宮園かをり(みやぞのかをり)は有馬公生(ありまこうせい)にもう一度ピアノを弾いてほしくて、自分のコンクールに引っぱってきて、どうしても演奏家として舞台から見える光景を公生に感じさせたかっただろうなと思える2巻のお話でした。
澤部椿(さわべつばき)は公生がピアノを弾くことになってうれしそうです。
いよいよ公生が舞台に立ちます。
序盤はうまくいき、このまま無事に終えられるはずでした。かをりが刺激的な音を鳴らしだすと、取り残されまいと公生も応じます。練習不足のためか公生の思い通りに動いてはくれません。なんとか頑張る公生の視界に母の幻影が映ります。母から教わったことは繰り返し繰り返し楽譜を読み込んで、何度も何度も弾き込むこと。譜面の指示通り、作曲家の意図通り、完璧にすること。公生の頭に母がよぎると、とたんに公生に耳からピアノの音が消えてしまい、弾くことをやめてしまいました。
公生のピアノの音がとまるとかをりも演奏をやめてしまいました。
二人の目が合います。
「アゲイン」
かをりは公生にもう一度弾くことを要求します。
かをりのコンクールを自分がダメにしてしまった。公生はうつむいたままです。かをりの瞳の中に宿る決意を思い出します。かをりはどんな姿でヴァイオリンを演奏しているのか。かをりの姿を見て、もう一度弾く覚悟を決めます。
公生の音はバラバラなままです。集中、集中。公生は自分に言いきかせます。公生は記憶をたぐります。ふと母の言葉がよみがえります。音が聞こえないならイメージした音を指先から鍵盤に伝えるように弾こうとします。必死な覚悟が公生の音を変えます。
その音は強く主張しはじめ、ヴァイオリンの伴奏という音ではなくなり、主役のヴァイオリンに取って代わってしまおうとする音に変わっていきます。
公生の音の変化は、観客を、審査員を、かをりを驚かせます。
今度は公生のピアノにヴァイオリンでかをりが応えます。互いの個性のぶつかり合いに会場が観客がのみ込まれていきます。
かをりのヴァイオリン、公生のピアノはコンクールの音ではなく、観客を魅了する音へと変わっていきました。
観客は演奏の素晴らしさを拍手と歓声で讃え、会場は興奮したものとなりました。
かをりは演奏を一度中断してしまったため予選を通過できませんでした。
公生は責任を感じています。
公生はかをりが予選で落ちても自分を責めないのがこたえています。かをりは責めるどころか、
「ピアノは弾いてる?」
とたずね、公生が弾いてないことを知ると、どうしてなのか、そのことについてばかり聞いています。
公生は自分にはピアノしかないことがつらいと言います。しかし、かをりはピアノしかないことはいけないことかと問いかけます。
「二人で演奏したあの時感じた気持ちを忘れられるの?」
とピアノに向かうことをすすめます。
椿はかをりとは違う気持ちを抱いています。
公生がピアノに向かわなくていい理由を挙げようとしてもひとつも出てこなくて、ピアノに向かうことで思い出される苦い記憶が椿を不安にさせます。
演奏を終えると、かをりは舞台の袖で意識を失い倒れてしまいました。
かをりは病院に搬送され、入院してしまいます。
「また 倒れた」
また、とかをりは言いました。かをりは何か秘密を抱えています。
コンクールの予選を通過できなかった負い目もあり、公生はかをりを避けるようにしていました。しかし、公生とかをりの演奏を観た観客の歓声、うねりのような拍手。公生が忘れられるわけがありません。
「君は忘れられるの?」
かをりが公生に言った言葉です。
手ごたえ、観客の反応、自分の音楽が届いたと思えるあの瞬間に感じる興奮。
公生は自らの意志で踏み出し、ピアノコンクールに出場します。
続きます。
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