短編が3作品収録されています。
●波のむこうに
もし美人なら、どんなに楽しい人生なのだろう。
生きることに絶望した教師が、毒と書かれたビンに入った液体を飲みほし、美女に変身し世界が一変するお話です。
想像してた日々が訪れ、最上の気分を味わうところや、変身する前と変わらなく接する男との会話に、手に入れた一瞬のきらめきを謳歌するのと、変化したことにとらわれず、いつもどおりに接する人物を大切にするのを選ぶのは、当然後者とは言い切れない部分もあるんじゃないかなと思いました。
●電波の男よ
白馬の王子を待っているというヒロインは行動的で、意中の人を探し求め判明したとたん弱気になってしまうヒーローがうまくつり合っていて面白かったです。
声の記憶って案外しっかりしているもので、似ている声を人ごみの中でも聞き分けたり、少し声に変化があっても分かってしまうことがあります。
受話器の向こうの声を聞いたその瞬間に記憶がどっとよみがえったときの混乱は大変なものだったんだろうな。
入間野浜子がエレベーターで大河内寿三郎の声を聞いて、この人だ…、と思ったときと大河内が受話器での声を聞いたときのコミカルさが面白かったです。
●海の満ちる音
失うことを恐れて、何も持っていなかったことに気づかなかった女性とやり直せるものならやり直したいが同じ過ちをくりかえしてしまうことを恐れる男性のお話です。
失うかもしれないならと消極的になったり、自分の欠点をさらけ出すのがこわいのってそれが大事であればあるほど大きくなってしまいます。
家のくだりの二人の探りあいがよかったです。
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