19世紀末の中央アジアの遊牧民や商人の文化や風俗、人々が何に重きをおいているのかがこの作品を通して知ることができました。
居候のヘンリー・スミスはアンカラへ旅に出た。カラザでは盗難に遭うが、いま、運命の女性に出会う…!
アミルとカルルクのほんわか夫婦と別れ、アンカラへ向かうのに手配してもらった案内人と会う約束の市場にやってきたスミス。
いくら探しても案内人らしき人物は見当たらず、どうしたものかと、とぼとぼと繋いであった馬のところまで戻ってくると、荷物をのせたロバとともに馬がいなくなっています。
気が動転し、慌てて探してみても目撃者もなく、ダメだよ目を離しちゃと言われてしまい途方にくれてしまいます。
周囲を見まわしていると、スミスさんと同じようにキョロキョロと何かを探している様子の女の人が目に入ります。
その女の人もスミスさんの存在に気づき、近寄ってきて、スミスさんと同じ場所に繋いでいた白い馬の行方を尋ねます。
スミスさんは同じ事情であることを説明し、ふたりでそれぞれの馬を探してまわります。
ある市場の主人らしき人が、
「場長さんに相談してみな」
というので、いわれたとおり場長さんという人物がいる建物に向かいます。
場長さんに相談してみると、場長さんはある程度の目星がついているようで、難なくそれぞれの馬と荷物をのせたロバを取り返してくれます。
大切な馬だったらしく、無事に戻ってきて涙ぐむ女の人。
荷物の中身もなくなっていないことを確認し安堵するスミスさん。
捜し物が見つかり、この場で別れようとすると、女の人が、
「あの……もしよろしければうちにいらっしゃいませんか? お客様に来て頂ければ義母も喜びますし まだお泊まりが決まっていないようでしたら」
といい、何かの縁を感じたのか、スミスさんは女の人の招きに甘えて、世話になることにします。
女の人の名はタラスといい、義母とふたりだけで暮らしています。
同じ被害に遭って知り合い、ゆるやかにお互いが惹かれていき、将来を約束し、文化の違いによって引きされてしまうという、スミスさんとタラスさんの結末がさみしいです。
初めてタラスを見かけたときの、スミスさんの一瞬で心が奪われてしまったかような表情や、決断してタラスの家に向かうと思いもよらないことが起こり、一方的に話がつき、この土地の文化を思い知る場面が印象に残りました。
タラスさんはスミスさんに向ける表情や、髪をほどき、髪が風になびいている姿や、羊とじゃれあっているときに見せる表情、そして、早朝、義母が起きる前にスミスが立ち去ろうとするところで見せる表情が美しいです。
感情を表に出さないタラスさんがスミスさんの身に何かあったかもしれないと感じると、居ても立ってもいられず、馬に飛び乗り、市場まで駆けつけ、スミスさんの安否を確認し、
自分の心情を吐露する場面は、コマを眺めていると、アミルやパリヤと同じように顔がまっ赤になっていくようでした。
もう登場しないかもしれないと思われた、カルルクやアミル、パリヤが再登場してくれてのは嬉しかったです。パリヤの四コマも面白かったです。
想像力豊かなパリヤ。
何を想像して、顔をまっ赤にして、のぼせてしまったんでしょう。
多感な女の子です。
アミルにだけは素直に気持ちを話せるところや、どうしてか空回りしてしまうところがかわいらしいです。
縁が順調に進んでいけばいいなと思います。
森薫 乙嫁語り 3巻
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