイは姫を見つけたとじわりじわり追い込むつもりです。

唯は絶妙の距離をつくり、逃げ続けています。高山のスパイは唯に追いつけない理由がわからないようです。

唯は捕まることはないと油断してしまいます。挟み撃ちされて高山に捕えられてしまいます。



夜になって黒羽城では阿湖姫がいないと大騒ぎになります。

若君は城下を探すよう指示します。

阿湖姫が男のなりで戻ってきます。阿湖姫は若君にことの次第を報告します。

阿湖姫からもたらされた話に唯之助が絡んでいることで、若君は冷静さを失います。自ら馬に乗り唯を探そうとします。

家臣は若君に唯が高山の手に落ち捕えられれば、男であるとすぐに分かり、その場で切り捨てられているだろうから、無闇に探しても無駄だと言います。

若君はそう言われて冷静さを取り戻し城に戻ります。


若君は阿湖姫を呼び、2、3質問をします。そして、高山は唯を阿湖姫だと思い、城に連れて行ったと確信します。



二日が過ぎます。

松丸家より阿湖姫の兄義次が黒羽城にやって来ます。

羽木の殿と若君が義次に会います。

義次は二日前に高山宗鶴より書状が届いたといいます。

高山の嫡男宗熊と阿湖姫の縁組を承知していただきたいという内容です。

義次は阿湖姫はここ黒羽城にいないのかと聞きます。阿湖姫が黒羽城にいることを知り、父に急ぎ使いを出し、高山の申し出を断るようにすると言うと、若君が少し待ってほしいと言います。


若君は唯を救うため、一計を案じます。


若君は義次が滞在している部屋を訪れます。

義次は阿湖姫から真相を聞き出していて、助ける手立てがあるなら協力すると申し出ます。

若君は義次にそのことについて頼もうと思っていたので、協力してもらうことにします。

若君は義次に、高山に、

「縁組を承知する」

という内容の返書を急ぎ送るように言います。つづいて、その書状に

「ただし」

「その前に 姫の無事を確かめたいゆえに 二男義次を遣わしたい」

と付け加えてほしいと言います。


若君は義次として単身で高山の城に向かうつもりです。

唯奪還作戦がどう展開してくのか楽しみです。

続きます。



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