万城目ふみは泣き虫でイヤと言えない性格。奥平あきらは元気いっぱいのしっかり者。そんなふたりの物語です。
大の仲良しだった奥平あきらと万城目ふみ。
ふみが転校することになり、離ればなれになって10年の月日が流れます。
高校一年生の春を迎え、ふみが家族とともに鎌倉に戻ってきて再会するところから物語は始まります。
万城目ふみは松岡女子高等学校に、奥平あきらは藤が谷女学院高等部に入学し、このふたつの学校は近くにあって下車する駅も同じで、再会までにふたりは通学の電車で助け、助けられた出来事で面識があり、母親同士が連絡し合い、再会したときは互いにその日の出来事を思い出し、驚きと気恥ずかしさで面食らってしまいます。
大きな性格の変化はなくても、会っていない10年という空白の時間は万城目ふみと奥平あきらにはそれぞれ異なる経験を得ているので、突然の再会は、面倒見のよい奥平あきらにいつもくっつくようについてまわっていた万城目ふみといった仲の良かったあの頃のような関係をすぐに取り戻すことはできませんでした。
イトコのおねえちゃん千津が結婚をすることになったのを知った万城目ふみが、事実を知ったその日だけでなく、翌日登校するときになっても悲しみに暮れ、奥平あきらが泣きそうになる万城目ふみを見かけ、ハンカチを差し出し、思いもかけない言葉をかけられたことがきっかけで、ふたりは関係を取り戻していきます。
「ふみちゃんはすぐ泣くんだから……」
昔、奥平あきらの口から何度も聴いた言葉で、ふみは幼い頃の懐かしい記憶がわきあがり、あきらを心細くて頼りきっていた存在だったという感覚がよみがえります。
埋まることはないと思っていた空白の時間が奥平あきらの言葉で一瞬でつながったったのでした。
奥平あきらにしてみても、万城目ふみがうつむいて涙をためている光景を見ていると、昔の場面とデジャビュのように感じられて、自然と口から出たんだと思います。
その言葉は10年というふたりの空白の時間を埋めるのに充分な言葉でした。そしてふたりは幼い頃の関係を取り戻していきます。
学校の登下校で会うようになり、それぞれの学校で友人を作り、部活に入部し、高校生活を送ります。これまで考えたこともなかったことを考えるようになる奥平あきら、恋に気持ちが揺れる万城目ふみ、穏やかな雰囲気の中にフッと起こる感情の慌ただしさが面白い作品です。
志村貴子 青い花 1巻
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