新人王となった零は様々な人々の期待を受け宗谷名人との記念対局に臨む。この対局をきっかけに零は宗谷の重大な秘密を知ることになる。一方、島田八段は棋匠戦で初タイトルをかけ柳原棋匠と死闘を繰り広げていた…お互いのすべてを出し尽くした勝負の行方は…?「戦い続ける事」その重さを読者の方に問いかけます。様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語です。
静かで明るくて何もこわくない所
宗谷名人との対局は桐山零にとって、こういう世界があるんだと初めての感覚を体験させるものでした。
研究と経験を重ねて努力し続けることで、はかることさえできない宗谷名人との圧倒的な差は埋まるのか。嵐のまっただなかに自分は立っていると思っていたのに、嵐の渦はずっと先にあって、がむしゃらに走ってもたどりつけるのか、嵐の渦に飛び込んでいけるのかといろんな思いが交錯します。
対局を終え、帰りの新幹線に乗るため駅のホームに立っていると、同じ新幹線で戻ろうとする宗谷名人をみかけます。
そこで零は宗谷名人の秘密を知ります。日本将棋連盟会長神宮寺崇徳をはじめ、ごく限られた棋士たちにしか知られていない宗谷名人の秘密でした。ずいぶん前から宗谷名人の耳はきこえなくなっていたのです。
前夜祭でのかみ合わないインタビュー、不手際があっても平然と求められてもいないコメントをし周囲を沈黙させたふるまい、そのために将棋の鬼と呼ばれていること。零はすべて納得がいきました。それだけに、宗谷名人との対局したあの感覚をもう一度味わいたい思うのでした。
二階堂が復帰します。
順位戦は、一年をかけて10局を戦います。零や二階堂のいるC1は34名で、毎年その中のトップ2人が昇級し、5人に1人の割合で成績下位者に降級点がつき、その降級点が2つになると降級となる。
島田は零に二階堂はきっと気落ちしているだろうからのぞいてやってくれ、零の顔を見たら元気出るだろうと言い、数日後の玉将戦を観にいきます。
二階堂の相手は青野八段。二階堂が準決勝の山崎順慶と対局のとき倒れたとき、世話役の花岡さんをさがし、救急車を手配し、二階堂を看病した人です。
零が対局中の部屋をのぞくと、
「…負けました」
と声がきこえてきました。
二階堂が勝ちました。
島田や零が心配していたのに、二階堂は勝ったよろこびを満面の笑みでかみしめ、研究した成果が勝ちに結びついたことを心の底からよろこんでいます。零も二階堂の笑顔に自然とつられます。
棋匠戦。柳原棋匠と島田の対局です。
島田が勝つと、初のタイトルを手に入れることになり、何としても欲しいと意気込んでいます。
柳原棋匠はなんとしても棋匠を死守したいと、老いともたたかっています。今回の対局に勝つと通算十期達成で「永世棋匠」を獲得することになります。
長年守ってきたタイトルを奪おうとする棋士。死守しようとする保持者。柳原の身体の衰えとタイトルを失ったときの恐怖描いた場面は棋士の想像をはるかに超える重圧を感じます。
ひなた(ヒナ)はあかりとちほちゃんに会いに行きました。いじめた側はなんにもなかったかのように普段の生活を送っています。
ちほちゃんが受けた傷は簡単に癒えません。たぶん癒えることはありません。生涯心の傷を抱えたままです。
今でも中学生くらいの女の子を見ると動けなくなってしまうそうのだそうです
このコマのちほちゃんの表情を見ると切なくなります。
続きます。
羽海野チカ 3月のライオン 8巻
(アマゾンのサイトに移動します)
0 件のコメント:
コメントを投稿