ヨナはタオ姫のため、憎しみ連鎖を止めるため、国の民が苦しむことがないように戦を阻止するために動きます。
スウォンは着実に計画を進めています。最小の損害で最大の効果を狙っています。
コウレン姫は再び悪夢のような出来事を起こさせないため侵略される前に戦を仕掛けようとしています。
三人の考えがどこで交わるのか、もしくは悲劇に突入してしまうのか、緊迫の展開です。
ヨナとケイシュク参謀が話しているところにスウォンが来ます。スウォンは軍が進まない原因がヨナであることに、ハクを伴わず一人でここにいることに驚きます。
スウォンの後ろに控えているジュド将軍もヨナを見て動揺します。
ヨナはスウォンに横に立つアルギラをタオ姫の従者だと紹介し、ヨナは、
「――スウォン あなたに話があります」
と言い、スウォンは、
「…それについては返答済みです これ以上話すことはありません」
と返します。
二人の会話を聞いて、ケイシュクはスウォンがヨナが生きていた事を知っていた、接触していたことに驚きます。
ヨナはスウォンを説得します。しかし、スウォンは応じません。
スウォンがコウレン姫について話すと、ヨナは17年前のユホン叔父上の行為について尋ねます。スウォンは、
「…戦ではよくあることです」
するとヨナは、
「…そう でも わかった なぜ ユホン叔父上が王になれなかったのか」
と投げかけます。
ヨナの言葉にスウォンが反応します。
状況が悪くなるのを察したケイシュクがスウォンに先を急ごうと言います。
ヨナは静かに、
「待って 何をそんなに急ぐの? 話をしましょうよ 私はあの日からずっと あなたとまともに話してなんかいなかったのだから」
と言うと、誰もが言葉も出ず、動くことすらできなくなります。スウォンは変な感覚を感じ、
(あの子はね 緋龍王の化身なんだよ)
と言ったイル王の言葉がスウォンの頭の中に呼び起こされます。そして、
「………ひとつ 気になっていることがあります 火の部族に…… 何かしましたか?」
と聞くと、ヨナは何も言いません。じっとスウォンを見つめています。
スウォンは火の部族の烽火が上がった件もヨナが動かしたことだとわかり、ヨナと緋龍王の結びつきをますます否定できなくなります。
ヨナの表情が変わらないことで、ケイシュクが慌てます。
「誰か この者達を捕えよ! 真国の密偵だ!!」
叫ぶように命令します。
空の部族の兵士がヨナとアルギラに槍を突きつけます。
ケイシュクはヨナの存在を恐れ始めます。スウォンと行動を共にしていたジュド将軍にもヨナが生きていたことを尋ねます。
ジュドは厳しい表情で無言です。
「ちょっと」
後方から声がします。
「隊が止まっているとおもったら 何をしているの?」
リリが現れます。
「その子は私の友人よ 乱暴したら絶っ対許さないから!!」
ケイシュクはヨナが水の部族長の娘リリとも友人関係にあることを知ります。リリは、
「とにかくその子から武器を引きなさい 無礼者 それとも空の部族は城を追い出しても尚 ヨナ姫の命を奪おうとする恥知らずなの!?」
と言い、空の部族の兵士はヨナに向けた槍を下ろします。
リリはさらに、
「水の部族兵も聞きなさい ここにいるヨナ姫は水の部族の民を苦しめた麻薬(ナダイ)を取り除く為尽力してくれた いわば私達の命の恩人よ ここには麻薬で家族を亡くした者もいるでしょう ヨナ姫にて手出しするのは亡き家族を冒涜する行為と知りなさい!」
と言い、場の空気を変えてしまいます。
ヨナはスウォンに、
「どうか真国との平和的解決を」
と再度言います。
スウォンは、
「…なぜ…… それが通ると思っているのですか…」
と言います。ヨナは、
「コウレン姫もタオ姫も民を犠牲にしたくないはずだし あなたも 夥しい数の死を望んではいないと信じたいから」
と言います。
どうしてなのか、スウォンの考えが読めないけれど、
「………………わかりました」
とヨナに答えます。到底応じられない条件を提示し、真国が了承するなら会談を設定するとヨナに伝えます。
「…わかった 伝えるわ 馬を貸して」
と言い、ヨナはアルギラと共に真国の潸潸(サンサン)に馬を走らせます。
真国との国境、風の部族野営地では、テウ将軍が空の部族軍が来ないことを不思議に思っています。真国側を見てみると、黒い外套を着た集団がぞくぞくと野営地に集まっています。
ヴォルドが反戦派の貴族だと言います。真国の王城穹城(キュウジョウ)から反戦を訴えに来たと言います。
ハクが仲間なのかと聞くと、タオ姫を支持していると言います。
ヴォルドは集団の先頭に立つ人物をゴビ神官と呼び、話しかけます。
ゴビ神官はコウレン姫に捕えられているタオ姫を取り戻さねばと言います。
ハクはヴォルドとゴビ神官の会話を聞いていて、なんか胡散臭い奴らだと感じています。
ゴビ神官たちはコウレン姫の屋敷の前に集まり、タオ姫を返せと抗議します。
コウレン派のネグロが対応します。
ゴビ神官は神を持ち出し横暴なお前達に罰をお与えになるぞと責めます。
それを聞いてヨカタがゴビ神官に食って掛かります。
屋敷の扉が開きコウレン姫が出てきてネグロとヨカタをなだめます。
コウレンとゴビ神官が話します。
ゴビ神官は自分が優位に立ち、コウレンを追いつめたいようです。
けれど、コウレンはゴビ神官の考えは読めていて、軽くあしらいます。
ネグロとヨカタはコウレンに命をかけるつもりでいるようです。
コウレンはタオ姫にゴビ神官から聞いた、父上が危篤だということを伝えます。そして、タオ姫に、
「お前を解放する 父上のもとへ帰れ」
と言います。
ヨナが出て行って10日が過ぎようとしています。コウレンはヨナが死んだのだとタオ姫に言います。
コウレンは戦を始めた責任をとるつもりです。コウレンに向かって矢が飛んできます。
夜になります。
風の部族の野営地ではテウ将軍がハクに話しかけています。
「もう 風牙の都には帰ってくるんだよな」
と聞くと、ハクは無言です。
「そこなんで黙るかな もういいだろ? 帰っても王に見付からないように俺らが守るし」
と言ってみても、無言です。
「……それは」
とハクが何か言おうとすると、ヘンデが
「馬に蹄の音が聞こえる」
と言います、空の部族軍かと思い、風の部族の皆がハクを囲み守ります。
暗闇からやって来たのは知らない男です。ヘンデは、
「えっ 誰!?」
と言います。
アルギラが到着します。アルギラの背中にはヨナがいます。
ハクが駆け寄り、ヨナの様子を伺います。疲労困憊でくたびれています。
ハクが、
「姫さん… 大丈夫ですか?」
と声をかけると、ヨナが意識がはっきりとしてきます。
「コウレン姫はどこ?」
とハクに言うと、
「コウレンなら今屋敷に」
と答えます。
ヨナはスウォンに会って来て、コウレン姫とタオ姫が一緒ならば会談を開くと約束してくれたと説明します。
ハクとヴォルドに付き添われヨナはコウレンの屋敷に向かいます。
テウがハクを呼び止めます。
ハクはテウに、
「風の部族を守る事を考えろ、風の部族を頼む テウ将軍」
と言います。
ヨナの前にゴビ神官が現れ、コウレンの所に行かせまいとします。ヨナはすぐにゴビ神官の意図を見抜き振り切って走り出します。
コウレンの屋敷に着くと見張りの兵は倒れています。様子がおかしいので、ハクとアルギラが扉をこじ開けます。
中に入り目にしたのは、コウレンの盾になって矢を受けたネグロの姿です。
屋敷の屋根には黒装束の刺客がいて、弓矢でヨナ達も狙います。ハクはヨナを守り背中に矢を受けてしまいます。
コウレンは自分を狙う敵がスウォンの刺客なのか? と言います。
ヨナはそれは違う、スウォンとまず会談を開くと約束して来たと言います。
タオは戦を避けるため一歩前進したことに信じられない気持ちと喜ばしい気持ちで、コウレンはヨナがスウォンを説き伏せたことに驚きます。
黒装束の刺客は牢にいる四龍とミザリのもとにもやって来ます。
刺客は、
「殺すのはネグロ ヨカタ ミザリの3人だ」
「ゴビ神官のご命令だ タオ姫を連れ出すぞ」
と話しています。
刺客はミザリが声高に反戦派を否定するので、弓矢を向けとどめを刺そうとします。
キジャが我慢しきれなくなって、牢を破ります。ミザリに、
「行け! 主のもとへ」
と叫ぶと、ミザリはウレンのもとへ牢を出て走り出します。
ずっと黙っていたシンアが動きます。能力を使って刺客を全滅させます。
「ヨナの為に暴れないようにしてたけど… 嫌な感じがする もう動いてもいいよね?」
静かな怒りをたぎらせています。
刺客の矢はコウレンを狙います。
ヴォルドがコウレンを守ります。コウレンは、
「お前はタオを守れ 反戦派の手は借りん」
と言います。ヴォルドは、
「反戦派である前に 私は真国の民です!! 貴方に何かあっては真国は立ち行きません!! 私も五星の一人です! ネグロの代わりに今度は私が貴方の盾となります タオ姫と共にどうかこの国を導いて下さい」
コウレンは自分を狙う者がスウォンの刺客でないとするなら、おそらく反戦派のゴビ神官が送り込んだ者達だろうと言います。
ヨナは、
「私も貴方を死なせる訳にはいかない とにかく今は生き延びる事を考えましょう ゴビ神官は野営地にいるわ」
と言います。
ハクは、
「…っ ちょっといいか… ここを出る前に聞きたい事がある 四龍とユンはどこだ?」
聞きだそうとすると、再び矢が飛んできます。
ヴォルドは四龍様方は後程助けに参りましょうと、屋敷を出て野営地に向かいます。
屋敷にヨナ達と入れ代わるようにミザリが入ってきます。
何本もの矢を受けたネグロが仁王立ちでいるのが目に入ります。
ミザリを追ってきた黒装束の刺客が矢を構えます。
怒りに燃えたミザリは一瞬で刺客をしとめます。コウレンを追いかけます。
あらゆるところからコウレンに向かって矢が飛んできます。
コウレンが一人の刺客に矢を構えると、その周囲にいる刺客が次々と倒れていきます。
ジェハがヨナに合流します。
シンアも能力全開で見える刺客を倒していきます。
ユン、キジャ、ゼノもヨナに追いつき、全員揃います。
コウレンはジェハがどこから攻撃したのか、シンアがなぜ刺客をやっつけられたのか、見ていたのにわかりません。
しかし、刺客は倒れて動かなくなっているのを見ると倒したのだと理解します。
四龍の人知を超えた力を見て、四龍を従えているヨナという少女の存在について考えています。
野営地ではゴビ神官が民衆を神のお告げを使い洗脳しようしています。
ヨカタが自軍の兵士に背中を刺されます。
その兵士はゴビ神官の神のお告げに心酔し、反戦派の主張を絶対的なものとしています。
ゴビ神官と黒装束の刺客がヨカタを囲みます。
大きな槍が地面に突き刺さります。テウが様子を見ていました。
テウは反戦派を主張するゴビ神官達がヴォルド達の考えと違うことに違和感を感じています。
余計なことを言われる前に、ゴビ神官は刺客にテウを始末するよう命令します。
テウがいないことに気づて探していたのかヘンデとサキがやって来て、テウに
「おーい テウ将軍 そこで何やってんのー?」
と言います。ゴビ神官は目の前にいる若者が将軍と呼ばれて驚きます。
ヘンデとサキはテウと取り囲む黒装束が剣を抜いているので、戦闘態勢に入ります。
テウはヘンデにアヤメを呼んで来いといいます。ヨカタを風の部族の野営地に運ぶと言います。
ヨカタがいなくなってゴビ神官はやりたい放題になります。
ヨナ達が野営地に着くと、兵士は四龍を捕えます。
ゴビ神官の戯言を真に受けた兵士たちはコウレンを憎悪の眼で睨みつけます。
コウレンがゴビ神官に矢を向けると、黒装束の刺客はコウレンを弓矢で狙います。
ヨナがコウレンの前に立ち、
「双方 武器を収めて!」
と叫びます。
しかし、黒装束の矢はコウレンに向かって飛んできています。前に立つヨナに矢が降り注ごうとしています。
ハクが、
「姫さん!!」
と叫ぶと同時にキジャ、シンア、ジェハ、ゼノに異変が起きます。
それぞれの身体から龍が現れ、ヨナを包み込みます。龍はヨナの身体に触れることなく飛んできた矢を全て粉々にしてしまいます。
コウレンが、ハクが、真国の兵士が、今起こった事を理解できずにいます。
ゴビ神官は四龍の力を目にして、身体を震わせて喜んでいます。
ゴビ神官は自分の才覚で真国を運営できると思っているのでしょうか?それよりもどうやって神官の地位に就くことができたのでしょう。人の心を巧みに操っているだけでたどり着けそうな地位ではないように思います。
キジャとシンアとジェハは龍の能力を使いすぎです。ヨナより先にいなくなったりしないか心配です。
続きます。
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