2015年8月4日火曜日

新川直司 四月は君の嘘 10巻

宮園かをり(みやぞのかをり)は手術を受ける決意を固めました。医師は危険の多いものだと言います。それでもかをりの覚悟は揺らぐことはありません。かをりの覚悟は有馬公生(ありまこうせい)からもらったものだと言います。公生の一生懸命な姿がかをりの灰色だった心を色づけてくれたんだと言います。
カラフルに色づいたかをりがモノトーンだった公生の日常を変えたとばかり思っていたのに、公生はかをりに何もしてあげられないと思っているのに、かをりは公生から勇気と希望をもらっていたんだと、医師とかをりと両親の診察室での場面でわかりました。


公生は12月に向けて練習を始めます。


澤部椿(さわべつばき)は公生の近くにいるために嫌いな勉強を頑張っています。


東日本ピアノコンクール予選。
相座武士(あいざたけし)は毎報音楽コンクールで公生のピアノを聴いてから調子を落としていました。くる学祭の公生と凪のワルツを聴いて、もう一度ピアノに向き合い、自身を見つめ直し、ピアニスト相座武士のスタイルを追求していきます。
予選では苦難の末、以前の自分を乗り越えて、新たな武器も手に入れ見事な復活を遂げます。
武士、井川絵見(いかわえみ)、公生、三人は予選を通過し、2月の東日本ピアノコンクール本選に向けて万全の態勢を整えていきます。
瀬戸紘子(せとひろこ)と娘の小麦、凪、公生の四人で2月に向けての作戦会議という、お餅パーティーで本選に向けて万全に仕上げる重要性、現在の紘子の心象などの分析が話し合われました。
「以前の自分に戻ろうとは思いません 演奏を変える気もありません 自分の信じる音楽を自分らしく弾こうと思います」
「いざとなったら紘子さんに海外に出してもらいます」
公生は何の気負いもありません。紘子は公生にもし海外に行くことになったら、
「--でも そんなことになったら後ろ髪引かれるんじゃないの?」
「どーすんの? ロングのコとショートのコ」
と公生を冷やかします。


公生はずっとかをりを意識しています。
公生は渡亮太(わたりりょうた)と自分を比べると勝負にならないと最初からあきらめている。あきらめているけれど、考えてしまう。そして、落ち込んでしまいます。椿はかをちゃんは渡が好き、と言い、かをりは渡を渡君と呼ぶ。かをりにとって公生は、盗撮魔で、代役で、荷物持ちで、ピアニストで、伴奏者です。公生は渡ではありません。
かをりと渡、互いに好意を持っているのに、公生がその間に割って入って、かをりに思いを伝えたとしてもどうにもならないと思っています。引くべきなのに引けない。公生は引き下がらなければいけないのに心にひっかかってピアノどころじゃなくなっています。


公生が迷っていると、見透かしたように椿が公生に指摘します。そして、ついでのような流れで椿は公生に告白します。椿らしい告白でした。もっときちんと告白したほうがよかったんじゃないの? と椿に言ってやりたくなります。ちょっと乱暴です。


公生はかをりのことで悩み、椿のことで悩み、頭の中に東日本ピアノコンクールのことはほぼないみたいです。
うわの空でピアノを弾いている公生は紘子に叱られます。でも、公生はかをりと椿のことで頭がいっぱいです。
ある日、公生の携帯にかをりから着信がありました。
「もう病院に来なくていいから」
公生はかをりの思いもよらない言葉に何か気を悪くすることしたかな? と落ち込みます。
定期連絡という口実がなくなってしまったら、かをりに会いに行く理由がなくなってしまう。
つながりという細い糸が切れてしまったような気持ちになっていると、再び着信音が鳴ります。かをりからでした。
公生は他愛のない内容で電話をかけてきてくれたことに安心します。笑ってしまうくらい安堵します。
かをりが病院に来るなと言ったのは、練習にすべての時間を費やしてほしいと思ったからでした。ただそれだけの理由でした。他に何か公生が不安になるようなことなんてなかったのでした。
公生の口から自然に、
「また病院に行くよ 君に会いたいんだ いけない?」
公生の言葉はもう告白にしかきこえません。


公生は渡とかをりの病院に向かう途中、渡に打ち明けます。
「ねえ 渡 僕は宮園さんがとても好きだよ」
渡は公生を茶化さず、真顔で、
「ばか 知ってるよ」
と言います。渡は公生の気持ちをきけてよかったという表情をしています。
病室があるフロアが何か慌ただしくなっています。かをりの病室のほうです。
かをりの部屋をのぞくと、ただならぬ状況でした。
看護師は鋭い口調で、
「今日は帰りなさい」
と言われ、公生と渡は呆然となり絶望的な気持ちになってしまいます。

悲しい展開のほかに起こりうることが想像できません。
続きます。


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