徹底的に悪者、悪と愛の間で揺れる者、悪にも善なりきれない者、悪に染まろうとする者を救おうとする者の物語です。
アラバスター(ジェームズ・ブロック)が美しいもの、社会に憎悪するようになったきっかけ、亜美の秘密、ゲンと亜美の出会い、亜美を頂点するアラバスターとゲン、三助その他の組織の誕生、アラバスターを追う捜査官ロック・ホームの登場までが描かれています。
心が悪に染まり、狂信していくアラバスターが築こうとするもの、悪に抗おうとする亜美と仲間達の行方が面白いです。
学生スポーツのチャンピオンでオリンピックでは六つの金メダルを手にし、世界的なトップスターとなったジェームズ・ブロック。
彼はテレビで活躍している女優スーザン・ロスに好意を持ち、交際に発展します。
ジェームズは意を決してスーザンに結婚を申し込むも、オリンピックの英雄としてお付き合いしていただけだと断られます。
スーザンの馬鹿にしたような言葉はジェームズを逆上させ、運転したことのない自動車を運転し事故を起こし逮捕されてしまいます。
裁判にかけられ法廷ではスーザンの虚偽の証言が支持され、弁明の余地もなく懲役五年の実刑の判決を言い渡されてしまいます。
服役中ジェームズ・ブロックは社会に絶望し、スーザン・ロスを怨み、復讐を決意します。
その間に受刑者のじいさんと知り合いになり、話すうちに透明になれる装置を発明したことを知ります。
じいさんは自分が刑務所から生きて出られるかわからないからと、発明した装置のありかをジェームズに教えます。
刑期を終えたジェームズ・ブロックは懐疑的ながらもじいさんに教えられた場所を探してみると、その家は実在し、聞かされた手順を踏むと銃のかたちをした小さな装置が出てきたのでした。
試してみると、じいさんの話していた通り透明になる装置で、ジェームズは自分の身体で試してみます。
光線を体にあてると焼けるような痛みでとても浴び続けていることはできずその場に倒れ込んでしまいます。
痛みが抜けて鏡をのぞいてみるとこの世のものとは思えないグロテスクな、皮膚のみ透明になり体中の血管が剥き出しになったおぞましい姿になってしまったのでした。
半透明の体になったジェームズ・ブロックはアラバスターと名を変え、自分を裏切ったスーザン・ロスへの復讐に向かいます
亜美という少女は特異な体質を持って生まれ、常におしろいで全身を塗っていなければならないのでした。
おしろいがはがれてしまうと瞳以外はすべて透明なのです。
この少女はジェームズ・ブロックが服役中に知り合った透明になれる銃を発明したじいさん(博士)の孫で、博士の裁判で担当した女性検事が引き取って育てていました。
生まれつき身体が透き通っていることでいじめられて傷ついていました。
透明になる装置を手に入れたら、生まれ持つもので傷つけられたら、裏切られてわき上がる悪というものをドラマチックに描いた作品です。想像しすぎると怖くなってしまいます。
手塚治虫 アラバスター 1巻
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