2017年10月16日月曜日

森本梢子 アシガール 3巻

速川唯は現代に戻ってきます。弟の尊は唯が赤い甲冑を着ていて、明らかに出世していることにびっくりしています。尊は身を守るために渡したでんでん丸は唯の表情からよからぬことに使ったと確信しています。



千対三千。

尊は唯にそんな戦は絶対に勝てないと言いきります。

しかし、唯は若君(羽木九八郎忠清)を守るために必死なので、尊に高山に対抗できる秘密兵器を作ってと頼みます。

尊は姉のためになんとかしてあげたいから、戦場となる場所の地形、敵味方の陣形、状況などの説明を唯にしてほしいのに、唯はちんぷんかんぷんです。

尊は何もないところから敵方の高山をビビらせる方法を考えようとします。



唯は尊に聞かれて、戦の状況がわかっていないことに気づき、自分なりにどうすればいいか考えてみます。

唯の考えている姿は近づき難いです。背筋はピンと伸びて、どこか遠くを見ています。靴下には膝の下と足首に紐が結ばれています。足軽ではなく、若君を守る武士のようです。

唯が真剣に考えているかは疑問が残るところですが、若君を守りたいという思いと心構えは伝わってきます。



唯は歴史の木村先生に戦がどうすれば羽木方が勝てるのか聞いてみることにします。

唯は帰宅して、聞いたことを尊にそのまま伝えます。

「お互いあきらめずがんばろう!!」

と秘密兵器のことは尊に丸投げし、唯はいざというとき若君をかついで逃げられるように体力と筋力をつけるため走り続けています。



尊は頬がこけるほど研究に没頭して秘密兵器を作り上げます。

尊は唯に「まぼ兵くん」と名付けた道具を渡します。

唯は尊に作ってもらった「まぼ兵くん」を持って戦国時代に行きます。



タイムスリップする前にいた若君はもういません。唯はもうひと目見たかったなと思いつつ、悪丸を探します。

唯は「まぼ兵くん」を悪丸に持たせ、敵方の背後にある立木山に行き、今から言う通りに使ってほしいと頼みます。

悪丸は、

「わかった」

とだけ言い、走っていきます。唯は悪丸の気のない返事に不安になりながら、朝を迎えます。



戦が始まり、鉄砲の音が響きます。羽木軍は劣勢です。

若君は巻き返しのため、敵の高山軍の中央を突くと一騎で駆けていきます。

この場面が1巻の冒頭につながるんだと思います。

唯は若君のもとに駆けつけます。



若君と唯は二人で敵の本陣に突っ込んでいきます。一気に敵陣を駆け抜け立木山に登ります。

若君の首を挙げようと高山方はかなりの数で追ってきています。

逃げ切れないと思った若君は唯に、腹を切る、言います。

唯はそんなことはさせない、と山のどこかにいるはずの悪丸に、

「早くやれェ!!」

と叫びます。



悪丸がまぼ兵くんのスイッチを押します。

高山軍に羽木軍の援軍が来たと思わせることに成功し、若君と唯は命をとりとめます。

高山軍は退却していきます。

唯は尊が作ったまぼ兵くんとサッカー観戦のつながりをここで理解します。

若君も唯は傷つくことなく、敵方も傷つけることなく救うことができて、唯はホッとします。



若君は唯に、

「今のは何事じゃ?」

と訊きます。

唯はうまく説明できそうもないので、白を切ろうとします。

ふと目をやると、唯は若君の左手が出血していることに気がつき、尊に注意されたことを思い出し、早く手当てしなければと、場所を移し、話を遮ります。

尊が持たせてくれた消毒液で若君のけがの部分を消毒します。

若君は正面に座る唯の顔を見つめます。見覚えのある顔だなと、もっとじっくり見たくなり、右手で唯の顎をくいと上げ顔を凝視します。

唯は、これは目をつぶる場面に違いないと、目をつぶります。すると、

「ふく…?」

若君の言葉に、唯は正体がバレたと慌てます。

一瞬で様々思案した挙句、白を切り通すしかないと思い、

「ふ…ふくとは 何のことでござろうか?」

唯は顎をしゃくれさせ、必死に別人だと主張します。

ふくだとバレるわけにはいかない唯は、さっきの高山兵が退却したきっかけの大歓声を持ち出します。

唯は「ふく」だとバレたくないけれど、まぼ兵くんのこともうまく説明がつけられないので触れたくなかったのに、混乱してしまって持ち出してはいけない話題を自らしてしまい絶体絶命です。

若君はじっと唯を見つめます、

唯は思い切り怪しまれているのに、若君に見つめられてうれしそうです。



唯に救いの手が舞い降りてきます。



崖の上から声がします。見上げると天野様です。

天野様は殿の命令で三百の兵を引き連れて山にいました。

若君は天野のじいに唯のお陰だと言います。

天野様は唯のほうを見ると、悪丸とかけくらべをして勝った小僧だと覚えていて、そのことを若君に伝えます。

若君は唯がかけくらべで悪丸に勝った血走りなのだと知ります。

天野様は今回の働きで、唯に御馬番という役を与えます。

唯は若君と一緒にいられるという目的の地位まで出世して満足そうです。



若君は唯に、

「これより急ぎ山を下り敵の背後を突く」

ともう一度戦場に戻ると思いもしないことを言います。

命拾いしたところなのに、本当に行くの? (行きたくないな)と唯は思います。

若君のもとに側近の小平太が到着します。

戦況の報告がなされ、高山軍は引き上げていると聞き、若君も引き上げることにします。



黒羽城に戻ります。

城に着くまでの若君と天野様の会話を聞いて唯は落ち着きません。

唯は鐘ヶ江の娘が城にいることを知り、天野様が若君を囃し立てているのを見てなんとかしなくてはと思っています。

唯は若君と一緒に城の中に入ろうとすると、門番に止められてしまいます。唯は城の中に入ることができません。

唯は若君と一緒だと思っていたのに、若君の馬と一緒だと知り落胆します。



唯は若君の馬を世話しなくてはいけないのに、経験がなくて世話できません。より簡単な所へ追いやられ、唯は馬糞を1か所に集める係にされてしまいます。



どうにか城に入ることはできないか。

唯は門番に掛け合います。まったく相手にされません。



唯はあれこれ考えていると、若君によく似た後ろ姿を見かけます。全力で駆けていきます。唯が声をかけ、男が振り返ると若君ではありません。似ているけれど違います。男は羽木成之といい、若君の兄です。成之は何か企んでいるようです。



唯はどうにもならない日々を過ごしているところに、

「これ 唯之助」

と声をかけられます。

干草の上で居眠りしていた唯は、ぐずぐずした返事をします。

「たわけ わしじゃ」

若君が来ています。唯は驚いてしまいます。

「遠乗りにゆく ついて参れ」

と若君は唯に言います。

唯は初デートだと喜んでいます。

若君は愛馬吹雪で、唯は走っています。唯の想像と現実の差が面白いです。



眺めのいい場所に到着します。

崖のような場所で、ずっと下のほうに川が流れています。

崩れやすいと若君が言うのに、唯は覗き込もうします。

足をかけた場所が本当に崩れ、危機一髪のところで唯は若君に抱えられるようにして助けられます。



若君は天野のじいに唯之助をどこで見つけたのか尋ねます。

天野様は小垣出兵の時の様子を話します。

若君の中で唯之助と「ふく」が一致しました。若君は唯をようやく見つけることができます。



唯は仲間と雑談していると、若君がお呼びだと言われます。

若君の所へ行くと、人払いをされ、二人きりになります。



若君は紅梅餅という京の菓子を食べさせようと呼んだといいます。

甘いものが全くない生活をしていたから唯は美味しそうに餅をほおばります。

久しぶりの甘いお菓子にがっついてしまった唯は、若君に恥ずかしい姿を見られてしまったと思い、話題をふります。

唯は小垣の寺で夜、若君と話をした、戦はいけないという話をもう一度します。

若君は黙って唯に話を聞いています。



「ところで まだ 腹は決まらぬか」

急な若君の言葉に唯はゆっくりとどういうことか考えます。

どこかで聞いたような台詞です。

唯はゆっくり記憶をたぐらせていくと、その言葉を若君の口から聞いた場面を思い出します。

唯は若君に全部バレてしまっていることに気づきます。

あわてて、その場から逃げ出してしまいます。



干し草の中に潜り込んで、唯は若君の言葉を思い出します。

うれしいやら、はずかしいやら、悶絶していると、なにか声が聞こえてきます。

若君が… という言葉が何度か聞こえてので唯は、干し草から顔を出して、

「何の話 してるんですか? 若君様がどうかされたんですかぁ?」

と口を挟みます。

密談しているのは若君の兄上の側にいる坊主と家来です。

二人は密談しているのがバレて、慌ててその場を去っていきます。

唯は、

(「絶対 何か 悪いこと考えてる」)

(「やな予感がする…」)

と警戒します。



羽木と高山の和議締結の日。

唯は若君のお供ができると思っていたのに、若君は輿で行くと聞かされ、城に残る事になります。

坊主と成之の家来が話す内容のところどころが聞こえていた唯は、もしかしたら、和議の場で若君のお命を狙おうとする奴がいるのではと推測します。

若君の一行の中に成之の家来の姿が見えます。唯はあの人は誰だと聞くと、高山の使者だというので、いよいよ自分の予測は当たっていると顔を青ざめます。

唯は若君一行をとどまるよう言おうと、走り出します。横から唯を呼ぶ声が聞こえ振り向くと、成之の側にいる坊主が現れます。

唯は坊主にみぞおちを殴られ、気絶してしまいます。

坊主は唯を担いで運び、干し草の中に放り投げます。

若君の兄の成之が仕組んだことのようです。



唯が目を覚ましたときには、すでに月がのぼっています。

唯は何だったかなと考えると、若君が危ないことを思い出します。

急いで用意をして、仲間に、若君が行った吉田城への行き方を聞き走っていきます。



吉田城に着くと、門には篝火が焚かれ、ただごとではない様子です。

唯は門番に何かあったの? と尋ねます。

「若君が… 何者かの矢を受けて… 深傷を負われた」

と唯の嫌な予感が的中してしまいます。

唯は愕然とします。

(「どーしたらいいの!?」)

と見上げると今夜は満月です。



唯はでんでん丸を使って、若君が寝ている部屋にたどり着きます。

唯は顔が真っ白で動かない若君にしがみついて泣きじゃくります。

「これ 唯之助… そこ… は痛い…」

若君は弱々しい声で唯に言います。

なんとか話せたので唯は若君に、懐剣を持たせます。

「この懐剣を持って! 抜いてください!! 早く!!」

「何…故…?」

唯の言うことがわからない若君は言います。

唯は手紙を袷にさし、

「大丈夫です! 向こうには弟がいますからこの手紙を弟の尊に渡して下さい!」

若君は唯に言われたとおり、懐剣を抜きます。起動スイッチが作動します。

「お前…は あの夜の… ふく…であろう?」

「は はい… 実は… そうです ごめんなさい…」

「……… まことの名は…?」

「唯です 速川唯」

唯の前から若君の姿が消えます。



ようやく若君がふくと唯之助が同一人物だと知り、唯が若君を守るため近くにいられるようになったのに離れてしまいます。

続きます。



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