体温が上がり感情が揺さぶられる展開です。これまでの物語で一番好きです。
ヒョウから文を受けて、懇意にしている南戒(ミナミカイ)の貴族が、船隊を率いて仙水(センスイ)にやって来ます。
水の部族駐屯地の兵舎では、沖の船隊に反応して忙しなく兵士が動き回っています。
リリは駐屯地の門番に、隊長に会わせて欲しいと言います。門番は取りあおうとはしないので、スウォンが、
「この御方は水の部族長アン・ジュンギ様がご息女リリ様にあられます」
とさらっとリリがヨナに隠していた身分を明らかにしてしまいます。
ヨナの視線にリリは必死に無表情を装おうとします。
門番はジュンギ将軍の娘と言われ、慌ててラマル隊長のところに案内します。
リリは兵を動かすよういいます。
隊長は前例がないと躊躇します。
リリは水呼城から持ち出した水の部族長の象徴、水の金印を兵に見せます。駐屯地の兵士達はリリに従います。
ラマル隊長は、ここの兵力では船隊に対抗できないと進言します。
スウォンが口をはさみ、隊長に策を示します。ヨナの眼を見ず、
「それに、いるんでしょう? 向こうには 雷獣が ならば 何が来ても負けませんよ」
と言います。
スウォンの策、ハク、キジャ、シンア、ジェハの武力は船隊をどんどん沈めていきます。
ハクは戦いながら、兵士たちに策を授けた人物について考えています。一人しか心当たりがないので表情が険しくなっていきます。
ヨナたちは高台から沖の様子を見ています。スウォンはヒョウの行動を予想します。
ヨナ達がヒョウを探していると、襲撃を受けます。ヒョウの命令で赤い髪の女ヨナを狙っています。
スウォンと護衛ジュドがヒョウの部下をやっつけます。
スウォンは襲ってくる数が多いのでヒョウは近くにいるのではと考えていると、ヒョウは本当に近くにいて、ヨナを狙っていました。ヒョウは剣を持ってヨナに迫ります。ゼノがヨナの前に立ちヨナをかばおうとします。
ヒョウが目前に迫ると、ゼノの前に腕でヒョウの剣を受けるハクが現れます。ハクは見たこともない恐ろしい表情です。
ヒョウが何事か叫ぶも、ハクが拳一撃で沈めます。
左腕に刺さった剣を抜き捨てスウォンを見据えます。
一歩一歩スウォン近づいていきます。
スウォンの護衛ムアとギョクがハクの前に立ちはだかります。一人は殴られ吹っ飛び壁にたたきつけられて気を失い、一人は剣を持つ拳を握りつぶされてしまいます。続いてジュドがハクに剣を振り下ろします。胸が斬られてしまいますが、ハクの目はジュドを見据えています。ジュドの腹に蹴りを入れ、身体が浮き、くの字になったところを顎に下から突き上げるように拳を入れます。ひっくり返って地面に叩きつけられ、ジュドは動けなくなります。
ハクはスウォンを掴もうとする手をジェハに掴まれます。
ハクは手を振りほどきジェハの腹を殴ります。ジェハは本気でいかないとハクを止められないと悟り、やり合います。
ジェハはキジャにハクを抑えるように言います。
スウォンが護衛とともにその場から去ります。
ハクは叫びます。
「はなせ はなせェェェ あいつは あいつだけは!!!」
ハクは怪我をした左手にそっと触れる小さな手を感じます。
「ハク」
ヨナの声です。
「大丈夫 私は 大丈夫だから」
ハクが止まります。
一部始終を見ていたリリは呆然としています。
数日後。
ヒョウおよびヒョウの残党はほぼ捕えることができました。
リリはあの日起こった出来事を回想します。
ウォンがスウォン陛下だった。ヨナは…?
ヨナ達は町の外れで野宿しています。
リリは食料を差し入れます。
ヨナはリリに仙水を発つと言おうとしたのに、リリは食料を手渡すとすぐ帰っていきました。
キジャはハクを気遣います。ウォンと名乗っていた男がスウォンだったと知り、キジャとジェハはハクを止めたことにいろんな感情を抱いています。
スウォンは緋龍城に戻ります。ケイシュク参謀が出迎えます。護衛が怪我をしているので慌てて医務官を呼びに行きます。
ジュドはスウォンにハクが殺意を持って迫ってきているのに棒立ちで動かなかったことに怒っています。
スウォンは、
「すみません」
と謝り、次は斬ると約束します。
リリがヨナのところに訪れると、明日発つと言われてしまいます。
「じゃあリリ 元気で」
と素っ気なく言われてしまい、駐屯地に戻り一人で泣いています。
そこにアユラとテトラがやって来ます。リリが滞在していることを駐屯地の兵士が水呼城に伝えていました。
テトラがリリに涙の理由を聞くと一人で解決すると後悔しますよと言い、もう一度ヨナに会いに行きます。
ヨナはリリと一緒にアユラとテトラも来たことを喜んでいます。今夜一緒に食事でもどうかと探しに行こうとしていたところでした。
リリはもう会うことはないかもと思っていたのに、ヨナが微塵も考えていなかったことに安堵と誤解していた恥ずかしさと平常運転の怒りがこみ上げています。
ユンが料理を作ります。
ヨナと話すリリが楽しそうなので、テトラは嬉しそうに眺めています。酒瓶を持ってハクに話しかけに行きます。
話しかけられたハクは、自分の正体は知られているし、リリの素性も分かったので、どうする? と問いかけます。
雨が降ってきます。
ヨナは天幕にリリを連れて行きます。
ゼノとジェハはヨナのところに行こうとして、アユラとテトラに止められ、ギュウギュウで男達の天幕に移動します。
テトラはハクに先程の話ですけれどと切り出します。
「私はアン・ジュンギ様とリリ様に全てを捧げる身… ジュンギ様の利になる事は何でもいたします ですが」
と続き、
「ジュンギ様とリリ様さえ良ければよい ――なんて馬鹿な事私は思いません 貴方方は水の部族の恩人 緋龍城のお姫様は従者に連れ去られ殺されたと聞いておりました 真実はなかなかに届いて来ぬもの… きっと様々な苦難がおありだったのだとお察しします ですから リリ様と私達の大切な貴方方へ これからの道中 どうか お気をつけて」
と思いを伝えます。
ヨナと二人きりのリリは今後の目標と少しの愚痴と親への不満、アユラとテトラにしか話さないことを打ち明け、一番聞きたいことを尋ねます。
「…… …… …あんたは 失踪して殺されたはずの…… ヨナ…姫…?」
ヨナは無言です。ヨナの顔が答えでした。
リリの眼から涙がこぼれます。知り合ってからここまでたくさん助けてもらったこと、ヨナのようになりたいと思ったこと、してあげられること、かけてあげられる言葉など今の自分にはないと考えています。ヨナの力になれるよう頑張ろうと決心します。
翌日日が昇るとヨナ達は仙水を発ちます。
水呼城から兵士がやって来ます。リリに、
「リリ様 水の金印はお持ちですか? ジュンギ将軍がお呼びです 速やかに水呼城へお戻り下さい」
と言います。リリは
「私はまだここで後始末がある 水呼へはその後 帰るわ」
と言います。
「いつまで我儘を言うつもりだ」
と声がします。リリが振り向くとアン・ジュンギ将軍が立っています。
アン・ジュンギはリリに水呼城からの追放を命じます。
アユラとテトラは慌てて撤回を求めます。しかし、リリは受け入れると言います。
ジュンギは仙水で後処理と今後の指示をし、五部族会議が行われるため、緋龍城に向かいます。
会議の内容は、高華国北西部…地の部族と南戒の国境沿いの地域をとるため出陣するというものです。
ケイシュク参謀はアン・ジュンギ将軍に今回は静観は許されませんと圧力をかけようとします。
ジュンギは恐ろしいほど冷静に、でも攻撃的にケイシュク参謀を見返します。
リリの行動力と気持ちの熱さにジュンギの心も動かされています。
高華国は南戒に出陣します。
リリは父から仙水の別邸を与えられます。
ジュンギから水呼を追放を言われ、牢獄を用意したというから覚悟して来て見れば、水呼城のリリの部屋より快適かもしれない屋敷を与えられます。
テトラは、
「『お前が決めた道だ この地で最後までやり通せ』と背中を押してらっしゃるように思えますけど」
とジュンギの考えをリリに伝えます。
リリはようやく父に思いが届いたと感激し、すぐに行動し始めます。
続きます。
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