2019年4月14日日曜日

森本梢子 アシガール 10巻

唯が若君を守るため、羽木家が生き残るため奔走します。

唯の奮闘ぶりに、なんとかして羽木家を守ってほしい、若君と無事難局を切り抜けてほしいと願うばかりです。




「すごくいいこと思いついた」

という唯が持っている武器は、

まぼ兵くん

金のけむり玉

でんでん丸

起動スイッチ

の4つです。

唯は4つの道具を駆使して、すごくいい作戦を実行するためどのようにして殿を説得しようか考えます。



唯が思案していると、部屋から甲冑を身に纏った家老四人じいちゃんばかりが出てきます。

唯のおじじさま、天野信茂は、

「夜討ちじゃ」

戦わずして負けを認めることはできないと、城の外へ出て、高山に奇襲をかけると言うのです。



唯が止めるのも聞かず、四人のじいちゃんは城壁の抜け穴から出ていきます。

ただちに唯は悪丸とともに救出に向かいます。



四人を城に連れ戻します。

千原元次だけ亡くなってしまいます。

話を聞きつけた殿がやってきて勝手な行動をした家老を叱責します。

しかし、殿は天野信茂の話を聞くと、明日城を出て戦う覚悟を決めます。

近くで聞いていた唯は殿を全力で止めます。

若君が言ったことを伝えると、殿は戦うことをあきらめ、唯の逃げるための策を聞いてみることにします。



唯の秘策(すごくいいこと)を聞くため、天野信近、成之が集まります。

唯は自信満々に、城の北の門から逃げるという策を語ります。

殿、信近、成之は唯の策があまりに単純で言葉が出ません。

北の門から城を出たとしても、北には野上衆がいて、野上衆と羽木家はこの五十年ずっと争っていたから、高山軍と野上衆に挟まれ逃げられないと言います。

唯は野上衆については、若君がつい先日和睦の交渉に成功したことを言おうとしたその時、部屋に野上衆棟梁野上元丞の倅、野上元継が入ってきます。

元継が仔細を話し、野上衆は羽木家の力になると表明します。



殿は羽木家総勢で城から即刻退去する決断をします。

なんとか唯の計画したとおりになります。



どうにか全員で城から逃げることは決まったものの、唯は城を出た後のことについて、不安を感じます。

城に戻ることはできるのか、城での暮らしがなくなってしまいどうするのか、とめどなく不安がこみ上げてきます。

奥の女たちは藤尾様を中心に城を出ると決まったのだから気持ちを切り替え、城を出る準備を大急ぎで始めています。

そんな様子を見て唯は、前に進むしかないと、迷いがいくらかやわらぎます。



さらに奥からは阿湖姫に声が聞こえてきます。

唯は阿湖姫のところへ行き、松丸家に戻ることを引き止めたのに、今のような状況になったことをわびます。

阿湖姫は、

「阿湖はもう 羽木家の者になったつもりでおりまする」

と唯に責任はないと言います。

唯と阿湖姫が話しているところに成之がやってきます。

成之は阿湖姫と話すために阿湖の元にやってきたはずなのに、唯がいたからなのか、またいつもの皮肉交じりの言葉を発します。

培った性格はなかなかそう簡単には治りません。

成之は言ったあとに後悔したと思います。

早く思ったことを思ったまま素直に話せるようになれればいいのにと思います。

阿湖姫は勇気をだして、

「阿湖はもうっ 成之様の妻になったつもりでおりまするっ」

まっすぐ成之を見つめ、顔を真っ赤にして大声で宣言します。

成之は阿湖姫の言葉に面食らいます。

それでも平静を装いつつ、

「阿湖殿 もしここを生き延びることができたならば その時は必ず」

と言います。

阿湖姫にとっては何よりの返事です。

成之が立ち去ると、阿湖姫は立っていられずその場にへたり込みます。

唯は阿湖姫をほめます。

本当に姫様なのによく頑張ったと思います。



成之は野上元継に呼び止められます。

元継は小垣の様子を探って若君が小垣城に籠城していることをがわかったと言います。

若君と言う言葉が聞こえて唯は、成之と元継の会話に入ってきます。

唯は今すぐ小垣へ行かなきゃとあわてます。

元継は小垣へ行く野上衆だけが知る道があるので、唯が行くのなら案内すると言います。

成之は唯の気持ちを汲み、唯の城の者たちを逃がす手立てを自分が引き受けようと言います。

唯は成之に、

「本当に 心 入れ替えたのね ありがとう!!」

と言います。

成之は唯の存在が生き方を変えるきっかけになったのをわかってはいても認めたくないようです。

唯に感謝されたのだから、もう少し表情をくずしてもいいのにな。

成之にはもう少し時間が必要です。



唯は成之に城のことを任せ、小垣に向かいます。

満月の夜まであと四日です。



小垣までの山道あるいて三日、小垣城を目前にして、城が陥ちたと知らせが入ります。

明日の朝、若君が敵に降るというのです。

満月の夜より一日早いです。

とにかく急いで小垣城へ向かいます。

最後の金のけむり玉を使い城までやってくると、城門の前には竹の柵が施されてあり城門にすら辿り着けません。

唯はでんでん丸を使って、力づくで城の中に侵入しようとします。

覚悟を決め、行動しようとしたその時、横から蹴りを食らい唯は地面にたたきつけられてしまいます。

その衝撃ででんでん丸が壊れてしまいます。

最後の武器も使えなくなった唯の目の前に槍がつきつけられます。

唯は、終わった、と呆然としていると、

「待て」

と声がかかります。

唯に槍をつきつけた兵は

「…あ これは 若君様」

と言います。

若君という言葉に唯は、待て、と言う声が聞こえた方を向くと、若君は若君でも忠清ではなく、高山宗熊が立っています。

宗熊がいたことで、唯は命拾いします。

宗熊に陣幕へ連れて行かれた唯は、若君を逃がすよう求めます。

宗熊は忠清との約束を反故にして申し訳ない気持ちではあっても、織田方に逆らえず、唯に申し出を断ります。

それならばと唯は、自分を城の中に入れてほしい、開城の期限を一日だけ延ばしてほしいと言います。

宗熊はそれだけは叶えてやりたいと、織田方に交渉し、意地を見せ、唯の要望を受け入れさせます。



唯は起動スイッチのみを持ち、場内に入ります。

城の中では若君と木村政秀が話しています。

唯に若君のいつもと変わらぬ笑い声が聞こえてきます。

唯は若君の姿を見ると、こらえていた涙をこぼします。

再会した唯は若君の胸に飛び込んでいきます。


再会をかみしめているのに、木村が唯に黒羽城の状況を教えてくれと、邪魔をします。


黒羽城では、成之と悪丸二人が残り、全員城を出て安全を確保するまでまぼ兵くんで時間を稼いでいます。



唯は若君と二人きりになりたいのに、木村政秀がなかなか部屋から出て行ってくれません。

唯は開城の期限を一日延ばしたことを報告します。

唯は若君に起動スイッチを示し、

「明日の満月の夜の次の朝です」

と言います。

そして唯は本来なら五日前に執り行われるはずだった婚礼を行いたいと言います。

木村は、

「そうか! それはよい」

と言います。

若君は、

「待て 唯… すまぬがそれはできぬぞ」

と婚礼を挙げることはできないと言います。

木村が若君に唯のわからない何かを話すと、若君は婚礼に納得します。

木村と若君が交わした会話から、若君がどこの所に説得されたのか唯と同じくわかりません。



唯と若君は婚礼の儀式を終え、お床入りです。



唯の三度目の閨チャレンジです。

唯は若君の抱きしめられ、あるはずのこと、あってほしいこと、したいことをあれこれ思い浮かべ、そのどれもが一緒にはできないことで悲しくなり泣いてしまいます。

若君は唯の気持ちを感じ取り、さらに強く抱きしめます。

唯は優しく髪をなでられながら若君を感じて眠りについてしまいます。



唯が目を覚まします。

眠ってしまったことを悔みつつ唯はあわてて若君を探します。

若君はすでに着替えていて月を眺めています。

唯は起動スイッチを手に取り、若君に、

「若君 一生のお願い どーしても聞いて欲しいお願いがあります」

と若君に言います。

若君は、

「唯 わかっておろう それは聞けぬ」

と言います。

若君はどれだけ説得してたとしても承諾はしない、そして、唯に起動スイッチを使って現代に戻るよう言います。



唯は甲冑に着替え、うつろな目で若君に心の中で語ります。

若君は唯に気持ちを先読みし、

「唯 あまり尊をいじめるなよ」

と言います。

唯はビックリします。そして、

「はい」

と言います。



唯は不本意ながら、起動スイッチを抜きます。

消える間際、

「でも若君!! 若君はまだ一生分私を抱いておられぬからね てゆーか 一生分も何も 結局 一度も 抱いておられんから…」

と涙をこらえて叫びます。

唯の姿が消えます。

若君は唯に言葉に笑い、月を見上げます。

唯が若君を守りたいと思う以上に、若君は唯を守りたいと思っていることが伝わります。



しばらくの別れになるのでしょうか。

今生の別れになってしまうのでしょうか。

新しく文献が発見されて、若君の消息を知る展開はちょっと切ないです。




番外編は二本、若君の初陣、若君の現代の暮らしぶり、です。



若君の初陣

13歳の若君の最後の台詞、

「わしは女子が戦場に来るのはすかぬ」

数年後には、

「はて、そのようなこと申したか?」

ととぼけそうです。

成之だけでなく、若君も唯と出会って生き方を変えた一人なんだと思える台詞です。



若君の現代での暮らしぶり

尊の小姓っぷりが板についています。

若君は歴史の本から、無益な戦いを避け、守れる命があるかを考えているところや、

人の得て不得手を上手に伸ばしてあげようとするところが本当にかっこいいです。

続きます。



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