新人王を獲った零だったが、いじめられているヒナのために、自分が何もできないと勝手に思い込んでいた。
一方、ヒナは学校で心が挫けそうになりながらも、懸命にいじめと戦っていた。
二人の様々な思いが交錯する中、物語は新たな展開をみせる。
「本当の優しさとは何か?」読者の方に問いかけます。
様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語です。
桐山零が新人戦決勝で対局した山崎順慶五段の人物像が描かれています。
零は新人戦準決勝で二階堂と対局した棋譜を見て感じたことがあります。
二階堂の体調が悪いのを感じとって、じゅうぶんに指せたはずなのにあえて千日手に持ち込んだ山崎のやり方に怒りを感じています。
零は二階堂のぶんまで攻めて山崎をねじふせてやりたいと考えていました。
ところが、二階堂の熱い声援を思い出し、その衝動をおさえこみ、しっかりと守る将棋を指すのでした。
山崎順慶五段は努力の人です。深くふかく読んで、あるのかないのかわからない答えを探していく作業は、どうせ見つからないよとか、もし求める答えが手に入らなかったらという恐怖が頭をよぎると、先を深く読むことに自ら限界を作ってしまいます。
しかし、零や二階堂は臆することはありません。ふたりには山崎が抱えている恐怖を微塵も感じることなく、潜って、手ぶらで帰ってきても、ためらうことなく、ふたたびさらに深く潜っていこうとします。
山崎はどこまでも進んでいこうとする二階堂や零の姿勢に恐怖していました。
その姿を見て、勝つためには手段を選んでいられないという結論にたどりつきます。
二階堂の体調が悪いことは山崎にとって勝てる絶好の機会でした。
何としてもタイトルを手に入れる。見過ごすことはできない。山崎も必死でした。もう一度戻ってきてほしい人物です。
ひなた(ヒナ)にとって京都で零に出会ったことは、なにより元気を与えてくれる出来事でした。
そして、約束の甘味屋へ。ヒナが笑えるようになってよかったです。
零は記念対局で宗谷名人と対局することになりました。突然告げられて零は驚きます。
宗谷名人と島田八段は同じ年?? 会長と零の会話の間に同じ年という話が差し込まれていてびっくりしました。
零は会長からは頼りにしていると言われて戸惑います。これまで誰かに頼りにしているよなんて言われたことがなかったからです。零の表情はわかりませんが照れてうれしそうです。
高校の部活では部長をはじめ、顧問の林田先生や部員が零の新人王の獲得をお祝いしてくれます。こみ上げてくる涙。零はいつのまにか以前いた場所とは違う場所にいることに気がつきました。
そんな喜びもつかの間、将棋部の部員構成が大きく変わってしまいます。放課後将棋科学部は零を残し全員引退してしまいます。
新たに新入部員を獲得しようと動いてみます。生徒は将棋に興味を示さず、部員ゼロ。廃部の危機です。
禁じ手に近い人たちが将棋部に入部希望してきます。生徒ではなく、校長先生、教頭先生、学年主任と3人が入部を希望します。部を存続するにはあと一人。顧問だった林田先生も入部し、合わせて5人。部として存続が決定しました。もう将棋部ではありません。将棋教室です。
修学旅行を終え、通常の授業が戻ると、ヒナのクラスの雰囲気はまた変化します。
担任の先生は精神がおかしくなり入院してしまいます。
新しい担任が決まるまでの間、学年主任の国分先生が急遽ヒナのクラスの担任になりました。
国分先生は三者面談を行い、本気で学校側がこの問題についてはっきりさせる意思を表明しました。
クラスの生徒たちも次は自分がターゲットにされるかもしれないと怯えて過ごす日々は終わるかもしれないと思い始めます。
表面上はクラスでのいじめは終わりました。
仲の良かったクラスの友達がヒナに声をかけてくるようになりました。ピリピリした緊張感から解放れて、ヒナは以前の雰囲気を取り戻しました。
記念対局が近くなります。
ポスターの不公平感が面白かったです。
宗谷名人と桐山零の記念対局のポスターと棋匠戦をたたかう柳原と島田のポスターの力の入れ具合に明らかな差があって、柳原が不平をもらします。棋匠戦のポスターは見ていてかわいそうになってきます。
島田は零が将棋の広報のためいろんな場所に狩り出されていることを心配します。島田は胃痛がひどく自分のことでも精一杯のはずなのに零を気にかけたりする思いやりのある人です。
記念対局の会場で行われる前夜祭。
零は翌日対局を控えているのに、プログラムをこなし、多くの人に囲まれ、体力と気力を奪われそうになります。宗谷名人はあくまで平常心で淡々と軽やかに最小限の動きでそれらをこなしていきます。
まるでロボットのように。
記念対局がはじまります。
続きます。
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